ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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ケルシーエミュが難し過ぎる。


真実の一端

 丸太のように太く、それでいて鞭のようにしなやかな尻尾が弧を描きながら振り回される。その巨体からは想像もつかない敏捷さで迫るそれを、反射的にランチャーを盾にしてガードする。ガキィィィィン!!と弾くパリィ。耳鳴りのような高い音で弾いたそれに、ニコは戦慄する。

 

(今の見えなかったわよ!?)

 

 防げたのは全くの偶然。突然飛来するものに対して、目を瞑り身構えてしまう一種の反射行動のようなものが、たまたま防いだだけ。それでいて、受け止めた時の衝撃は防いでなおビリビリと手にその跡を残す。何度も受けていられない威力だ。

 エーテリアスとの戦闘は幾度なくこなした。未知の遭遇は決して初体験ではない。即座に攻めに転じるニコの判断の速さは、そこらのホロウレイダーとは一線を画すものだった。

 

「喰らいなさい化け物!」

 

 ガシャコン!とアタッシュケースが変形し、でかい銃口が顕になる。そうして引き金を弾く。反重力的な力場を発生させるエーテルランチャーだ。例え強力なエーテリアスであろうとその効果からは逃げられない。ドォンッ!!と銃声にしては大きく派手な音で飛んでいく。化け物はそれをゆっくりと首を動かして見る。そして──

 

「嘘でしょ──ッ!?」

 

 喰った。ギチリ、と音を鳴らして大きな顎を開け、一口に。呆気なくパクりと食べられてしまったそれは、化け物の内部で炸裂したはず。起きた変化と言えば表情を少し険しくした、様に見えたくらいか。もっとも、この化け物に感情表現をできるようなものがあるのかは疑問だが。

 

「──」

 

 化け物は、再び口を開ける。何をするのかと身構えるニコの耳に入るのは、甲高い音だ。旅客機のエンジンが、動き始めた時に聞こえるあの音。キィィ!!と次第に高くなっていく音に、その正体を悟る。あれは、大きく息を吸い込んでいるだけだ。その量が余りに大きいが故に鳴る音がこれだ。

 

「まさか──」

 

 ニコは、その行動の意味を考え、嫌なことを考え付く。呼吸は吸うだけで終わるものではない。当然、吐く。呼吸とはそう言うものだ。では、今この化け物は吸った後に、何を吐き出すのだろうか?この巨体であれば、当然、それに見合ったものを出すだろう。カッ、と化け物の口が仄かに光を放ち始める。それはつまり。

 

「伏せなさい!」

 

 まだ近くにいるであろうイアスに叫びながら、ニコも今いる場所をとにかく離れる。障害物もないこの空間で、なんとか狙いを散らさなくてはならない。的を絞らせてはいけない。そうして満を持して放たれるのは、極光。まるで映画のような冗談みたいなビームが口から放たれたのだ。ニコの真横を通過したそれは、激しく床を焼いた。横目で見れば、金属製だろう床が溶けていた。

 

「──Mon3tr」

「──!」

 

 こんな化け物をけしかけたあの女は、それを見て、無表情のままジト目であの化け物の名前を呼ぶ。それを見た化け物は、頭を少し下げた、ように見えた。再びこちらに向き直る化け物は、先ほどより少し迫力が落ちたようにも見える。これならやれる、そう思った。しかし、ニコが瞬き一つしたら、目の前に広がっていたのは、化け物の口内だった。

 

「え──」

 

 

 ニコには悲鳴をあげる暇すら、与えられることはなかった。

 


 

 全速力で走って、光のある空間へ足を踏み入れたアンビーが見たのは、誰かの足だけが口から突き出る化け物の姿だ。突然の事に驚くが、何処か冷静な部分が、突き出た足を見ていた。あれは、誰の足なのか。肉付きのいい、語弊を招くかもしれないが見慣れた足だ。それはつまり、ニコの──

 

「──ッ!!」

 

 瞬間、脳内が沸騰する。普段なら正面から当たることを避けるであろう巨体の化け物に、衝動のまま鉈を引き抜き切り掛かろうとするアンビーの耳に誰かの声が聞こえた。

 

「ちょ、離しなさいよ!!!あっ、ヨダレ!ヨダレが顔にぃ!」

 

 あれ、と沸騰した頭が急激に冷えていく。思いのほか、余裕がありそうな声だった。なんなら喰われて死んだんじゃないかとすら思ったのだ。化け物は満足したのか、ペッ、っと吐き出した。落ちて床に尻餅をつくニコは、頭から足までヌルヌルとした液体に塗れていた。

 

「なによこれぇ……!」

「ニコ、大丈夫?」

『ニコ!』

 

 急いで駆け寄るアンビーの表情は、少し硬い。何かされたのではないかと心配した。アキラが操るイアスもまた、大丈夫かとニコのあちこちをペタペタと触っていく。

 

「これで頭も冷えただろう」

 

 でかい化け物の足元からひょっこりと顔を出す女性。改めて武器を構えるが、相手にその気はないようだった。

 

「改めて自己紹介と行こうか。私はケルシー。フィラ──ヴゥン、アナハイム社の医療主任をしている者だ」

 

 Mon3tr、と化け物に声をかけ、その足にノックすると化け物はシュルシュルとその姿を小さくし、ケルシーと名乗った女性の背中へと消えた。こちらからは死角になってわからないが、ぐじゅりと粘着質な音からするに、真っ当な消え方ではなさそうだった。

 

「そちらは……自己紹介もいらないか、侵入者なのは変わらないからな」

「何なのよここは!それにさっきの化け物も!」

 

 ベタベタになった体を気持ち悪そうに見回しニコは憤慨したまま怒鳴る。何ともなさそうな無表情のまま、ケルシーは続ける。

 

「ここはアナハイム社が所有する倉庫の一つ、では納得しないだろう?」

 

 その言葉に、無言のままケルシーを見つめる。それはきっと、ニコもアキラも同じだ。死ぬかもしれない目に遭ったのだ。そのくらいの説明は欲しい。

 

「……何から説明したものか」

 

 ゴソゴソと、思案するケルシーはその白衣のポケットからドリンク缶を取り出し、プルタブを慣れた様子で開けた。缶にはデカデカと『理性回復剤』と書かれていた。ゴクリ、と一口飲み、こちらに向き直る。

 

「いるか?飲むと目がよく覚める。私の自作エナジードリンク、効果はお墨付きだ」

「話を逸らさないで、ここは何?」

 

 虚偽は許さない、と手に持つ鉈を徐に動かす。

 

「……まず前提から話そう。アナハイム社は兵器産業を生業とする企業だ。卸先は防衛軍や治安局、ホロウ調査協会なんかもそうだ」

 

 それは事前に調べた内容で皆知っている。聞きたいのはその先だ。こんな設備が必要とは思えない。なんらかの狙いがある筈だ。

 

「と、なると当然用途はホロウ内に存在するエーテリアスが主な利用目的になる。兵器にも耐エーテル処理が必要になるし、それを扱う人に対するエーテル侵蝕抗体も必要になる。それらは無から出来るわけもなく、こうしてここで生産されている。まぁ、理論やその製法はタイムフィールドが特許を持ってる為それほど専門でもないが……」

 

 それだけなら、こんな実験室のような空間は必要ない。

 

「あぁ、この部屋か?シミュレーション室だ。どっちかと言えば社長の方針による私用の為、と言うのが正確だろう。最近だと彼の秘書がよく使っていたが」

「そんな事はどうでもいいのよ!私達がこんな目に遭ったのだって、元を正せばこの会社の兵士のせいなんだから!」

 

 ニコはそう憤慨する。いや、とはいえ侵入したこちらが圧倒的に悪いのでは?とアキラは思ったが、こう、太々しさがニコのいい所だ。

 

「弁償が欲しいと?そもそも侵入したそちらが悪い筈──ふむ。ならある程度は補償しよう」

 

 こちらを責めんとばかりに口を開くケルシーは、途中でその言葉を止め、補償すると言い出したのだ。まさか、ニコの言い分が通るなんて、と驚きに目を開く。横を見ればアンビーも同じような顔だ。

 

「当然ながら、ここは企業秘密だ。それを見てしまった君らにも然るべき処分をする所だが、それより納得する形で補償した方がこちらが不利益を蒙る可能性は低い、と判断したまでだ」

 

 そもそも、こちらは今現在進行形で忙しいのに、構ってる暇なんてあるわけが無いという身も蓋もない実情があるが。有り体に言ってしまえば、金で済むならそれで終わらせた方が楽だろう?とケルシーは言う。

 

「と、これで話は一つ終わりだな。では二つ目の話をしよう」

 

 ピン、と指をたて、ケルシーは隈の入った目でこちらを一瞥する。

 

「これまでのは対外的な建前を含んだ話だ。君らは行ってはならない場所に行き見てはならないものを見た。これを放置するのは今後に差し支える可能性が高い」

 

 ここからが本題。何と言うか、このケルシーという女性は説明が好きなのだろうか、淡々としていながら何処か生き生きとしているように見えた。

 

「そこのボンプ、今からデータを送る。あぁ、言っておくが断ると言う選択肢は最初から無い。勝手に入ってきたのはそちらだからな」

 

 全く、時間は有限だと言うのに。そんな風に疲れたため息を吐くケルシーは、イアスに触れ、デバイスを白衣のポケットから取り出して接続する。ビクンッ!とイアスが震え、そしてデータがこちらへと転送された。

 

「今送ったのは、今新エリー都で休眠している未確認侵蝕体の座標だ。先ほど、私達が何をしているのかと尋ねていたが、私たちの目的は一つ」

 

 一つでも多く悲劇を無くす事だと、言った。そうして彼女の口から語られた内容はとても信じ難いものだった。新エリー都の闇。それらと秘密裏に対峙しているのだと言う。

 

「君らもそれに協力してもらおう、と言う話だ」

 

 


 

544:ドクター

と、言うわけで私の判断で主人公たちも巻き込む事にした。異論は?

 

545:zzzを救いたい転生者

ないっす姉御……

 

546:zzzを救いたい転生者

異論を挟もうにも俺たち姉御のMon3trにフルボッコにされて止められないっす……

 

547:zzzを救いたい転生者

死屍累々ってこう言うことを言うんだなぁ……

 

548:zzzを救いたい転生者

でも姉御、ずっとラボに篭って何してたんで?

 

549:ドクター

サクリファイスを人間に戻す薬の開発だが?

 

550:zzzを救いたい転生者

めちゃくちゃ重要なやつぅ!

 

551:zzzを救いたい転生者

邪魔してすんませんしたッ!

 

552:ドクター

彼らを止めるのに私怨が入ってないかと言われれば嘘になる。いい加減寝させろ。

 

553:zzzを救いたい転生者

まじすんません……

 

554:ドクター

そもそも何故招き入れる真似をしたのか小一時間問い詰めたい気分だが。多少怪しまれても中身を見られなければ誤魔化しも効いただろうに

 

555:zzzを救いたい転生者

申し開きもございません……

 

556:zzzを救いたい転生者

フィランソロピーの話まで出しちゃって大丈夫です?

 

557:ドクター

どうせ主人公達は固形蛇やその他ネームドと知り合いだろう?いずれ繋がる、話して疑いを晴らした方がいい。

 

558:zzzを救いたい転生者

全部オープンで行くのか

 

559:ドクター

好き好んでやりたくはないが。まだフィランソロピーを知られるには早い。が、こうなったら予定を変更するしかないだろう。どうせ泣くのは社長だ。私は知らん

 

560:zzzを救いたい転生者

社長ェ……

 

561:zzzを救いたい転生者

あの人今クランプスの黒枝と面談中ですよね??帰ったら倒れるんじゃないかな??

 

562:瓦落瓦落

面談の中休みですが、伝えたら膝から崩れ落ちました。現場からは以上です。

 

563:zzzを救いたい転生者

社長ォ!

 

564:瓦落瓦落

あ、照さんに心配そうに頭撫でられて嬉しそうにしてます

 

565:zzzを救いたい転生者

失望しました、雲嶽山の修行やめます

 

566:zzzを救いたい転生者

なんでや!

 

567:zzzを救いたい転生者

ギルティ?ギルティ?

 

568:zzzを救いたい転生者

とりあえず、アキラ君にフィランソロピーと通じる連絡窓口、教えておいたわ……

 

569:zzzを救いたい転生者

邪兎屋の面々は半信半疑、って感じだなぁ

 

570:zzzを救いたい転生者

アキラ君のテンションが明らかに低い。何見せたんです?

 

571:ドクター

讃頌会が放棄した拠点で見つけたサクリファイス化の経過観察と実験のデータ。あと白祇重工が見つけるであろうあの場所の座標も。

 

572:zzzを救いたい転生者

……アキラ君どんな顔していいかわかんねぇだろうなぁ

 

573:zzzを救いたい転生者

転生者にもいるからな、讃頌会の実験台にされたやつ

 

574:zzzを救いたい転生者

……まぁ、それなら流石に信じてくれるでしょ

 

575:zzzを救いたい転生者

代わりにアキラ君のSAN値がやばそうですけど

 




【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること





 説明を聞き終わり、解放の流れになった。アンビーは1人、ニコ達を先に行かせてからケルシーに尋ねる。防衛軍に関わり、そして新エリー都の闇に触れているのなら、きっとわかる筈だと思ったから。

「シルバー小隊を、知っているの?」
「……あぁ、知っているとも。伝説の傭兵、ソリッドスネークの後継として生まれたクローン小隊の事は」
「……じゃあ、その後も?」

 もはやその後どうなったかをアンビーは知る由もない。だから、どうしても聞きたかったのだ。

「部隊は散り散り、隊員の消息も不明だ。……しかし、そうだな。フィランソロピーに居れば、いずれ出会えるだろう」

 そう言うケルシーの脳裏によぎるのは、ツンツン頭の少年と、バンダナを巻いた男。全く関連性のない2人の顔だった。
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