第18回プリルンが自分に見えてきたプリ 南條愛乃がキミに届ける感情の原石

聞き手・照井琢見
写真・図版
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南條愛乃のキミとキラッキランラン

 放送中のアニメ「キミとアイドルプリキュア♪」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語る連載「キミとキラッキランラン」。11月末は、妖精のプリルンとキュアズキューンを演じる南條愛乃(なんじょうよしの)さんに聞きました。

 10月18日、パシフィコ横浜で開催された「キミとアイドルプリキュア♪LIVE2025 You&I=We're IDOL PRECURE」のステージには、南條さんたちキャストも立ちました。昼の部「おひさまと一緒に!ニッコリ公演」で、客席前方に集まる小さな「キミ」一人ひとりと向き合ったとき、不思議な緊張に包まれたそうです。

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やりとりした感情の原石

 これまでの個人の活動では、大人の方たちというか、「大きなお友達」と向き合ってライブをする機会は何度もありました。

 でもお昼の公演では、1階席の前方には親子で来てくださった方たちがたくさん。後ろのほうで、いつも応援してくれる大人のみんなが、ライトをふりふり応援してくれていましたね。

 私たちが登場するタイミングは、2曲目の自己紹介ソング「We are!You & IDOL PRECURE♪」を歌うときでした。

 客席を見ると、座っているお子さんたちが、まっすぐに見てくれている。

 プリキュアを演じる他の4人の緊張感や高揚感が、イヤモニ(ステージ上で音響を確認するイヤホン型の器具)を通して伝わってきました。いつもより声が気張っていたり、勢いがあったり……。

 なんだか不思議な感覚で。ふわふわしているというか、地に足がつかなくて、雲の上にいるような。

 いつもライブに来てくれる大人たちからは、「一瞬も見逃さない!」という熱い気持ちを感じます。でもお子さんたちは、受け取り方がもっと自由な気がするんですよね。

 私がこうしなきゃ、ああしなきゃと考えるよりも、キュアズキューンとしてその場に立って楽しんでいたら、その空気を受け取ってくれるのかなと思いました。

 子どもたちには、本質しか響かないような気がします。純粋な気持ちでステージに立たないと、思いは届かない。楽しいとか、うれしいとか、感情の一番原石のようなところをやりとりするライブになったなと思います。

どれだけピュアな気持ちを乗せられるか

 アニメの本編でプリルンを演じるときも、同じことが言えると思っています。

 「それっぽい演じ方」では、きっとお子さんたちには通用しない。プリルンがいま楽しいのだ、悲しいのだという場面なら、その気持ちを私がきちんと作って、感情の本質的なところをせりふに乗せないと、お子さんたちには見抜かれる。

 自分が子どものころにアニメをどう見ていたかを思い出すと、せりふを言葉として理解してはいなかったと思います。キャラクターが楽しそうにしているか、悲しそうにしているか。そんな「喜怒哀楽」を受け取っていた気がします。

 マイクの前に立つ段取りを考えたり、この後の展開を考えたりは、もちろんしなきゃいけません。けれど、「こういうお芝居にしよう」という欲が出ては、偽物のお芝居になってしまう。どれだけピュアな気持ちで声を発せられるかということを意識しています。

 難しいですけどね。いいシーンや見せ場、プリルンがメインの回になると、どうしても気張ってしまいます。

 オーディションでプリルン、そしてキュアズキューンの役に決まったときから、私はこの1年を「キミプリ」に捧げようと決めていました。純粋な心で見てくれるお子さんたちを相手にするなら、それくらいしないと立ち向かえないなと思ったからです。プリルンと一緒に、この1年を生きる気持ちで……。

 ズキューンに変身してからもそうですね。見た目はお姉さんですが、彼女の本質はプリルンなので、別の個体として考えるとブレてきちゃう感じがして。根っこの部分は同じハートなので、プリルンを大切に考えることが、ズキューンの魅力を引き出すことにつながるんだと思っています。

心の闇、どう向き合う?

 そして最近気づいたのは、プリルンは幼くて純粋でかわいいだけじゃなくて、心がどっしりしているということ。それは、誰かのありのままを受け入れられるからだと思っています。

 プリルンの一番近くにいるのが、メロロンですよね。アイドルプリキュアたちが立ち向かうダークイーネから、「お前は闇の子だ」と言われていました。闇を知らないはずのキラキランドの妖精たちのなかでは、メロロンは特別な存在です。

 でもプリルンはきっと、光だけでなくて闇を抱えていても、メロロンはメロロンだよねと心の底から思っている。そこがプリルンの懐の深さなんだと思うんですね。

 闇といえば、人の心の闇を引き出すジョギが登場しましたね。「光の中にも闇がある」と言ってダークランダーを召喚しています。そのフレーズを聞くたび、私は「まさにそうだな」と思っています。

 みんなそうじゃないですか。どんな人のなかにも、闇はある。

 物語のなかでは、落ち込んだ心を持つ人がダークランダーの中に閉じ込められてしまう。すると、アイドルプリキュアが闇を打ち払ってくれて、心がキラキラになった人たちは立ち直っている。

 私たちの日常に置き換えたとき、ヒーローやヒロインが助けてくれるのかどうか。「どうせ助けてくれない」と思って、闇にのまれていくしかないのかというと、そうじゃないと思うんです。

 第38話「一緒に踏み出す!ウィンウィンハロウィン!」(10月26日放送)で、ダークランダーに閉じ込められたのは、せっかく作ったジャック・オ・ランタンロボットの仮装が壊れてしまって落ち込む少年でした。

 彼はキラッキラッタ~した後に、衣装は「接着剤でくっつければいいか!」と立ち直るんですね。そのお気楽さがすごくいいな、と思っています。

 プリルンがメロロンをどっしりと受け入れたように、自分にも闇があると認めていい。その上で、もうダメだと思って闇のなかに浸るのか、接着剤でくっつけてキラッキランランな光を浴びに行くのか。その都度、私たちの前には選択肢がある。

 キミプリという作品は、そんなことも教えてくれていると思っています。

自分のブロマイドを見ているよう?

 収録が始まって、1年近くが経ちます。ずっとプリルンと向き合ってきましたが、最近は自分がプリルンらしさを出せているのか、ずっと「ハテナ」なんです。

 第1話や第2話を収録していたころは、自分が演じるプリルンを「かわいい」と思っていました。今までやったことのない妖精のキャラクターを演じるのがすごく楽しくて、自分では思ってもみなかったアドリブが、本番で勝手に出たこともあります。

 回を重ねるごとに、その感動はなぜか薄れていって。プリルンらしくできているのか、かわいくできているのか、自分でそのジャッジができなくなっていきました。

 他のキャストさんに「今のめっちゃよかったですね」「かわいいです」と言われて初めて、「あ、ちゃんとやれていたんだ」と思うぐらいです。

 たぶん、プリルンと南條との距離が近づきすぎて、客観視できなくなったんだと思います。人のことは、適度な距離があるからこそ見ることができるじゃないですか。他人のほうが、自分よりも自分のことを理解できますよね。そんな状況なんです。

 ぬいぐるみにアクリルスタンド……、プリルンのグッズを集めて、自宅に並べています。最初は「かわいい!かわいい!」と集めていたのに、だんだんと自分のブロマイドを見ているのと変わらない気持ちになってきてしまって(笑)。

 なかなか自分のブロマイドを見て、「かわいいな」と思うことはないんです(笑)。プリルンが自分の一部へと変化していったような感じがしています。

プリルンのように見守って

 その点、キュアアイドル、そして咲良(さくら)うたちゃんを演じる松岡美里ちゃんは、最初からいい意味でお芝居の仕方が変わっていないんです。

 欲や慣れが出るとか、そういうことがない。美里ちゃんは、一瞬一瞬が、ちゃんと咲良うたなんですよね。

 ずっと気持ちでお芝居できる方なんだ、と思っています。それにお芝居が好きなんだというのが、せりふから伝わってきます。

 もちろん演技プランも、スキルもある。そこに加えて気持ちを入れられる。それって声優としてはすごいことだと思っています。

 今や若手の方でも、スキルの高い方はたくさんいます。滑舌がすごく良いとか、時間内にせりふを収めるのがすごくきれいだとか。

 美里ちゃんの強みは、持っているスキルに頼らず、ちゃんと中身のあるお芝居をしていること。しかも、そのことをあまり自覚していなさそうなのが、またすごい。だからブレずにいられるんでしょうね。

 「キミプリ」のほかにも、色々な作品でキャラクターを吸収していくことで、すごい声優さんになっていくんじゃないか。そんな人だと思って見ています。

 まるで、プリルンがうたのキラキラを見守る気持ちと似ているような。こんなところでも、プリルンに近づいたなと思いますね。

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