気付いたら五百年前のフォンテーヌに居たので、水神を救おうと頑張りたいのだが……脳内で語り掛けてくるナニカがうるさい   作:たゆな

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幕間

「そこまで言われちゃしょうがない! 教えてあげようではないか!」

 

 少し離れた所で、水スライムがプヨプヨと動いているのを眺めながら……俺は話を始める。

 

『……別に、そんなには言っていないのだけど』

 

 さて、眞の力を天理が感知できない……もしくは感知されても問題がない理由についての話を始めよう。

 

『これは……長そうね』

 

『イツキが饒舌になり始めたら、覚悟を決めなければ……』

 

 二人は何やら呆れ気味のようだが、そんな事は気にせず、俺は話を始める。

 

 今の天理は第一降臨者であるパネースだが、結論から言うと──そのパネースがテイワットを管理できるような状態ではない可能性が高いから、というのが主な理由になる。

 

『それはつまり?』

 

『……どういうことなのかしら』

 

 以前、聖遺物についての話をしたと思う。聖遺物というモノ自体が物語の根幹に関わる物であり……生の花、死の羽、時の砂、空の杯、理の冠はそれぞれ天の理を司るパネースと四つの光る影を表しているものだと。

 

『ええ』

 

『覚えているわ』

 

 これに加えて『○祭りの人』という聖遺物に、恐らく四つの光る影についての詳細であろうものが記されている。

 

 まず『火祭りの人』から──話によると、昔のある時代に、地上の人たちは空からの啓示が聞こえた。神の使者が未開の人間の間を歩いて、永凍は解け、火が燃え始めた。

次に『水祭りの人』──神の使者が未開の人間の間を歩いて、古き火は消され、雨が降り始めた。

『雷祭りの人』──神の使者が未開の人間の間を歩いて、河と海は枯れて、雷が降り始めた。

『氷祭りの人』──神の使者が未開の人間の間を歩いて、万物の気配は弱まり、大地が凍り始めた。

 

 ○祭りの人という聖遺物は光る影の数と同じこの四種類しか存在せず、これらの記述から神の使者が保有する元素は火、水、雷、氷の四元素であるということが考察されている……しかし、この後の話を聞くと光る影が扱える元素は二種類以上あるという可能性が見えてくる。

 

『『なるほど』』

 

 さて、これらのことを踏まえて……今回の理由について説明するには、四つの光る影の正体──それぞれの聖遺物に対応する神の詳細を理解して貰う必要があるんだ。

 

『……? イスタロトは確定しているのよね?』

 

 光る影の内一柱がイスタロトであるということは確定しているが、そのイスタロトの正体は判明していない。まぁ、だから……今から話すことは所詮仮定に過ぎないんだけど。仮定とは言っても、単なる予想という言葉では片付けられない程の情報によって位置づけられた神達だから、かなり有力な考察のはずだ。

 

『光る影の一つがイスタロトであったように、あらゆる書物によって肉付けされていった者ということね』

 

 ああ、そういうことだ。んじゃまずは……そうだな、イスタロト以外で光る影の可能性がそこそこ高い神から話していこう。それは死の羽に対応すると言われている神であり、花の女主人という二つ名を持つ者……名をナブ・マリカッタという。

 

『彼女が……?』

 

 マハちゃんの親友だった花神についての情報が『プシュパの歌』という書物に記されている。その内容は──

 

 ──そしてプシュパの女主人が言った、翼を持つ者、地上の万国を支配する君王を讃えよ。私は初めに創られた精霊、輝く虚像、創造主の目から流れる光の揺らぎである。

 

 という物だった。プシュパとは花を意味する為、これは花神の発言が元となっているんだろう。『輝く虚像』や『光の揺らぎ』は光る影を変換したものと取れるという考察がある。

 

『花神は初めに創られた精霊であり、光る影であり、パネースの目から流れる光の揺らぎと同等の存在である……ということ?』

 

 そういうことだな。こんな感じに結構しっかりと書かれているせいで、ナブ・マリカッタが光る影であるという考察はかなり有力なモノとなっているんだ。これに続いて、花神が死を司る神である理由の一つに、パティサラについての伝承が関係している。

 

『パティサラ……私が彼女の死を悼んで再現した花のことね』

 

 悲しみを含んでいるのが分かる程の儚げな声で、そう言葉を零すマハちゃん。

 

 ……そうだ。現在スメールに生息しているパティサラはただの紫色だが、花神が咲かせたのは赤紫色のパティサラだった。それが花神の死と共に絶滅してしまったという話が伝わっている訳だが……色以外は両者ともよく似ており、それぞれ俺が住んでいた世界の現実にデザインのモチーフにしていると考えられている花があったんだ。

 

『なるほど……この世界が創作物である以上、その元になったモノが存在するという話ね』

 

 その植物の名前はイヌサフランとサフラン。サフランはマハちゃんが創ったパティサラと同じ紫色で、香辛料として使われる程に人体に無害なモノなんだが、赤紫色のイヌサフランの方は種子や球根に猛毒を含んでいて……誤って食べると死に至ることもある程の危険な植物だった。花言葉は『私の最良の日々は過ぎ去った』や『危険な美しさ』という花神を彷彿とさせるモノであることから、開発者サイドもそれを意図していると見て間違いないだろう。わざわざ毒のある方をモチーフにしたパティサラを花神に当てはめたということは……まぁ、うん。そういうことなんだろうな。

 

『……開発者、イツキが言っていた偉大なる者のことよね』

 

 実際の死因は不明だが、原神のゲーム内では──花が咲く目的は輝かしい死であり、花の主は端から死と結末を求めているのだと言われている……という記述があった。まさに死を司る影に相応しいな。マハちゃん、その辺について何か知らない?

 

『彼女が亡くなった瞬間に立ち会った訳ではないから……でも、彼から聞いた話には確かに、何者かによる意図を感じたわ』

 

 ふむ。彼とは、アフマル……何者かによる意図を感じたというならば、アフマルの野望に関する話か? ──彼の野望を聞いた花神は愚行と思いつつも、天理の恩恵に頼らない彼の野望は世界を変える可能性があると考えた。彼の語る野望には虚言もあるが凡人の未来と希望も内包されていた。……という様に、アフマルの愚行を後押した花神についての話が聖遺物『楽園の絶花』に記述されているが、アフマルが自身の野望を花神以外に話したという文言は見た事がないな。

 

『イツキ……でりかしーがないわよ?』

 

「ごめんなさい」

 

 死んだ親友についての話を根掘り葉掘り聞こうとするのは流石に無神経が過ぎたようだ。

 

 え、え〜花神が扱っていた元素は雷、彼女について語られている聖遺物『楽園の絶花』には稲妻の紫水晶が多く使用されていて……尚且つそのテキスト内にて、草神はエメラルドの冠を……花神はアメジストの冠を被ったとされている為、花神が雷元素使いであることを暗示しているというのが読み取れた訳だな。『彼女の踵の傷口から泉が溢れ出し、その水の中から青い睡蓮が咲き、ジンニーが誕生した』という言い伝えもあることから、水元素力……もしくは草元素力を使用できた可能性がある。

 

『もしも、草と水の二種類の元素力を扱えたのだとしたら──マハちゃんがエメラルドの冠を、彼女がアメジストの冠を被った……と記述されているのはおかしいわ』

 

 そうだな。だから消去法で、雷元素に加えて草か水のどちらかの元素力を操ることが出来た……と考えた方が自然になる。そもそも雷元素でどうやってパティサラを咲かせたんだよ……って感じだが、激化させると植物は活性化するし、天の使者に関わる魔神は揃って生命を創り出す力を持つらしい。死を司る故に、自身の周りでしか生きることが許されないパティサラを咲かせた……とかそんな感じやろ。知らんけど。

 

『これは……パネースの話を聞くまで留めておく知識としておいた方が良さそう』

 

『最後の一言は適当なのに……無駄に説得力あるのがムカつくわね』

 

 故にまだ仮定、ということだ。

 

『ええ、そうね』

 

『……理解したわ』

 

 んじゃ次、時の砂に対応する光る影……イスタロトについての話を始めるぞ。前にイスタロトは偏在する神であるという話をした通り、この神に関しては複数の者が該当している。そして、保有する元素は風だ。

 

『様々な国にその痕跡を残している……という話だったかしら』

 

 ああ。しかし……イスタロトの別名は、時を司るモノを意味する『カイロス』の他に『千の風』や『不滅風』というように、風元素使いとしての側面が強く押し出されているんだ。

 

『そのまま過ぎるわ……』

 

 ゲーム内に存在する『冒険の証』というモノにこんな文章が記されている。これは、イスタロトではなく魔神アンドリアスに関する説明なんだが。

 

 ──奔狼領を見守る崇高な魂。群狼が脅威に晒された時に、彼は狼の姿で現れ、自らの蒼牙と鋭爪を示す。伝説によると、彼の力は太古の魔神から引き継いだらしい。

 

 というようにアンドリアスの力が彼自身のものではなく、とある魔神から与えられたモノという記述がある。アンドリアスの全盛期は旧モンドの守護神デカラビアンと戦ったおよそ3000年前だから、少なくともそれ以前には力を得ていたことになるな。モンド初期にはバルバトスと共に崇拝されていたイスタロトだが、時が経つにつれて忘れられていった。デカラビアンと戦う前のバルバトスは元々神の力を持たない微小な元素精霊だったことから……時系列的に、アンドリアスに氷と風の力を渡せる魔神はイスタロトしかいない為、風以外にも氷元素力を扱うことができた可能性がある。

 

『……力を渡した存在ということに関しては、一考の余地ありね』

 

 さて、ここでイスタロトの正体について話そう。その正体……その内の一つと考えられているのはなんと! ──風神バルバトスくんでぇ〜っす。

 

『……え? イスタロトとともに崇拝されていたというのなら、彼とイスタロトは別の存在と考えるべきじゃない?』

 

 うん。うんうん。うんうんうん。うんうんうn──

 

『──続けて』

 

 俺が原神をプレイし始めた頃、時間の執政イスタロトの正体はバルバトスではなく『パイモン』だと考えられていた。

 

『パイモン……?』

 

『五百年後に旅人と共に行動する未知の生命体よ』

 

 いやマハちゃん、未知の生命体って! ……あながち間違ってないから否定は出来ない。さて、何故そう考えられていたのか……この世界の七神の名前は、俺の世界で言い伝えられていたモノであるソロモン72柱の悪魔という存在の名前と一致しているんだ。ブエル、バルバトス、それ以外の神とも同一名であり、能力が一致する悪魔が存在することから、ソロモン72柱をモチーフとしていることは前々から知られていた。その内の一柱に、パイモンという名前があったというのが事の始まりだな。

 

『なるほど……』

 

『パイモンという悪魔にはどのような特徴が備わっていたの?』

 

 ソロモンの悪魔、パイモンの姿や能力について──

 

 ──現れる際には、王冠を被り女性の顔をした男性の姿を取り、ひとこぶ駱駝(ラクダ)に駕しているとされる。人に人文学、科学、秘密など、あらゆる知識を与えるといわれ、大地がどうなっているか、水の中に何が隠されているか、風がどこにいるのかすら知っているという。召喚者に地位を与え、人々を召喚者の意思に従わせる力を持つ。

 

 王冠のようなものが頭上にあり、女性のような顔をしていて一人称が『オイラ』であり、旅人にテイワットの様々な知識を与え、栄誉騎士から始まり、行く先々で何故か英雄となる……と言ったように、ゾッとする程に旅人と行動するパイモンと一致する情報が記述されている。

 

『ひとこぶ駱駝に駕している……というのはどういう意味なのかしら』

 

 ああ。この部分に関しては関連性を見つけづらいよな。だが実は、これに関しての情報もゲーム内に存在していたんだ。

 

『……それは』

 

 原神ではキャラクターのボイス……え〜、声やセリフを聴くことができる機能が存在しており、ストーリーに関わる内容を話す物がある。その中でも旅人とパイモンの会話ボイスには、ある恐ろしい内容が含まれているんだ。あ、俺は蛍を主人公としてプレイをしていたから、今から話すのは蛍とパイモンの会話となる。

 

 ──モンドの錬金作業台は街中にあるんだね。

 ──そうだ、おかしいのか?

 ──私が今まで旅してきた世界では、錬金術はほとんど秘術として存在してたの。錬金術が日常の一部になっているのを見ると、まるで『3つの胃を持つ人』を見たのと同じくらい不思議な感じがする……。

 ──おい! 胃が一つしかない方がおかしいだろ!

 ──……え、それ本気?

 ──ど、どうだろうな?

 

 という会話はまるでパイモンには三つの胃があるかのような話だった。そこで、胃が三つある生き物を調べてみたら……出てきたのはなんと、駱駝だったんだ。

 

『ここまで来ると、流石に怪しいわね』

 

 ああ。しかし、ここまではパイモンがソロモンの悪魔である事の考察だ。

 

『そうね』

 

 ここからはパイモンとイスタロトの関連性について話していくぞ。数々の考察勢が調べた結果、ソロモン72柱にイスタロトという名前はなかったが……アスタロトという悪魔が存在した。そこには時を司り、過去と未来を見通す能力、何でも知ってるおしゃべり悪魔という内容が記載されてあった。

 

『ここまでは、何でも知ってるおしゃべり……という部分しかパイモンとの類似点が存在しないわ』

 

 ああ、しかしこれに加えて……白黒の色をした人間の姿で現れるという文がある。そして、アスタロトはアシュトレトという死と再生の女神が悪魔に堕ちた姿らしい。

 

『白黒の色をした人間の姿というのは当て嵌るかもしれないわね。でも、死と再生の女神の部分とはどう関係しているの?』

 

 俺は、足元に落ちていた小さな木の棒を拾って、地面に十字と円を組み合わせたようなマークを書いた。

 

『えっと、これは……?』

 

 これはパイモンのお腹に書いてあるマーク、トリケトラっていうんだけど……これも死と再生を意味しているんだ。

 

『なるほど……でも、段々とこじつけ要素が増えてきているわよ』

 

 流石に……そうっすよね。ちなみにソロモンの悪魔、パイモンはアザゼルとも呼ばれていたそうなんだが……四方を司る精霊の王に対応する悪魔の四君主とされていて、風元素を司る悪魔らしい。

 

『四方を司る精霊の王、というのは四つの光る影達の王……パネースのことかしら』

 

『それに対応する悪魔の四君主……四つの光る影に対応する魔神で風元素を司る?』

 

 ああ。そして、パイモンのお腹にあるトリケトラは通常のトリケトラと違って中心に点を書いた状態で反転していて、それと同じマークが……ゲーム内でバッグを開いてアイテムを選択した時に薄っすらと見えるんだが、パイモンのお腹のマークに加えて魔法陣のような模様が重なっているのが分かる。その魔法陣の部分が、ウェンティ……風神バルバトスが元素スキルを使った際に地面に浮き上がる紋様と瓜二つなことから、風の神と時の神の繋がりを表しているんじゃないかという説もある。

 

『……その魔法陣とは、どのような紋様なの?』

 

 絵心が無さすぎて再現できる気がしないので、そういう説があるという事だけ覚えてくれ。

 

『……分かったわ』

 

 パイモンに関しての伏線は沢山あり過ぎてキリがないんだよな。さっきの事に加えてもう一つ、ゾッとするものがある。……フォンテーヌの世界任務で登場するメリュジーヌにカノティラという子が居て、他の人には見えないものが見えるという特殊な目を持っているんだけど、そのカノティラがパイモンを見てこんな事を言った──

 

 ──空に浮かぶ虹色の小さな風船だ。しかもそこに結ばれている紐は、遥か空高くまで繋がっている。

 

 ……なんていう、天空の島と繋がっているかのような伏線が張られているんだ。

 

『風船、というのが何かの暗喩のようで怖いわね。例えば、誰かの操り人形を意味している……とか』

 

「怖すぎワロタ。あんな感情表現豊かな仕草も含めて全部嘘だったエンドとかだったら心臓が破裂するわッ!」

 

 そう言えば、旅人がエリナスの体内に入った時、エリナスの血に触れるだけで具合が悪くなっている旅人に対して……パイモンは全く動じていないというシーンがあった。その場面もパイモンが天空に関係する存在だった場合には説明がつく。何故ならパイモンの周りに現れるエフェクトと同じものが、天の釘の周囲にも出現していて……その天の釘には、アビスの力などテイワットの外の力を打ち消す力が備わっていた。その特徴から、天の釘やパイモンは霊光の力を持っていると考えて良いだろう。

 

『霊光……確か、アビスの力を逆転させる力を持つエネルギーのことだったわよね』

 

 そうそう。

 

『そろそろ……バルバトスが時間の執政イスタロトである理由を教えて欲しいのだけど』

 

 ああ……パイモンに関する説明が頭に入っている今なら、バルバトスがイスタロトである理由を話し始めても問題ないか。風神の事を知っているこの二人が聞けば、きっと驚くだろうなぁ。

 

『焦らしすぎよ……!』

 

 いつまで経ってもヌヴィレットが来る気配はない。その事実に安心した俺は、このまま二人の要望通りに話を続けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





イツキの知識はナタ実装前で止まっている為、死の執政ロノヴァなんて奴は知りません!!
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