特急はくたかドル箱消失による投資事業参入
1997(平成9)年に開業した北越急行は、六日町~犀潟(さいがた)間59.5kmを結ぶ第三セクター鉄道である。もともと旧国鉄が首都圏と北陸地方を結ぶ“ショートカット新線”として計画した路線である。国鉄改革により工事は中断したが、新潟県を筆頭株主とする第三セクターが事業を引き継ぎ、開業に至った。
【画像】「えぇぇぇ!」 これが50年前の「六日町駅」周辺です!(計8枚)
高速運転が可能な高規格在来線として設計され、直線的な路線のため全体の7割がトンネルで占められている。開業から2015年までは、上越新幹線の越後湯沢駅と金沢方面を結ぶ特急「はくたか」が運行され、第三セクター鉄道としてはトップクラスの収益を上げていた。
しかし、2015年に北陸新幹線の長野~金沢間が延伸開業すると、はくたかは廃止され、営業収益の約9割を失い赤字に転落した。もっとも、この損失は予測済みで、北越急行ははくたかで稼いだ資金を内部留保として蓄えていた。
現在、北越急行はピーク時に130億円に達したとされる内部留保を切り崩して経営を維持している。この間、
・佐川急便との貨客混載
・芸術祭列車の運行
など、さまざまな営業努力で増収を図ってきた。しかし、はくたかの廃止による売上減には遠く及んでいない。
一方で、北越急行は2014年に金融庁へ適格機関投資家の届け出を行い、内部留保を運用する形で投資事業に乗り出している。投資事業も一定の収益を上げているが、鉄道事業の赤字を補うには至らない。このまま赤字が続けば、潤沢だった内部留保もいずれ尽きる。
北越急行は本業の鉄道事業と、補助的な投資事業で果たして持続可能なのか。経営の正念場は続いている。
内部留保80億円超と固定資産投資有価証券60億円超の状況
北越急行は公式サイトで、第34期(2017年4月1日~2018年3月31日)以降の毎年度決算公告を公開している(2025年11月18日現在)。
最新の第41期(2024年4月1日~2025年3月31日)の貸借対照表を見ると、純資産は資本金45億6800万円、利益剰余金33億9388万円、有価証券評価差額金1億4202万円を合計して81億389万円だった。この金額が、いわゆる内部留保、はくたか時代に蓄えた資産にあたる。
一方、第34期の純資産は115億1170万円だった。8年間で
「約34億円減少」
した計算になる。内部留保はピーク時に130億円を超えていたとの報道もあり、これまでに約50億円を取り崩したという数字と概ね符合する。
第41期の貸借対照表では、流動資産に有価証券7億370万円、固定資産に投資有価証券62億6336万円が記載されている。流動資産の有価証券は短期的な売買を想定したもので、投資有価証券は長期保有を前提としている。北越急行の投資は、短期的な株の売買などの投機ではなく、比較的堅実な投資が中心であることがうかがえる。
投資事業の利益でカバーできなければ内部留保の延命措置
第41期の損益計算書(1万円未満四捨五入)を見ると、鉄道事業の営業収益は5億104万円で、営業費は13億5308万円だった。その結果、営業損失は8億5204万円となる。
一方、営業外収益は2億5401万円、営業外費用は1億6026万円で、差し引き約9000万円の利益が出ている。営業外収益の大部分は有価証券の利息(配当)で、2億2040万円に上る。その他、営業外収益には有価証券売却益1675万円、営業外費用には有価証券売却損1424万円が計上され、株の売買では差し引き約250万円の利益を出している。
ただし、この数字は配当に比べるとわずかであり、貸借対照表に記載されている有価証券と投資有価証券の金額差とほぼ一致している。
その結果、第41期の損益計算書では、営業外収益・営業外費用に特別利益(補助金)1億3084万円、特別損失(減損損失)1億4786万円を加味した税引前当期純損失は8億1909万円となった。
公式サイトで公開されている第34期から第41期までの決算を見ると、鉄道事業の営業損失は7億円台から9億円台で推移している。一方、投資による利益に相当する営業外収益・営業外費用の差額は、第41期で約9000万円、第40期で約3億9000万円と変動が大きい。いずれにしても、投資による利益は鉄道事業の営業損失をカバーするには届かず、毎年約2億円から約8億円の純損失を出している。
現在約80億円とされるはくたかで蓄えた内部留保は、もし毎年8億円の純損失を出し続けるなら10年で枯渇する。毎年2億円に抑えた場合でも、40年で枯渇する計算になる。
最悪、内部留保が10年しか持たないのであれば、投資事業が
「延命措置」
と呼ばれるのも無理はない。しかし、もしこれが40年続くとすれば、その間に打てる策は存在する。純損失を毎年2億円程度に抑えることは楽観的すぎるとしても、今後20年程度で投資事業の体質を変えることは可能ではないか。
現在の投資事業の鉄道事業の強み活用不足
気になったのは、北越急行の投資事業が主に配当を目的とした株式投資に特化している点だ。筆者は投資や株の専門家ではないため推測の域を出ないが、鉄道事業の営業損失をカバーするだけの配当を得るには、ピーク時に130億円あったとされるはくたかで蓄えた内部留保の金額では明らかに不足している。
しかし、第三セクターの性格上、よりハイリスクな株式売買は推奨されるものではない。
もう一点気になるのは、北越急行の投資事業は本業である鉄道事業との関連性やシナジー効果があまり感じられない点である。鉄道事業は
「沿線エリアを中心に多くの外部経済を生む事業」
だ。大手私鉄やJR各社では、不動産や観光などを中心に、その外部経済を事業の多角化で内部化してきた。最初は駅など自社資産を活用したビルや商業施設、ホテル事業から始まり、そこで蓄積された知見や信用はやがて沿線エリアを超えて広がっていく。
北越急行の場合、沿線エリアの外部経済を内部化しようとしても、大手私鉄やJRとは異なり、沿線の不動産や観光事業だけで鉄道事業の営業損失を埋めることは難しい。
極端にいえば、まずは沿線エリアで取り組むにしても、東京の中心に“北越急行ビル”を建設・保有し、これを担保物件として不動産を中心に投資事業を展開する発想もあってよかったのではないか。
東京に本社を置く不動産会社が知名度やブランド力を得るため、和歌山県の小さな私鉄を買収し、赤字でも営業を続ける紀州鉄道の例は、鉄道業界でよく知られた話だ。北越急行が東京の不動産事業に投資する場合は、その逆パターンとなる。しかし、内部留保がまだあるうちは、決して不可能な展開ではない。
今後は、株式の配当だけでなく、鉄道事業の強みを生かした新たな投資事業に期待したいところだ。(銀河鉄道世代(フリーライター))
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