ブラックマーケットにある廃墟のビル、そこはゆるゆるヘルメット団の拠点であった。一応ヘルメット団を名乗っているけどカタカタヘルメット団やジャブジャブヘルメット団といった大ヘルメット団とは違い団員数は少なく、車両も3式中戦車改が一両しかいないためブラックマーケット周辺で日雇いの仕事をこなしながらその日暮らしをしていた。
日雇いの仕事なので日によってバイトがあったりなかったりするので稼ぎが全く無い日も多々あって、満足な食事をとれないこともある。
この日も割の良い日雇いバイトを見つけられず、エンジェル24の裏からかっぱらってきた賞味期限切れのコンビニ飯にこれまた飲食店の裏から拾ってきたパンの耳や肉の切れ端を炒めた物が今日のご飯だった。
「またパンの耳炒め……たまには美味いものをヘルメット団全員で喰いに行きたいね……」
「仕方ネェっス、仕事見つからなかったんスから」
リーダーである赤ヘルメット、久保田トキネがため息を付きながら賞味期限切れのおにぎりとパンミミ炒めを口にして、満足とはいえない食事を終えて拠点にしている廃墟で睡眠を取ろうとしているときに見張りで立っていた黒ヘルメットの一人が報告に訪れる。
「隊長、八橋と名乗るスケバンっぽい人物が隊長を訪ねてきましたけど通しますか?」
「八橋?元ヴァルキューレの八橋か。通していいよ」
しばらくすると黒マスクにロングスカートセーラー服を来たスケバン、八橋クロエがいた。
「久しぶりねトキネ。元気にしてた?」
「元気……といえば元気かもね。いつもは取り巻きの二人と一緒に来るけど今日はどうしたの?」
「ふたりとも知り合いの伝手で人集めをしてる。今回きたのもその稼げる仕事を一緒にやらないかって話だったんだけど……」
「へぇ、詳しく聞かせてもらってもいいかしら」
いつの間にか他のヘルメット団員が集まっている中、クロエはタンネから説明された仕事内容をそっくりそのまま伝える。時給4000円の1日6時間の休憩あり。休憩時間も勤務時間に含む。といったことを話すと訝しんでいた。
「日雇いのバイトなんだけどそれでも三食出るし将来的には住み込みで働いたり、復学もできるようにするって言ってたよ」
「……ホワイトすぎて逆に怪しいわね」
「でしょ?で、やってみる?」
「ゆるゆるヘルメット団全員が参加できるなら行くわ」
じゃ決まりだね。とクロエは何処かへと電話を掛ける。宛先はタンネであった。
「もしもし。私だけど……ゆるゆるヘルメット団が全員参加するって……うん、うん。わかった。それじゃ」
「明後日からマイナリー礦業学院まで来てほしいだってよ」
マイナリー礦業学院?と集まっていたゆるゆるヘルメット団全員が首を傾げる。
「ああ、元平台高等学園だ。最近学校名を改名したのよ」
それから2日後、3式中戦車改にタンクデサントしてきたゆるゆるヘルメット団の姿は他に誘われた不良生徒たちと共にマイナリー礦業学院の校舎にあった。
絶賛修復中といった風の校舎には足場が組まれ、業者……オータム建築学園の生徒たちがせっせと修復作業をしていた。
その作業を横目に見つつ、校舎内に入れば作業着の支給やツルハシやスコップ、ドリルの供与が行われてから地下へと潜ることになっていた。
黒セーラー服から傭兵バイトたちが来ているような作業服へと着替えたら校舎の外、数百メートルほど離れたところまで歩き、鉄塔の下に巨大なゴンゴラのようなものがあるので乗り換えて地下に潜る。
降下中、恐る恐る下を覗き込んでみるヘルメット団員や不良がいたが一定間隔で照明こそあるものの底は見えず、暗闇が広がっていた。
10分ほどゴンドラで降りていくと地底へとたどり着き、続々と下車していくと巨大な倉庫のような場所へとたどり着く。そには同じような格好をしたタンネやヒイラ、スケバン三人衆がいた。
「全員そろったようね。私はマイナリー礦産社長をしている夕張タンネ。今から貴女たちの仕事内容を説明させてもらうわ……その前に」
何処から取り出したのかラジカセが準備されてラジオ体操が流される。気だるいと思いつつも社長自らがやっているので参加者全員が参加してラジオ体操を行ってから仕事内容の説明が始まった。
仕事内容としては事前に伝えた通り鉱物資源の採掘を行うこと。この地下には石炭、もしくは鉄鉱石の鉱脈が走っておりそこを目指して坑道を掘り進めるとともに新しい鉱脈を見つける……というもの。
「それに加えてオーパーツと呼ばれるものが見つかることもあるわ……こんな感じのものね」
見せてきたのは宝石のようなものから何か紙のようなものと、到底お宝には見えないものばかりであるがペロロのようにマニアにとっては喉から手が出るほどほしいものなのであろう。
「一覧を貼っておくから何か見つけたら確認して頂戴。ここまでで何か質問はあるかしら?……何かあれば私かヒイラ、スケバン三人衆に聞くこと。それじゃあ今日も一日ご安全に!今日もゼロ災でいこう!」
「「「ご安全に!」」」
ゆるゆるヘルメット団は夕張タンネが責任者を務める第一坑道に配置されて早朝ミーティングではまかないきれなかった
「現場の初日はもっとも労働災害が発生しやすいから特に注意をすること、私の指示通りに掘っていけば崩落の危険性は無いと思うから気をつけて。……何か質問は?」
「あのー、いいッスか?」
「ん?貴女は……」
「ゆるゆるヘルメット団副団長の十和田ワンコっス……これ必ず必要あるんスか?」
「そうだけど……?万が一がないようにね」
ミーティングが終わり作業開始のベルが鳴る。岩をドリルやツルハシで砕きながら掘り出してあらかじめ敷設しておいた坑内トロッコに乗せて地上へと運ぶ。これを何回か繰り返していると岩と岩の間に黒い層のようなものが見つかった。
「姉御-、これ何スか?」
「どうしたの……これは大当たりね。この黒い層は全部石炭、おそらく埋蔵量はどんどんと増えていくわ」
「ガッコの授業で少し見ただけッスけどこんな感じで埋まってるもんなんスね」
そこからは黒光りする鉱石がびっしりと詰まった層が視界いっぱいに広がる。これが全部石炭……?と思うほどに石炭を乗せたトロッコがひっきりなしに往復する。
時がすぎるのを忘れて石炭を掘り出しているウチに昼の休憩時間を知らせるベルが鳴り響く。ここで一旦作業は止めて昼食の時間となる。再びトロッコに揺られて朝礼を行った中央エレベーターへと戻るとそこには人数分の椅子と、テーブルに乗せられた大きめの丼飯が用意されていた。
「店長、準備させてごめんね」
「いえいえこれほどの稼ぎ、ブラックマーケットじゃ出せねぇからな」
「いっそのことこっちに本店移転させたら?ブラックマーケットは支店にしてさ」
御用商人のようにタンネとロボ市民が会話をする。どうやら彼がこの食事の用意をしたようであった。
「さ、冷めないうちに食べましょうか」
丼の蓋を開けるとそこには黄金色に上げられた大きなとんかつを卵で包みこんだカツ丼がそこにはあった。肉体労働の後にそれも、肉と炭水化物であるほかほかのご飯。誰もがよだれを流しかけ我慢など出来るはずもなくがっついた。
ヘルメット団に至っては久しぶりのまともな食事である。すこし甘く仕上げた卵とじの味が疲れた体に染み渡り、それが優しい甘さのご飯とまたよく合う。頬張ったとんかつも肉厚食感で、あちこちから「うまい!」という言葉がこぼれていた。
「店長、以外と料理もいけたのね。やっぱりうちで専属の食堂ひらかない?それ相応の報酬は支払うわよー」
「お褒めの言葉ととらせてもらうよ。そして報酬は魅力的だけど今回は遠慮させてもらう」
「あらそう残念ね」
全員が夢中で箸を進め、いつの間にか平らげており、すこし物足りなさそうにしているのがちらほらといる。
「カツ丼じゃないが……おかわりもあるぞ」
店長の言葉に次々と立ち上がって一列に並ぶ。ほとんど全員が列へと並び二杯目にがっついていく。デザートのプリンを食べ終えた後は各々昼寝をするなり、スマホで遊ぶなりして休憩時間を過ごし午後の作業が始まる。
第一部の労働が終わると第二部の人員との交代の時間がやってきた。タンネは再び地下へと潜ったがその代わりにヒイラが地上へと上がりゆるゆるヘルメット団や不良生徒へ今日の分の日当を手渡していた。
「お疲れ様、今日は初日だから少し色をつけてってタンネにお願いされたから……明日もよろしくね」
給料をもらって解散となる。校舎の横をみると寮のようなものを建築しており、それが完成すれば住み込みで働けるようになる。それまでは日雇いとして働くこととなっていた。
「それじゃ今日の作業はここまで!」
「「「ヒイラさん!お疲れ様でした!」」」
「お疲れ様でした。オータム建築学園の皆さんもお疲れ様、明日もよろしくお願いします」
こうしてゆるゆるヘルメット団の一日が終了した。お腹いっぱい食べられて給料も出る。明日もまた来ようと心に決めたヘルメット団員たちであった。
始業前ミーティングは労働災害防止に効果があります。しっかりと参加しましょう。