コロナでもインフルエンザでもないのが幸いでしたが……。
「タンネ、無事に石炭の鉱脈を見つけられたのはいいけどどうやって運ぶのかしら」
石炭鉱脈とその後に鉄鉱石の鉱脈見つけてから数日後、生徒会室の一角を占拠した社長室でヒイラからこの質問を受けた。今のところは屋外に採掘した石炭や鉄鉱石の山を作ってトラックを借り上げてセイント・ネフティスグループの発電所に売り出している。
カイザーグループからも声がかかったがタンネが丁重にお断りさせてもらっていた。
「確かに埋蔵量は膨大、今はトラックを使ってセイント・ネフティスグループの発電所や鉄工所に売りさばいてるけど距離が遠いしいずれは限界を迎えると思う。となれば大量輸送ができてなおかつ定時性に優れるものといえば……」
「……それは鉄道しかないわよね」
どこからもってきたのかハイランダー鉄道学園発行の路線図・時刻表をみつつ考えてみる。
「1番近い駅は……だいたい18キロ離れたトリニティ-ゲヘナ線のマウ・メープル駅か。ここから支線を引っ張ってくるのが1番かしらね」
「確かにそこから近くのトリニティ自治区内のセイント・ネフティスの発電所と製鐵工場まで専用線が伸びてるけど……そんな簡単に線路を引っ張ってこれるの?」
「ま、そこは交渉と金次第ってところじゃないかしら。ちょっとハイランダーの
タンネはバイクを走らせること30分ほどハイランダー鉄道学園、トリニティ-ゲヘナ線のマウ・メープル駅を訪れてそこの責任者からCCCに連絡をつないでもらった。
「申し訳ございません。只今担当者が向かって来ているのですが……少しお待ちいただくことになりそうです」
「構わないわ。ここで待たせてもらってもいいかしら?」
担当者が到着したのはそれから45分ほど経ってから、担当者が到着したとのことを駅員から伝えられ応接室に通される。そこにはCCCの制服を纏い、黒い髪をシニヨンにしてまとめた身長160センチ後半の少女がいた。
「おまたせしてしまって申し訳ない。私、ハイランダー鉄道学園CCC役員の富士ツバメと申します」
「マイナリー礦産兼マイナリー礦業学院理事長の夕張タンネです。今日は要望がありましたのでこのような場をもうけていただきありがとうございます」
「いえいえ、こちらも待たせてしまったので……それでは早速交渉と移りましょうか」
応接室にはマイナリー礦産側は夕張タンネ、ハイランダー鉄道学園側は富士ツバメと書記官として一人のハイランダー生がいた。
「私の提案としてはマウ・メープル駅から路線を敷設し、マイナリー礦業学院までの18.8キロの線路を敷設していただきたい」
「マイナリー礦業学院ですか?失礼ですが理由をお聞きしても?」
「当校で採掘された石炭や鉄鉱石をセイント・ネフティス社所有の鉄工所や発電所に輸送したいのです」
ふむふむ……とツバメは電卓とペン片手に計算を始める。
「全線複線か交換駅を設けた単線にするかによって値段が変わりますが……」
「そうね、旅客はそこまでじゃないと思うし平台中心街とマイナリー礦業学園に駅を設けて残り3箇所ぐらいには交換設備を設けた信号所を作って単線、全線非電化でいいんじゃないかしらね」
「なるほど……では次です」
その後もツバメからタンネへの質問がいくつか投げかけられる。どのような形で敷設するのか、総貨物量はいくらか、運行本数はどれぐらいか等細かいことを聞かれそれを一つひとつ丁寧に答えていく。
すべての質問を終えたところでツバメの手も止まる。
「ご要望をすべて叶えたとすれば……このぐらいの値になるかと」
電卓に表示された数字をみれば莫大な金額が……無かった。そこまで高い金額ではなく、セイント・ネフティス社からの支払いで十分賄えるような金額であった。
「……予想よりも安いですね。一桁計算を間違えてませんか?」
「いえ、計算通りとなっています。正しくはですがセイント・ネフティス社と平台信用金庫が建設費負担すると申し出ているのです」
平台信用金庫は理解できるがタンネにはセイント・ネフティスにそんなに恩を売った覚えはない。強いて言えばあの油田を売ったり、石炭や鉄鉱石を売りつけたぐらいである。
「まぁ、敷設できるなら敷設しましょうか。いつからできるのかしら」
「そうですね……早くて明日、遅くとも明後日には敷設を始めることになりそうです」
「ず、随分と早いわね。ならお願いするわ」
無事に敷設の契約を取り付けられたので応接室から出る。『何かあればCCCまで。またのご利用を』とツバメに見送られてマウ・メープル駅を後にする。トントン拍子で行きすぎてない……?と思いつつも敷設できることになったのでひとまずはおいておこうと考えた。
「おかえり~、どうだった?」
「早ければ明日から敷設はじめるって。」
「随分とはやいねぇ~」
タンネが戻るとヒイラが人を駄目にするソファーでぐでーっとしていた。急に環境がガラリと変わってしまったのでまぁ仕方のない事だと思う事にした。
「鉱山の方は?何も問題はなかったかしら?」
「今のところはなーんにも問題はなし、スケバン三人衆とゆるゆるヘルメット団の団長が監督してくれてるから上々、もっと人手が欲しいって言ってるよ」
採掘量をまとめた資料に目を通すと確かに大きな問題は見当たらなかった。
「人手ねぇ、確かに沢山欲しいけど……ブラックマーケットで大々的にバイト募集でもしてみる?」
「確かにアリね。流石に他の自治区からの引き抜きはちょっとね……」
「会長!それに社長もいましたか!大変っス!大事件っス!」
「どうしたの?何かあった?」
大慌てでスケバン三人衆の一人、小坂アイリが生徒会室に駆け込んできた。ただならない雰囲気を醸し出していたので二人とも身構える。
「第三坑道で事故っス!突然水が吹き出して第三坑道の末端部分が水没したっス!」
「なんですって!怪我人は!逃げ遅れはいない!?」
「ヘルメット団のアルバイトが逃げようとして数人怪我をしてるっス!逃げ遅れは今の所確認してないっス!」
「今すぐ向かうわ。他の班も今日以降の操業は一旦中止!バイトには満額と少し色をつけて返して!」
「りょ、了解っス!」
一難去ってまた一難である。
大急ぎで立坑へ向かえば排気口として整備した場所から大量の煙が立ち上っていた。立坑のエレベーターは動いているようであった。
「社長、お疲れ様です」
「……状況は?」
「第三坑道の末端4~5メートルが水没しています」
「状況は大分悪いようね。大量の煙が上がってるみたいだし内部で火災も発生してるようね」
「いえ、この煙は……」
「蒸気の湯気です」
「はい?」