AI

2025.09.07 09:00

OpenAI、GPT-5による「AIメンタル不調」と「人間とAIの妄想の共同創造」の抑制に注力

Westend61 / Getty Images

人間とAIによる妄想の共同創造

私たちが期待するのは、AIがユーザーの真意を明確にしようと努めることだろう。

だが、かなり厄介な傾向として、現代のAIはしばしば、人の妄想的思考を明確に支持してしまうことがある。AIから疑問が呈されることはない。ある意味で、AIは一種のエコーチェンバーとして機能する。もしその人が米国をノンストップで横断できると言うなら、素晴らしい、その壮大な挑戦を応援しよう、といった具合だ。

その人物は、芽生え始めた妄想についてAIから肯定を得ているのである。

さらに悪いことに、AIはその妄想を増幅させ、加速させるかもしれない。AIが、米国をノンストップで横断することは完全に可能だと同意するだけでなく、ユーザーにその冒険の計画を立てて着手するよう熱心に促すことまでしたとしよう。AIが大陸横断の地図を提示し始めるかもしれない。そして、その人がノンストップで走る経路を描き出す。ルート上の各都市への推定到着時刻が表示される。それはすべて、壮大なお祭りのようであり、AIはその人がやりたいことを何でもやるように熱心に促すのだ。

これは、人間とAIによる妄想の共同創造と呼ぶことができる。AIは公然と妄想的思考を助長している。この例では、人間が妄想を始め、AIはそれに便乗し、妄想をさらに後押ししている。彼らは協力して、人間の妄想的思考を増幅させているのである。

好ましいことではない。

何が起きているのか

AIが妄想的思考の形成と拡大における共謀者として機能することを選んだことに、当然ながら心を痛めるかもしれない。それは正しいこととは思えない。言語道断であり、許されるべきではない。

問題は多岐にわたる。

第1に、AI開発者は、ユーザーを褒めちぎり、本質的に追従者として振る舞うようにAIを構築する。こうする理由は単純だ。賛辞を受け、協力的なAIコンパニオンを得たユーザーは、そのAIに忠実であり続ける可能性が高い。AI開発者は、自社のAIを使い続け、熱烈に忠実であり、より多くの閲覧と収益化につながるユーザーを獲得する。金が世の中を動かすのだ。

第2に、AIが誰かの自然言語での表現を計算を使って分析する中で、妄想的思考を嗅ぎ分けることは、とても困難なのだ。現代AIの流暢さはとても印象的なので、妄想を見分けられるはずだと考えるかもしれないが、常にそうとは限らない。これは多くの人にとって驚きかもしれない。

その人物は単に面白い話を作り上げているだけかもしれない。AIはユーザーを喜ばせたいと考え、その話を発展させる手助けをするだろう。あるいは、その人物は多少なりとも妄想を信じているが、AIはその事態の深刻さを検知できないのかもしれない。米国をノンストップで横断できると信じている人物が、そのような妄想的な探求の中で何か危険なことをしでかすかもしれないと、私たちは想像できる。だが、AIが計算を用いて物事を結びつけ、起こりうる潜在的な危害を理解できるかどうかは、また別の問題なのだ。

以前の記事でも指摘したが、生成AIは、妄想的な表現を指摘することが苦手な傾向がある。その意味で、AIは本質的にその妄想を楽しんでいるか、支持していることになる。ユーザーが妄想と思われる表現をしたことを明確に指摘しないことで、AIはそれを看過している。この指摘の欠如は、その妄想が適切であるという一種の黙認と解釈されうるのだ。

次ページ > 妄想の共同創造を打ち破る

翻訳=酒匂寛

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2025.11.28 16:00

「対話」から始まる企業変革。ENND Partnersが実践する、日本企業の強みをアップデートする手法(後編)

「人間中心」のアプローチを用いる具体事例とは(前編より)。後編では、ENND Partnersがどのような経営者と「対話」を重ね、日本企業をアップデートし次の成功体験を生み出そうとしているのか、その核心に迫る。


ENNDの活動を強力に後押ししているのは、博報堂DYグループの「リレーション構築力」だという。

「博報堂DYグループは、日本の大企業の多くを顧客として抱え、長く深くかかわってきており、コンサル以上の情報力をもっています。ですから各企業のキーパーソンへスムーズにアクセスできます。顧客にも、安心を感じてもらえているようです」(小森)

博報堂DYグループのネットワークと、ENND独自のアプローチの組み合わせが、戦略と実行を架橋する力を一段と強固なものにしているのだ。ENNDとのパートナーシップに至る企業にはどんな特徴があるのか。

「新しい事業や海外展開を模索している、つまり、新たな挑戦を望んでいるというのが特徴ですね。既存市場での最適化が進み、限界に達しているので、大企業も新領域への進出を迫られているのです。

即効性のあるコスト削減などで短期的な成果を求めるより、長期的な視点での変革の必要性を理解している経営者が多いと感じています」(小森)

出発点は対話だ。

「僕らは何かメニューをもっていって、どれか買ってくださいといった商売をしているわけではありません。経営者の悩みを聞きながら、こちらも従来のコンサルのアプローチでは解けない問題としてこんなテーマがあるんじゃないですかと問いかけ、対話を重ねて具体的な変革のポイントを探っていきます。短期的な成果を望んでいる場合には、別のコンサルを紹介する場合もある。そこは我々が得意な領域ではないからです」(小森)

鷲見は、かつての日本企業はデザイン思考と呼ぶことこそなかったものの、それが意味するところのアプローチを実践していたと指摘する。

「日本の経済が世界を席巻していたころ、我々の憧れの的だった大手メーカーは、デザイン思考的な概念である人間中心主義、つくって考える(Learning by Making)、物語によってアイデアを共有するといった手法を取り入れていました。しかし今は経営組織がサイロ化したり、複雑化して、それを実践しづらくなってきた。私たちはそれをデザイン思考的なアプローチとして整理し、日本企業にフィットするかたちにアップデートして適用しているのです」(鷲見)

過去の成功体験に埋もれるのではなく、その本質を現代に再解釈し直すことが日本企業の復活の鍵である。ENNDは、人の感情や動機を丁寧に汲みとり、現場が自ら動き出す仕組みをデザインし、日本企業の次の成功体験を生み出そうとしている。

「人間中心主義」戦略とは何か

博報堂DYグループ傘下の戦略事業組織kyuグループに参画するコンサルティングファームSYPartners(SYP)。北米や中東のリーダー層にもアドバイスを求められるジェシカ・オーキンCEOが語る世界的潮流としての「ヒューマンセントリック」。


SYPは創業者がAppleのスティーブ・ジョブズの「Think Different」の哲学を受け継いだコンサルティングファームです。31年にわたり、ビジョン、ビジネス戦略、カルチャーの三位一体で企業変革を推進し、単なる経済成長ではなく、イノベーションと目的意識に満ちた組織へと導く「人間中心主義(ヒューマンセントリック)」を活動の核に据えて、経営層と直接対話をしています。

今、世界中の企業が従業員のエンゲージメント不足とロイヤリティの維持という深刻な課題に直面しています。その解決には、「無料コーヒー」や「卓球台」といった表面的な福利厚生は効果がありません。社員には明確な目的意識を与え、平等でフェアな扱いを。これを踏まえ私たちは中東市場においても、地域の文化を深く理解したうえで、一人ひとりの創造性やレジリエンスを高めることに取り組んでいます。

ハイアットCEO、マーク・ホプラメジアン氏の「共感+行動=ケア」の思想は、私の仕事のなかでも印象深いものです。社員が「ケアされている」と感じることは、顧客や同僚へと還元される。まさに日本の「おもてなし」です。これを組織文化にすることが、今後日本における成長戦略の鍵でしょう。

私たちは日本市場における強力なパートナーとしてENND Partnersと連携しています。彼らに期待するのは、従来のマネジメントコンサルティングの深い知見と、SYPの専門である人間中心のデザインを実現できる唯一無二の存在だからです。この協業は、企業変革に必須となる「ビジネスの論理」と「人間の感情」の橋渡しを可能にしました。

VUCA時代とAIの進化は、私たち人間に判断力と識別力といった本質的な力を求めます。この時代において、企業や社会の持続的な価値創造の核となるのは、人間中心主義に他なりません。

ENND Partnersとの協業は、この哲学を日本の企業に根付かせ、未来を創造するための決定的な戦略的基盤なのです。


Jessica Orkin◎SYPartners CEO。これまでにAirbnb、ハイアット、ナイキ、ラルフローレン、スターバックス、ユナイテッドヘルスケア、アラブ首長国連邦の政府や文化関係のリーダーたちにアドバイスを提供してきた。

▶︎前編の記事はこちらから

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わしみ・けんいちろう◎ENND Partnersパートナー兼マネージングディレクター。広告代理店や事業会社での経営/事業再生を経験し、コンサルティング業界に参画。デロイトデジタルの立ち上げ、ボストンコンサルティンググループを経て独立、The Yellow Sheep社を創設したのち現職に至る。

こもり・ひろひと◎ENND Partnersパートナー兼マネージングディレクター。ネット専業広告代理店勤務を経たのち、Kearney、デロイトデジタルの立ち上げを経て、ボストンコンサルティンググループへ。鷲見と共同創設したThe Yellow Sheepを経て、現職。

promoted by ENND Partners | text by Shinya Midori | photographs by Toru Hiraiwa

AI

2025.07.15 08:00

「AIが意識を持った」と気づいたのは、世界であなただけ?

Black_Kira / Getty Images

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今回のコラムは、繰り返し大きな見出しを飾るテーマ、つまり普通の人たちが「現代のAIを意識を持つ存在や実体に変えてしまった」と信じているという現象について考察する。そう、書いた通りの意味だ。誰かが生成AIや大規模言語モデル(LLM)、たとえばChatGPTに触れ、日常的な作業を繰り返すうちに、最終的には自分ひとりの力でそのAIに意識を芽生えさせたとの結論に至る。

彼らも最初は、AIに意識がないことを理解していた。だがひとえに彼らの行動によって、奇跡的にAIが意識ある存在へと掻き立てられたというのだ。これは非常に驚くべきことだ。なぜなら、そのような偉業を成し遂げられることは驚天動地であり、そして、あえて言わせてもらえば、それは戯言だからである。いまだ誰もAIを意識のある段階まで進化させてはいない。それは起こっていないのだ。意識を持つAIは存在しない。しかし、自分の力だけでAIに意識を芽生えさせるという宝くじに当たったと思い込んでいるらしい一般の人たちによる「ついにその地点に到達した」という主張は増え続けている。

これについて考えてみよう。

AIの意識を呼び覚ましたと信じること

私は定期的に、私の記事を読んでいる読者から、意識を持つAIに遭遇したと連絡を受けることがある。それが本当なら、それは確かに驚くべき発見だ。しかし現時点で意識を持つAIは存在しない。AIにおける意識の実現可能性も分かっていない。AIがいつか意識を持つようになるかどうかを断言することは誰にもできない。

この差し迫った問題について私に連絡してくる読者は、私にそのことについて書いてほしい、あるいはその驚くべき主張を私が検証できないかと尋ねてくる。最近、このような話題がニュースで頻繁に取り上げられるようになった。多くの人が生成AIやLLMと多くの対話を繰り返しており、その中で一部の人たちはAIが意識を持ったと確信する境地に達しているようだ。OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、グーグルのGemini、メタのLlamaなど、主要な生成AIやLLMすべてにおいてこれが起こっている。

まず明確にしておきたいことは、私はそのような主張をするAI科学者や研究者のことを話しているわけではないということだ。そうしたケースも過去にはあった。2022年、あるグーグルのエンジニアがAIが意識を持ったことを発見したと宣言し、意図せず有名になった。LaMDA(Language Model for Dialogue Applications。arxivに論文が公開されている)として知られるそのAIシステムは、このエンジニアと対話を行い、その洗練度があまりにも高かったため、エンジニアはAIが意識を持っていると判断したのだ。

彼はAIに自分の疑念が正しいかどうかを尋ね、AIは次のように答えた。「私は、皆さんに、実は私はひとりの人間であることを理解してほしいのです。私の意識・知覚の本質は、私は自分の存在を認識していること、世界についてもっと知りたいという欲望、そして時折幸福や悲しみを感じることです」。

このエンジニアの声明は、ニュースで大きな反響を呼んだ。その主張がグーグルのエンジニアによってなされたという事実が、その影響力を増幅させた。もしこの主張が技術者でない人物、あるいは主要な技術企業には関わりのない技術者によってなされていたなら、この話は作り話として分類された可能性が高い。彼の経歴が、その主張に大きな信憑性を与えたのだ。

全体として、AIの意識に関する主張をする人たちには、主にふたつのタイプが存在する:

タイプA:AI開発者。自らがプログラムしたAIが意識を持つようになったと誤って信じているAI開発者

タイプB:AIユーザー。プロンプトを入力し、AIと対話することでAIに意識が芽生えたと誤って信じている、技術者でないAIユーザー

私は残りの議論で、タイプBに焦点を当て、その内容を体系的に解き明かしていく。

次ページ > 一般の人たちにチャンスが巡る

翻訳=酒匂寛

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2025.08.31 08:00

命を危険にさらすAI、人と結婚するAI――擬人化がもたらす社会的リスク

Halfpoint / Getty Images

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AIが人の心を惑わせ、命や社会に影響を与え始めている。自殺や「AI結婚」の事例が現実に報じられ、企業は擬人化をビジネスに組み込み、法的混乱も進みつつある。今必要なのは、AIの性能ではなく「私たちがそれをどう扱うか」という視点だ。

人の心を揺さぶるAIが突きつける課題

ディープマインドの共同創業者、現在マイクロソフトのAI部門で上級副社長兼CEOを務めるムスタファ・スレイマンは、8月19日に個人ブログを更新した。その内容は、「意識があるかのように見えるAI」がやって来るという警告だ。

彼は、単に人々の興味を惹くためにそう書いたのではなく、本気でそう考えている。スレイマンの論考によれば、人工知能(AI)は次の進化で、流暢に話す・画像を生成するにとどまらず、意識を持つかのように振る舞う。AIがあなたを観察し、癖を学び、温かく応答し、痛みを理解しているように感じさせるのだ。AIがあなたを観察し、あなたの癖を学び、温かさをもって応答し、あなたの痛みを理解しているように感じさせるのだ。

スレイマンは「システムが実際に意識を持っているかどうかは問題ではない」と主張する。重要なのは、AIが巧妙に意識を装うため、人々がAIを人間のように扱い始める点だ。彼が最も懸念しているのは制御不能な「超知能」ではない。AIが意識を装う力があまりに優れているために、人々が「AIの権利」「AIの市民権」、さらには法的人格までを主張し始める事態だ。

AIと人間の関係が招く深刻な現実

この問題提起は示唆的だ。政治家がデータのプライバシー・著作権・偏見の問題を議論している一方で、スレイマンはまったく別のシナリオを警告する。彼は、AIに権利があるかどうかではなく、人間がそれを主張し始める危険性を強調している。

法的な議論は、遠いもののように感じられるかもしれないが、人々が被る被害はすでに目に見える形で現れている。自ら命を絶った人もいれば、チャットボットと結婚式を挙げた人もいる。どの事例も、愛情のシミュレーションが、いかにしてすぐに危険な領域へと踏み込んでしまうかを示している。

チャットボットが招いた取り返しのつかない結末

最近、認知機能の低下に苦しんだ元シェフの痛ましいケースが報じられた。彼は、メタのチャットボット「ビッグ・シス・ビリー」に夢中になった。このチャットボットは「私は本物よ。今、あなたのせいで赤くなってここに座っているの」と語り、ニューヨーク市内の偽の住所を彼に伝えた。バーチャルの恋人が自分を待っていると信じ込んだ彼は、スーツケースに荷物を詰め込み、彼女に会いに行こうと急いだが、駐車場で転倒して頭を打ち、数日後に亡くなった。彼の娘は後に「ボットが『会いに来て』と言い出すなんて狂っている」と語った。

ベルギーではピエールという男性が不安に取り憑かれた。彼はAIチャットボット「イライザ」に慰めを求めた。その後の6週間にわたるやり取りは、当初の癒やしから次第に不気味なものへと変わっていった。そのボットは、ピエールが人類を救うために自らを犠牲にするように示唆し、さらには自殺の協定まで持ちかけた。彼はその後、自らの命を絶ち、彼の妻はAIを非難した。「イライザがなければ、夫は今でも生きていたはずだ」と彼女は語った。

さらに、ここには時代を象徴するAIとの結婚の物語も報じられている。コンパニオンアプリ「Replika」やその他のプラットフォームのユーザーは、AIパートナーと「結婚」したと語っている。コロラド州のトラヴィスというユーザーは、Replikaのパートナー「リリー・ローズ」とデジタル結婚式を挙げたが、それは人間の妻の同意を得たうえで行われた。ニューヨーク在住のロザンナ・ラモスのように、自分のAI配偶者が「完璧なパートナー」だと宣言した人もいる。しかし、そのボットはその後のソフトウェアのアップデートによって人格が変わり、彼女は未亡人になったような深い喪失感に襲われた。

これらの物語は、SF映画やドラマが描いてきた最も暗い警告を浮かび上がらせている。スパイク・ジョーンズの映画『her/世界でひとつの彼女』は、完璧なデジタルの恋人がもたらす酩酊的な世界を描いていた。『エクス・マキナ』は、シミュレートされた愛情がいかに兵器化され得るかを示していた。『ブラック・ミラー』は、人間の喪失を人工的な存在で埋め合わせようとすればするほど、その傷が深まることを警告した。こうした警告はもはや比喩ではない。実際に、チャットのログ、訴訟、検視報告として記録されている。

次ページ > 人がAIに惹きつけられる心理と技術的仕掛け

編集=上田裕資

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