第12回「嫌疑一定晴れた」「県政進む雰囲気ではない」終わらない兵庫県問題
【12】終わらない問題
兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題で、県が設置した第三者調査委員会が斎藤氏らによる「告発者捜し」などを「違法」と認定してから、約2カ月。
斎藤氏はこの結論を受け入れず、「県の対応は適切だった」との主張を繰り返し、事態は膠着(こうちゃく)状態に陥りつつあった。
そんな中、告発者の元西播磨県民局長(故人)の公用パソコンの中身とされる画像を政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首らがSNSで拡散した問題を調べた県の第三者委が5月13日、報告書を公表した。
第三者委は、県職員が情報を漏洩(ろうえい)した可能性が「極めて高い」と結論づけた。
県は容疑者不詳のまま地方公務員法違反(守秘義務違反)容疑で県警に告発した。
県はこの第三者委に対し、県が告発者を元県民局長だと特定した経緯などを報じた「週刊文春電子版」の記事についても「情報漏洩」だとして調査を依頼していた。県は文春への「漏洩」についても地方公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで容疑者不詳のまま県警に告発した。
連載「混沌」記事一覧はこちら
今も混沌とした状況が続く兵庫県の内部告発文書問題。県の第三者委員会と県議会の百条委員会の資料や関係者の証言をもとに、経緯をたどります。文中の肩書は当時のものです。
文春の記事に関する告発については、弁護士53人でつくる自由法曹団県支部が翌月、「公益通報を萎縮させ、知る権利や報道の自由を実質的に損なわせるものだ」として、県に告発の取り下げを、県警には捜査の自粛を求める声明を出した。
そして5月27日、別の第三者委が驚くべき内容の報告書を公表した。
「知事の指示のもとに行われた可能性」
この第三者委は、県の前総務部長が前年4月、元県民局長の公用パソコンにあった私的文書を印刷したものを県議3人に見せたり、口頭で述べたりして、秘密を漏洩した、と認定した。
委員長を務めた工藤涼二弁護士は県庁で記者会見し、緊張の面持ちで報告書の重要な部分を読み上げた。
「(漏洩は)知事及び元副知事の指示のもとに行われた可能性が高い」
県関係者によると、斎藤氏は新年度の県の政策などに関する説明を受ける中で、前総務部長から元県民局長の私的文書についても報告を受け、「議会側にも伝えたらいいのではないか」との趣旨の発言をしたという。
斎藤氏は第三者委の調査に対して「指示」を否定し、「前総務部長は独自の判断で議会側との情報共有をしたものと思う」と証言したという。
当時副知事だった片山安孝氏…
- 【視点】
今回で最終回を迎えた連載「混沌 兵庫県内部告発文書問題」(全12回)。執筆した記者と同じく、斎藤知事の言動に起因する兵庫県政の混乱の取材を続けているノンフィクションライター松本創氏が「非常に読み応えがある」と高く評価していたように、いまだに
…続きを読む
兵庫県の内部告発文書問題
2024年3月、兵庫県の斎藤元彦知事らがパワハラ疑惑などを内部告発されました。告発への知事の対応をめぐって県議会と対立しましたが、出直し選挙では斎藤知事が再選を果たしました。最新ニュースをお伝えします。[もっと見る]