幼女「もらえる経験値、人>魔物では?」   作:まとめサイトからきた

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29話 すべてがわかるとき

 あの血生臭い惨劇から、数時間後。

 クライネルト伯爵家の自室。

 わたしは、薔薇の花びらを浮かべた豪奢な湯船に身を沈めて体を癒やしていた。

 ふぅ、と息を吐くと、湯気がふわりと立ちのぼる。

 

 はあー、今日は疲れたなー。

 

 正直、あの後、屋敷にたどり着くまでがなかなかに大変だったのだ。

 不本意とはいえ、脅迫することでセーラは、わたしと「共犯者」になってくれたのだ。

 

 まず、二人分の返り血まみれの服。

 これは、屋敷に帰る途中にあった湧き水の池で、徹底的に洗い流した。

 真水は氷のように冷たかったけど、我慢するしかなかった。震えながら二人で一生懸命、血を洗い流したのだ。

 もちろん、その間ずっと豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)に殴り飛ばされた時に折れたかもしれない左腕は、最悪の激痛を主張し続けていた。本当に辛かったんだから……。

 

 わたしは、まだ恐怖に引きつるセーラに指示しては、彼女に担いでもらい、いかにも「命からがら逃げ帰ってきた、か弱な被害者」を完璧に演じて、屋敷の門をくぐった。

 

 わたしは腕を押さえて泣きじゃくり、セーラは顔面蒼白で震えている。

 それを見た門番の慌てようといったら、すごかった。

 すぐさま、お父様とお母様が血相を変えて飛んできた。

 

「アリス! セーラ! いったい何があった!?」

 

 お父様の怒号に、わたしは用意していた完璧な台本を、涙ながらに訴えた。

 

「お、お父様ぁ……! うわあああん!」

 わたしはお母様の胸に飛び込み、練習してきた最高の泣き演技を披露する。

 

「ピクニックしてたら……! ルスカーさんが、急に『なにかいる!』って! 遠くから、モンスターの大きい咆哮が聞こえてきて……!」

 

「モンスターだと!?」

 

「ルスカーさんが……! 『まずいモンスターがいるかもしれない。お嬢様とセーラは、今すぐ屋敷に戻って助けを呼んでくれ!』って……! 『自分は様子を見てくる!』って……!」

 

 わたしの迫真の演技に、お父様は息を呑み、お母様は心配のあまり泣きそうな表情する。 

 よし、完璧。

 これなら、わたしが戦闘に参加した事実は完全に隠蔽できる。

 そして、近くでピクニックしたのではなく三人でモンスターがでるかもしれない森に行ったことがバレたら、わたしは怒られるだけで済むかもだけどセーラは「なにをしてるんだ!」ってきつく咎められるに違いない。

 だから、わたしたちは危険な森には行ってないけど、ルスカーさんが様子を見に行った、ということにする必要があった。

 この嘘は、わたしとセーラ、二人を守るための、最高の盾だ。

 

「……ルスカーが、そう言ったのか」

 

 お父様は、苦虫を噛み潰したような顔で、拳を強く握りしめた。

 

「はい……! わたしたち、怖くて、必死で逃げて……途中で転んで、腕を……うっ、うぅ……!」

 

 わたしが折れた左腕をかばうように見せると、お母様が「まあ!」と悲鳴を上げる。

 すぐさま近くに住む神官が呼ばれ、わたしは手厚い治療を受けることになった。

 

 その後の展開は、早かった。

 お父様は、騎士団の精鋭部隊を編成し、自ら森の捜索に向かった。

 それからすぐのことだった。

 屋敷は、重苦しい空気に包まれた。

 

 ……ルスカーさんと、豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)の亡骸は、わたしたちが戦った、あの血の海の中で発見された。

 豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)は、その首筋に深々と短剣が突き刺さったまま絶命していたらしい。

 そして、ルスカーさんは……胸部を無残に砕かれ、殉職していた、と。

 

 お父様は、その短剣がルスカーさんのものであったことを確認すると、「……見事な最期だ」とだけ、短く呟いたそうだ。

 どうやら、ルスカーさんは、豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)と相打ちになった、勇敢な騎士として処理されるらしい。

 

 わたしは、湯船の中で、そっと左腕に触れた。

 神官が祈りをしただけで、折れていたはずの左腕はきれいに治っていた。

 痛みも違和感もまったくない。

 

 わたしは、湯船から上がり、用意されていた柔らかなバスローブに身を包む。

 鏡に映るのは、まだあどけない、六歳の少女の顔。

 うん、相変わらずわたしは天使のようにかわいい。

 

 はぁー、よかった。

 全部、丸く収まってくれて……。

 そう、わたしは安堵して、鏡に向かって、ニッと笑ってみせるのだった。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

【大天使】やっぱアリス様しか勝たん!【降臨】

 

301 名無しのダイバー

うわぁあああああああ!! 最後の見たか!? アリス様、完全に目がイッてたぞ!

 

302 名無しのダイバー

「ぜんぶ、皆殺しにしてあげる(天使の笑顔)」

こわいこわいこわい! あんな脅迫ある!?

 

303 名無しのダイバー

セーラさん、完全に壊れちゃったじゃねえか…… ガクガク頷くことしかできてねえ……

 

304 名無しのダイバー

いや、どう見てもルスカーさん殺したのアリス様じゃん……

それ正当化するのは無理がある……

 

305 名無しのダイバー

アリス様のあのマウントポジション、手際が良すぎ!

絶対素人じゃねえ!

 

306 名無しのダイバー

うわぁ……ドン引きだわ……

 

307 名無しのダイバー

今まで天使だって信じてたのに……

ただのサイコパスな幼女だった……

 

308 名無しのダイバー

鬱だ

もうなんにも信じられねぇ

 

307 名無しのダイバー

↑ なんにもわかってねえな!! アホか!

 

308 名無しのダイバー

>>307

は? どこをどう擁護すんだよ、今の

 

309 名無しのダイバー

>>308

全部だよ!

アリス様は、デスゲームに参加させられている他のプレイヤーを救うための【救世主】なんだぞ!

一億人以上の命を背負ってんだ!

 

310 名無しのダイバー

>>309

それとこれとは関係ないだろ! 仲間を殺してレベル上げとか、ただの人格破綻者じゃん!

 

311 名無しのダイバー

>>310

だから、違うんだって!

よく考えろ!

セーラは「禁忌だ」「魔王だ」ってアリス様を責め立てただろ!

もし、あのままセーラが屋敷に帰って、伯爵にチクったらどうなってた!?

 

312 名無しのダイバー

>>311

そりゃ……アリス様が教会に引き渡されて、異端審問とか……?

 

313 名無しのダイバー

そうだよ!

そうなったら、人類の希望のアリス様が、ここで終わってたんだぞ!

アリス様は、このデスゲームをクリアするために、あえて悪者になったんだ!

 

314 名無しのダイバー

うおおおお!

そういうことか! アリス様……!

 

315 名無しのダイバー

そういうことだったのか!?

 

315 名無しのダイバー

自分から嫌な役を引き受けるとか、聖女のようなお方だ……

 

315 名無しのダイバー

だから、脅迫してでもセーラを従えるしかなかったまか……

 

316 名無しのダイバー

アリス様視点、セーラを殺すことだってできたのに、それをしなかったのは、心の中では葛藤しているからなんだろうな

 

317 名無しのダイバー

ルスカーさん殺した後の、あの恍惚とした笑いも……

きっと、本当は悲しいのに、無理して笑ってたんだよ……!

人の魂を奪う「大罪」の重みに、心が壊れそうになるのを、必死で誤魔化してたんだ……!

 

319 名無しのダイバー

>>318

やめろ……泣けてくるだろ……

アリス様、どれだけ重いものを背負ってるんだ……

 

320 名無しのダイバー

決めたよ

俺はアリス様を一生推し続ける

 

321 名無しのダイバー

かわいそうすぎるだろ! 俺はアリス様を信じるぞ!

あの方は、人類を救うために、自ら魔王に堕ちる覚悟を決めた、本物の聖女だ!

 

322 名無しのダイバー

そうだ!

アリス様こそ大天使!

 

323 名無しのダイバー

あの血まみれ「えへへ」は、正直、ちょっと…… いや、かなり…… かわいかった(小声)

 

324 名無しのダイバー

>>323

わかる

あのマウント取って脅迫してる時の顔、最高にゾクゾクした

 

325 名無しのダイバー

>>324

お前らwww

でも、ちょっとわかる

俺もアリス様に殺されたい

 

326 名無しのダイバー

アリス様の悪役ルート、開幕か……

胸が熱くなるな

俺は、最後までアリス様についていくぜ!

 

327 名無しのダイバー

がんばれアリス様! 負けるなアリス様!

人類の未来は、あんたにかかってんだからな!

 

まとめサイト【グノーシス速報】より引用

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、なに笑っているんだよ、わたし。

 

 

 

 なにが、丸く収まってよかったー、だよ。

 

 ――大事なことを忘れている。

 

 うん、このとっても大事なことに比べたら、ルスカーさんが死んだこともセーラがわたしに反抗的な態度をして脅さざるを得なかったことも、両親にバレないようセーラと協力したことも、結果的に両親にバレずに済んでよかったなー、ってことも、ルスカーさんが死んだことで屋敷中が大慌てなことも、豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)というイレギュラーな存在により、両親は今以上にひどく神経質になるんだろうなってことも全部全部全部全部全部全部全部全部――うん、些事に過ぎない。

 

「あーあ、わたし気がついちゃったなー」

 

 え?

 なにをって?

 まだわからないの?

 

 豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)よりもルスカーさんを殺したときのほうがレベルがたくさんあがった件について。

 

 ほら、思い出してみてよ。

 豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)を倒してあがってレベルはたったの一つだけ。

 それに比べて、ルスカーさんを殺してあがったレベルは、なんと8つ。

 

 豚鬼将軍(オーク・ジェネラル)が推定39レベル。

 ルスカーさんは自称35レベル。

 

 うん、どう考えたっておかしい。

 普通の王道のRPGなら、よりレベルを高いモンスターを倒したとき、より多く経験値を貰えるよう比例するはずだ。

 なのに、レベルの低いルスカーさんのほうが、経験値を多く獲得できるなんて――。それも、8つもレベルが上がるなんてさ。

 流石に、おかしい。

 

 ここから得られる結論。

 それって――

 

 

 

 

 

 

 

 

「もらえる経験値、人>魔物(魔物より人のほう)が多いのでは?」

 

 

 

 

 うん、それしか考えられない。

 

 

 

 

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