香港マンション火災現場近くの無償物資配給所、当局指示で撤去…民主派の抗議活動再燃を警戒
【香港=遠藤信葉、田村美穂】香港の高層マンション火災の現場付近で29日朝、住民による無償物資配給所が、香港当局の指示で撤去された。ボランティアの中には過去に民主化を求める抗議活動に関わった人もいる。民主派を抑え込んできた中国、香港両政府は、火災をきっかけにした抗議活動の再燃を警戒している。 【動画】香港火災の高層マンション2階から救出された男性 避難断念、死を覚悟しながら自室で消防隊を2時間待つ
現場近くの広場では火災発生直後から、食料や毛布などの支援物資を持った住民が次々に集まり、被災者に無償で提供していた。しかし、29日午前5時頃、警察が突然撤去を命じた。ボランティアの男子高校生(19)は「理由も告げられず、納得がいかない」と憤った。一方、別の男性は警察から「無許可集会だ」と指摘されたという。
香港では、2014年に民主化を求める学生らによる道路占拠運動(雨傘運動)が、19年に大規模な反政府抗議運動が起きた。ボランティアの中には、14年の活動に参加した30歳代の女性もいた。中国系香港紙・大公報(電子版)は29日、「愛あふれる支援の中に民主活動家の残党が紛れている」とし、香港警察が高い関心を寄せていると報じた。
20年に施行された反体制活動を摘発する国家安全維持法(国安法)に基づき、香港に設置された中国の治安当局の出先機関「国家安全維持公署」も29日、火災に乗じ、19年の抗議運動を引き起こした勢力が香港政府への反感を扇動していると主張。「災害を利用して香港を混乱させることを企てる者は、国安法に基づき責任を問われ、厳重に処罰される」と警告した。
一方、香港政府は29日、被災住民の住宅ローン返済延期策や犠牲となった外国人家政婦の遺族に20万香港ドル(約400万円)の弔慰金を支給すると発表した。火災現場のマンションでの修繕工事を巡っては、当局は工事を請け負った会社の幹部3人を過失致死の疑いで拘束。修繕工事費を巡る汚職疑惑も浮上し、施工業者ら8人を拘束している。
香港当局は29日午後、128人が死亡、83人が負傷したと発表した。当局によると、29日午後の時点で約150人と連絡が取れていない。そのうち約100人は、出火時にマンションに居住や滞在をしていたか正確な情報がないという。