モモイがヒマリ先輩から授かったという地図をたよりに電車を乗り継ぎ歩くこと三十分弱。既にヘロヘロとなった俺とユズを他所に他三人は到着の喜びを分かち合っていた。
「……ほんとだったんだ」
「も〜!!ほんとにあるってあれだけ言ったのに!でも、結構テンション上がるでしょ?」
「モモイ!ミドリ!早く行きましょう!!新ステージが勇者の到着を待っています!!」
「落ち着いてアリスちゃん。まだ後ろの二人が———」
「ゼェ……ちょっ……待って……きゅ、休憩…………みんな元気すぎるって……」
「と、トオルちゃん……大丈夫……?」
「だいじょッばない……か……も……」
善は急げと一番早い電車で向かうため駅へと疾走、こんな重いものを電車の床に転がすわけにもいかないので抱えたまま目的地の最寄駅へ。
最寄り駅に着いた後はモモイの案内に従ってきたのだがこれがもうひどい。何がひどいって元気すぎるんだあの子たち。曲がりくねった道を辿って坂を駆け上がり時に廃棄された徘徊型オートマタに風穴を開け……とにかくエネルギッシュがすぎるんだ。モモイとミドリはともかくアリスもあの馬鹿みたいにでかい銃を担いで同じかそれ以上の元気さを見せているのだからむしろ恐ろしい。
シャーレの仕事で外に出ることも多くなってきた分足は引っ張らないぞと意気込んでいたのにこの様だ。にしたってユズにまで気をつかわれるほどの貧弱さだとは思わなかった。不甲斐ないったらない。
「だ、大丈夫……まだいけるッ」
「や、休んだほうがよさそうだね……」
バチコーンと渾身の親指を立ててみたものの、どうやら今の俺は相当ヘロヘロらしい。自覚はある。とりあえずグラスキャノンを丁寧に地面に置いて、そのまま地面にへたり込んだ。
人里離れた山奥は土地代が安く巨大なテーマパークが設置されやすいのはこの世界でも変わらないらしい。かつては車でいっぱいだったであろう駐車場を見回しながらぼんやりとそう思う。
「トオルちゃん。これ」
「あ、ありがとうございます」
ミドリからミネラルウォーターのペットボトルを受け取る。少し飲んで一息つけば、辛うじて動く気力が湧いてきた。
「そろそろ動けます。行きましょう」
「ほ、ほんとに大丈夫?無理そうならまだここで休んでも……」
「パッとみた感じ、大きな起伏も多くなさそうですからゆっくり行けば大丈夫ですよ。道中みたいに走っていくわけじゃないんです、流石に大丈夫でしょう……多分」
大丈夫……と言いはしたものの、やはりまだ足元がおぼつかない俺への配慮としてチーム分けがなされた。
まずチームA、モモイとミドリとアリスの三人。彼女らは遊園地の奥の方やアトラクションにも積極的に入り、資料を収集する。
そしてチームB、ユズと俺の二人。
「……」
「……」
俺とユズは特段仲が悪いというわけではない。むしろある日ロッカーの中からの声に驚かされて以来、対戦も協力も一番数が多いんじゃないかとかそんなレベルだ。次点でアリス、最後に才羽姉妹だ。そう、ゲーム自体はよく一緒にするのだ。だがしかし、唯一決定的に問題あるとするのであれば……
そう!気まずいのである!!
何が気まずいって?そりゃあもうあれだよ。シャーレにいる時とかはオンラインでやるし、部室にお邪魔してもまだ滅多なことがない限り俺の前には姿を現してくれない。感覚で言うと一番近いのはゲームのオフ会だ。ほぼ声しか知らない相手と行動を共にするだけならともかくそこで歓談に興じるほどのコミュニケーション能力を俺は持ち合わせていない。だからこそ会話の発端を探っているのであって決して会話ができないとかそう言うわけでは———
「ねぇ、トオルちゃん」
「ピャッ……」
「ごめん……驚かせるつもりはなかった……施設内の地図、撮っておいていい?」
「も、もちろん!俺こそ驚いてごめんなさい!」
地面とにらめっこしたまま考え込んでいたので気づかなかったが、俺たちの目の前には案内掲示板がそびえ立っていた。俺の身長で下を向いているとほんとに地面以外の視覚情報が入ってこないくせして下を向きがちなのはいい加減治さないといけないだろう。
「……もしかして、怖い?」
「ぜ、ぜぜぜぜ全然!びびびってなんかななないですよ!」
「わかりやすいね……」
「そ、そうですかね……えへへ……」
そう、断じておれはびびってなどいないのだ。ただ体が震えているのは武者震いで、冷や汗が出ているのはちょっとまだ息が整っていないだけであって。足がすくんでいるのはただ疲れてるだけであって、体の変化のギャップにまだ完全に順応し切れていないだけで……いや、嘘つきましたすっごい怖いです。なので頭撫でるのやめてくださいユズさん冷や汗とはまた違った変な汗が出ると言うかなんと言うか……
「……手、繋ぐ?」
「いいんですか?!あ、いやこれはその…………」
「……ふふっ」
「どう言う笑いですかそれは……」
「なんだか、妹ができたみたいだなって」
嘘でしょ……元成人男性としてのプライドが段々と崩れ去っていく今日この頃なんだが。
とりあえず、下からのアングル*1で一枚カシャリ。記念すべき資料一枚目だ。次に行こう。
……手は繋いだままで。離されたら散歩を拒否する犬が如くその場にへばりつくぞ。
「あのゴミ箱とか……」
「ボロさが演出に一役買ってくれそうです」
「あ、あの売店とか……!」
「探索パートの定番ですね」
「ボロボロのベンチも……!!」
「休憩ポイントとかにできそう……」
回り始めてみたら案外楽しいな、これ。八割ほどはユズが手を引いてくれたおかげだけど。
「ふぅ……結構集まったね。ミドリちゃんたちもひと段落したみたいだし、一旦合流しようか」
「成果の確認ですね」
またユズに手を引かれて合流地点との連絡があった入り口辺りに向かおうとした時。
《おし……です。この……のパレード・ショー『シロ&クロ』は…………中央広場にて……す……ぜひ……》
所々不明瞭ではあるが、大まかには聞き取れた。ショー……?こんな廃墟で?
「トオルちゃん、これって……」
「おかしいです。だってこんなこと……それに、中央広場って……!」
「……あ」
「こんなのって……」
「……大丈夫。俺がついてます」
バリケードを背に、ユズを庇うようにして立ち、広場の中心を見据える。緊迫した空気が流れる中いつしか開演時間が訪れ、その『奇妙で愉快なショー』が幕を開けた。
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