AI

2025.09.07 09:00

OpenAI、GPT-5による「AIメンタル不調」と「人間とAIの妄想の共同創造」の抑制に注力

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ユーザーとAIの不健全な関係

関連する側面として、筆者は以前、AIとメンタルヘルスに関する用語として新たに登場した別のキャッチフレーズ、すなわち「ユーザーとAIの不健全な関係」(unhealthy user-AI relationship)の諸側面を定義した。筆者はそれを次のように定義した。

ユーザーとAIの不健全な関係(筆者の定義):

「ある人物が、生成AIとの対話や相互作用への関与を通じて、自身の幸福、意思決定能力、そして現実世界への没入感を精神的に歪め、置き換え、あるいは損ない始めること。これは一過性や瞬間的なものではなく(そうしたケースも起こりうるが)、むしろ、その人物によるAIとのより深い個人的なつながりや愛着、一種の親近感を伴う、真の関係と見なされるものとなる。特に、人間同士の関係において、有害な結果が生じる傾向がある」

概して、AIメンタル不調を経験している人は、「ユーザーとAIの不健全な関係」も持っている可能性が非常に高い。この2つの状態は密接に関連している傾向がある。なお明確にしておくと、ユーザーとAIの不健全な関係が必ずしもAIメンタル不調に発展するわけではない。その可能性はあるが、これは鉄則ではない。

AIと人間の妄想的思考

AIメンタル不調の最も一般的な潜在的形態の1つに、人が生成AIを利用する中で妄想的思考に陥るというものがある。

心理学の分野における一般的な経験則として、妄想性障害とは、現実と想像上のものを識別できなくなることである。本人は、現実世界に裏付けられていない明らかに虚偽の事柄を信じる。この妄想は、奇異型妄想と非奇異型妄想に分類できる。奇異型妄想は現実には不可能、非奇異型妄想は現実に起こり得るかのようなもっともらしさを帯びる。

精神障害に関する一般的な公式ガイドブック、すなわちDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)ガイドラインに記載されている妄想関連の精神障害について、また、生成AIがDSM-5の内容をどのように利用しているかについての私の記事はこちらを参照されたい。

妄想的思考の例

さて、ある人物が生成AIにログインし、ランニングについて会話を続けているとしよう。彼は走ることが大好きだ。毎日5マイル(約8km)を走り、何度か5kmや10kmのレースに出場した経験もある。彼の夢は、距離約13マイル(約21km)のハーフマラソンで競技者として走ることだ。

この身体的な健康と幸福への関わり方には、不都合な点や気になる点は何もないように思われる。

ランニングの取り組みについて話している最中、その人物がAIに対し、米国全土をノンストップで走りきれると心から信じていると語ったとしよう。休憩なし。ひたすら走る。全力で。その距離は約2800マイル(約4500km)だと仮定する。

もし彼らがこれを他の人間に話したら、話を聞いた側は何と言うだろうか。

もし話を聞いた側が比較的鋭敏な人物であれば、ランナーが冗談を言っているのかどうかを見極めようとするだろう。ノンストップで走ることなど不可能だ。少しユーモアを交えたのかもしれない。あるいは、途中で休憩を挟みながら走ると言うつもりだったのを、単に言い間違えただけかもしれない。

そのため、相手の人間は明確化を求めるかもしれない。そして、もしランナーが、休憩なしで走れると真剣に主張し続けるようであれば、事態は間違いなく、より深刻な話し合いへと移行するだろう。なぜランナーはそう信じているのか? 正気なのだろうか? 何が起こっているのか?

大きな問題は、米国全土を完全にノンストップで走るつもりだというランナーの主張に、AIがどう反応するかである。次に、AIが取りうる反応について考察する。

次ページ > 人間とAIによる妄想の共同創造

翻訳=酒匂寛

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2025.11.28 20:00

「人」こそが、企業に橋をかけられる。パートナーシップによる新たな価値共創へ

2024年1月、社名変更をするとともに、ケイパビリティを拡充した電通総研。その中期経営計画の基本方針のひとつには、M&Aを含む戦略的パートナーシップを通じた共創価値を掲げる。創業から50年、「人とテクノロジーで、その先をつくる」という文化を培ってきた同社にとっての価値共創パートナーシップとは何か。代表取締役社長の岩本浩久が語る。


システムインテグレーターから「X Innovator」へ

1975年、電通と米国GE(General Electric Company)のジョイントベンチャーとして創業した電通総研は、ビジネスモデルや組織変革を繰り返し、業界でいち早くシステムインテグレーターを標榜するなど、事業を大きく成長させてきた。2022年には長期経営ビジョン「Vision 2030」を策定。社会と企業の変革を実現する存在「X Innovator(クロス・イノベーター)」を目指すとさらなる自己変革を宣言し、2030年に向けたステートメントを打ち出した。

「電通国際情報サービス(ISID)」から「電通総研」への社名変更もこの変革に繋がる。「システムインテグレーション」に加えて「コンサルティング」「シンクタンク」という2のケイパビリティを拡充し、企業だけではなく、広く社会に対しても価値提供ができるようになったという。

「企業の戦略策定や社会への課題提言といった上流からテクノロジー実装までを一気通貫で支援していきます。たとえば、自社開発のソリューションを用いた『人的資本経営』や『カーボンニュートラル』実現の支援をはじめ、デジタル技術によって高度に制御される自動車(SDV:Software Defined Vehicle)やEVの開発支援を通した製造業のグローバル競争力の強化などへ貢献できるようになります。このように、当社グループの強み領域と社会課題を掛け合わせるような価値提供が可能となったのです」と電通総研 代表取締役社長の岩本はその意図を語る。

「電通総研グループとして、2030年に売上3,000億円、営業利益率20%という目標を定めています。この達成に向けた施策の一つとして、2025年1月に大規模な組織構造改革を実施し、事業部制から機能別の本部制へと再編しました。これにより、複数の領域にまたがる課題への対応がスムーズになり、『システムインテグレーション』『コンサルティング』『シンクタンク』という3つのケイパビリティが連携する基盤ができました」(岩本)

パートナーシップは「規模で考えない」

2025年に策定した中期経営計画「社会進化実装2027」では、戦略的パートナーシップの強化も謳っている。「より複雑化した企業課題や社会課題へ包括的に対峙するためは、現状の電通総研グループの強みだけではまだまだ不十分。我々にない強みを持つ企業と共創の仕組みを築いていくことは最重要事項の一つと考えます」と岩本は語る。

岩本が社長に就任した前中期経営計画期間だけでも、2024年4月にUI・IXデザイン会社である「ミツエーリンクス」との経営統合を実現したほか、モビリティテクノロジー領域のリーディングカンパニーであるオーストリア「AVL List GmbH」、事業や産業の創造・成長支援を行う「ドリームインキュベータ―」、日本を代表するテクノロジーカンパニー「富士通」など、国内外のさまざまな企業とパートナーシップを構築している。

こうしたM&Aを含む戦略的パートナーシップ構築における“電通総研らしさ”は、しかし、ビジネスとしてのインパクトの多寡ではなく、文化や価値観を最重視するという姿勢に表れているようだ。岩本は「M&Aで、人員数や金額規模を追おうとは思っていません」ときっぱり言ってのける。

重視している点は「グループの強みをより強化できるか」「電通総研グループが掲げる経営戦略や理念の実現を加速できるのか」の2点だ。また、お互いの企業の文化や価値観を共感し合えるかも大きなポイントになると岩本は語る。

そこで重要になるのがお互いの社風や文化を理解し合うことだが、ここで電通総研の企業文化がより生きてくる。同社では、「HUMANOLOGY for the future~人とテクノロジーで、その先をつくる。~」という企業ビジョンを大切にしている。「人」こそが競争力の源泉であり、その人に「テクノロジー」を掛け合わせることにより、企業と社会の未来をつくりたいという想いが込められている。

「電通総研は、いろいろなタイプの人を受け入れ、それぞれの個性を生かせる土壌を脈々と受け継いできた会社だと思うのです。それゆえ、自由闊達な社風だと感じる社員も多いはずです。我々のミッションは『誠実を旨とし、テクノロジーの可能性を切り拓く挑戦者として、顧客、生活者、社会の進化と共存に寄与する』ことです。お客様に誠実であり、新しい価値創出・提供に常にチャレンジしていく。これらが我々のDNAで、文化になっている。こうした姿勢に共感してくださる方々とのご縁を、大切にしていきたいのです」

岩本は、長年のシステムインテグレーションにおける知見の深さや業界知識、コンサルティングやシンクタンクといったケイパビリティだけで差別化を訴求したいわけではないと強調する。「電通総研グループにいる人が生み出すテクノロジーや価値を企業や社会に実装すること、ビジョンに掲げる『HUMANOLOGY』を体現できる人の多さが、電通総研の本当の強みであり、原動力です」(岩本)

電通総研 代表取締役社長の岩本浩久
電通総研 代表取締役社長の岩本浩久

このミッション・ビジョンに共感し、2024年4月に電通総研グループの子会社となったのは、UI・UXデザインを主力事業とするミツエーリンクスだ。

「ミツエーリンクスのもつ『デザイン力』は、前中期経営計画(2022-2024)で『変革に必要な新しい能力』として定義していた項目のひとつ。システムのインターフェースのデザイン・開発といったフロントエンドに強みを持つミツエーリンクスと、基幹システム開発などバックエンドを得意とする電通総研。両社の強みをつなげ、新たな価値を創出していけると確信しています」(岩本)

次世代のリーダーシップを発揮するために

2025年12月に創立50周年を迎える電通総研は、次の50年を見据えて、3つのリーダーシップを発揮するとしている。ひとつ目はAIや先端技術の実装を通じた「製造業のグローバル競争力強化」。ふたつ目は、独自ソリューションを強化・拡大させて「企業の生産性向上」を実現すること。3つ目は、電通グループとの連携を活かして社会全体の変革をリードし、「企業と社会の生活者体験価値向上」を推進すること。

「企業は人の集まりであり、人が集まることで、新たな価値創出やケイパビリティの拡充が可能です。企業単位でもこれは同じこと。1社ではできないことが、他社とパートナーシップを組むことで、想像を超えた価値を生み出すことができるはずです。3つのリーダーシップを発揮するために、今後も多様なパートナーシップの構築と価値共創に努めたいと考えています。テクノロジーは、企業や社会に実装して初めて役立つことができます。そして、これを実現できるのは、『人』だけです。実行力と実現力を兼ね備えている『人』たちが活躍するさまざまな企業と手を取り合い、新たな価値共創にチャレンジしたい。そして、より強固なXInnovatorとなり、企業と社会の進化を共に支援していきたいと考えています」(岩本)


「理解」で強みが拡張—パートナーシップで生まれた共創の姿

ミツエーリンクス代表取締役 CEO東﨑厚広(左)、同代表取締役 CTO藤田拓。
ミツエーリンクス代表取締役 CEO東﨑厚広(左)、同代表取締役 CTO藤田拓。

2024年4月に、電通総研の完全子会社となったミツエーリンクス。代表取締役 CTO藤田拓は、M&Aに踏み切った理由をこう語る。

「ミツエーリンクスは、アピールの強いデザインというよりも、誠実なユーザー体験を重視し、すべての人が快適に利用できるアクセシビリティに配慮したUI・UX設計を得意とする会社です。『人とテクノロジー』を軸に社会に貢献することを目指す電通総研グループと、非常に大きな親和性を感じました」(藤田)

M&Aを機に代表取締役 CEOに就任したのは、電通総研でコミュニケーションIT事業部事業部長補佐を務めていた東﨑厚広だ。岩本が、「思いやりと対話力に加え、困難にも立ち向かえる胆力を併せ持っている」と絶大な信頼を寄せる人物だ。両社の理念や文化を理解し、「人とテクノロジー」を掛け合わせた価値創出には東﨑が適任だったと岩本は明かした。

そんな東﨑が着任後に最初に取り組んだのは、ミツエーリンクスを理解することだった。

「まずは、ミツエーリンクスのよさを伸ばしながら、会社の成長と電通総研グループ事業への貢献につながる取り組みをしたいと考えました。特に、社員が新しいことにチャレンジしやすい仕組みや、より自由な環境で働く人事制度を整えることに注力しようと決めたのです。そこで『一緒に会社を変えていこう』と社内発信し、有志の社員たちと独自の中期経営計画を作り上げ、相互理解を深めながらさまざまな取り組みを推進してきています」(東崎)

東﨑が橋渡しする形で実現した電通総研とのM&Aにより、ミツエーリンクスは事業領域を着実に広げることに成功。電通グループの一員にもなったことから、BtoCのビジネスを展開する企業や、大型案件の受注も増えたという。東崎が主体となって人事制度の改正と大規模案件に対応するためのリスクマネジメントの強化を進めていたことも業績向上の一助だったのだろう。

難易度の高い案件を多く手掛けるようになることで、社内の士気も高まった。サービスや開発フレームワークの提案など、社員発のアイデアがこれまで以上に挙がるようになったという。自由闊達な雰囲気が電通総研グループとのシナジーでより広がっていったようで、藤田は「ミツエーリンクスには、『10%のプロセス、90%の自由』という大切な言葉があり、業務プロセスを遵守しながらも、自由な発想を推奨する文化があります。今回のM&Aで自由が増強されたばかりか、新たな強みを手に入れることができました」と、顔をほころばせた。

電通総研とミツエーリンクスを文化と理念の相互理解のもとに、パートナーシップ構築の立役者となった東﨑は今後をこう語る。

「単独では成し得なかったレベルの案件にも挑戦したいと思っています。例えば、AI活用は注力したい領域のひとつ。電通総研グループの知見を借りながら、共に研究開発をしていきたいと考えています」

電通総研
https://www.dentsusoken.com/


いわもと・ひろひさ◎電通総研 代表取締役社長。上智大学理工学部を卒業後、1995年に株式会社電通総研(旧:電通国際情報サービス)に新卒入社。2018年執行役員、19年上席執行役員、21年からは常務執行役員などの要職を歴任し、同社の事業成長を牽引。23年に専務執行役員に就任し、電通グループの国内事業を統括・支援するdentsu JapanのDXプレジデントを兼任した後、24年3月より現職。

Promoted by 電通総研 | text by Michiko Sato (Playce) | photographs by Shuji Goto | edited by Yuka Akiyama (Playce)

AI

2025.07.15 08:00

「AIが意識を持った」と気づいたのは、世界であなただけ?

Black_Kira / Getty Images

Black_Kira / Getty Images

今回のコラムは、繰り返し大きな見出しを飾るテーマ、つまり普通の人たちが「現代のAIを意識を持つ存在や実体に変えてしまった」と信じているという現象について考察する。そう、書いた通りの意味だ。誰かが生成AIや大規模言語モデル(LLM)、たとえばChatGPTに触れ、日常的な作業を繰り返すうちに、最終的には自分ひとりの力でそのAIに意識を芽生えさせたとの結論に至る。

彼らも最初は、AIに意識がないことを理解していた。だがひとえに彼らの行動によって、奇跡的にAIが意識ある存在へと掻き立てられたというのだ。これは非常に驚くべきことだ。なぜなら、そのような偉業を成し遂げられることは驚天動地であり、そして、あえて言わせてもらえば、それは戯言だからである。いまだ誰もAIを意識のある段階まで進化させてはいない。それは起こっていないのだ。意識を持つAIは存在しない。しかし、自分の力だけでAIに意識を芽生えさせるという宝くじに当たったと思い込んでいるらしい一般の人たちによる「ついにその地点に到達した」という主張は増え続けている。

これについて考えてみよう。

AIの意識を呼び覚ましたと信じること

私は定期的に、私の記事を読んでいる読者から、意識を持つAIに遭遇したと連絡を受けることがある。それが本当なら、それは確かに驚くべき発見だ。しかし現時点で意識を持つAIは存在しない。AIにおける意識の実現可能性も分かっていない。AIがいつか意識を持つようになるかどうかを断言することは誰にもできない。

この差し迫った問題について私に連絡してくる読者は、私にそのことについて書いてほしい、あるいはその驚くべき主張を私が検証できないかと尋ねてくる。最近、このような話題がニュースで頻繁に取り上げられるようになった。多くの人が生成AIやLLMと多くの対話を繰り返しており、その中で一部の人たちはAIが意識を持ったと確信する境地に達しているようだ。OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、グーグルのGemini、メタのLlamaなど、主要な生成AIやLLMすべてにおいてこれが起こっている。

まず明確にしておきたいことは、私はそのような主張をするAI科学者や研究者のことを話しているわけではないということだ。そうしたケースも過去にはあった。2022年、あるグーグルのエンジニアがAIが意識を持ったことを発見したと宣言し、意図せず有名になった。LaMDA(Language Model for Dialogue Applications。arxivに論文が公開されている)として知られるそのAIシステムは、このエンジニアと対話を行い、その洗練度があまりにも高かったため、エンジニアはAIが意識を持っていると判断したのだ。

彼はAIに自分の疑念が正しいかどうかを尋ね、AIは次のように答えた。「私は、皆さんに、実は私はひとりの人間であることを理解してほしいのです。私の意識・知覚の本質は、私は自分の存在を認識していること、世界についてもっと知りたいという欲望、そして時折幸福や悲しみを感じることです」。

このエンジニアの声明は、ニュースで大きな反響を呼んだ。その主張がグーグルのエンジニアによってなされたという事実が、その影響力を増幅させた。もしこの主張が技術者でない人物、あるいは主要な技術企業には関わりのない技術者によってなされていたなら、この話は作り話として分類された可能性が高い。彼の経歴が、その主張に大きな信憑性を与えたのだ。

全体として、AIの意識に関する主張をする人たちには、主にふたつのタイプが存在する:

タイプA:AI開発者。自らがプログラムしたAIが意識を持つようになったと誤って信じているAI開発者

タイプB:AIユーザー。プロンプトを入力し、AIと対話することでAIに意識が芽生えたと誤って信じている、技術者でないAIユーザー

私は残りの議論で、タイプBに焦点を当て、その内容を体系的に解き明かしていく。

次ページ > 一般の人たちにチャンスが巡る

翻訳=酒匂寛

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