「今の米の買い取り価格が続くと思っていたら、米農家は痛い目にあう。来年の価格は下がるでしょう」と、話す福島県天栄村の米農家・吉成邦市さん=米倉昭仁撮影
「今の米の買い取り価格が続くと思っていたら、米農家は痛い目にあう。来年の価格は下がるでしょう」と、話す福島県天栄村の米農家・吉成邦市さん=米倉昭仁撮影

米農家も生活者「今のコメの価格は異常」

 では、吉成さんら米農家も大いに喜んでいるかというと、事態はそう単純ではないという。

「今の米の価格は異常です」と、吉成さんは繰り返し言う。

 最も懸念するのは、庶民の経済事情と、米価高騰による消費者離れだ。

「今の日本人生活者は、いわゆる裕福感が全くないじゃないですか。何を買っても高いと多くの人が思っている。われわれ米農家も同じ、生活者です」(同)

 米価の高騰によって買い控えが起きていると肌身で感じている。

 だからこそ、前述のように、なじみの個人客に「申しわけない」と、頭を下げて米を販売しているのだ。

来年、コメの価格は下がる

 吉成さんは冷静にこう話す。

「今の買い取り価格が続くと思っていたら、痛い目にあうでしょう。来年の価格は下がるでしょう。私は、60キロ2万円でもやっていけるようコストを絞った営農計画を立てています」

 60キロ2万円を、先ほどの計算を当てはめると、市場に並ぶ新米は5キロ約3330円という計算になる。

コメ農家の切なる願いは

 米価の乱高下に、吉成さんが憂慮するのは稲作の未来だ。今、米農家の平均年齢は70歳を超えている。

「私も66歳です。来春から息子に徐々に引き継いでいきますが、米作りがきちんと収入の得られる職業でないと後継者は育たない」(同)

 吉成さんは、米農家にとっては、「米の価格が落ち着いて、維持されることが重要」と言う。

 もしも、米の買い取り価格が60キロ2万円を切れば、米農家は経営的に厳しくなる。米作りの将来を考えるうえでも、農家の本音は、「できれば、2万円を少し超えるくらいであってほしい」(同)

 来年、米の価格は果たしてどう動くのか――。米農家も消費者も、価格に翻弄される日々はまだ続きそうだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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