日本社会に食い込んだ異形の中国系巨大詐欺組織 人身売買や資金洗浄…首領は東京・港区に一時潜伏か
会社の資本金は500万円。当時、資本金500万円以上が、日本で起業などをする外国人向け在留資格「経営・管理」の取得要件だった。チェン会長自ら起業することで、日本で在留資格を得て、長期滞在を可能にしようとする狙いがあったとみられる。 北青山のマンションに住所が置かれていたのは、2024年1月末から2025年10月24日まで。米司法省がチェン会長の訴追を発表したのは移転の10日前の10月14日。訴追を受け、急いで日本を出国した可能性がある。 チェン会長の移転先はカンボジアのグループ本部に隣接する高級住宅街の一角だった。カンボジアのプリンス本体の法人登記を調べると、同じ住所が記してある。取材班が現地を訪ねると、自動小銃を持った警備員が目を光らせていた。 11月、取材班がチェン会長が住所と登録していた北青山のマンションを訪れると、住人の女性はこう話した。 「チェン会長の顔に見覚えはないけど、そんな大物が住んでいた可能性があるとは。不気味で怖いですね」
チェン会長とは一体、どんな人物なのか?カンボジア政府高官によると、カンボジアに移民したのは20代だった2010年。当時はまとまった資産がなく貧しかったという。2015年にプリンスの前身を設立し、貸金業から銀行業に発展させ、不動産やカジノ、物流事業など国内最大規模の複合企業に成長させた。 米司法省の発表によると、チェン会長らは不正に得た収益の一部を、豪遊のために支出していた。旅行や娯楽、時計、ヨット、プライベートジェット、別荘、ピカソなどの美術品収集に費やしたという。 チェン会長を知るカンボジア人は、こう振り返る。 「金のにおいを嗅ぎつける才能はずばぬけていた」 もしチェン会長が米国で有罪判決を受けた場合、最高で禁錮40年の刑に処せられる可能性がある。一方、プリンスグループは11月、不法行為には関わっていないと声明を発表した。ただ最近、首都プノンペンの本社ビルでは看板が外される出来事があった。チェン会長は現在、行方をくらましている。
日本人も事件に巻き込まれている可能性が高い、国際詐欺組織のネットワーク。全容解明が急がれる。 × × × 読者からの情報提供などを募集しております。こちらにお寄せください。 shuzai.information@kyodonews.jp