四大企業 アトラース   作:スキル素材年中枯渇ニキ

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誤字報告ありがとうございます!

こんなにあったのか……と不甲斐ない自分が悔しいです!


プチトマトが出来たよ! やったねアドちゃん!

 地上からアウターリムに帰ってきた私は、早速母さんに怒られた。

 

 まあ、当然の反応だったか。成果はあったとは言え、地上に出るなんて何を考えているのか。と叱られては何も反論できない。

 

 せめて訳を言えと、しつこく言われてしまったのでもう話さない訳にはいかなくなったので、今私がコソコソとやっている研究について説明した。

 

 信じられないものを見るような反応だったが、自作PCと地殻変動発電機を前に押し黙ってしまった。

 

 まさか前世で科学者をしていましたと馬鹿正直に告白する訳にもいかなかったので、捨てられていた本の通りにやったら出来たと誤魔化したが、流石に騙されないだろう、怪訝な目をしていた。

 

 ……のだが、なんだかんだで自分の子という事で何も言ってこない、ばかりか研究を手伝ってもらえる事となった。正体なんかを考えても、まるで答えが見えてこないというのもあるのだろうが、それでも嬉しかった。

 

 だが流石にニケの研究に関しては隠し通した。色々と面倒なことになる、というのが簡単な理由になるわけだが……私はニケを作る上で必須な女性の脳味噌を、やはり死にかけている人から奪うしかないという結論に至った。母さんにそれを手伝わせるわけにはいかないし、止められるかもしれない。

 

 私とて人の心がないわけではない。だが比較的安全に地上探索し、これから成り上がっていくのであれば、ニケは絶対に必要だ。アウターリムでニケを作ると決めたその時から……外道の手に落ちるのも、覚悟はしていた。

 

 ……話が逸れた。兎も角母さんも手伝ってもらえると言う話だが、母さんにやってもらうのは、地上で手に入れてきた野菜の種の面倒を見るというものだ。

 

 その為の下準備はそこまで時間はかからなかった。予め紅蓮から貰った栄養のある土を、捨てられていた植木鉢に入れて種を植える。壊れた電球を人工太陽光照射装置に改造してそれの下に植木鉢を配置。エアコン……と言うには悲惨な性能だが、予め作っておいたそれを配置して温度を調整。出入口をボロ布で塞いで、簡易的な温室が完成した。

 

 母さんには、定期的に水をやるようお願いしておいた。私の作った機器にも、不調なんかがあれば私に言うようにとも。

 

 ……いや、分かっている。元々お互い栄養失調で倒れかねないという懸念から始めた事だ。それの解決を目指す為の対策としては焼け石に水じゃないのかと。

 

 数を増やしていかないといけないかもしれない……。それとも、自宅の地面を更に掘り進んでそこに畑を作るか。とんでもない重労働になるだろうが……考えるのも億劫になるためとりあえず温室が完成したことを素直に喜びたい。これで多少は足しになればいいが……

 

 そしてニケの研究もコツコツと進めている。……というか、ニケ製造機械の製作も並行して進めていた。ニケに関する科学的な概要が分かり次第それを元に機械を作っている。

 

 兎に角ニケの製造を急ぎたかった。アウターリムでニケを製造という考え自体、痛い妄想扱いされかねないものだというのにそれを急ぎたいとは気が早くないかと思うだろうが、残念ながら私はまた地上に行かねばならない。というか、私はまた性懲りもなく単身で地上に出ていた。こんな危険地帯、ニケがいなければやってられない。

 

 今度は装備を多少は整えてきた。

 

 まず、回収したラプチャーの残骸を調べて、ある程度メカニズムが分かったので、それを元にキッチンタイマーサイズのレーダーを制作。見た目はボロいが、転生してから作ったものとしては自信作だ。何せ紅蓮から貰った電子機器とアウターリムのジャンクパーツをある種の共食い整備的なやり方で作ったのだ。半径500メートル以内のラプチャーを探知できるようになった。

 

 ラプチャーの気を引くための発煙筒も数を増やし、前回行った時の経験からルートもある程度考えてきた。そしてタイムリミットも切り詰めて、お陰で今回はラプチャーとはエンカウントせずに済んだ。

 

 まあ、その分戦利品は少ないが。殉職したニケの足のパーツしか持ってこれてない。だが十分だ。欲しかったものは手に入った。

 

 前に回収したニケのボディ、特に足のパーツが損傷が激しかった為今回は足に狙いを定めていた。

 

 もしも、この捨てられたボディを再利用できるのだとしたら、ニケの製作は割と早く終わるかもしれない。

 

 兎に角、ニケが作れれば出来る事も増える。アウターリムで成り上がるというのであれば、残念ながらニケの製造は通過点でしかない。

 

 ……また母さんに怒られるんじゃないかって? ……内緒にしておいてくれ。

 

 


 

 

 あれから三カ月。些かご都合主義のように感じるかもしれないが、ニケの製造が現実味を帯びてきた。試作マザーマシンの完成にはまだ時間がかかるが、いよいよ夢物語と笑えない段階にまで来た。……まあ、ボディを使いまわせるならという前提があるが。

 

 ニケのメカニズムも、段々と分かってきた。真面な状態のボディがあればもう少し早い段階でここまでこれた筈だが、まぁない物ねだりしても仕方がない。

 

 ガラクタ同然の壊れたボディに、地上で拾ってきたニケのパーツを継ぎ接いで何とか頑丈な状態になる様に修繕……修繕と言っていいのか、これは……? ――をして、受け皿とでも呼ぶべきボディを用意出来るだろう。

 

 まだ地上に行かなければならないだろうが、可能性は見えてきた。これを繰り返していけばいつの日か……

 

「アドルフ、ご飯にしましょ!」

 

 心做しか、少し嬉しそうだ。アレが出来たからだろうか。

 

「今行く」

 

 ズタボロの居間に、ボロボロで片方足がない小さなテーブル。その上には量の少ないパーフェクトが皿に乗っている。そしてもう一つ、今日の特別なメインディッシュもある。

 

 三カ月前に、植木鉢に植えたプチトマトだ。

 

「「いただきます」」

 

 パーフェクトは、いつも通り味もなければ食感も悪い。母さんが苦労して手に入れてきているであろう物に悪いが、これ以上の感想が浮かばない。普段だったら腹が膨れるのでこうはいくまいが、こと今日に限ってはこう思うのも許して欲しい。

 

 パーフェクトを食べきった後は、お楽しみのプチトマトだ。私も実は種を植えてから三カ月、いつプチトマトを食べられるのかとソワソワしていた。

 

 ……嚙み砕くと皮から出てくる汁が喉を潤した。瑞々しさが口の中を包み込む。確かに、トマトとはこんな味だったと思い出させる。

 

 また涙が出てきた。最近は物を食べてから泣いてばかりじゃないかと自分にツッコミつつも、前世の生活のほんの1%だけでも、取り戻せたのだなと感じる。

 

「……こんな日が、来るとは思ってなかったわ」

 

 母さんが、窶れた顔で微笑んだ。

 

「知ってる、アドルフ? こういう生の食べ物って、アークでも滅多に食べられないの。ロイヤルだって、これ一個食べるだけでとんでもない大金をはたかなきゃならないんだから」

 

 そう言われてみると、多少の優越感を感じる。成程、悪くない気分だ。

 

「……アドルフって、将来科学者になりたいのよね?」

 

「そうだな。今でも変わらない目標だ。母さんは、笑わないでいてくれてありがとう」

 

「何言ってるのよ! 親が子供を応援するのは当たり前でしょ?」

 

 その当たり前は、この環境でいったい何人が実演できるだろうか。やはり母さんは凄い人だ。忍耐強く私の事を育ててくれる。

 

「兎に角、私もアドルフが科学者になれるように、頑張ってみるわ。私、アークの人にも会ったことがあるの。アドルフがどんな凄い子か、自慢しちゃうんだから! きっと、是非とも学校に通わせてくれ! って引く手数多よ!」

 

 ……嘘でも嬉しい言葉だ。それが()()()()()()()()()()()()()()()()微笑む。

 

「……そしたら、もう私がいなくても生きていけるかしら……?」

 

「母さん、そういう事は冗談でも言っちゃいけない。父さんに続いて、母さんまで私を置いていかないでくれ」

 

「あ、ああ、ごめんなさい! えっと、いやだわ。私ったら何でそんなことを……」

 

 そうだ。きっと二人とも生きていける。母さんが死ぬことがあるとすれば、きっと私の孫に囲まれて老衰だ。

 

「……ねえ、アドルフ」

 

「何だ?」

 

「アドルフが生まれてくれて、私は幸せよ。こんなにいい物を食べさせてくれるもの。私はきっと、アウターリムで一番の果報者だわ」

 

 いや、まだ十分じゃない筈だ。私が4歳になってからは、隙あらば地上に行こうとするクソガキを女手一つで育児をしている。母さんはもっと十分な幸せを与えられるべきだろう。

 

「でも、ときどき思うの。生まれがアークだったらって……私の元に生まれて、アドルフは不幸だったんじゃないかって……」

 

 ……聞き捨てならない言葉だった。

 

「母さん、そんなのは分からない。アークに生まれても、母さんみたいな立派な親じゃなければ、私は今よりもっと早く死んでいたかもしれない」

 

「そ、そんなの屁理屈よ! だってアークは皆一日三食食べてるのに、私は一食しか食べさせられてないわ」

 

「それでも、母さんからは確かな愛を感じるんだ。だから、私は今の現状を不幸とは認める訳にはいかないんだ。だから、私が認めたくない物を、母さんが認めないでくれ。頼むよ……」

 

 まあ、不幸と思ってないと言えば嘘になるが、言わぬが仏というやつだ。

 

「アドルフ……いつも思うけど、年の割に達観してるわよね……」

 

 そりゃ前世の記憶を持ち合わせているからな。

 

「情けないわ。親が子供に慰められるなんて……」

 

 慰めさせてくれ。それが少しでも母さんの救いになるなら。

 

「……待ってて。絶対に科学者にしてみせるから……」

 

「……ん? 母さん、何か言ったか?」

 

「えっ? ああ、何でもないわ。暗い話をしてごめんなさい。折角のプチトマトが不味くなっちゃうわね」

 

 ……正直に言ってしまえば、食事は全然足りない。出自も呪った。でも、母さんの元に生まれてきたのは、いつの日か後悔しない日がきっと来る。

 

 だって、こんなに貧しくても、こんなに幸せを感じるんだから。

 

 だから大丈夫。もっと幸せになれる筈だ。これからニケも作れるようになる。そうなったら、母さんはもっと驚くだろうか。兎に角、完成すればもっと生活は良くなる筈だ。

 

 これ以上の不幸などある筈がない。これからも、二人で幸せをかみしめながら生きていける筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母さんが病気で床に臥せるまでは、そう思っていた。




現在公開可能な情報

ハンナ

アドルフの母親。

夫、ヴァルターと同じくアドルフに対して多少の気味の悪さを当初感じていたが、次第にその感情は薄れて、アドルフの事をを第一に考えるようになる。

夫の死後、アドルフを女手一つで育児をする。

※『注意』申し訳ありませんが、これ以上の情報は、アドルフ社長の希望により閲覧できません。
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