日本社会に食い込んだ異形の中国系巨大詐欺組織 人身売買や資金洗浄…首領は東京・港区に一時潜伏か
「国際的な詐欺組織の出先が、日本に上陸している」。今秋、こうした情報がもたらされた。驚いた私たちは取材を開始。問題視されたのは、カンボジアの華人系企業「プリンス・ホールディング・グループ」だ。 【写真】韓国で 「中国人は出ていけ!」とヘイトが拡大… 中国人の観光客が、大便をしたことも問題視され 女子中学生(13)は「とても嫌い」
2025年10月14日、米国と英国がプリンスを制裁したことで、世界的な注目を浴びた。オンライン詐欺や人身売買、資金洗浄に関与した疑いだった。さらに韓国や台湾でも現地子会社に対して強制捜査や税務調査が進行している。取材を進めると、プリンスグループは日本国内にも関連会社を複数設立していたことが判明した。さらに、組織の首領が東京に一時潜伏していたとみられることも分かった。 異形の犯罪組織はどうやって日本社会へ進出を果たしたのか。私たちは追跡を始めた。(共同通信=武田惇志、角田隆一) ▽急速に成長、背景に詐欺の強制労働 「アジア最大級の犯罪組織」。米政府はそう、プリンスグループについて表現した。 グループを率いるのは中国・福建省出身で、カンボジア国籍を取得したチェン・ジー(陳志)会長(38)。カンボジアで不動産、金融、カジノを経営し、犯罪で得た収益で急速に成長させたという。30カ国以上で事業を展開している。
事態を重く見た米司法省は2025年10月、チェン会長を刑事訴追したと発表。罪状は組織的な投資詐欺や資金洗浄などだった。発表によると、数百人の人々をカンボジアで監禁し、暴力を用いて強制的に暗号資産(仮想通貨)の投資詐欺などに従事させた疑いがあるとしている。 監禁施設は高い壁と有刺鉄線で囲まれ、強制収容所として機能した。数千台の電話が設置され、数百万件の携帯電話番号が詐欺に利用されたという。 そうして監禁した人々を使い、SNSなどを通じてターゲットにメッセージを送らせた。誘い文句は「資金を投資して利益を生み出せる」。指定口座に暗号資産を送金するよう誘導し、資金を盗み出していた。 ミャンマーやカンボジア、ラオスの国家の統治力が及ばない一部地域には中国系を中心とした犯罪集団の拠点が割拠。国連によると、強制労働の被害者は56カ国・地域に及ぶ。2023年、東アジア、東南アジアだけでオンライン詐欺の被害額は最大370億㌦(約5兆7千億円)に上った。