赤いヒーローがめざす真の狙い 戦隊の後継ギャバンに託す東映の未来
来年放送が終了するスーパー戦隊シリーズの後継番組として、新シリーズ「PROJECT R.E.D.」(プロジェクトレッド)を始めると、テレビ朝日と東映が24日に発表した。その第1弾は、1980年代に人気を博した「宇宙刑事ギャバン」の最新作。東映の白倉伸一郎・上席執行役員(60)が、戦隊終了の理由を明かした前編に続き、新たなヒーロー枠の狙いを語ってくれた。
――「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」の後に始まるのが「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」です。80年代には「ギャバン」「シャリバン」「シャイダー」という「宇宙刑事」シリーズが人気を博しましたが、戦隊に代わってメタルヒーローシリーズを新たに展開するということでしょうか。
いえ、従来のギャバンとは違うものになるでしょう。
記事(後編)のポイント
・新シリーズ「プロジェクトレッド」の狙い
・ターゲットとする視聴者の年齢層拡大
・特撮作品で世界に飛躍するための挑戦
もちろんそのよさは引き継ぎます。ギャバンの当時の革新性とは、メタリックなスーツ姿のヒーロー造形と、異空間をバトルフィールドとしたことでした。
その後のメタルヒーローシリーズは試行錯誤の末に続かなくなり、(シリーズの長い中断期間を経て2000年に「仮面ライダークウガ」で始まった)平成仮面ライダーたちにバトンタッチしていくことになります。もう1回メタルヒーローシリーズを再構築しようという考えはあまりありません。
新しいギャバンは、昔のギャバンのよさである異空間の戦いなどは生かしつつ、戦隊からバトンを受け取った全く違うものになります。
――プロジェクトレッドのレッドといえば、特撮ファンならやはり戦隊のレッドをイメージします。戦隊を意識しましたか。
「R.E.D.」は、「Records of Extraordinary Dimensions」(超次元英雄譚(たん))の略としていますが、まあ当然戦隊は意識しますよね。赤縛りでシリーズ化することに難しさはあるけれど、何か創作のかせがあった方がいいとも思います。
――赤は戦隊の象徴的な色。ヒーローとしてまず思い浮かべる色でもあります。
赤って昔は女の子の色だったと思うんです。赤をみなさんが勇気、強さ、情熱といったヒーローの色として思い浮かべるようにしたのは戦隊の功績ですね。石ノ森章太郎先生のゴレンジャーから始まっているわけですが。戦隊の伝統を受け継ぎつつ、赤いキャラクターを主体とするような多種多様なものをシリーズとして生み出していきたい。
そもそも戦隊の放送枠の後番組として始めるわけで、戦隊をご覧下さったファンの方のために親和性の高そうなかたちを考えます。
等身大のヒーローと巨大ロボットが活躍するこれまでの番組のフォーマットからは大きくは逸脱しませんよ、というのはプロジェクトレッド第1弾のギャバンは大事にしたい。
――新作ギャバンでも巨大ロボットの戦いが見られるのですか。
過去の宇宙刑事作品でも、巨大ロボットは出てきますからね。いろいろなことは考えますよ。宇宙刑事のDNAを受け継ぎつつ、戦隊で培われてきたロボット描写のその先をどうやるか。
――戦隊の課題として、視聴者層が未就学児で、仮面ライダーに比べると「卒業」が早いとも言われてきました。プロジェクトレッドで視聴者層を上に上げたいという狙いもありますか。
視聴者の年齢層はやはり広げたいですね。小学校高学年くらいのお子さんはわりとテレビを見てくれるのが分かっているんです。推測するに、コロナ禍でテレビ離れが加速した結果、その下の世代はテレビを見る習慣がなくなってきているのでしょう。
グッズの販売戦略としても、日本は低年齢向けの玩具が手厚い国ですが、米国も中国も海外は異なります。低年齢向けと小学生くらいを対象とした玩具で明確な断絶があるんです。多少大人びたコンテンツにしないと、グローバルに展開が難しいのかもしれない。
――プロジェクトレッドは戦隊とはかなり雰囲気が変わりそうですね。
根本的な違いもお話しします。特撮のシリーズものには、作品ごとに世界がパラレル(並行)か、地続きかの違いがあります。
たとえば戦隊は、最終回で世界を救ったと思ったら翌週から新番組で再び悪者が出てくるわけです。前のヒーローはどこに行ったの?と突っ込みたくなりますが、これは世界が交わらないパラレルな世界です。
戦隊でもときに旧作のヒーローがゲスト的に出ることはありました。また「海賊戦隊ゴーカイジャー」(11年開始)はむしろ地続き的な世界で引退した戦隊戦士が力を貸してくれる作品でした。ただあくまで各世界がパラレルなのが戦隊の前提です。
これに対して地続きの世界とは、たとえば「アベンジャーズ」や「スター・ウォーズ」といったシリーズです。地続きの世界だと、物語が複雑になって融通がききにくい面もありますが、物語の厚みや深みが出るというメリットもあります。どちらにしても良い面と悪い面があります。
ずっと世界をリセットしてきた結果、戦隊の場合には旧作と新作の差別化が難しくなっているという課題がありました。今後は東映の特撮作品として、世界が緩やかにつながるような設定をやってみたい。それがプロジェクトレッドの新しさです。
――そうすると、過去の特撮キャラクターたちが登場して交わる世界を展開していくことになりますか。
出たり出なかったり。ギャバン以降は具体的にこうしようということはまだ考えていませんが、不可能ではないでしょうね。そもそもギャバン後の第2弾からは、もう少し戦隊の放送枠から逸脱する幅を広げていきたい。ヒーローにとらわれず。
――ヒーローですらなくなる可能性があるということですか。
ライバルであるのは仮面ライダーやアメコミといったヒーローもの。そこに対抗するのに、ヒーローという概念からはちょっと外れていくエンターテインメントをいずれは考えたい。もちろん実写のバトルものではありますが。
そもそも敵は実写のヒーローだというのではなく、本当はアニメと勝負しなければならない。「鬼滅の刃」や「チェンソーマン」といった世界で人気を得るエンターテインメントを日本アニメは今でも生み出しています。本当はその土俵で戦わなければならない。アニメに対して実写は制約があるから、ではいけないんです。世界に飛躍するための挑戦を考えたい。
今のアニメブームを支えている制作者たちも、子どものころにドはまりしたアニメがそれぞれあったはずです。そうやってかつてのファンが作り手になり再生産することで、日本の文化が発展していく。特撮でもそれをやらなければなりません。プロジェクトレッドにはそういう意気込みをかけています。
◇
しらくら・しんいちろう 1965年、東京生まれ。90年に東映に入社し、戦隊や仮面ライダーの制作現場などを歩んだ。とくにプロデューサーとして携わった、3人のライダーが登場する「仮面ライダーアギト」(2001年放送開始)や、13人のライダーが一人になるまで殺し合うという設定の「仮面ライダー龍騎」(02年開始)は、革新的なヒーロー作品として評価される。現在は東映でキャラクター戦略部を担当する上席執行役員。
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