恐ろしき廃墟、ついでに怪異。
「ねぇねぇみんな!!注目!!」
休日、最近通っているゲーム開発部の部室にてアリスとレトロゲームに興じていると、突然モモイが立ち上がり、ホワイトボードに視線を集めさせた。中心にはデカデカと【ホラーゲーム開発計画!】というタイトルが殴り書きされており、大体この先のオチが予想できた。
「お姉ちゃん。また急にどうしたの?」
「ふっふっふ……我らゲーム開発部の新作のアイデアを持ってきたんだよ!」
「俺ゲーム開発部じゃないですけど……」
「トオルはもう名誉部員みたいなものでしょ!」
おっほんと柄でもない咳払いで話を仕切り直すモモイ。いや、見えてるんだって全部。なんでそんな堂々と勿体ぶれるんだ。ほらあんまり勿体ぶるもんだからアリスがドラムロール始めちゃったし。
「どこどこどこどこ…………パンパカパーン!」
「私達の次なるゲーム、それはホラーゲームだよ!」
うん、知ってた。知ってるからこそミドリあたりに却下されそうだなって。
彼女らの作ったゲーム、『テイルズ・サガ・クロニクル』シリーズは俺もI、IIともにプレイさせてもらった。独特かつチグハグでありながらも何処か引き込まれる世界観、脳が理解を拒むテキストなど総括すればお世辞にも洗練されているゲームとは言えなかったが、それでも何処か『面白い』と思わせるものがあった。
そう、だからこそ彼女らの手腕でかつあの独特な世界観で上手くストーリーがまとまったホラーゲームを作るのは厳しいのではないだろうかと思ってしまう節があるのだ。もちろん、口に出しはしないが。
「ホラーゲームかぁ。そういえば、考えたことなかったね」
「そう!RPGで今まで作ってきたけど、探索2Dならある程度技術も応用できるし、新しいことも取り込めると思って!」
「ところでモモイ!最近はどんなゲームをプレイしたんですか?」
「昼廻だよ!」
「わかりやす……」
要は面白い2Dホラーをプレイしたから作りたくなったってわけだな。なんというか、ミドリの言う通り分かりやすい……ただ、もっともなことは言ってるな。さすがちゃんとゲームを開発してるだけある……というか、ミドリが少し乗り気なのに驚いた。彼女は冷静な正論パンチでモモイをぶん殴っているイメージがある。
「ただ、作るって言っても舞台とか世界観とか諸々決めないとだね……そこら辺はイメージとかあるの?」
「そう!だからこそここからが本題だよ!!」
待ってましたと言わんばかりにスマートフォンを掲げるモモイ。そこに映し出されていたのはあるモモチューブチャンネルだった。*1
「何これ……『超天才病弱美少女ハッカーヒマリちゃんねる』……?ってこれ、ヒマリ先輩のモモチューブじゃん。これがどうしたの?」
「これ!この動画みてほしいの!」
『視聴者の皆さん、こんにちは。超天才病弱美少女ハッカーヒマリちゃんねるのヒマリです。本日はキヴォトスの特異現象についてPart 11です。今回取り上げていくのは題して……『時の止まった廃遊園地!』です。噂程度に耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。何しろ有名な話ですから情報が錯綜してしまい、地域によっては全く異なる怪談として語り継がれているとかいないとか。あら、脱線してしまいましたね。改めて、その廃遊園地、“スランピア”はもう随分と昔に廃園になり長らく稼働していないのですが、何やら近隣からは『微かにパレードの音楽が聴こえることがある』と管理会社に苦情が入ることがあり、ヴェリタス時代に警備システムの仕事を請け負ったのですが———』
「「「「…………」」」」
ミドリ、アリス、俺、ともにみんな完全に閉口してしまった。後ろの方ではロッカーが小刻みに震えている気がする。モモイが次言う言葉に関しては絶対に外さない自信がある。
「みんなでここに取材に行こうよ!ホラーゲームのために!」
ほーら言わんこっちゃない。こういうこと言うんだモモイは。流石に予定調和感がすごい。
「……でも、ヒマリ先輩の警備システムがあるんじゃ」
「それなら大丈夫!ちょっと前にその管理会社が潰れて今は完全に放置されてるんだって!」
「嬉々として言うことじゃないでしょ……」
「特異現象が起こって入っても怒られない……こんな都合いいところなかなかない!そう思うよねトオル!」
「えっあっ俺?!いやそれは確かにそうではあるんですけど怖いじゃないですか廃墟って……」
「確かにって言った!!
あ、やらかした。絶対今いらんこと言ったな。やめてミドリ。そんな目で俺を見ないで!
「で、でも場所がわからないんじゃ……」
「ヒマリ先輩に教えてもらってきたよ!」
「なんで今日に限って用意周到なんですか!」
いやほんとになんで今日に限って用意周到なんだよ。いつもなら『あーーーっ!!そうじゃん!!!』とか言ってみんなでバタバタ準備始めたりしたじゃんゲームのイベントの終了日確認してなかった時とかも!!どうして!!今日に限って!!!用意周到なんだ!!!!
「それじゃあみんな!それぞれ準備してまた部室に集合ね!!」
しかも今から行くつもりだ。ああ、終わった……グラスキャノンを万全の状態に整えておかないと……