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藤原道信の嫉妬

正暦5年7月11日23歳で夭折した青年歌人藤原道信。奥ゆかしく、歌に秀でていたと言われていますが、辛辣な歌もいくつかありまして。

有名なものだと、

嬉しきはいかばかりかは思ふらむ 憂き身にしむ心地こそすれ(大鏡)

懸想していた為平親王の娘婉子(えんし/つやこ)女王が藤原実資と結婚することを知り、送った歌だと伝えられています。


婉子女王と道信の関係

怒られそうですが、私はまだはっきりとは言えず。

しかし、婉子女王のもとに通い始めた藤原実資の不自然な行動にひっかかります。

平安時代は、三日続けて夜に女性の家に通い、結婚成立なのですが、実資はその三日目に新妻を放って、従弟の藤原公任の家に行って話したいことがあると伝えます。

秋風の袂涼しきよひごとに君まつ程は人やうらみん

きっと公任は驚いたでしょう。

公任が、こんな人恋しい肌寒い秋の夜に、毎晩待っておられる方を考えたら、それを差し置いてなんて、怨まれちゃいますよと歌を詠んだので。

うらむべき人をばしらで秋風に尾花をあやな頼みける哉

「うらむべき人」の気持ちを知らず、秋風にそよぐ薄に誘われるがままになってしまいましたよ。

妹尾好信氏によると、この「うらむべき」人は道信のことではないかと。

前回書きましたが、公任は道信の友人です。道信の恨み心のこもった歌に驚き、為平親王に乞われるままに聟になったうしろめたさに(安直に決めてはいないはずですが)、実資は公任に相談したくなったのかもしれません。(参考論文下記)


道信が婉子女王に出会うきっかけはなんだったのでしょう?

藤原道信の父為光は、円融天皇の兄為平親王に仕えていました。

また、為光は伊尹、兼通にかわいがられ、出世します。

花山天皇が即位すると、為光は忯子を入内させますが、彼女は妊娠中に亡くなりました。その後、為平親王も娘の婉子を入内させました。

しかし、花山天皇は突如出家してしまったので、婉子は独り身になってしまいます。

ちなみに、平安時代の帝の妃は再婚することがあります。

為光と為平親王の関係を考えると、ひょっとしたら、いつかと約束していた可能性も。

また、道信は花山院に気にいられていたので、どこかで婉子女王と縁ができ、文を送るようになっていたかもしれません。

きっかけはいくつもありえたでしょう。

相手は婉子女王と書かれていないのでなんとも言えませんが、道信集にこのような歌も。

いとあだなる女の、あるきむだちをたのみて、おのが心をばし(知)らでちか(誓)事たつとききて
いにしへのこころよわさをおもひいでば ちかごとせじとちかひやはせし

女王に「あだなる女(不誠実なひどい女)」は言い過ぎだから、不適当な気がするのですが、気になるので、あげておきます。

心残りは・・・


千載和歌集にはこのような歌があります。

わつらひ侍りけるかいとよわくなりけるに、いかなるかたみにか有りけむ、やまふきなるきぬをぬきて、その女につかはし侍りける/又いはく、みまかりてのち、女のゆめにみえてかくよみ侍りけるとも
くちなしのそのにやわか身入りにけん おもふことをもいはてやみぬる

道信の中将様は患いなさったからか、弱くなったので、どのような形見であったのでしょう、山吹色の絹を脱いで、その女のもとに持って行かせなさった。/又このようにも言われている。身罷ってのち、女の夢に現れて、このようにお詠みになったとも。

くちなしの園にでも私は迷い込んだのだろうか。あなたに告げたいと思うことも言わないで、私の命は尽きてしまった。


道信集では女は北の方になっています。千載和歌集の編纂は道信が亡くなって、二百年ほど経っているので、伝承も混ざっているかもしれませんが、詞書きの真相が気になってしまいますね。


こちらもよかったら


《参考》

『新日本古典文学大系 平安私家集』岩波書店

妹尾好信『道信中将の愛と死をめぐる憶説 : 「公任集」の読解を中心に』
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00017299

おまけ

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