政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)が9日、名誉毀損の疑いで兵庫県警に逮捕された。兵庫県の知事を巡る告発について調査していた元兵庫県議を交流サイト(SNS)などで中傷した疑いがもたれている。弁護人によると、容疑を認める方針という。デマを基にした誹謗中傷で被害を受けたり、加害者として罪に問われたりするかもしれない状況は人ごとではない。
元県議は、兵庫県知事に関するパワハラ疑惑などを調べる県議会の委員を務めていた。立花容疑者は2024年の知事選の中で知事を擁護した上で、元県議を知事に関する疑惑告発の文書作成に関わった「黒幕」と名指しで批判。その後、SNSなどで元県議への中傷が相次ぎ、元県議は昨年11月に辞職。今年1月、自宅で死亡しているのが発見された。自殺とみられている。
「逮捕予定だった」 兵庫元県議への中傷
今回、逮捕にいたった容疑は、昨年12月中旬、立花容疑者自身が立候補した別の選挙での街頭演説の中での発言だ。
さらに、元県議死亡後の今年1月中旬、SNSなどで元県議の名誉を傷つけたとしている。
立花さんはその後、発信内容が間違いだったと認めたが、真実相当性(うその情報を真実と信じてしまう相当な理由)があり、名誉毀損には当たらないと主張していた。今回の逮捕について、警察の幹部は取材に「(立花容疑者の発信内容は)全くのうそ。『言ったもん勝ち』は看過できなかった」と語った。
立花さんが「真実相当性」の主張を翻し、容疑を認める方針を示したことで、発信内容が虚偽であることを知っていたかが焦点となる。亡くなった人への名誉毀損罪が成立するには、この虚偽の認識がないと罪に問われないためだ。今後、起訴(裁判を申し立てること)された場合、裁判で有罪かどうか審理される。
名誉毀損って何?
人の名誉を傷つけること。他人の社会的評価を低下させる行為のことを指す。
刑法で「名誉毀損罪」という犯罪行為として定められているほか、民法上の「不法行為」としても扱われる可能性がある。
犯罪としての名誉毀損では、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」することで成立する。街頭演説や、新聞やテレビでの発言、SNSなどでの投稿が「公然」にあたり、不正への関与など、人の社会的評価を低下させるような具体的な事柄を指摘することが「事実の摘示」、この場合の「事実」は、仮にうそでなく真実の話であるとしても、社会的評価が低下することであれば、名誉毀損にあたる。
ただ、不正の告発のように公益を図る行為については、社会的評価を低下させる事柄であっても、真実であれば、名誉毀損から除外されることもある。
◆選挙とSNS「あり方考える必要」 専門家
デマがどのような経緯で広まっていったのかとともに、選挙とSNSを巡る議論への影響も注目される。
事件の社会的意味
今回の事件が持つ社会的意味について、法政大大学院教授の白鳥浩さんは「逮捕の遠因には、2024年の兵庫県知事選での発言があるだろう」と話す。その上で「この知事選では、一部の有権者がSNSにあふれた真偽不明の情報を『真実』と信じて投票したことが明らかになっている。立花容疑者も(再選を目指していた)知事に批判的な関係者への中傷を繰り返し、民主主義は危機的な状況に陥った。今回の逮捕で、(デマに基づく)名誉毀損や中傷が許されないことを示した」と解説する。
今後の課題
また、今後の課題として、「ネットを使った選挙運動という社会の変化に制度が追いついていない」と指摘。「大きな問題の一つとして、動画の再生数に応じて投稿者に経済的利益を与える構造があり、選挙は収益を得る一大コンテンツとなった。デマや中傷は注目を集め、利益を得やすい。政治や選挙、民主主義とSNSのあり方について、社会全体でルールを考える必要がある」と話している。
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【知事に関する疑惑告発の文書】
兵庫県の県民局長だった男性が2024年3月、兵庫県知事のパワハラ疑惑(机をたたいて職員を叱責、夜間・休日のチャットによる叱責や業務指示など)などを挙げた告発文書を作り、関係者らに送付した。県は通報者を守るための法律である公益通報者保護法の対象外とした上、内部調査で誹謗中傷文書と認定し、県民局長を停職3カ月の懲戒処分とした。県の調査の中立性を疑う声が出たことから、県は第三者委員会を設置。同年9月、県議会の不信任決議を受けて知事は失職したが、11月の知事選で再選された。
その後、25年3月に第三者委員会が、告発を理由とした県の懲戒処分について、公益通報者保護法に違反していると判断。処分は「無効」との見解を示した。また、知事による職員への10件の行為がパワハラに該当すると認定した。
知事は10件のパワハラを認めて謝罪する一方、告発文については「誹謗中傷性の高い文書」との認識を繰り返し、告発者捜しなど公益通報者保護法違反があったとの指摘についても受け入れていない。