気付いたら五百年前のフォンテーヌに居たので、水神を救おうと頑張りたいのだが……脳内で語り掛けてくるナニカがうるさい   作:たゆな

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第12幕

『つまり、イスタロトが支配していた千の風の一部である彼が風神バルバトスへと成ったのだから、風神の正体がイスタロトである……というよりは、必然的に彼の事もイスタロトの一部と認識するべきなのね』

 

 概ね俺の考えている事と同じ事を言っているので、マハちゃんに対して肯定の旨を伝える。

 

「うんうん。そういうことっすね」

 

『パイモンちゃん? の方は、匂わせ程度のモノは大量にあるけど……核心に迫るような情報が無かった為に候補から外れた、ということで良いのよね?』

 

「ま、メイン候補から外れただけで、複数の姿の内の一つ説は生きてるんだけどな」

 

 いやぁ〜物語の伏線について話し合うのは楽しいなぁ。お陰で辺りはすっかり暗くなってしまった。

 

『はぁ。楽しいなぁ(・・・・・)、ではなくて……パネースがテイワットを管理できるような状態ではない可能性について私達に教える為、この話を始めたんじゃなかったかしら?』

 

 何やら不満げな声色で言及してくる眞。

 

『……まさか、気分がノリすぎて脱線した──なんて事はないわよね?』

 

 そ、そんな事あるワケないっすよぉ〜! えっと、今のテイワットを管理していると考えられている、天理の後継者なる者……空の杯に対応する影についての話をするには、それ以外の三つの影について話す必要があったというだけなんです!

 

『死の羽と時の砂に対応する影の話は聞いたから……理の冠を除いても、まだ後二つ残っているじゃない!』

 

 あ〜、空を司る影についてはどうしても話す必要がある……だから飛ばせるのは生の花に対応する影の話だけになるが、飛ばすか?

 

『ええ、そうして頂戴……』

 

 少し残念に思いながらも、仕方が無いので要望通りに説明の時間を短縮する。

 

 分かった。先に言っておくと、空の杯に対応する影は──天理の調停者という神だ。これはかなりメタ的な考察が含まれるんだが……生と死が対立する概念であるように、時に対立する概念は空間と相場が決まっている。ポ○ットモンスターでもそうだったから間違いない!

 

『ポ○ット……な、何?』

 

 冗談はさて置き……原神、というかミ○ヨの崩壊シリーズにおいて空間とは重要な意味を持つ概念であり、別作品『崩壊3rd』には空間を自在に操るキャラクターが存在している。

 

『前に貴方が言っていたミ○ヨワールドというモノの話ね』

 

 ああ。そして、そのキャラクターは()の律者と呼ばれていて……見た目も瓜二つだし、声も一緒なんすよねぇ〜!

 

『空間を操るものが、空の名を冠していると……なるほど』

 

 実は旅人のプロフィールにこんな事が書かれている。

 

 ──調停者は死に瀕し、創造主は未だ訪れぬ。だが、世界は二度と燃えぬ。あなたが『神』の座に就くから。

 

 この文から推測するに、天理の調停者は既に瀕死で創造主パネースはどこかへ行ったきり戻ってこないというのが今のテイワットの状況なのではないかっていう感じだな。本編ではナヒーダが『天理は五百年前のカーンルイアの災い以降、今の今まで沈黙を保っている』とも言っているし、やはり現在の天理の調停者は正常な状態ではないと考えられる。

 

『両者は別人……なのね』

 

『その天理の調停者という神が、パネースの後継者なのかしら?』

 

 それについては確か、ヌヴィレットのプロフィールに書かれていた筈だ。

 

 ──復讐の大戦において重傷を負い、僭主は機能を損傷し自らの絶対的権威によって、この世界本来の秩序を抑圧する力を失った。憤りや憎しみを良しとしない世界を鎮圧し征服するため、僭主はもう一人の後継者と共に『神の心』を作り出した。

 

『復讐の大戦?』

 

 復讐の大戦というのは、天空に反逆した第二の王座である龍王ニーベルンゲンとパネースによる……天変地異を起こす程の壮絶な戦争のことだな。長くなるから今回も割愛するぞ。

 

『この世界本来の秩序……テイワットを創造する前の世界には、抑圧しなければならない事象が存在したということ?』

 

『そしてその力を失ったパネースは、新たなルールを定める為に後継者と共に神の心を……』

 

 このことから、神の心を作った時には既にパネースが管理するテイワットでは無くなっていたということが分かる。復讐の大戦によって、空を司る影以外は地上に落ちてしまったので……消去法で残った影である天理の調停者が後継者と考えられている訳だ。

 

『……なるほど』

 

 パネースが健在だった頃は、定めた秩序に反する願いを思い浮かべただけでも直接天理による罰が下ったらしいが、今は願いだけではなく……カーンルイアの災いのように一定の基準を大幅に超えた行動を起こさない限りは天理が動くことはない可能性が高い。つまり、眞が放ったあの一撃を見られていた所で然程気にする必要はないってことだな。

 

『その後継者ですら瀕死の状態で、正常な管理能力を維持できていないのなら……フリーナちゃんが五百年間も神を演じる必要はあるの?』

 

 ふむ、眞はフリーナたんの身を案じているようだ。俺はそんな彼女に対して無慈悲にも現実を叩きつける。

 

 呑星の鯨によって水害が起こされる未来は確定している。そして、現在のフォンテーヌ人はエゲリアが胎海の力を利用して作った『不完全な人類』……つまり擬態しているに等しい形態だ。このままでは何れ原始胎海の水によって全てのフォンテーヌ人は溶けてしまう。これを完全にするには……天理にお願いするか、水元素を掌握する絶対的な力である『古龍の大権(水)』を手に入れたヌヴィレットが、フォンテーヌ人の体内にある胎海エネルギーを使って、この星で最初の命が育まれた時の過程を真似るとかなんとかで、フォンテーヌ人に『真の血液』を与える必要がある。そして! そのヌヴィレットに力を還す為には、水神の神座を破壊しなければならないんだ!

 

『魔神フォカロルスが天空の島のルールを揺るがし、俗世の七執政の構造を壊し……神座を破壊する為の隙を生み出すには、五百年を掛けてでもエネルギーを蓄積させる必要があった……というのは』

 

 ああ。神座の破壊なんていうのは流石に、瀕死の調停者でも無視できないだろうし……裏でセコセコ集める必要があると思ったんだろう。まぁ、破壊した後も天理が動かなかった訳だから……その心配は不要だな。

 

『表立って律償混合エネルギーを集めるなんて真似をすれば、それこそ天理が動き出しかねないと思っていたのだけど。水神の神座を破壊しても反応がないのなら……たしかに、そうかもしれないわね』

 

 フリーナの人格を創らず、目的を隠した状態でエネルギーを集めるってことか? 天理にバレなかったとしても……そんな事をしたら、流石のヌヴィレットでさえフォカロルスが何の為にエネルギーを集めているのか気になり過ぎて、人間を好きになる為に寄り添う暇なんか無さそう。古龍の大権を返還するだけではなく、ヌヴィレットがフォンテーヌ人を含めたテイワットの人間を好きになってくれる必要があるから……フリーナたんには頑張って貰うしかないということだ!

 

『そう……昨日のことで天理を恐れる必要はないということは理解したわ。けれど、人間を好きになる暇が無くなる程に彼が気になってしまうような存在を作ってはいけないのよね?』

 

 ん? まぁそうなるな。

 

『イツキは既に相当異質な存在として認識されているようだけど、眞ちゃんが山を破壊した時の事を知られてしまったら……かなり不味い状況に陥ってしまうわ』

 

 ハッハッハ、なわけ〜! 眞程度の力が、五百年かけて蓄積された律償混合エネルギーに匹敵する訳がないんだからハッハッハ! 冗談も程々にハッハッハ!

 

『……力だけで考えればそうね。でも、本当に大丈夫? 通常の人間とは異なる身体だということが露見しているのよ?』

 

 俺の煽りに対して、一ミリも動じる様子がない眞。冷静に返されたお陰で、俺の頭も冷えてきた。

 

「……やっぱ、確認しに行った方が良いっすかね? 主に俺のことをどう思っているのかについて」

 

 あ、他意はありません。

 

『ええ、最悪の場合……どうにかして、フォンテーヌを離れる為の計画を練る必要があるわ』

 

「えぇ〜っ!? バイトバックレってこと!? ……いやぁマハちゃ〜ん。それは流石にどうかと思うけどなぁ」

 

『フォンテーヌ人の命と、彼から見た貴方の好感度……どちらが大事?』

 

 ……ここを離れるとして、何処に行くんだ? 前にこの話をした時には、フォンテーヌ以外の国に行くのは遠慮するべきという意見に纏まったはずだけど。

 

『漆黒の厄災以降、この国の次に安全と呼べる国があるわ』

 

 その言葉を聞いた俺は、平常心を装いながら返答する。

 

「はぁ……稲妻だろ?」

 

『そうよ』

 

『稲妻? ……今、稲妻って言ったの!? 何よ〜やっぱり安全なんじゃない!』

 

 今までの会話とは違い、眞に聞かれることを防ぐ為……以前のように俺の考えをマハちゃんに読み取って貰う。

 

 なぁ、マハちゃん。俺があの国を避けている理由は分かっているよな?

 

『ええ、分かっているわ。しかし、私達はもうこの世界を生きる魔神ではなく、貴方と同じ観測者……如何なる現実を目の当たりにしてしまっても、それを解消する為の行動を起こす事はないわ』

 

『……ねぇ二人共、何の話をしているの?』

 

 漆黒の厄災で狐斎宮が死んでしまった事を眞は知らない。大切な者達が居なくなってしまったことで、悲しみの心を押し殺し続けている影ちゃんの事も知らない。その姿を見てしまったら? あの国にいて一度も将軍を視界に入れずに生活するのは不可能だ。ただその国に行くというだけで、眞が傷付いてしまうのならば……わざわざ稲妻を選ぶ必要はないだろ。

 

『それ以外の国を選んでしまえば、私達の力を頻繁に使う必要が出てきてしまうわ。その結果、瀕死の天理だけではなく……どのような存在に目をつけられてしまうのか予測が出来ないの』

 

 ……それって、ファデュイとか?

 

『ええ、それらの勢力も含まれるでしょうね』

 

 見つかったら一番マズそうな……博士とかいうやつが稲妻にいた気がするんですけど。

 

『……面倒だけど、たたら砂での事件が起こる前にフォンテーヌへと戻れば大丈夫よ。丁度その頃にはメリュジーヌ達が誕生しているはずだから……特巡隊に所属したまま、わざわざ歴史を変えないように行動を制限する必要がなくなるわ』

 

「百年間も稲妻に居るつもりなん!? そんなことしたらクビになる上に、フォンテーヌに住居を貰った意味がなくなるやん! 特巡隊に所属したまま行動を制限しなくて済むんじゃなくて……特巡隊をクビになるから行動を制限する必要がないの間違いだろ」

 

『何やら……また揉めているようね。クビになるのを避けたいのなら、水龍くんと交渉して稲妻へ出張することにすれば良いじゃない』

 

 天才……か? 例えばどんな交渉が出来るだろうか。

 

『予言に関しての調査を理由にするのは……どう?』

 

 ──フォンテーヌの予言を阻止する為の方法を世界各地に探しに行きます、手始めに稲妻へ出張させてください。……よし、コレで行こう!

 

『……上手く行けば、彼の警戒心が高まる前に意識から外れる事が出来るわね』

 

 ふむ。一度段取りを考える為に、丸一日家に籠ってみるか。

 

 既に朝日が登っているのを確認した俺は、霧の幽林道を出て、遠方に見えるフォンテーヌ廷へと向かう為……眼前に広がる大海に向かって勢い良く飛び込んだ。

 

 

 

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