CONFORT掲載 vol.1
NODEAが拓く、
これからの開口部
現代によみがえる、
圧倒的な開放感
「理性と感性が共鳴する至高の日常」を高い技術と洗練されたデザインでご提供している開口部のハイエンドブランドNODEA。
独自の視点で建築や素材を深掘りし、専門家からの評価も高い建築専門誌「CONFORT」において、NODEA製品を実現させたマテリアルやディテール、テクニカルな要素にフォーカスした記事を開発者の声と共に3回に渡りお届けいたします。以下、掲載内容となります。
NODEAは住宅建築の開口部の質を飛躍的に高めるハイエンドブランドとして2021年に発足。
大開口と高い性能、シンプルさに徹する美しいデザインを両立させた技術とは?
今回は「WINDOW G」、「SKY-FRAME」を紐解いていく。
Photographer: Nacása & Partners Inc.
- WINDOW G
- PANORAMA WINDOWコレクションの中のスタンダードタイプに位置付けられている。四周が隠れるフレームインが特徴。中央はFIX、両側か片側の障子が開閉する。方立と障子の縦框の見付寸法が揃い、等ピッチで水平方向にどこまでも窓を連続させることが可能。これは伝統的な日本の開口部の特徴でもある。障子の最大サイズ:W1400㎜、H3500㎜。FIXの最大サイズ:W2250㎜、H3500㎜。 ㎜単位でサイズオーダーできる。断熱性(熱貫流率):ペアガラスUw=1.58W/(㎡・K)、トリプルガラスUw=1.35W/(㎡・K)。ともにLow-E アルゴンガス入り。
NODEAは、一貫して建築に大きな開放性をもたらす製品を開発し、PANORAMA WINDOW・ENTRANCE・INTERIOR・OUTDOORの4つのコレクションを展開している。2015年から、LIXIL内の小さなチームで次の時代の開口部を探る中で、開発プロジェクトへと本格化し、新領域にチャレンジする事業の一つとして、ブランド化を実現した。
横浜にあるNODEA GALLERYを訪ねると、ブランドディレクターの羽賀豊さんが案内してくれた。開放性の高い住宅の内外を歩くようにして、新たなサッシに出会っていく。思わず視線が上がり、振り仰ぐ高さと、開口が水平に連続する開放感は、規格製品のサッシにはこれまでになく、とても新鮮だ。きわめてシンプルに空間がつながっている。
右/戸先ハンドルで障子を開閉する。ハンドルを上下に動かし、施錠・開錠を兼ねる。サッシに付き物だったクレセントを不要にした。ハンドルの手前に見える縦のラインは網戸。室内側の枠内に完全に納まっている。中/足元の枠内とレールも面でシンプルに構成。240㎏の障子を一定の速度を超えて閉めた場合には、安全に配慮して、20㎝の隙間で一旦停止するストッパー機能を備える。左/枠から引き出したプリーツ網戸。戸先の形材と方立の内側にマグネットが仕込まれ、ぴったりと気持ちよく閉じることができる。
伝統に根ざす現代の開口部へ
「開口部はさまざまな価値のある体験をもたらします。NODEAはその価値を高めることを通し、建築の価値を高めることを目指しています」。背景には伝統的な日本の暮らしがあると羽賀さんは言う。「内と外が一体となる中で季節や日の移ろいを感じ、暮らしの豊かさがつくられてきました。それを現代に合わせて実現する開口部を考えています」。
日本は中世以来、外部建具に引戸を愛用してきた。1960年代以降はアルミサッシが主流となり、ドアや開き窓も一般化したが、引戸形式は根強く定着している。建築家は意匠性を追求し、アルミではできないサイズや細い框ができるスチールサッシなどをオーダーメイドしてきた。2000年前後からは、省エネの観点から窓にも断熱性能の向上が求められ、今後も新築に義務化される断熱レベルは上がることが予定される。大きな開口部はつくりづらくなった。
「しかし、開口部の価値を高めるには、大開口で性能が高く、さらに洗練を極めるデザインを考えたい。わたしたちメーカーが、品質と性能を併せ持った製品を提供しなければならないのです。やればできると思っていました」。その言葉を具現化したのは、開発に携わった面々である。
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羽賀 豊
Yutaka Haga
NODEAブランドディレクター。前職ソニーではおもに商品戦略に従事、世界に向けて多くの商品をプロデュース。2014年LIXIL入社後は開口部全般のデザイン、新規事業、イノベーション推進を担当。常務役員。21年、NODEAを設立。デザインと技術の融合で住宅のスタンダードを高める活動を推進中。
大開口と高断熱を両立させる
「WINDOW G」で水本義則さんが手掛けた開発のうち、一筋縄ではいかなかったのは、最大3・5メートルに及ぶハイサイズを、高断熱化することだったという。「最初は一般に採用されているアルミ樹脂複合断熱サッシとしてスタートしました。形材の外部側はアルミ、室内側は樹脂で高断熱を確保できますが、室内に樹脂が露出するので、上質な金属調の塗装を施して完成は目の前でした。ところが建築家から、触ればプラスチックとすぐにわかる、チープだよと意見をいただき、急転直下、目に触れる形材はアルミにすると決め、設計をやり直したんです」。
樹脂が露出しない形材断熱サッシ(アルミ形材のパーツを樹脂で結合し内外を断熱)という選択肢はあるものの、樹脂の強度低下を補うためにアルミ部材は太くなり、アルミと樹脂は熱による伸縮量に差があるので部材を長くするほど反りが発生する。「それではハイサイズの細い縦框はつくれません。そこで縦框はアルミ樹脂複合の樹脂面をアルミで包み込む構造にして、フレームインで隠れる上下の框などはアルミ樹脂複合、枠と方立には形材断熱というように、それぞれの部材ごとに最適な断熱構造を設計し、解決しました」。結果、元の断面構造よりも性能は上がった。
カラーサンプル。NODEAの製品には高い質感の粉体塗装が用いられている。ヨーロッパで標準的なRALカラーから選んだ7色と、NODEAオリジナルの5色が用意されている。テクスチャーはそれぞれにスムーズマットと、ディープマットの2種類。上列はRAL7色。下列は白から黒までのグラデーションによるオリジナルカラー5色で、表情に奥行きを出すために微量の金属粉が加えられている。いずれもディープマット。PANORAMA WINDOWとINTERIORの製品で色を揃えるなど、色使いの自由度が広がる。
デザインと開発のケミストリー
「ハイエンドの中のスタンダードとなる窓ですから、いかに建築にすっと馴染むかを考えました」。丹羽新吾さんは「WINDOW G」で初めてサッシをデザイン。ストレスを感じさせないシンプルさ、精緻さ、質感の高さで、これまでの住宅サッシのイメージを払拭した。「まず、凹凸をなくそうと。見えるパーツはなくす、隠す、あるいはどこまで小さくできるか。部材がただの棒になることを目指すのですが、一方でそれを進めると、ぶっきら棒で表情がなくなってしまいます。そうならないように、普段近寄って目に入る部分、例えばハンドルや操作部などの機能を持つところに密度を感じるポイントをつくっています」。デザインを解き明かす丹羽さんの話に、つい引き込まれる。戸先の嵌合部にしてもフィンが込み合う従来イメージを脱し、素材を削り出したようなソリッド感を目指したという。「それを設計する開発の方たちに苦労を掛けますが、理由を説明して協力してもらいました」。パーツが隣り合う場合などのディテールもルール化。水本さんも「サッシの機構の常識からは無茶に思える丹羽さんの要望から、開発設計だけでは発想しなかったデザインを実現できました」。いいプロジェクトだったと二人は語り合う。
左/従来の戸車。右/新開発の戸車。重量240kgfの障子に対応する戸車を開発した。従来の160kgfまで対応する戸車はφ24㎜。同サイズの戸車ケースにφ32㎜を納める工夫により、障子の下框の見付を抑えることができた。
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水本 義則
Yoshinori Mizumoto
1991年LIXIL入社。95年からビル用商品の開発設計者としてビルサッシの基幹商品、換気商材ならびにLIXILビル商品として初のアルミ樹脂複合断熱サッシ、個別防火戸の開発を担当。2019年よりNODEAの前身となるHigh Line商品の開発を手掛け、大開口アルミ断熱サッシ「WINDOW G」を完成させた。
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丹羽 新吾
Shingo Niwa
NODEAデザイナー。デザイン事務所、企業のインハウスデザイナーを経験し、さまざまなジャンルのプロダクトデザインに関わる。 2014年LIXIL入社。エクステリア製品や窓のデザインを担当。「カーポート SC」「スマート宅配ポスト」などのデザインに携わる。
- SKY-FRAME
- NODEAの窓ではもっとも大きく開く。開口幅は最大でW12m、H4m。障子1枚の最大サイズはW2.3m、H4m。電動と手動の両方でスライドする。開閉形式は引き分け、片引き、コーナー開閉の3タイプ。GFRP(ガラス繊維強化樹脂)で断熱ガラスの四周を固めて剛性を確保し、上下の框を付けずに戸車に乗るだけで成立している構造が特徴。縦框はガラス同士の隙間を防ぐなどの機能のみ。見付は20~28㎜と細い。強化ガラスと高透過ガラスで安全性と自然な眺望が得られる。断熱性:ペアガラス JIS H-7等級相当 Uw=1.27W/(㎡・K)、トリプルガラス JIS H-8等級相当 Uw=0.87W/(㎡・K)。水密性能:JIS W-4等級相当 350Pa。
日本の水密レベルをクリアする
一方、「SKY-FRAME」は大きく開け放てることを特徴とする。スイスのサッシメーカー、SKY-FRAME社と技術提携し、性能面を日本向けに強化している。「ヨーロッパと日本は自然条件が違い、寒いヨーロッパでは、断熱性能の向上が速く進みました。しかし、台風はないので水密性はあまり考慮されていない。台風の風雨が窓に叩きつける日本のほうが高い水密性能を要求されます」。
対策にあたったのは西川忠伸さんだ。SKY-FRAMEは欧米、アジアなどに流通しているため、日本向けに形材の断面構成からつくり替えることはできない。従来にない、ほかの方法を発想した。「多量の水が下枠内に浸入してきたときに、素早く排水する水穴を枠の部屋内側に開けることにしました。外から水穴に吹き込む風に対して逆流防止弁を設け、同時に気密を保つことができます」。JIS規格による各種の性能試験をクリアし、施工、メンテナンスをNODEAで請け負う体勢がとられており、大開口の空間設計に取り組みやすくなっている。
次号ではNODEAの窓のフラッグシップ「SEAMLESS」を紹介する。
右/障子はFIX窓に引き込むことができる。FIX窓の最大サイズはW2.6×H4mまたはW4×H2.6m。縦枠にはおもに換気用に幅1mの網戸を内蔵。NODEAのオプションとして、ロールスクリーンの網戸も外部側に設置可能。中/障子は壁内にも完全に引き込める。左/コーナーの開閉。閉じるときに左右の障子が閉まる順序は決まっているが、逆の状態でもセンサーによって位置を修正し、閉じてくれる。
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西川 忠伸
Tadanobu Nishikawa
1985年LIXIL入社以来、ビル用商品の開発部門で単品から大規模シリーズの基幹商品、エキシビションモデルまで数々の商品を開発。社外共同研究での先端技術の実用化、業界団体でのJISをはじめ各種規定類の整備などにより業界の発展、技術向上にも貢献している。