中国で「ネズミ人間」動画が増殖中 自虐的すぎると取り締まられる?

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瀋陽=岩田恵実
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 午後3時に目が覚め、そのままベッドの中でスマホをいじり、猫をなでること1時間半。午後6時からパソコンで映画を見ながら、レンジで温めた弁当を食べる。その後、ゲームやアニメを楽しんだり、気になる部屋のほこりを掃除したり、ソファに横になったり。午前2時にベッドに入り、さらに2時間半スマホをいじって一日が終わる。

【前回はこちら】ドローンが届けるアイスティー 中国「低空経済」で景気も浮揚?

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 中国版インスタグラム「小紅書」に投稿された、約45秒の動画の一部始終だ。タイトルは「やる気のないネズミ人間の一日」。この女性がそうして家でゴロゴロして過ごすだけの動画に、10万以上の「いいね」がつく。

 中国のSNSでは最近、「老鼠人(ラオシューレン)」(ネズミ人間)と自称して、家から一歩も出ず、人と一切交流せず、昼夜逆転して一日を過ごすような様子を撮影した動画があふれるようになった。

 この言葉を広めたのは、英国に留学していた中国人男性とされる。日照時間が短く、気持ちがふさぐ英国の冬にこうした生活を送る動画をSNSに投稿したところ、似たような環境にいる留学生だけでなく、中国にいる若者たちが「共感できる」と反応した。

 老鼠人の中には、お風呂に入るのがおっくうで先延ばしにしたり、スマホに表示される一日の歩数が3桁未満だったりという人は珍しくないようだ。

 「28歳失業したネズミ人間」、「30歳失業389日目」といったタイトルで、失業中とみられる人が投稿した動画もあれば、整理整頓された部屋で、自身もメイクをして撮影に臨んでいる動画もある。

トレンドは「活人感」より「死人感」

 これまでSNS上で目立って…

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この記事を書いた人
岩田恵実
瀋陽支局長
専門・関心分野
中国、事件、災害
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    河野有理
    (法政大学法学部教授=日本政治思想史)
    2025年11月9日11時44分 投稿
    【視点】

    大陸中国の経済発展が一段落し、成長の曲がり角にあることの一つの証左なのだろう。若者が「何もしない」という形で社会に対するプロテストを敢行している可能性に、当局が敏感に反応している点がまことに興味深い。

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年11月28日11時33分 投稿
    【視点】

    「○○界隈」と名づけて可視化することで生まれる連帯感と似たようなものを感じる。遊び心も加わって、適度な連帯感、適度な仲間意識を求めている「老鼠人」たちがゆるくつながり、増殖しているように見える。そんな現象ではないだろうか。

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