タイトルはタイトル通りです。赤ババア滅ぶべし。
タンネがギヴォトスにやって来てから季節が1巡する。その間、マイナリー礦産はその規模を大きくし、他の退学処分を受けた生徒やブラックマーケット周辺のスケバン、不良、小規模なヘルメット団を吸収して拡大しアルバイトを含めると従業員は300人を超えた。
また、スパリゾートの建設も順調に進み、外観はほぼほぼ完成し駅との直結通路も完成、あとはプールといった内装を施せば開業が可能となっていた。
マイナリー鉱山も開発が進み、地下にはアリの巣のように坑道が張り巡らされていた。そんな暗闇の中、ツルハシやドリルの駆動音が響く。立て札には第13坑道と書かれており、覗いてみれば頭の上にヘイローが浮かんでいる少女たちが防塵マスクを装備しつつ、ドリルやシャベル、スコップ片手に坑道を掘り進めていた。
作業着にツルハシとスコップが描かれた校章をあしらった彼女たちはマイナリー礦産のアルバイトやマイナリー礦業学院の生徒たちで、それぞれ住み込みのアルバイトや社員、学院生として新たな鉱脈を見つけよう掘り出そうとしていた。
そんな中、赤ヘルメットを被った班長が時計を確認しつつ声を上げる。
『……そろそろ定時だ。おーい、きりの良いところで切り上げるぞー!今日のメシは焼肉定食おかわり自由だぞー!』
『りょーかいッス姉御!だけど今日は成果なしっス……』
『まぁこんな日もあるからな。ご飯と寝床とスイーツ食べにいったりする金が出るから文句はないけどさー』
鉱山第二班長の
『1、2、3……総員9名っと、あれ?もう1人どこいったの?』
『あっちの方でツルハシ片手に掘ってたと思うんスけど……』
10人で作業開始したはずであるが1人足りない。探そうかとクロエが考えていると小さな振動が発生する。どこかで落盤でも起こったのだろうかと能天気に話している暇などない。もし落盤や崩落で出口が塞がれてしまえば脱出できなくなる上、酸欠となり最悪死に至ってしまう。
『あっ!クロエ班長!大変!大変です!』
振動が収まると居なくなっていたはずの白ヘルメット作業員の一人がひょっこりと顔を出した。どうやらケガらしいものもなく、無事のようである。
『危ないでしょ!一人で作業するなと言ったはずよね!崩落で生き埋めになったりしたらどうする!』
『すいません……でも!そんなことよりもすごいものを見つけましたよ!来て下さい!』
興奮したような白ヘルメット作業員がクロエを案内していくとそこには崩れた岩とそして明らかに人工物といえる赤っぽい壁がそそり立っていた。
『……この壁はいったい何?タンネの事前調査で見つからなかったけど……遺跡なのかしらね?』
壁を叩いてみると煉瓦のようであるがかなり古そうである。タンネの事前調査ではこの辺りに建築物や地下施設は無かったはずである。
『とりあえず社長に相談ね。今日のところはひとまず引き上げるよ』
『『『はーい』』』
電動式のトロッコで細い坑道から太い中央坑道へ、そして地上へと伸びる中央エレベーターまで移動すると他の坑道に潜っていた赤ヘルメット班長や白ヘルメット作業員と合流する。
『お疲れッス、どうだったッスか?』
『こっちはさっぱりだったわ。アイリやマナコの方は何かあった?』
『小さな鉄鉱脈をみつけたッス!』『私は石炭層を』
『こっちは変な煉瓦の壁を見つけちゃったよ……報告に行かなきゃいけないしそっちが羨ましい』
軽口を叩きつつ作業員達が向かったのは温泉『平台礦泉』、偶然掘り当てた泉脈を引っ張ってきた天然温泉である。疲労回復に良いとされていて……一時期は温泉同好会に見つかった時は開発されそうになったがタンネの転機によって共同開発となり破壊は避けられた。
汗や土埃を流したあとで平台礦泉の二階で夕食、今日の日替わり夕食は肉と野菜たっぷり焼肉に白米と味噌汁がついた定食である。米と味噌汁はおかわり自由で食事を終えたら後は自由時間、遊ぶなり買い物するなり自由な時間となる。
しかし、今日はそうもいかない。白ヘルメットや他の赤ヘルメットたちが自室へと向かう中、第13坑道を担当していたクロエは『生徒会室(社長室)』と書かれた扉の前にいた。
「タンネ、ちょっといい?」
「クロエ?入っていいよ」
生徒会室にクロエが入るとタンネとヒイラが書類の山を片付けていた。ちらりと書類を見れば決算書類やセイント・ネフティス社やアドビス高校との取引書類が積み上がっていた。
「あらクロエ、貴女がここを直接訪れるなんて珍しいじゃない。何か珍しいオーパーツでも見つけたのかしら?」
ペンとハンコを走らせながらクロエの言葉を待つタンネ。言いづらそうにクロエは壁のことを話した。
「第13坑道で奇妙な壁を掘り当てたわ。事前調査じゃ見つからなかったものよ」
「……奇妙な壁?あそこには人工物は無いはずよ。一体どんな見た目だったのかしら」
「古い煉瓦みたいだったわ。……もしかしたら壁の向こうに何かしらの遺跡があって珍しいオーパーツがあるかもしれないわ。明日発破をかけて中を確認してみるけど……」
古い煉瓦と聞き、作業をしていたタンネの手が止まる。……しかしその顔は眉にシワが寄り、やや不機嫌そうな顔をしていた。
「……明日の発破は待ってもらえるかしら。3日後、私も一緒に行くからそのつもりでいて頂戴」
「わ、わかったわ……」
「それと……念の為に全員で向かうわ。発破作業までの間は当面の採掘作業は停止、その上で完全武装して第13坑道に集合、他の
「……随分と厳重にするのね。なんか悪い予感でもするの?」
クロエが立ち去った後、書類に一区切りつけたヒイラは疑問を持ったようにタンネに問いかけた。
「前もこんなことがあったでしょ。あの時は確か……遺跡とオーパーツはあったけど暴走ドローンが大量に襲いにかかってきたでしょ?今回もそんなことがあるかと思ってだよ」
「確かに、あの時は坑道まで侵入してきちゃったからね。用心に越したことはないしね」
(……黒服が言ってた遺跡ってやつかしらね。前にそんなのを見つけた時は警備ドローン満載で大変な目にあったけど……遺跡じゃなくても地下に埋まってる煉瓦の壁?……もしかして、アリウス分校?なら、ちゃんと準備しないと)
タンネが生徒会長室の隣にある生徒会準備室へと入ればそこにはツルハシとスコップに加え、防弾チョッキにライオットシールド、さらにはマシンガンのほかロケットランチャー、ショットガンやサブマシンガン等が陳列されていた。
「とりあえず愛用のオートマチックショットガンと……ライオットシールドはいらないか。サブでグリズリーと……一応これも持っていくか。っとそうだそうだ」
タンネが思い出して何処かへと電話をかける。宛先は『小鳥遊ホシノ』であった。
「あーもしもし?ホシノ?そっちの様子はどう?うん、うん。それなんだけどね。3日後にこっちで大規模な作戦をするから……そうそう全員こっちに寄越してー。うん、よろしくー」
◆ ◆ ◆
3日後……第13坑道の煉瓦壁前には各々武装した上、防弾チョッキにタクティカルヘルメットを装備したマイナリー礦業学院の生徒やマイナリー礦産のバイトや社員たちが集まっていた。ご丁寧に機関銃陣地まで拵えて未だ目に見えない外敵を迎え撃つ準備は万端であった。
「準備はいいかしら?」
「はい!社長!いつでもいけます!」
「よし、発破するよ!戦闘用意!」
「退避ー!退避ー!発破するぞー!」
土嚢の裏へと退避する生徒たち、全員の退避が完了したのを確認してスイッチを押した。
「発破!」
煉瓦壁に穴をあけて設置していたダイナマイトに点火し爆風と粉塵がタンネとマイナリー礦業の関係者たちへと襲い掛かる。土埃が収まるまで暴走ロボットやら銃弾が飛んでこないところを見るに比較的安全のようであった。
「今のところ……安全そうね。第一分隊と第二分隊、それと第三分隊は私に続いて頂戴、残る四、五分隊はここで防衛をお願い。必要に応じて応援を要請するわ。それと無線はいつでも取れるように」
「了解っス」「はい」「解りましたわ」
ダイナマイトで発破し崩れた穴からタンネ、第一分隊と第二分隊、そして第三分隊が未確認建造物の中へと突入していく、どうやら長年使用されていない場所のようで等間隔で石が並べられていたり四角い石がところどころに設置してあった。
「んー……過去に遺棄された場所っぽいス。でも見た感じ廃墟っぽくないっスけど……社長?顔真っ青っスけど大丈夫っスか?」
「……トリニティの地下に広がるとされてる
「りょ、了解っス」
(カタコンベ……ということは間違いなくアリウス自治区に繋がっている。だとすれば洗脳教育を受けたアリウス分校生徒、それからマダム……通称ベアおばことベアトリーチェがいるはず。ちょうどいいわあのクソババアをぶっ殺せるのなら)
固まっているとアリウス生徒に見つかりやすくなるので第一、第二分隊に分散の指示を出して探索を進めていくと足音がした。物陰に隠れるとガスマスク姿の女子生徒たち、間違いなくアリウス分校の生徒たちであった。
「第二小隊、彼女たちを無力化して」
『ザッ……了解しました』
彼女たちが通り過ぎたところで第二小隊が背後から強襲し発砲せず銃器で気絶させて即座に無力化する。
『対象の無力化を完了しました』
「よくやったわ。第三分隊は彼女たちの保護、おそらく目が覚めたら栄養失調と精神的不安から来るストレスで暴れるかもしれないから地下牢に収容、平台礦泉の女将さんに要請して温かい食事を用意して」
『第三分隊、了解』
その後もアリウス分校生の小隊と数回接触したものの難なく撃破して保護しながらカタコンベを探索していくと広い地上のような空間へと出る。
だが昼の時間にしては薄暗い。空を双眼鏡で覗き込んでみればどうやら空に見える場所には有機パネルのような物が張り巡らさており、擬似的な空を作り出しているようであった。
電気は来ているようだが照明は少なく、全くといっていいほどに人の気配が無かった。
「見事なまでに廃墟群ね……何処から敵が出てくるか分からないから気をつけて」
『社長、ここから1キロ先に校舎のようなものと聖堂?のような建造物が見えます。それに何か……赤い人型のようなモノと生徒たちが集まっています』
(聖堂ね……赤い人型がいたとすれば間違いないベアトリーチェがいるとしたらここね)
何度目ともなるアリウス分校生の保護をしていると第三分隊のマナコが高所から偵察した情報を伝える。
「その赤い異形がここの親玉よ。準備が整ったら全部隊で突入するわ。用意しておいて」
『了解』
哨戒を無力化しつつ近寄った聖堂ではアリウス分校生の他に無数の眼を持ち赤肌の異形が、床に横たわっている少女たちを睨み付けていた。
「私は何度もいいましたよね。次は失敗をするな……と」
「マダム……申し訳ありませ……」
「言い訳は聞き飽きました。貴女たちはもう必要ありません」
「そんなっ!……マダム!マダム!」
『突入しますか?』
「ええ、このままだと彼女たちの命が危ういわ。タイミングを見計らってこのまま突入、制圧する」
『『『了解』』』
少女たちはバシリカ横に埋め込まれていた鉄道のレールに手足を拘束されて目隠しをされる。そこから少し離れた場所ではARを構えた別の少女たちが赤い異型の合図を今か今かと待っていた。
「マダム!話を聞いてください!」
「煩いわね……よく狙って一撃で仕留めなさい」
「あら、随分と穏やかな雰囲気じゃなさそうね。『私たち』も混ぜてもらえるかしら?」
「「!?」」
タンネの言葉に驚いたのか全員が声のした方を向く。すると同時に閃光手榴弾が数個炸裂して異形と少女たちの視界と聴力を一時的に奪う。
「突入!突入!」
閃光手榴弾が炸裂するとマイナリー礦業学院の第一、第二分隊、第三分隊が突入し、銃を持っていた少女たちを次々と銃撃して無力化する。
「一体誰なんですか!?私をアリウス分校の生徒会長だとわかっての狼藉……」
「第三分隊!あの赤いクソババアに向かってMGとLMG、それにGLをあるだけ叩き込んで!」
「了解!撃ち方はじめ!」
異形のおぞましい悲鳴とも絶叫とも取れる声が聖堂一杯に広がるがお構いなしに第三分隊はマガジン全てを打ち切るまで射撃を実施する。
「私に手を挙げるなんて……よくもよくも!」
ベアトリーチェが恨み節を言うが様々な銃声、爆発音にかき消されてタンネの耳には聞こえなかった。
「次弾装填!」
第三分隊がワザとらしくリロードの合図をすれば好機とみたベアトリーチェが異形の姿をとり、その牙をタンネたちに向こうとしていた。
「全く、私の大事な社員たちにそんな汚い物を見せつけないでください。正直反吐が出ます」
そんなベアトリーチェを見過ごす訳もなく、隙をついて突貫したタンネがAA-12のマガジン32発、その全てをベアトリーチェの身体という身体へと撃ち込んだ。全身が穴だらけの満身創痍で立つことすら儘ならないベアトリーチェは多数の眼でタンネを睨みつけていた。
「おのれ……道具ごときに私が……手駒としてこき使ってくれよ……」
「黙れ。そのうるさい口をさっさと閉じろ。人間を道具としかみてない外道者が」
AA-12を背負い直したタンネ両手はポテトマッシャーにビニールテープでダイナマイトを何本も括り付けた即席結束手榴弾を持つと信管を抜き、動けないベアトリーチェの口に枝を咥えさせて蹴りを入れる。えずいているベアトリーチェから逃げると同時にやや大規模な爆風と土煙が上がり、即席結束手榴弾が炸裂する。
それが晴れた後には窪んだ床と破片、ベアトリーチェの姿はどこにも無かった。恐らくは空間に生じた穴の中を通り抜けて消え失せたのであろうが、頭のあたりには血痕が残っており一定のダメージが入ったのは確かであろう。
「逃げた……?まぁいいわ。各隊状況は?」
『第一分隊、鎮圧完了、負傷者なし』
『第二分隊、敵の反撃を受け一名負傷』
『第三分隊、弾薬欠乏』
「大丈夫そうね。この子達は非武装化して本校舎に帰還する。第四、五分隊に応援要請、待機している子たちも呼んできて」
『了解!』
こんな薄暗い場所とはおさらば、気絶したアリウス分校生たちを拘束して運び出す。念の為発破した出入り口に機銃陣地と警戒兵をたたせておく。もし確保できなかったアリウス生が襲撃に来てもおそらく大丈夫であろう。
あわれベアおばは爆発四散(未遂)(や↑ったぜ)