気付いたら五百年前のフォンテーヌに居たので、水神を救おうと頑張りたいのだが……脳内で語り掛けてくるナニカがうるさい   作:たゆな

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第1幕

「んぁ?」

 

 気付いたら謎の平原に居た。

 

「……へ? ココハドコ!?」

 

 辺りを見渡すと、透き通った湖に広い草原が存在していて……覚えのありそうで無い風景が拡がっている。

 

「俺はついさっきまで遊園地で風船配りをしていたハズなんだが……ハッ!? あれは……重甲ヤドカニ!?」

 

 そう……俺は、真夏に輝く笑顔を浮かべた子供達に囲まれながら、クッソ暑い中……着ぐるみを纏って必死に風船を配り続けていたッ! 

 

 ──はずだった。

 

 つーか、待て待て待て待て。いきなりワープなんて超常現象が起きただけでもエグいのに、ここフォンテーヌやん! てことはココ、原神の世界やん! 俺にこの世界で生き抜ける力なんて無ェぞ!? モンドから始まったならまだしも、フォンテーヌマジか!

 

「うーむ、何からすればいいのか……何をすれば生きれるのかが漠然とし過ぎて、気力が全っ然湧かねぇ!」

 

 そもそも今はいつだ? 前の世界では、それはもうガッツリ原神をやりまくっていた。ここがフォンテーヌなのは分かったが、いつの時代なのかによって難易度が格段に違う。もしも魔神戦争中だったら、もう色々と諦めるしかない。

 

「旅人が国を救った後なら……まぁ生活できるくらいは平和だと思うが」

 

 もしも予言の実現前だったら、何の力も無い俺は……来るか分からない旅人を待ち続けることになるな。その間、このフォンテーヌで俺が出来るような仕事をして生きなければならない。

 

「……」

 

 よく考えたら、予言の実現後だったとしてもフォンテーヌで俺が出来るような仕事をして生活しなければならない部分は変わらないやん。ここからワープポイントなしで他の国に行くとか無理だし。原神のゲーム内だったら結構近めの世界だったけど、現実だとくっそ広そうだ。とてもじゃないが徒歩は無理だろうな。

 

 ──……ん、んぅ。

 

「ん? 今何か聞こえたような」

 

 周りから聞こえたというよりかは、脳内に直接という感じだ。……流石に新感覚過ぎて怖いッ!

 

 ──……ここは? 確か私は、カーンルイアで……影に看取られて死んだ筈。

 

「何かめちゃめちゃ聞き覚えのあるエグい声で、めちゃめちゃ知ってるエグい内容が聞こえてるんですが」

 

 ──……貴方は、えっと……どちら様?

 

「えーっと、そっすね……俺はイツキと言います」

 

 ──イツキ? ……名前だけは稲妻の国民に多くあるモノだけど、ここはどうやらフォンテーヌ。更にはその服……今までに見た事のない物だわ。きっと、私の知らない製法で作られているのね。

 

「あ……異世界から来ました。テイワット中の何処の国にも住んだことありませんし、俺の着ている服はテイワット中の何処を探しても、二つとして同じものは存在しません」

 

 ──貴方は、この世界には属さない者……という事? なるほど、それならこの現象も。

 

 何かカーンルイアとか影とか言ってたし。この人……もしかして?

 

「え〜っと、つかぬ事をお聞きしますが……もしかして貴方は、雷神バアル。眞さんだったりします?」

 

 ──あら、私を知っているの?  稲妻の民でも無く、外界から来た貴方が……? 

 

 マジか。

 

『ふふっ……まぁいいわ! 初めまして、私は眞。今代の雷神にして──いえ、おそらく私はもう死んでしまっている……のよね。今代の、ではなく先代の雷神と言ったところかしら。えっと、よろしくね?』

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 さてと……原神の世界に転移しただけじゃなくて、脳内には雷神バアルが住み着いていた訳だが。

 

 ──これは一体どういうことだってばよっ!?

 

 

 

***

 

 

 

 いつまでも同じ所に留まっていては何も変わらないので、とりあえず時代を確認する為にフォンテーヌの街へと行きたかった俺は──自身の視界に映る巨大な街へ向けて歩き始めた。

 

「ウンウン。めっちゃでっかい街らしきものは見えるけども、遠すぎんか!?」

 

『話には聞いていたけど……想像していた通り、ここは綺麗な所ね〜!』

 

 近くの生き物がいつ襲って来るのか恐くて堪らない俺とは裏腹に、何やら脳内で眞さんがはしゃいでいる。雷神の仕事が忙しかったせいで旅行に行けなかったとか、そういう感じなのだろうか。

 

「確かに景色は物凄く綺麗だし、空気も美味しい。でも、この距離を水分も食料も無しに歩き続けるなんて……って、あれ? 俺の身体、疲れる気配が全く無いぞ?」

 

『今イツキの中に存在しているのは魔神である私の残滓──ではなく、もはや私自身が肉体を捨てて精神のみを移しているようなもの。当然、それに何の拒絶反応も無く耐えることが出来てしまっているその身体は普通の人間のモノと呼べるかどうかも怪しいの』

 

「えっ」

 

『それは必然的に肉体強度が神と同等にあるという事になるのだけど……』

 

 ふむ。眞さんは今、一心浄土に精神を隔離した影ちゃんみたいなモノで、俺は雷電将軍の人形の身体……みたいな感じなのだろうか?

 

「それなら全力で走ったりすれば、直ぐに街に着きますか……ねっ!」

 

 思ったそばから全力疾走してみた。だがしかし……前世の俺と同じで、スピードは全く出ない。

 

『……どうやら、耐久性と保有する力は別みたいね』

 

「……なるほど」

 

 考えてみれば、影ちゃんは戦闘機能も含めて将軍人形を作った訳で……俺の身体とは性能が全く違うのではないか? 少しだけガッカリしたが、走り続けても疲れない上に食事や水分補給が要らないのは確実にメリットだ。別に敵と戦う力なんて無くとも、この身体というだけで……もはや死ぬ事への恐怖を必要以上に感じる事は無くなるだろう。今は無限に疲労を感じない身体で、42.195kmのフルマラソンをしているみたいなこの感覚を楽しもう。

 

『速度はあまり出ないみたいだけど、結果的には直ぐ街に着けそうね!』

 

「……そうですね」

 

 自転車にでも乗っている感覚なのだろうか。水辺で寛いでいるプクプク獣達を見て……眞さんは先程と同じように脳内で、それはそれは楽しそうにはしゃいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 暫く走り続けた俺は(ようや)く、現在進行形で不穏な空気を漂わせている不穏テーヌことフォンテーヌ廷に到着した。

 

「……ふぅ〜。疲れないが精神的疲労からか溜め息は出るし、腹が減っているわけではないが何かを食べたいという気持ちが湧いてくる! もしや……これが、摩耗ッ!?」

 

『そこまで大袈裟なものではないと思うけど……その気持ちは分かるわ!』

 

「共感して貰えて嬉しい限りですが……一文無しである俺達が食事に有り付けるのは、当分先になりそうですよ。はい」

 

『……そう言えば、イツキはどうしてずっと敬語なの?』

 

「いやぁ、そりゃ……先代雷神様にタメ口で接することなんて出来ませんよ」

 

 人見知りなので。

 

『私達はもうお友達よね?』

 

 圧がエグい。しかし、俺はそんな理不尽に負けるつもりは無い。もちろん抵抗するで? 心で。

 

「いやいや、一般人の俺に偉大なる魔神様の友人など畏れ多……」

 

『私達はもうお友達よね?』

 

 あれれー? おかしいぞ〜? 全く同じトーンと同じ声量で同じ事言われたんだが。再現の精度が高過ぎて怖い。

 

「……いや、だから」

 

『私達はもうお友達よね?』

 

 これはアレだ。【はい】を選ばないと進まないタイプのヤツだ。仕方ない、別に圧に負けたとかじゃないが……ここは一旦引いてやるとするか。

 

「はいはい。俺にとって眞さんは、この世界に来て初の友じ──」

 

『眞』

 

「……イェーイ。眞は大親友」

 

『ふふ、よろしい♪』

 

 どうやら正解を引くことが出来たらしい。こんな街中で、更には大勢の人間が歩いている通路のど真ん中で、独り言を呟き続けている変人と化してしまったという事以外は問題なさそうだ。それにしても──

 

「──何だか騒がしいな」

 

『先程から慌ただしく街の外へ出ていく人が多いみたいだけれど……何かお祭りでもあるのかしら?』

 

「ふむ」

 

 気になったので周囲を見渡していると、何処からかフォンテーヌ民達の話し声が聞こえて来た。

 

ねぇ、聞いた? 今日、エピクレシス歌劇場で……新しい水神様のお姿が見られるらしいわよ?

 

あぁ、まだ時間はあるが……早めに行って、先に場所を確保しないとな

 

 ……あ〜、なるほど。なるほどねぇ〜。終わっっった〜! 色々理解してしまった!

 

『新しい水神? ということは、そう──彼女、エゲリアも……って、どうしたの? イツキ、貴方……物凄く目が死んでいるわよ?』

 

 眞さんは俺の脳内に住んでいるはずなのに、どうして俺の目が死んでいると分かるんだ? 三人称視点にでもなってるのか……?

 

「いやいや、今はそんなことどうでも良くてッ! ……はぁ〜、マジか。ここ、五百年前だったんか」

 

 恐らくだが、この身体なら……ここから五百年以上生き続けることは可能なのだろう。ならば……まず、フリーナたんが存在するかどうかを確認しよう。そして、フリーナたんが存在した時点で……この世界でも予言が実在する事が確定する。なぜなら、フォカロルスの計画が始まらなければフリーナが生まれることは無いから。

 

『五百年前? 貴方、何を』

 

 いや、そもそもエピクレシス歌劇場が建設されている時点でフォカロルスの計画が始まっているのは確定しているか……? 予言が実在する以上、必ず実現するらしいし……フォカロルスの天理を騙す(・・・・・)という計画が成功すれば、フォンテーヌ人が救われるのは確実だ。その予言の進行過程でフリーナを裁判に掛けなければならない為、必然的に旅人のような人物が必要になる訳だが……まぁ、待っていればいつかは現れるやろ! 予言は実現するんだし。うん、完璧な推測だ。今この瞬間、俺のやる事は決まったッ! 下手に余計なことをして未来が変わってしまったらマズいので……フォカロルスによる計画の大部分に関わるモノを俺が手伝うことは出来ない。彼女は水神の神座を自分ごと破壊する事で、自身の保有している水神の……水龍の力を含めてヌヴィレットに返還した。

 

「……ふぅ」

 

『あ、あの〜』

 

 彼女を生存させてしまえば、ヌヴィレットを完全体にすることが出来ない為……フォンテーヌ人は不完全な人間のまま、もれなく全員が水に溶けてしまうだろう。だが俺は、フォカロルスの事も救いたい。その為には、フォカロルスの神格から水龍の力を取り出す方法を見つけ……更には、フォカロルスを経由せずに水神の神座を壊す事で、古龍の大権の全てをヌヴィレットへと返さなければならない。それ以外の方法もあるにはあるが……。

 

『イツキ〜?』

 

 それを実行するには……このポンコツそうで、実はめっちゃいっぱい超しゅごいお姉さんが、一体どうやって俺の脳内に存在しているのかを解明しなければならない……しかし! あぁ、断言出来るッ! そんなもん分かるわけが無いッ! 原神にこんなのなかったもん! もしあったとしても自由自在に扱えるような力じゃなさそうだもん!

 

『何やら考え事をしているのは分かるけど、貴方としか話せない私を無視だなんて……酷いわ』

 

 ならば俺はッ! フリーナたんの心の負担をどうにかして軽減させられるような人間になろうッ! いや、なってみせようッ! フリーナたんをいっぱい甘やかして、毎日ケーキを食べさせて……ブクブク太らせてやるんだ! ……という訳で今日、エピクレシス歌劇場で行われる新水神お披露目パーティ──フリーナたんの就任演説は何としても見に行かなくてはッ!

 

「よし、眞。俺は今から、新水神の就任演説を見に行く事にしたから」

 

『へ?』

 

「俺は今から、新水神の就任演説を見に行く事にしたからッ!」

 

『そ、そう! ……どうして二回言ったの

 

「フリーナたんッ! 待っててねッ!」

 

『……フリーナ、たん?』

 

 Hey! ルキナの泉へGOッ!

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