(社説)初の党首討論 誠実とは遠い首相答弁

[PR]

 自身に問題はなかったかのように開き直る。唐突に論点をずらして切り返す。都合の悪い質問は無視する――。一国の指導者としての責任の重さをどう考えているのか。自分の言葉で滔々(とうとう)と語っているつもりでも、これではとても誠実な答弁とは言えない。

 高市首相がきのう初めての党首討論に臨んだ。立憲民主党野田佳彦代表がまず取り上げたのが、台湾有事は「存立危機事態になりうる」という首相の発言を契機に冷え込んだ日中関係だった。

 従来の政府答弁を踏み越えた首相に対し、野田氏は「国益を損なう独断専行」ではなかったかと指摘。発言が招いた結果について責任を感じているのかとただした。

 首相はそれには直接答えず、「政府のこれまでの答弁をただ繰り返すだけでは、予算委員会を止められてしまう可能性もある」「具体的な事例を挙げて聞かれたので、その範囲で誠実に答えた」と述べた。まるで質問した方に原因があると言わんばかりだ。

 首相は発言のあった次の衆院予算委員会で「今後、反省点として、特定のケースを想定して明言することは慎む」と述べていたが、きのうの答弁からは「反省」の姿勢は全くうかがえない。

 存立危機事態の認定は、自衛隊が参戦し、日本が戦争当事国になることを意味する。その重みをわきまえたうえで、言葉を選んだようには見えない。

 野田氏は企業・団体献金の見直し問題にも触れた。国民民主党公明党が国会に提出した、献金の受け皿を政党本部と都道府県組織に限定する法案に賛意を示したうえで、首相の見解をただした。

 驚いたのが首相の応答だ。「そんなことよりも、定数の削減やりましょうよ」と、いきなり定数削減を持ち出したのだ。自民党の派閥の裏金問題で失墜した政治への信頼回復に向け、この間、与野党で議論を積み上げてきたテーマを「そんなこと」とは何事だろうか。

 公明党の斉藤鉄夫代表は、非核三原則の堅持を求めるなかで、三原則が国会でも決議されていることを挙げ、見直しは政府・与党だけでは決められず、国会での議決を経るべきだと主張した。

 三原則は政府も「国是」と認めているが、首相はきのうも「政策上の方針」と表現。安保3文書の改定に当たり、「明示的に見直しを指示した事実はない」と述べたが、国会の関与については触れなかった。政権の判断のみで変更できるよう布石を打っているとしか見えない。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

連載社説

この連載の一覧を見る