内閣も改憲原案を国会提出できる? 高市首相「可能」発言で注目
内閣は憲法改正の原案を提出できる―。改憲を巡る高市早苗首相の国会答弁が議論を呼んでいる。過去にも内閣法制局などが同様の見解を示しているが、首相自らが明言するのは異例。憲法は改憲について「国会が発議する」と定めており、その原案を内閣が提出できるかどうかは見解が割れる。「あえて」の発言には改憲論議を主導したい首相の思惑もにじむ。 首相は4日の衆院代表質問で「(内閣が)憲法改正の原案を国会に提出することも可能だ。内閣として、この考えに変わりはない」と答弁した。 憲法96条は改憲について「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と明記。詳細な手続きを国会法で定める。まず憲法改正原案の国会提出から始まり、国会法は提出方法について①衆参の憲法審査会が行う②衆院100人以上、参院50人以上の賛成議員で行う―の二つを規定。内閣提出には触れていない。 ただ憲法72条は「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出する」とし、内閣に広く法案などの提出権を認める。首相が示したのはこの「議案」に改正原案も含まれるという解釈だ。 内閣が改正原案を提出できるのか、という問題は長く議論されてきた。 2007年成立の国民投票法を巡る審議でも内閣の提出権が議論になったが、同法に盛り込むかどうかの議論は先送りされた。24年の衆院憲法審では自民の加藤勝信元官房長官が「改憲原案を提出できるのは国会議員とこの憲法審査会のみで、政府にはその提出権はない。(改憲原案は)究極の議員立法と言えるもので、国民への発議は国会議員に課せられた重要な使命である」と述べている。 一橋大の只野雅人教授(憲法学)は「国民主権と密接につながる憲法は普通の法案とは性格が異なり、原案の段階から国民の代表としての国会議員が提出するのが筋だ」と指摘。「もし内閣提出を可能とするならば『議案』に改正原案が含まれる理由を丁寧に説明する必要がある」とする。 首相は12日の参院予算委で、自身の発言について「憲法上、提出できるかを聞かれたから答えただけだ。高市内閣から提出することは考えていない」と弁明した。 保守強硬派の首相が自民党総裁となり、改憲に積極的な日本維新の会と連立を組んだことで、政権は改憲論議に前のめりだ。連立合意書では、両党で条文起草協議会を設置し、26年度中に緊急事態条項の条文案を国会提出すると明記。首相が、内閣が決断すれば改正原案の提出が可能だと強調したことについて、自民の憲法審委員は「与野党協議の制約なく、提出できる手段を担保する狙いがある」と推測する。 とはいえ衆院では現状、改憲に前向きな勢力は発議に必要な「3分の2」を大きく割り込んでいる。改憲手続きに詳しい国民投票総研の南部義典代表は「絶対多数を占めていた安倍晋三政権でもできなかったことを考えると、野党が反発すれば国会が空転する現在の少数与党下では、内閣提出も発議も事実上無理だろう」と分析する。