透き通るような世界観で地下に潜る   作:久保田紅葉

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今回のお話はちょっとご都合主義気味です……


制圧戦のあとしまつ

「う、うーん……ここは?」

 

 

 

 アリウス生の一人が目を覚ますとそこは窓こそないものの清潔感あふれる部屋。暗くて寒い不衛生そのものであったアリウス自治区内とは大違いで戸惑っていた少女はとっさに隣のベットを覗き込む。そこには桃色の髪を持っていた別の少女が頭部に包帯をまいた状態で寝かされていた。

 

 慌てて駆け寄ると少女の心配は杞憂であり、ただただ眠っているようであったのでほっと息をはくとベットに倒れ込んだ。

 

 

 

「確か、食料調達任務に失敗して……ウイハ共々マダムに処刑されそうになって……それから」

 

 

 

 物思いにふけっていると扉がコンコンとノックされる。銃は……と思ったが気絶している際に回収、もしくは没収されたのか手元には無かった。

 

 

 

「おっと……失礼したかしら?」

 

「あっ……はい、大丈夫ですよ」

 

 

 

 扉が開けられるとそこには高身長で肩ぐらいまである白髪の髪を1つにまとめた女性が立っていた。その手にはお盆が握られていた。

 

 

 

「私はマイナリー礦産社長兼マイナリー礦業学院2年の夕張タンネ。貴女は?」

 

「……私はアリウス分校3年第1小隊の佐仲アオリ……です」

 

「マダムに大分痛めつけられていたようだけど……身体の具合はどう?」

 

「……おかげさまで今のところ身体は大丈夫そうです」

 

「ならよかった。これを食べながらでいいから少し話をしようか」

 

 

 

 タンネが運んできたお盆には湯気立つお粥とちょっとしたおかずが並んでいた。湯気が立っている食事にアオリはつい喉が鳴ってしまう。

 

 

 

「我慢しなくてもいいわ。ここにはもう貴女たちを苦しめる大人……貴方達のいうマダムという大人は居ないわ」

 

「マダムがいない?……とは?」

 

 

 

 アオリが問いたところで隣のベットで眠っていたウイハと呼ばれた少女が目を覚ました。

 

 

 

「ウイハ!大丈夫!?」

 

「アオリ……?私……ここは?いったい……痛っ!」

 

「大丈夫?横になってていいからね」

 

 

 

 ウイハは包帯を巻いた頭を抑える。強打していたため記憶が混濁しているようであった。タンネはウイハを落ち着かせながら、今の状況について伝えることにした。

 

 

 

「貴方達のいうマダムという大人……ベアトリーチェは私達マイナリー礦産の強襲によって何処かへ逃げていったわ。今、アリウス自治区はマイナリー礦業の支配下にあるわ。全く……生徒会長を名乗っておいて生徒を見捨てるなんて最低なやつね」

 

 

 

 事のあらましを説明した所でウイハとアオリは魂が抜けたようにぼーっとしていた。余程ショックを受けていたのであろう。

 

 

 

「それで……貴女たちはこれからどうしたいの?マダムという鎖は無くなった。自由にしたっていいの」

 

「い、いきなりそう言われても……」

 

 

 

 

 

 ――……ぐるるぅ……――

 

 

 

 

 

 タンネとアオリが振り向くとウイハが真っ赤な顔をしてお腹を抑えていた。

 

 

 

「あははっ……!今食事を持ってくるから待ってて」

 

 

 

 タンネの姿が見えなくなった所でアオリがウイハの前にお盆を差し出す。

 

 

 

「……いいの?」

 

「いいですよ。あの様子を見ると同じ物がすぐ来ると思いますし、我慢せずに食べてください」

 

 

 

 身体を起こして遠慮がちにウイハがお粥を口に運ぶ。程よい塩気が効いた暖かいお粥に無意識に涙を流してしまっていた。

 

 

 

「だ、大丈夫!?痛いところとかない?」

 

「うん。大丈夫……食事って、こんなに暖かくて美味しい物、だったんだなって……」

 

「入るよ。……って大丈夫!?どこか痛いところでもあった!?」

 

 

 

 丁度タンネがアオリの分の食事を持ってきたのと同タイミングであったため、あらぬ誤解を与えてしまいそうになっていた。

 

 

 

「……!そうだ、他のアリウスのみんなは!」 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「り、リーダー!ごめんなさい!マダムに逆らえなくて……!」

 

 

 

 同じように食事を取っていたアリウスの生徒たちはウイハとアオリの姿を見るや否やわぁーっと駆け寄り、思い思いの謝罪をしていた。随分と慕われているようであっという間にもみくちゃになっている。

 

 

 

「はいはい、ご飯はしっかりと食べてね。焦らなくてもお代わりはあるから……私はリーダーと少し話をしてくるから」

 

「「「……」」」

 

「拷問なんて野蛮なことはしないわ。安心して頂戴」

 

「……わかった。私がこの子達の面倒を見ておくその間、存分に話してくれ。……ウイハに手を出したらタダじゃおかないから」

 

 

 

 アリウス生たちをアオリに任せてタンネとウイハの姿は別室……会議室にあった。

 

 

 

「それで……ベアトリーチェという大人と生徒会長を失ったアリウス分校はどうするの?」

 

「私たちはマダムからトリニティやゲヘナに対して憎悪ともいえる洗脳教育を受けていた。その教育の賜物で大半の生徒はマダムの思惑通りにトリニティとゲヘナに復讐するべきとの強硬派しかいなかったわ」

 

「貴女は違うの?」

 

「私もかつてはそうだった。……だけど、殺されそうになって改めてあのババアの経典がクソと思えるようになったわ」

 

vanitas(全ては虚しい) vanitatum et omnia(どこまで行こうとも) vanitas(全てはただ虚しいものだ)。アリウスの経典、それも否定するということになるけど……」

 

「すべては虚しい?そんな時もあるし人生は長い。一瞬の虚しさを永遠と引きずるのはおかしいんじゃない?『苦しい時や悲しい時もあるけど、そういう時もあるさ』って考えた方が人生楽しめるんじゃないかしから?」

 

 

 

 原作時空のアリウス生では考えられないような性格をしたウイハ。

 

 

 

「……もしかして貴女って」

 

「私はアリウス分校第一部隊の三年生、桝井ウイハ……ま、赤クソババア曰く血が繋がってるだけってだけなんだけど一応はロイヤルブラット、アリウス分校の生徒会長の血脈らしいんだけどね」

 

 

 

 ベアトリーチェは要注意人物を処刑しようとしていたのだ。そこにタンネ率いるマイナリー礦産部隊が雪崩れ込んできたのである。

 

 ある意味原作ブレイクであるが既にアビドスの梔子ユメが生きており、ホシノのメンタルがまともでなおかつ、砂の買取資金で借金返済の手助けをしているとなれば原作などあってないようなものであった。

 

 

 

「それで……話を戻すんだけど、アリウス分校をどうしたい?ウイハ先輩が生徒会長に返り咲いて立て直してもいいし……」

 

「私が生徒会長に返り咲く……か。正直そんなことをしてもアリウス分校を立て直すことは難しいと思うのよね」

 

 

 

 ウイハが言うにはアリウス分校には学園としての機能は既に失われており、教育カリキュラム等はベアトリーチェによって喪失され軍事行動を優先カリキュラムとしていた。この状態でアリウス分校を復興させても何かを学べることがない。

 

 

 

「そこでなんだけど……アリウス分校を統合してくれないかしら?」

 

「ゑ?」

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 マイナリー礦業学園体育館、そこには暖かい食事をお腹いっぱい食べ暖かいベットで睡眠をとったアリウス生の姿があった。何人か涙を流してぐずっているようであるがタンネは気にしないことにしていた。

 

 

 

「えー……、アリウス分校のみなさん……。マイナリー礦産代表、兼マイナリー礦業学園理事長でもある夕張タンネです。皆さんに集まってもらったのは他でもなく……」

 

「……勿体ぶらずに早く教えろ。私たちに一体何をさせようとしているんだ?」

 

 

 

 アリウス生の中から声が上がる。やけにボーイッシュな声だと思い声した方を見ると黒キャップに長い黒髪のアリウス生がいた。

 

 

 

(あそこにいるのって……服装こそ違うけど錠前(じょうまえ)サオリよね。その隣には……やっぱり、槌永(つちなが)ヒヨリに戒野(いましの)ミサキ、そして白洲(しらす)アズサ。間違いないアリウススクワッドのメンバーね)

 

 

 

「……今話そうとしたんだけどね。ま、いいわ。貴女達のいうマダムという大人はもういない。それで暫定的なリーダーの桝井ウイハと話し合ったんだけど……彼女は私達マイナリー礦業学院と共に歩むと言ってくれたわ。貴方達は自由……好きにして過ごしていいの。旅をするのもよし、遊ぶもよし、温かい食事を食べるのもよし、何をしてもいいの。……流石に常識の範囲内でだけどね」

 

「私たちはvanitas(全ては虚しい)  vanitatum et omnia(どこまで行こうとも)  vanitas(全てはただ虚しいものだ) ……そうマダムから教えられて来た。私たちが幸福を望み、夢を見ることは悪とされてきた。今更変わることなんて……」

 

「はいそこ、自虐的にならないの。別に私達と一緒に歩むことを強制しているわけじゃないからここが合わなかったら出ていくのもいいし、残るのも自由。とりあえず、1ヶ月体験入学をしてから決めてもいいじゃない?ね、ウイハ先輩?」

 

「私に振らないでよ……タンネの言う通りよ納得がいかないかもしれないけれど今のままじゃどの道アリウスの未来はないと思ったの」

 

「じゃ、じゃあアリウスの名前は消えちゃうんですか?」

 

 

 

 アリウス生の一人から声が上がる。確かにアリウスの名前を残したいという声があることをタンネが忘れていた。

 

 

 

「そうね……これからはマイナリー=アリウス二重学園とでも呼びましょうか」

 

「いくら理事長の地位にいても勝手に決められても困るのだけれど?」

 

「アリウスの名前が残るのはいいけど……しっかりと話し合ってから決めたほうがいいんじゃない?」

 

 

 

マイナリーとアリウスの両方からツッコミが入ってしまった。

 




マイナリー=アリウス二重学園の元ネタはみなさんご存知(?)オーストリア=ハンガリー二重帝国です。
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