1.はじめに
マンション標準管理規約が想定するような一般的なマンション管理組合では、原則として年に一回開催される総会《区分所有法(以下「法」)といいます。)第34条》の他に、日常的な管理事務を執行するための会議体として理事会が置かれています。
また管理にかかるルールとしては、管理規約(法30条)を定め、必要に応じて使用細則等でさらに細目が定められていることもあります。
管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」(法第3条)は総会決議や規約の適用により行われることになりますが、管理組合が法に根拠をもつ団体である以上、意志決定やルールの内容は完全な自由ではなく、法律上の制限を受けることは大前提となります。
今回は、管理組合の総会で決議された事項が、法の定める原則を逸脱することを根拠に無効とされた裁判例を紹介します。
マンション管理組合運営上、遵守するべき極めて重要な事項と考え以下紹介します。
2.事例の概要
(1)本件のマンションは管理組合法人(以下「Y管理組合」といいます。)の登記がされ、管理規約(以下「本件規約」といいます。)を定め、理事会が置かれています。
(2)本件マンションでは、敷地内の清掃員室(更衣室)や倉庫、会議室など合計20室が共用部分とされており(以下では、これらを指して「共用部分」と呼ぶことにします。)、敷地内には附属施設として屋外駐車場があります。
(3)令和3年に開催された臨時総会で、Y管理組合は、以下3つの決議を行いました。
本件決議1:
第3号議案【「マンション建物内、共用部分の利用について、理事会に付託すること」(なお、「『利用行為』は、賃貸して賃料を得ることも含まれる(賃料は組合員に帰属する。)。」との注記が付されていました。)】の承認
本件決議2:
第4号議案【規約に基づき駐車場等特別会計の余剰金を区分所有者に返還する旨の説明とともに、同議案に定める算出方法によって算出した合計8548万3230円の返還額一覧が参考添付されたもの】の承認
本件決議3:
第5号議案【従前定められていた「駐車場等使用料取扱い規定」の表題を改めるとともに、余剰金の返還額を共有持分比により算出する定めを、「納入している管理費と修繕積立金の総計の比により算出するものとする」と改めるもの】の承認
なお、これらの決議は普通決議によって行われており、特別決議(組合員総数の4分の3以上および議決権総数の4分の3以上)の要件は満たしていませんでした。
(4)本件規約には、以下のような規定が置かれていました。
①管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共用部分の一部について、特定の所有者または第三者に有償で特定の用途に使用させることができる(16条2項)。
②本件マンションの使用の詳細については、別に使用細則その他の附属規定を定めるものとする(18条)。
③屋外駐車場の使用料は、その管理する費用に充て、駐車場特別会計により生じた剰余金は区分所有者にその持分に応じて返還する(29条1項)。
④駐車場の使用料は別にさだめる(29条2項)。
⑤規約の制定、変更および廃止に関する総会の議事は、組合員総数の4分の3以上および議決権総数の4分の3以上で決する(47条3項1号)。
⑥理事会は、この規約に定めるもののほか、総会から付託された事項を決議する(54条8号)。
(5)Y管理組合の区分所有者であるXは、本件決議1~3が無効であることの確認を求めて、訴訟を提起しました。
3.裁判所の判断
(1)本件決議1が無効であるかどうか
裁判所は、概要次のように述べて、本件決議は無効であると判断しました。
・法18条1項および2項は、共用部分の変更や保存行為にあたらない狭義の管理に関する事項について、例外として規約で別段の定めをする場合を除いて、集会で決議するものとしており、これは、共用部分の管理に関する事項について個別的に集会の決議事項として定めているものである。
・本件規約は、共用部分等の有償使用の方法やその対価等について、総会決議によって決するか、あるいは、規約の定めまたは使用細則等によることを予定しているものと解されるが、Y管理組合においては、本件マンションの建物内の共用部分の使用について、これまで規約の定めや使用細則等が設けれれておらず、総会決議によって決することが必要な状況にあった。
・本件決議1は、本件マンションの建物内の共用部分の管理について、本件規約16条2項の対象とする共用部分の有償使用も含めて、個別の総会決議を要さずに、包括的に理事会に付託するものであり、実質的には、規約の定めまたは使用細則等によることなく、共用部分の管理に関する事項を総会事項ではないことを意味する。
・こうした本件決議1の内容は、共用部分の管理に関する事項を集会の決議事項とした法の主旨を没却するものであり、法18条1項及び本件規約16条2項に違反する。
(2)本件決議2・3が無効であるかどうか。
裁判所は、概略次のように述べて、本件決議2・3も無効であると判断しました。
(以下省略)
◇このような結末になったのは、Y管理組合の理事が、「法」・「管理規約の主旨が理解できていない。」ことが要因です。
殆どの理事は読んでいないと推測しています。
多くの管理組合の理事会が、同様の状況で運営されているのでしょうね。
つけは組合員に廻ります。不幸なことですが。
◇理事会は「法」と「管理規約」に基ずく「総会決議事項の執行機関」であることを明確にしておきます。
以上「理事会」の活動の限界・制限についての判例を紹介しました。