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ゲームと現実が融合してもんむすTSした件/Novel by XJ(改)投棄場のようなもの

ゲームと現実が融合してもんむすTSした件

15,042 character(s)30 mins

スピーシーズ・ワールド・オンラインというMMORPGがある日突然現実と融合してしまった。各地にダンジョンができる中、そのプレイヤーは皆、ゲームの自キャラになってしまった……という感じでもんむすTSしてしまった方々の様相をお伝えいたします。

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ゲームというのは所詮遊びであって、その世界は「こうなったら面白そうだな」を具現化したようなものだ。
そのゲームで描かれる世界というのは、どこか理想の自分もしくは違う自分を作ることでもある、かもしれない。

スピーシーズ・ワールド・オンライン、そのゲームはある意味理想であったかもしれない。

リリースされて、あっという間に人気を集めたそのゲームの事は当然俺も知っていた。
ジャンルとしてはMMORPGなのだが、いわゆる量産型な、とりあえず作って課金の仕組み造ればもうかるんじゃね? みたいなゲームとは一線を画していた。

何よりまず、キャラクターの作り込みが尋常じゃないほど細かい。
今どきのゲームならキャラメイクが豊富なのは当たり前だろうけど、それでもこのゲームは桁違いだった。

まず選べる種族がやたら多かった。人間、エルフ、獣人、ドワーフ……そんなありがちなファンタジーな種族ラインナップは当然として、その細分化も多かった。
例えばエルフ一つとっても普通のエルフから始まり、褐色肌のダークエルフ、青い肌の原点のダークエルフや魔力特化のハイエルフ、幼い外見だけど成人扱いのピクシータイプまであるという、とにかく細かい。

それが単なる外見差分ではなく、しっかりパラメータや習性、特性、ステータスにまで影響される変化。
獣人にしたって、猫系、犬系、狐系、熊系、エトセトラエトセトラ……という具合で。
同じ種族でも耳の形や尻尾の挙動まで細かな設定が可能。胴体の骨格まで選ばせる必要あるのか? と真面目に質問したくなるくらいの自由度だった。

そして驚くべきことに、その細かさの割には課金要素が妙に少ない。
一応課金による装備ガチャはあることはあるけど、大抵はちょっと頑張れば同じものをゲットでき、課金でしか手に入らないようなアイテムや装備なんてものはほぼない。

勿論獲得のためにはそれなりの苦労ってものがあるけれど、ちょっと頑張ればゲットできるとあっては課金してもあんまり意味がない具合で。
普通こういうのって課金が主軸じゃないのか? ちゃんと運営できるのだろうか本当に。
まあクオリティが高くてプレイヤーが増えるほど外部からの契約だの広告だのが入ってくるらしいという噂だし、そんなものだろ。

とにかくそんなわけでスピーシーズ・ワールド・オンラインは爆発的に人気を伸ばしていった。
リリースしてすぐに口コミで広まり、俺みたいな大学生はもちろん、かなりの数のユーザーが参入していた。
キャラメイクだけして満足してログアウトする人すらいたし、逆に戦闘を繰り返して強さを求める層もいた。どんなプレイスタイルにも応えてくれる懐の深さがあった。

と、ここまでならまだよくできた人気ゲームで済む話、問題はある日突然やってくるものだ。
その問題とは……ゲームそのものが、なぜか現実世界と融合してしまったという事。



世界が変わる時というのは、大抵は予兆があるものだと思っていた。地震とか日食とか大量の流れ星とか巨大な顔面とか。
しかし実際の現実はそんな都合よくサインを出してはくれないらしい。

とにかく、世界はある日突然変わってしまった。ネットニュースを見れば突然にしてそいつらは出現したと報じている。
場所によっては巨大な石柱またはタワーのようなものであったり、またある場所では古代の遺跡のような建物群であったり、また別の場所では巨大な穴であったり。

当然世界は混乱した。各政府首脳も突然の事態に対策に追われ、また正体を確かめようと躍起になっていた。
だが、一定数の人間はそれを見て気がついてしまった。

――これ、ゲームのダンジョンじゃん

俺自身もゲームをプレイしていて何度も画面の中でそいつを見ていたから、すぐにわかった。
ネットでは同じように考えたユーザーと思しき人々からの比較画像も上がってきており。
それを見る限り、やっぱりスピーシーズ・ワールド・オンラインに登場するいくつかのダンジョンでした。

政府もその情報は察知していただろう。しかし「いやんなわけねーだろ」と簡単に信じるものではなかった。
だが種々の事態を考慮したら、もう否定しようがなかった。
政府は観念して認めてしまった。「よくわかんないけどゲームのダンジョンです」って。

幸いにして現時点で大きな人的被害は発生していない様子。とはいえ、楽観視できるわけがない。
何があるかわからないのが一番怖い。そして懸念として挙がるのは、ゲームの存在であったモンスターがダンジョンから表に出てきてしまうこと。

ゲーム内でも放置すればモンスターが湧き、一定数を超えると外に溢れ出す、というイベントがあった。
全てのダンジョンがそういう仕組みではないが、やはり可能性は捨てきれない。そうなったら人的被害は壊滅的にもなってしまう。
現実にモンスターが出てくるなんて話になれば「ファンタジーすげー」なんて言ってる場合じゃない。

ただ一方で危険だけではない。ニュースの無責任なコメンテーターの中には「もしかして新資源になるんじゃね?」なんて言い出すヤツも出始めており。
ゲーム内のダンジョンには、当然今の科学技術では存在しえないご都合主義的な鉱石や魔力結晶なんてものが存在する。
もし現実でも同じものが採掘できるなら、それは確かに新たな資源となりうる。

まあ政府もその辺のことは同じように考えているだろう。もちろん危険ってことも考慮に入れつつ。
というわけで一番の情報収集に必要な者にコンタクトを取り始めた。そう、ゲームの運営である。
が、ここに来て大きな問題が発生した。

スピーシーズ・ワールド・オンラインを運営している会社が、消えた。

正確には音信不通になった。電話は繋がらない、メールは返ってこない、公式SNSもいつの間にかアカ削除。
本社が入居していたとするビルのフロアもまたもぬけの殻。夜逃げしました? みたいな状態だったらしい。
関係者を探しても所在不明。まるで最初から存在しなかったかのように痕跡が希薄になっていく。

こうなっては手探りで調査して対策をするしかない、というわけで各政府はてんやわんやの大騒ぎになっている。
しかしさらに事態をややこしくする事象が発生していた。
それはゲームのユーザーの皆様。俺を含めて皆して……ゲームキャラになってしまっていたのだった。



「いやまったく困りましたねぇ」
「マジだよ。いきなりこの姿だもの」

本当である。事変が起こり、ゲームにもアクセスできなくなってどうしたものかと思いながらここに来て。
そしてサークル仲間で集まりあい、お互いの姿を見てさらに呆れてしまう。
見事なまでに、ゲームでキャラメイクした姿になってしまっていたのだから。

自分で作ったキャラだし、見慣れてはいる。だが画面の中で動かしていたソレが、そのまま自分の肉体として存在しているのを見るのは、なかなかにインパクトがあった。
ゲームとはいえおもっくそ個々人のこだわりを注ぎまくって作り上げたお気に入りのキャラである。自分の気に入らない姿でないだけマシか?
ここに集いしサークルメンバーの姿を黙って見ているだけで、なんとも言えない空気が漂ってしまう。

当然であるが、この変化は俺らだけではない。世界中のスピーシーズ・ワールド・オンラインのプレイヤーたちが、ダンジョン出現とほぼ同時に自身がキャラメイクした姿へと変貌していた。
人間から異種族へ変わってしまった者も決して少なくなく、むしろ人外になってしまった人の方が多いはず。

ニュースでは「人外化現象」なんて雑な呼び名がつけられていた。もう少しマシな呼び方できなかったのか。マジでマスコミってネーミングセンス悪い。
そして何よりも肝心な話として、戻れるかどうかも不明というのが致命的だった。

もちろん各政府機関はすぐに緊急会議を開き「マジでどうすんのこの人外の皆様」という前代未聞の難題を抱えることになった。
人権扱いはどうするか、戸籍はどうなるのか、見た目の差異はどこまで許容されるのか、エトセトラエトセトラ。
ダンジョンだけでなく新たな人種問題も抱えるようになったのだから、官僚の皆様は超過労働待ったなしである。

まあ、そりゃ混乱するに決まってるよ。なにせファンタジーなフィクションだけの存在が現実に出ちゃったのだから。
現実的な問題だけでも山積みなのに種族が異なる以上、生理的構造の違いとか寿命とかあるだろうし。
その辺の設定どこまで現実に反映されてしまったのだろうか? うーん困った困った。

特にややこしいのが女性キャラが圧倒的に多いという事実だった。
以前からMMOなどの自キャラを設定するゲームでは女性キャラを選ぶ率が高いと言われていた。男のケツを見ながらゲームしたくないとかなんとか。
で、それは当然スピーシーズ・ワールド・オンラインも同様で、大体7割以上のプレイヤーがが女キャラを使っているとか。

つまり現実世界では男性でも、ゲームキャラとして女性を使っていた者が……そのまま女性化したわけだ。
もちろん人間以外のキャラもいるわけであるが、女に変わりはないわけで。

そりゃ社会的にも大混乱である。性別の扱いをどうするか、戸籍は書き換えるべきなのか、そもそも種族的に性別って概念あんの? みたいな。
問題が際限なく湧いてくる。ああ、政府官僚の皆様過労死しないでくださいね。

一番の問題は……戻れるのだろうか、そんな疑問は当然出てくる。

しかし厄介なことにゲームを起動しようとしても起動しない。各端末にアプリは残っているが何の反応もしない、当然ログインもできない。
どうやら既存アカウントからのログインは全滅らしい。

一方でアプリのダウンロードはいまだ可能で、新規インストールや新規起動はなぜか可能だという報告がSNSや掲示板では上がっていた。
だが、その新規起動でキャラメイクを完了した瞬間……そのプレイヤーもまた、キャラメイクした姿になったという。

つまり、ゲームにアクセスすることはできるがキャラ作成した時点で現実側の肉体が変化し反映される、というわけだ。
変化した本人は現実側での混乱に巻き込まれた後、結局ゲームへログインできなくなる、リセットもできない。
どないせいっちゅうねん、こんなこと。

そんなわけで、俺ら大学のサークル仲間も例外ではなかった。事変が起きたあの日、全員が自分のキャラの姿になってしまった。
なんとも言い難い沈黙がサークル部屋に流れる。驚愕とか、困惑とか、恥ずかしさとか、諦めとか、色々混ざった微妙な空気。

とりあえず皆の姿を確認しようってことになって今ここに集ったわけであるが……もうゲームのキャラの通りだねぇ。
ゲーム内で一緒にプレイしていた仲間たちだから、どんなキャラでなのかはよく知っており、そしてその仲間のキャラが目の前にいるわけであり。



「ヨシツグは……マジでネコ娘になったかぁ」
「おう、まぎれもない猫娘だよ」

ゲームが現実化してもんむすTSした話
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俺、ヨシツグは既に鏡で己の姿を確認済。もう完璧なまでの、俺が力注いで作り上げた猫娘ですよ。
もう自分の姿見た瞬間に「うわ、めっちゃ再現度高い」という感動が込み上げるのも事実で、感情が渋滞していた。

鏡の中の猫耳は自分が手を振れば手を振ってくるし、笑ってみたら笑顔を向けて来るし。
しかし……その猫娘は自分自身だ。

「バッチリ声まで変わってるなぁ。顔はどことなく面影あるけど」
「まあそこのところは……キャラメイク通りだな」

キャラメイクではしっかり声まで設定できるのだからびっくりだ。
いくつかサンプルボイスがあって、そこからさらに微調整して自キャラの声まで作り上げられるのだからすごいもので。
まあゲーム内で聞いた声と微妙に違うけど、これは自分の声が骨を伝って響いてくる関係で聞こえ方が違うってやつではあるが。

なお、キャラメイク時には自分の顔をカメラで撮って取り込んでそのまま自キャラに反映させるという方法もある。
俺はその方法を採用して自キャラに自分の顔を取り込み、それをベースにカワイイ顔に調整していった。
結果的にできたのは俺に姉か妹がいたらこんな感じだろうなぁ、って顔である。

そう、姉か妹……つまり、女であり。

鏡の前に立っている自分の姿は、ネコ娘。猫耳と尻尾がついた……つまり、女。
これもまたキャラメイク通りであり、腰は細く、胸と尻はしっかりとしたボリュームあり。うん巨乳だ。
動きやすさとスタイルの良さを兼ねそろえた、美ボディである。紛れもない、女である。

「もう服の上からスタイルの良さが目立つな」
「結構きついぞ」

Tシャツを内側から押し上げている胸の物体も存在感がなかなかであり、重量感と存在感がすごい。
Gパンのおしりも適切なナイスボリュームを狙って調整したので、男物では少々きつい。
だか尻よりもきついのが……尻尾の存在。

なにせネコ娘である。尻尾がちゃんとついている。
現在無理やりGパンの中に詰め込んでいるけど、上手く配置してやらないとちょっときついし痛いし。

「すまん、ちょっとパンツ緩めるわ。尻尾がきつい」
「お、おう……」

Gパンをちょっとおろして尻の付け根から出ている尻尾を外に出してやる。
ふう、きつかった。

「うわ、本当に生えてる」
「ふさふさ……」
「あー、触るんじゃねえぞ」

体の一部でありちゃんと感覚がある。別に敏感ってわけじゃないけど、それはそれで触られるとくすぐったい。
そしてちゃんと自分の意志で動かすことができる。ふりふりと動かして固まってた尻尾をほぐしてやる。

「うん、猫だな」
「猫ですなぁ」
「ああ……マジで俺、ネコだよ」

開放されて落ち着いたけど、これずっとズボンに収納してるってちょっとしんどいなぁ。
やっぱ穴開けたほうがいいかな? うーん、お気に入りのGパンなんだけどなぁ。

「それとやっぱ目もネコになってるな」
「ああ」

鏡で見てびっくりだったのはちゃんと目もネコになっていた。
まあキャラメイク通りではあるけど、瞳孔が円形ではなくて猫特有の縦に細い感じになっていて。

「しかもめっちゃ夜目が効くんだわ」
「マジですか」

猫の目になったのだから暗くても大丈夫じゃね? と物は試しで確認したらマジだった。
想像以上に暗いところでも視力が維持されてる。猫すごい。

「おまけにやたらクリアに聞こえるんだよ。耳の位置も高いし」
「聴力もよくなったと?」

耳が頭の上に移動しただけで音の聞こえ方はこんなにも変わるのかと驚く。近くの話し声はもちろん、今現在部屋の外の廊下を歩く足音まで拾ってしまう。
ただ困ったことによくなりすぎて近くの音がうるさい。聴覚の精度というかボリュームが全体的に上がっている。これ、慣れるだろうか?

「まあ、そのへん以外は普通の人間とあんま変わらんし、けどまあなにより……」
「なにより?」
「女になったってあたりが、なぁ」

性別が変わってしまった衝撃は大きい。
特にダメージが大きかったのは……下が消失した。

男の証がなくなっており、間違いなく女になったと自覚させられる。ああ、マイサンよ、お前はどこに家出してしまったのか。
もしかしてこれってキャラメイクした俺のせい? 自業自得であるか? それよりもなによりも……

「やっぱ、服の尻に穴開けとくか?」

パンツスタイルだと尻が、尻尾が収納に困る。やはり穴開けないとダメか?
スカートなら開けなくても済むか? けどスカートってのは、男としての一線を越えてしまう気がして。
どうするか、本気で考えておいた方がいいかもな。



とはいえ、俺の場合は女になったとはいえそこまで極端に体形というか身長が変わったわけではない。まあ胸とか尻とかのボリュームはさておき。
それよりも身長含めて大きく変わったのが……

「ミツヨシは……お子ちゃまだなぁ」

ゲームが現実化してもんむすTSした話
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どう見ても子供にしか見えない姿になってしまったのがミツヨシである。
俺らの中ではそこそこ体形のあったミツヨシであるが、今は一番小さくなってしまった。

椅子に座っているミツヨシは、誰がどう見ても子供。せいぜい俺の腹部あたりまでしか身長がない。
視線を合わせようとすると自然と見下ろす姿勢になってしまい、その気はないけど子供扱いしそうになる。

「ヨシツグ、人を子供扱いするなよ」
「そのつもりはないのですが……」

ミツヨシはスピーシーズ・ワールド・オンラインの中で種族としてエルフを選択している。
ただし、その系統の中でもさらに細かく派生したピクシーという種族だった。

どうしてそんな種族選んだ? と聞いたら「見ていてかわいい」だそうな。まさかこいつロリコ……違うよな多分。
だが見ている分にはいいが、自分がその姿になるとは……選択時には想像できるわけがない。
その結果が今のこれである。

尖った耳が髪の間からちょこんと覗いているのを見れば、一応エルフ系統なのだと分かる。
しかしそれ以外は、ほとんど普通の人間の子供といって差し支えない外見だ。
問題は見た目は子供、中身は大人。それをマジで再現してしまったこと。

「しっかしここまで体形変わっちゃったら、服が大変だろ」
「ああ。服が、全部ぶかぶかでさ……」

ミツヨシは現在着用している少々サイズに合ってないシャツを引っ張ってみせる。どうやらなんとか縛ったりして無理やり着ている様子で。
どっちにしてもサイズが明らかに合っていない。下のパンツも同様である。

「これでもだいぶマシだぞ。家にあった中で一番小さい服を探したけどさ」
「うーん、後で一緒にリサイクルショップ行くか?」

とりあえずこちらの服は早急に何とかした方がいいだろう。
子供が大人の服を着てうろついていたら事案にしか見えない。リサイクルショップに行けばいい感じの子供服あるだろう。

「……いや、事案だよな? 下手したら補導されないか?」
「やっぱそう思う?」

どうやら当人も懸念していた様子だ。なにせ外見だけなら小学生低学年にしか見えない。
おまけに髪型や顔立ちも幼い雰囲気で、どう見ても子供が一人で歩いている構図にしかならない。

世間では突然に姿が変わってしまった事象は知られているけど、見た目と中身が一致せず、説明するのも困難だろう。なにせ身分証の写真が役立たず。
やはり服は一緒に買いに行くとしよう、この後で。

「いまにしてみれば何でピクシーにしたんだよオイラは」
「見た目が可愛いからって言ってたじゃん」
「見るのはいいけど自分がなるのは論外だろ!」
「そりゃそうだけど……」

それを言ったら俺だって自分が猫娘になると思ってキャラメイクなんぞしてないし。
この辺りはもう今になっては仕方ない件ですわ。文句言いようがない。

「せめてもの見た目子供ってのは……世界がデカく見えるんだよ」
「うーん、死活問題」

ミツヨシは椅子に座り直して足をぶらぶら揺らしてみせた。床に足が届いていない、本人もそれに気づいて苦い顔をしている。
先ほどもドアノブに何とか手が届くぐらいの様子で、体が小さくなって歩幅が狭くなったから必然的に歩く速度も遅くなって。

ちなみにゲーム内ではピクシーは魔力値が総じてデカい。だから強力な魔法を駆使して攻略を進めることができる。
反して腕力はそこまで高くないが、それをバランスよく魔力の強さで補うって感じだ。
しかし、日常生活ではそう上手くはいかない。

「大人ってこんなに高い椅子に座ってたんだなぁ、って変に感心しちゃうよ」
「いやそれ普通の高さだぞ」
「今のオイラには高いんだよ……」

マジで死活問題である。

「でもさ、こういうのって慣れの問題だよな?」
「どうだろうなぁ。ミツヨシは慣れると思うのか?」
「多分?」

そう言って、ミツヨシは軽く立ち上がって歩いてみせる。自分の体の感覚を確かめるようで。
小さな足でちょこちょこ歩く姿は可愛い……いや、本人に言ったら怒られそうなので胸の内にしまっておく。

「まあいいや、可愛い見た目だからOKとしておこう」
「ん? お前まさかやっぱりロリ……」
「ちげーよ!!」

そこのところははっきり違うと申していただいた方がいい。なにせサークル内で犯罪者を出すわけにはいかないのでね。
でも自分を愛でるだけならOKだろうか? それはそれで変態をサークル内から出したくないなぁ。

「ところでさ、大人としての生活ってどうするんだ?」
「どうって?」
「例えば……酒とか?」
「あ」

沈黙が広がる。
全員がミツヨシの見た目と、戸籍上の年齢とのギャップについて一瞬で理解する。

「いや、合法ロリだから問題なしっ!」
「アウトだよっ!!」

ついに合法とか言いやがったこいつ。やっぱりロリコーンだったのかおいっ!!

「けど、オイラちゃんと成人してるし、この種族の設定年齢だって長命で300歳とかザラだし」
「その見た目で酒買いに行ったら一発補導だろっ!」

ピクシーという種族は見た目子供だがれっきとした成人、という設定である。
ここでいう成人とは何歳なのかはわからないが、子供でないのは確か。設定上は。

しかし子供にしか見えないゆえに、現実世界では致命的な社会的問題がつきまとうわけだ。
そこんところどうするんだろうか? お役所の方々はあれこれと知恵を絞っているかもしれないけど。

「とりあえず……帰り道で迷子に間違われないように気をつけろよ」
「やっぱし子ども扱いかよぉ」

こればかりは見た目の問題である。



とはいえ俺やミツヨシに関してはまだ見た目というかシルエットが人間と大差ないからマシかもしれない。
ファンタジーの種族は広い、本当に広い。であるから当然、中にははっきりと人外な見た目もいるわけで。
その代表格が……

「子供扱いと下半身ヘビとどっちがマシか」
「五十歩百歩もいいところだよ」

クニミツである。こちらは本当に「ザ・人外」である。
なにせラミア娘、つまりのところ下半身ヘビになってしまったのだから。

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「うーん、部屋の専有面積がすさまじい」
「邪魔って言うなよ。オレだって好きでなったわけじゃないんだし」

クニミツはそう言いながら、ぐるりと下半身……胴体と言った方が正しいか、を持ち上げた。
床に広がる赤いヘビボディの鱗の光沢が、部屋の照明に反射している。改めて見ると迫力がすごい。

下半身ヘビはなかなかの体積である。デカいヘビ代表のアナコンダは最大で9メートルにもなるらしいが、これどのくらいある?
さすがに所見ではインパクトあったわ。今は何とかとぐろ巻いておさまってるのか? それでも部屋の半分くらいは占めてる気が。

「うーん、質感は完全にヘビ皮だね」
「勝手に触るなコラ」

そうは言ってもここまで存在感あるとねぇ。ちょっと触ってみたくなりますって。
ウロコの感触とか、なかなかのものですわ。硬い表皮だけど、一応触られた感じはあるのだろうか?

「しかしこうも大幅に体が変わると大変じゃね? よく歩けたな? 歩くって言うか移動するって言うか……」
「そこはオレも驚いた。体が覚えてたみたいに、普通に動けたわ」

そういうとクニミツは狭い部屋の中を丁寧にヘビの下半身を動かして這いまわってみせる。
この部屋に来るまでも普通に前進している姿見たけど、なかなか迫力がすごい。

それにしても……体が覚えてた、ねぇ。そういえば俺も俺で尻尾を難なく動かせてたな。
何で普通に動かせるんだろ? どういう仕組みなんだこれ?

「体感はまだいいんだけどさ、服の方が……」
「あー……」

確かに下半身が人外となってしまっては普通の服は着れそうにない。
今のところはスカートを穿いている様子であるが……

「とりあえず姉貴のスカート借りた」
「うーん、有無を言わさずスカートかぁ」

この胴体ではスカートしか着れそうにないな。なにせ足2本じゃないし。
俺なんて尻尾を考えてスカート穿くかどうか悩んでいるけど、そんなのまだマシじゃないか。選択の余地がない。

「しかしヘビというか、半分爬虫類になったという事は……変温動物になったとか?」
「そこまで人外になってねえよ……多分」

どうやら上半身の人間の体感でいいらしい。だが、まだ季節は温かいうちだ。この先はわからない。
まさか冬眠したりはしないよな? 大丈夫だよな?

「ところで素朴な疑問なのだが……」
「なんだ?」
「トイレどうすんの? 前向き? 後向き?」
「おいこらてめえ……」

だってねぇ、気になるじゃん。下半身ヘビになっているけど、上半身は人間のままで。
そういえばヘビとか生き物によっては総排泄口って全部まとまっている場合があるよな?
もしかしてそうなってるのか?

「えーっと……一応人間と一緒で前と後ろと別れてるけど」
「あ、ラミアってそこは人と一緒なんだ」
「一緒っていうかなんというか、前はちょうど穴のところで人間とヘビの境目になってるし、後ろも尻の半分までは人間って感じで……」

なるほど、人間と動物の半分混在のフィクションの生き物ってどうなっているのか興味深かったけど、ラミアはそうなっていると?
下半身とは言ったけど、実質は足から下がヘビになっているって感じなのだろうか?

「どれ、ちょっと試し見せてもら……」
「うぉぉいっ! スカートめくるんじゃねぇっ!!」
「ぐえぇぇぇぇっっっ!!」

ちょっとスカートの中見せてもらおうとしたらあっという間にヘビの下半身が動いて俺をぐるぐる巻きに捕らえ、締め上げてきたっ!
ぐおぉぉぉっ!? めっちゃ絞められるうぅぅっ!!

「ぎ、ギブギブギブっ!!」
「お、おう悪かった。ちょっと力入れちまったわ」

ちょっとどころじゃないぐらいに締めあげられてましたけど? 全身の骨砕かれるかと思った位なのですけど?
アナコンダはジャガーぐらいの動物も締め上げて捕食することがあるというけど、さすがそれだけに力強いわ。
それにしても今のって、太もも締めみたいなものだろうか? ちっとも嬉しくないが。

「まあその、体のせいでパンツ穿けないから見るのは勘弁……」
「ノーパン!?」

確かに考えてみたらこの構造だとパンツ穿けそうにないな。
必然的にノーパンになるのか。これは辛い。

「うーん、しかしこの全身だとトイレの個室に入るのも苦労するな」

なにせ今現在俺たちがいるこの部屋でも、比較的狭いとはいえ半分近くを占めてしまうサイズである。
トイレの個室はかろうじて入れるかもしれないけど、相当窮屈しそう。

「けどオレはまだマシかもしれねぇ」
「ん?」
「SNS見てたら、ケンタウロスの下半身馬とか、アラクネの下半身蜘蛛とかあるし」
「あー」

そういえば種族にそういうのあったなぁ。下半身のサイズ感がすさまじい。
ケンタウロス(下半身馬)になってくるとトイレの個室どころかベッドで寝ることもままならないんじゃね? 相当生活に苦労しそう。
マジでトイレどうするんだろ?

「けど考えてみたら……お前もお前で厄介じゃね?」
「ん?」
「移動するにはほぼ胴体で這っていくんだよな?」
「おう、そだな」
「ってことは……トイレの床もべったり這って行くことに」
「!?」

これ、もしかして言わない方がよかったか? 不衛生極まりないよなぁ。
まあ、そもそもここに来るまでも外の道路を普通に這って進んできたわけで、当然何があるかわからない道路のモノが胴体(というか下半身)にすりついていたわけで。

「な、なんか……下をカバーするようなやつ、ないかな?」
「あるかなぁ?」

こんな足というか下半身に穿ける靴の代わりのようなものって、何ですかね?
やはり下半身人外系は相当苦労しそうだ。



さっきからクニミツがデカいとは言っていたが、それでも上半身の人間部分は普通サイズである。
その一方で体積はクニミツに負けるものの、確実にスケールアップしているやつがいた。

「モトナリもモトナリで、なかなかの人外っぷりだけどな」
「あはは、やっぱそう思う?」

実に笑顔が素敵だ。しかし、その笑顔は俺らよりずっと上からくる。
モトナリはなかなかのデカ女、ていうかオーガ娘になっていた。

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「……圧がすごい」
「とにかく、デカいな」

見上げると、モトナリの頭の角が威圧感を放つ。肌は真っ赤で、全身に筋肉がついていて、座っていても存在感がすごい。
およそ身長は3メートル近くないか? 立ち上がったら天井に簡単に頭がついてしまいそうで。

とはいえ、体のサイズに対して顔は童顔な造りで、声もまたアニメボイスな高い声。体格と筋肉とのギャップがすごい。雑コラした時みたいな差が感じられる。
俺らの中で一番小柄だったモトナリだが、今やその巨体で部屋の一角を支配しているようだ。

「やっぱ、デカいな」
「うん、デカい」

体格と身長もデカいが、さらに胸も尻もなかなかのボリュームである。胸なんてビーチボール入れてるんですか? ってレベルだし。
当然元々の服なんてサイズが合うはずもなく、ぱっつんぱっつんである。はちきれんばかりとはこのことか。
とはいえ、この外見はモトナリ自身が設定したものであるはず。モトナリ、デカ女が好みだったのだろうか?

胸だけでなく筋肉もなかなか。やはりオーガという種族なだけある。腕や脚も太く、触ったら硬そうだ。
実際ゲームでもこの筋肉を有効活用して、ほぼ力技というか力押しで攻略していたのであるが。

「オレみたいな下半身ヘビほどじゃないけど、デカいのも苦労しねぇか?」
「うーん、普通にしてるだけなんだけど……部屋がちょっと狭いかな?」

確かにこの部屋でもモトナリが動くとちょっと狭く感じる。
体積のデカさが部屋の狭さと相まって、ちょっとした通行のたびに空間がぎゅうぎゅうになる感じだ。

これ、自分の部屋だと相当苦労するんじゃねえか?
例えばベッドなんて基本的に2メートルぐらいだから、確実に収まりきらないだろうし。
今座っている椅子だっておさまりが悪すぎる。尻がデカいってのもあるけど。

「体の大きさだけじゃなくて、角もすごいな」
「あー、これぇ? キャラメイクした通りだからねぇ。けど実生活じゃ邪魔なだけだしぃ」

その角は頭部から伸び、光の加減で赤い肌と相まって威圧感を増している。
視界の片隅で角を見上げるだけでも、自然と姿勢を正してしまうような存在感だ。
ただ、確かにゲームでは見た目カッコいいとは思うかもしれないが、現実になっては邪魔だというのも納得してしまう。

「なあ、モトナリ」
「ん、なに?」

などとサイズ観察していたらこの場で一番サイズの小さいミツヨシが声を上げた。
先ほどからじっとモトナリを見ている様子だが、何か気になることでもあったか?

「ちょっと、試しにその胸に埋まってみたい!」
「ぶっっ!?」

どストレートに欲望を求めやがった。こ、こいつ、いい根性してるな。

「ん、いいよ」
「いいのかよ!?」

そしてミツヨシの欲望丸出しの要求をモトナリもモトナリであっさりOKしてしまった。

「お、おう。ありがたいっ! それじゃ遠慮なく……」

ぽてぽてと歩いて近づき、ミツヨシが小さな体でモトナリの体によじ登り、抱きつく。うーん、サイズ差がすごい。
ピクシーの小さな体が、まるで赤ちゃんが巨人に抱かれているかのように見えるのだが。

「はぁ……やわらか」

硬そうな筋肉であるが、胸は違うらしい。
お子様サイズのボディなミツヨシは本当に遠慮なくモトナリの胸に顔を埋めてモニュモニュしてるし。

「あんっ♡ もうっ、ミツヨシったらぁ」

そしてモニュモニュされてるモトナリもまんざらではない様子で。
デカ女から感じる母性、これはなかなかいいものを見せてもらった気がする。



「まったく、あんたらときたら。女キャラ使い始めた時もなんだかなーっと思ってたけど、今だってガッツリ女になってはしゃいでる気がしてならないわ」

などと苦言を呈されてしまった。そんなことを口にしたのは我がサークル内での唯一の女子であるチハルだった。
紅一点、と言えるほど元々の容姿がいいわけではない事は黙っておくが、まあ女子としての意見であろう。
だか、しかし……

「今のチハルの姿で言われても、説得力ないんですけど?」

俺らが下心で女キャラ選んだと思われている様子だが、それを言ったらチハルだって同じことではないか?
なにせ今のチハルの姿ときたら……

「ねぇ、オッサン」
「オッサンじゃないわ! イケおじよっ!!」

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オッサンというかイケおじというか、とにかく中年男性の姿である。

「イケおじってなぁ……普通イケメンじゃねえのか? なんで中年なんだよ?」
「ふっ、浅はかね。イケおじが何たるかわかってないのだから」

得意気に、偉そうに言いだしたのがなんかムカつく。
その体格は平均的な身長よりは高く肩幅もがっしりした筋肉質で、髭は白髪であごひげも生えており。
……どう見ても渋い中年男性である。

そして俺らは人外になっているのに対して、この中では唯一の人間種族である。
キャラメイク完了しゲーム内でこの姿を見たときも皆微妙な反応ではあった。だって普通もうちょっとイケメンとか狙うものじゃないの? もしかしてネタキャラ? って思いまして。

しかし当人は渾身の作だとご満悦の様子で。チハルの好みの男性ってこういうのだったのか、と皆して微妙になったものだ。
そして今は……当人がしっかりその姿になっており、しかも大分気に入っている様子であって。ただ……

「その姿で女言葉使うの、どうにかならん?」
「はぁ? アタシはアタシの喋り方でしょ? 大体あんたたちだってその姿で男言葉のままじゃん」

いや、そりゃそうかもしれないのだが。だが、問題はその声と見た目である。

「そうかもしれなんが……率直に言って似合わん」
「なぬっ!?」

正直言わせてもらうとこの姿で女言葉なんて、完全にオネエってやつである。
しかも割と渋い声なので、どうしたって違和感しかない。むしろ鳥肌が立つのだが。

「いいか? チハルはその姿を渾身の作と言ったな? イケおじキャラなんだろ?」
「……まあね」
「ならば、渾身の作というか姿にふさわしいキャラを演じるのだって必要じゃないのか?」
「む?」
「中身まで完璧に、とは言わん。だがせめてもの、その姿に似合う話し方ってものをしてはどうなんだ? そうすれば……」
「すれば?」
「そのイケおじは、完成するんじゃないのか!?」
「っ……!!」
「今の話し方では、せっかくの設定が台無しだと思うぞ?」
「………」

などとそれっぽく話してみたが、要するにその姿でオネェっぽい話し方は勘弁してほしいだけである。
完璧は求めないけど、やっぱある程度見た目と中身というか話し方って大事だなと思う。

なあ現実はそこまで話し方って性別を感じるものじゃないんだけどね。
ある程度丁寧な口調で話すれば男だろうと女だろうとどっちでも違和感ないのですがね。

「……ふっ、いいだろう。ならば今の見た目に合わせた口調にさせてもらおう」
「お、おう?」

分かったのか何なのか、チハルの口調が改まった。
前述の通りちょっと丁寧な口調にしただけだが、とりあえず違和感はなくなった。

「ワリといい感じ?」
「お褒めに預かり光栄だな」

むむ? なんかイケおじ感が増したな。話し方だけでこうも変わってしまうのか。恐ろしいものだな。
ということは俺も俺で語尾に「にゃ」とかつけたらいいのか? いやそれは変か。

「まあいいや、違和感薄れたから」
「ああ、しかし違和感はまあまああるかな」
「ん?」

こっちは人外になって違和感抜群だけど、人間のままなチハルもなんか違和感があるとな?

「男になったせいで……股間の存在感がすごいのだが」
「急に下ネタかよっ!」

険しい顔してるからどんな真面目な話かと思ったら、一番ひどい話だった。

「しかも硬くなったりして、結構バスターソードなのだが!?」
「もうお前黙ってろっっ!!」

サイテーすぎるオチだった。
なお物は試しにと後で見せてもらったら……確かにバスターソードだった。




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