2025年、飛鳥新社。単行本・ソフトカバー。税込1900円。
■西村ファンなら必読の本。
■どうせ元恋人による暴露本と思い、買うまいと思ってた本だが本屋でパラパラ、買わずにおれなくなった。西村の素顔がよく描かれている。
■「松本清張と山田太一は天才だと思う」と西村は言ってたという。公式にはこういうことを言わないので、西村の私的発言を読めるのはファンには嬉しい。
■小林氏は西村と住んでいた部屋に阿部合成の絵を飾っていたという。阿部合成は高校時代の成田亨に絵を教えていた人物。思わぬところで西村と円谷がつながった。西村は円谷作品に関心あったようだが。
■西村の人間的面白さがよく描けている。又吉直樹の芥川賞に過敏に反応していたという。意外。西村ほどの実力者なら、又吉なんて「歯牙にもかけない」的な見方をしていたのかと思っていた。西村は作家として確固たる自信が無く、自身の価値を自覚してなかったと思わせる記述が多いのが意外だった。
■西村による暴力について触れた章のラストに明らかだが、小林氏自身、自分をさらけ出し正直に書くことが出来ている。
■西村は逆上時以外はごくフツーの、いやフツーよりよく気がついて優しい男であり、仕事熱心な作家だったんだね。だから女にもよくモテていたようである。
■西村は、小林氏との最初の電話の際「絶対叩いたりしないから」と言っていたという。秋恵に逃げられたことを心底悔いていたとわかる。しかし小林氏にもやがて暴力をふるうようになったことから見て、本当には反省してなかったと判断するしかない。西村の作品中に暴力について自己弁護的な記述が出てくる。あれは偽悪的に書いてると思ってたが、本心だった可能性も感じざるを得ない。
■晩年玉袋と付き合いが無かったのは仲違いらしい。玉袋は「作家活動に専念させてあげようと思って近年はあえて連絡を取ってなかった」と発言してきたが、真相は喧嘩なんだろう。その原因を小林氏は「藤澤愛に専念するため」と推測しており、これはさすが身近にいた人の推理で、おそらく当たっている。
■「蝙蝠か燕か」の中で西村は、とある地方都市で半同棲生活を送ってきた、と書いていたが、その場所が岡山と判明したのはファンには大きい。岡山だったのか。岡山は上原氏に賞をくれた地だし今年も何度も行った。何か縁があるようで嬉しい。
■最後の章は、小林氏宅が何者かに不法侵入され続けており、西村は小林氏との電話の内容(公衆電話で話しても盗聴されるという)が原因で謀殺されたと主張・力説する内容に終始している。ネットでは「最後の章さえ無ければいい本なのに」「最後の章は編集サイドがカットすべきだった」などの感想が見られる。
最後の章の内容は信じる気にもなれないし、それより何よりまず「読んでてつまらない」。(小林氏自身は最後の章を一番書きたかったと言うが。) しかしカットには反対。西村の元恋人が離別後こういう内容を書く状態になったという事実も貴重な情報であり記録であると思うからである。
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