剣の音は止まない。   作:クリクリストッキングフォロ

1 / 2


なぜ鳴潮の二次創作がここまで少ないんだぁぁぁぁぁあ!!!!!!


というわけで初投稿です。みんなもエッチいしカッコいいし可愛いし面白いし何なら主人公のやってることが実質、鳳凰院凶真な鳴潮、やろう! 


劔の音は止まない。

 

 

 

「娘が、あそこに娘が居るんだ! 行かせてくれ!」

「――っ、アンタの! 娘は! もう10年も前に死んでるんだよクソッ!」

「なぁ、俺ってなんでここに居るんだ?」

「皆のものよ、なぜ繋ぎを恐れるのです。この世にインペラトル様がある限り、我らは決して1人ではありません。繋ぐのです。繋がるのです」

 

 地獄を見た。

 

 溢れ返る無数の黒い潮。ヘドロのように重く、深き深海のように何者をも飲み込む呪いの顕現。

 

 それは呪いであり、闇であり、過去から響く人の淀みの集積物。

 

 

 どこかで見たような光景だ。ただ、あの無作為に人を滅ぼす黒い太陽よりも、幾分かこちらの方が悪意に満ちているように思える。

 

 

 地獄を見た。

 

 無数の残像が黒潮から次から次へと溢れ返り、アヴィノレーム神学校の敷地はもはや黒い潮の領地に代わっている。過去の死者の叫びと、現在の死に際の叫びが木霊した。

 

 黒潮はリナシータの大地に生きる人間の精神の奥底に眠る災厄であり、触れるだけで記憶や大切なものを失う危険性がある。

 

 それが、延々と吹き出しているのだ。

 

 幻覚、幻聴、幻視、妄想。全てが偽りである可能性と、本物である可能性が交差する最悪の戦場。

 

 しかし、その地獄の中でも絶えず輝く、蒼い光が黒き潮を退ける。

 

「ランタンを掲げろ! インペラトル様の加護を信じるのだ! 試練の時は訪れ、しかし決して我ら隠海教団が膝を折ることはない!」

 

 ナポリ二世が歳主から賜ったとされる蒼い起源の光が宿ったランタン。それでしか、今のところ黒潮を退ける方法はない。

 

「早く避難しろ! 神の使いが守ってくれる! だから早く! はやく……ベルタか!? 学生たちは――っ、もう、無理なのか?」

「……救えませんでした。自分が不甲斐ない……未来ある若者が、こんな、こんな結末を迎えていい道理など、一体どこに!」

「お前は、よくやったさ。ここで落ち込んでいるわけにはいかない! ここで食い止めねば、エグラやアヴェラルド銀行、最悪ラグーナにまで黒潮が侵攻する! 全力で止めるぞ――が、は……な、なぜ、? なぜベルタ、俺をこうげ、きし――」

「"繋ぎ"が、必要なのだ」

 

 信仰心に篤い教団の若者は既にアヴィノレーム神学校の内部に進んだ段階で黒潮に呑まれていた。戻ってきていたのは、人間の周波数を呑み込み模倣した黒潮の造物。

 

 疑心が判断を鈍らせ、信仰が死を呼ぶ。

 

 天国へ至るのだ。福音を得て、巡礼を行い、私の元に回帰せよ。黒潮の齎す精神の毒が、侵されたモノに囁く。

 

 地獄を見た。

 

 刻一刻と黒潮は溢れ続け、それらを抑えるにも限界がある。偽物、本物、幻覚、現実。無数の過去が姿を現し、黒潮に呑まれた味方が、今度は敵となって現れる。

 

 しかし、それでも聖女は居る。

 

「皆さん! 私の後ろに控えてください! 私が食い止めますから! だから――しなないで!」

「バカ言うな! か弱い小娘に守って貰うほど俺らは弱くねぇ!」

「その通りだカシテンム。我らには民を守る義務があり、そして年若いカルテジアは我らが守るべき民だ!」

 

 歳主に選ばれたとされる、共鳴者。それが今代の主座を越えて聖女になった、フルールドリスという教名を持つ少女だ。

 

「そうだろう!? なぁ! シェロの坊主!」

 

 シェロと呼ばれた青年が、赤銅色の髪を揺らし剣を構えていた。

 

「当たり前だ! 投影開始(トレース・オン)!」

 

 青年は転生者だ。転生を果たす際に特別な力を持たされた、凡人の精神を持つ者。

 

 しかし、その特別な力が彼に災厄に立ち向かう心の力を与えていた。

 

 ――例え俺がエミヤシロウの偽物であろうが、そんなことはどうだっていい。あの娘を独りにしてやるわけにはいかないのだ。こっちには破りがたい約束があるのだから。

 

「――――憑依経験、共感終了」

「――――工程完了(ロールアウト)全投影(バレット)待機(クリア)

 

 創造理念──鑑定

 基本骨子──解明。

 構成材質──複製。

 製作技術──模倣。

 成長経験──共感。

 蓄積年月──再現。

 

 ここに全ての工程を凌駕し尽くし、本物にも迫る贋作を作り出してみせよう!

 

 投影魔術により、起源の光を宿したランタンの贋作を大量に生産!

 

「っ―――停止解凍(フリーズアウト)、我が骨子はねじれ狂う! 全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)………ッ!」

 

 数十にも及ぶ起源の光を持つランタンに手を加え、骨子を変更し、先が尖った剣の形にする。この形の方が力が通りやすく、また操りやすいのだ。

 

 そうして放たれた起源の剣は溢れかえる黒潮に突き刺さり、

 

音割れ(クリッピング)!」

 

 その内部にため込まれた起源の光の周波数を一息に、解放した。戦場を蒼い光で埋め尽くし、黒い空を一瞬蒼色に染め上げる。アヴィノレームが育成するドレイクたちが俺の放った光に呼応し、黒潮に数多の属性のブレスを放ち、侵食を焼く。

 

 一際大きなドレイクが俺の隣に轟音を立てて着地し、頭を近づける。軽く鼻先に触れてやると嬉しそうに唸り声をあげ、そして飛び立っていった。

 

「ゲヘナも来たんですね。ふふ、流石私のシェロ、と言ったところでしょうか。とても、とても心強いです――シェロ……シェロ? 大丈夫ですか!?」

 

 その光景に味方が湧き立ち聖女の力を称えるが、そんなことに目を向ける余裕もなく俺は膝をついた。

 

 ぎちぎち、ギチギチ。

 

 この世界は全て音で構成されている。ならば、剣の音以外しない俺は人間として呼べるのだろうか。脳裏を貫くように剣の音が聞こえる。全身が激しい違和感に襲われ、存在そのものがブレているような感覚だ。

 

 揺れる視界に聖女の心配そうな顔が映る。

 

「気に、するな。力を使いすぎただけだ! それより、前を!」

「……っ、わかりました!」

 

 何か言いかけた言葉を仕舞い、決意を新たに前線に再度突っ込む聖女フルールドリスの姿。それでいい。

 

 ここは戦場だ。俺のような存在に気を掛けて負けましたなど、笑い話にもならない。

 

 膝をついたまま、俺は戦場を眺めることしかできなかった。

 

 地獄。まさに地獄だ。

 

 だが、この地獄を食い止めねば俺の雇い主の住む城にも被害が出るし、ラグーナに住む民衆も危ない。わかってるだろ? なら動けよ。動けって。

 

 意志が命令しても、身体は錆びついたまま動かない。

 

 気付けばその青年――シェロの赤銅色の髪に白髪が混じり始め、その肌には褐色色の部分が現れていた。

 

 反動だ。この力を使えば使うほど、俺の心象はエミヤシロウのモノに置き換えられていく。

 

 だが、そんなくだらないものが民の平和に役に立つのなら、喜んで捨てるべきなんじゃないのか?

 

「っ、馬鹿か俺は。アイツらとの約束を破る気はないぞ」

 

 バカげた考えが脳裏に広がり、それを即座に否定する。

 

 カルテジアに俺謹製の料理を食わせてやるって約束してる。カンタレラにも帰ってくると約束してるんだ。

 

 

 しかし現実は無情である。

 

 

 倒れる人々、広がる黒潮、呑み込まれたアヴィノレーム神学校からは無限に残像()が溢れている。

 

 何かを得ることができるものは、何かを捨てることができるものだ。

 

 

「――無理、か。始めに目にした瞬間から、なんとなくわかってたさ」

 

 

 シェロに宿るエミヤシロウの力が、彼に戦術眼を齎していた。この戦いはどうあがいても敗北以外に結末がないと。無限に溢れる黒潮を収めるには歳主の力が必要だが、それを為すには聖女フルールドリスの力単体では足りない。

 

 詰んでいる。

 

 そうして数時間ほど戦いを続けたが、やはりというべきか。

 

「……結局、こうなるのか。ごめんな、カルテジア、カンタレラ、みんな」

 

 気付けば、俺の後にも前にも、立っている人間は居なくなっていた。カルテジアは黒潮の奔流の根本に向かい、そして今頃戦っているところだろうか。

 

 俺の周りに居るのは人間のまがい物のみ。

 

 小さく謝罪を呟き、俺は全てを投げ捨てる決意を固める。

 

 戦友たちは死に、俺とカルテジアだけが残っている。

 

 黒潮の先に青く輝く閃光はカルテジアのモノで、そこに少しだけ安心感を抱く。あの子は戦い続けている。ならば、俺が膝を折るわけにはいかない。俺一人で全てを抑えるのは無理があるが、なあに。

 

 全てを捨てれば、案外何とかなるものだ。

 

「身体は剣で出来ている」

 

 長きに亘る戦いで、既に俺の半身はエミヤシロウのモノに近づいていた。これ以上使えば、俺の精神は完全にエミヤシロウのモノに置き換わるだろう。根本的に凡人なのだ。抑止力と契約を果たした錬鉄の英雄の心象世界に打ち勝てるほどの心の強さは持ち合わせていない。

 

 さぁ、力を貸せ。正義の味方。お前の願いと俺の願い、双方を叶える絶好の機会だ。

 

「血潮は鉄で、心は硝子」

 

 純情で、抜けているところがあって、茶目っ気もありつつ、それでも人々に感謝を抱き続けていたカルテジア。今のところ、彼女との約束は果たせそうにない。少し前に会ったときに、ラウルスサラダでも作ってやるんだった。失敗したな。

 

「幾度の戦場を越えて、不敗」

 

 陰気で小さくぶつぶつと何かを呟きながら毒を作っている姿には苦笑を覚えた記憶がある。今じゃ穴空きのノイズ混じりの記憶しかないが、それでもカンタレラは泣きたくなるほど強く、そして優しい子だった。俺の夢に共感してくれたあの子の元に、きっと帰ってやることはできないだろう。

 

 しまったな。俺が作った玩具がそこかしこにあるのに、せめて処分してからここに来るべきだったかもしれない。でもカンタレラなら、俺の主人のあの子なら、きっと玩具に残る俺の記憶も乗り越えてくれるはずだ。

 

「たった一度の敗走もなく」

 

 黒潮が急激に膨れ上がっている。

 

 起源の光を宿した剣を大地に突き刺すことで侵攻を抑えていたが、もはやそれも難しいか。

 

「たった一度の勝利もなし」

 

 記憶がどんどん消えていく。今世の家族の顔が、幼馴染の顔が、聖女の顔が、主人の顔がノイズに塗りつぶされていく。歯車によってすり潰された記憶は、やがて剣に宿るだろう。

 

「偽物は独り、剣の水底に墓標を立てる」

 

 だが、俺はエミヤシロウじゃない。

 

 フィサリアに忠誠を誓う執事の家に生まれた、シェロ・グラディウスだ。

 

 エミヤシロウの無限の剣製に全てを奪われてたまるものか。

 

 俺の人生にケチをつけるのは許さない。

 

 鋼の心を持たずとも、正義の願いを託されずとも、俺は俺の人生に誇りを持っている。

 

 救済の道を選んだ少女と共に過ごした日々に。古くよりある呪いの試練を共に終わらせた、ともすれば俺よりも正義の味方に近しい少女に。

 

 俺は胸を張って、生き抜いてきたと言える!

 

「けれど、我が生涯は未だ果てず」

 

 さぁ! 叛逆の時だ!

 

 鉄を打て、炉心に火を灯せ! 

 

 なに、俺の心を燃やす業火には事欠かない。剣に宿る戦士たちの無念が奴らを滅ぼせと狂い叫んでいる! 

 

 俺も歌劇を愛すリナシータの民だ。カルネヴァーレには少し早いが、人生最後の大演目と行こうじゃないか!

 

(うしお)に錆びたこの身体は――」

 

 潮鳴りが聞こえる。剣の音が入り交じり、まるで剣の海のような――。

 

 

「――それでもッ! 剣で出来ていたッ!」

 

 

 焔が走る。潮が走る。大地を埋め尽くさんとしていた黒潮すらも飲み込み、世界を丸ごと平らげて――

 

 シェロ・グラディウスの心象世界は現実を犯した。

 

 

 黒潮が全てを溶かし、呑み込むというのならば。それでも溶かせぬ鍛えられた鋼で持って迎え撃とう。

 

 在るは劔。奏でるは剣戟の詩。

 

 

『繋ぐのです。人々を繋ぎ、昇華の道を越え、人は救済の天国に至ることができるのです』

『なぜ抗うのですか? あなたは独り。あぁ、あなたはあの聖女を当てにしているのですね?』

『ならば教えてあげましょう。アレは私の駒の一つにすぎません。忌々しいフィサリアの人間でも、それは知らなかったでしょう? 諦めなさい。万に一つも勝ち目などないのです』

『ああ、可哀想な人間。グラディウス家に生まれた異端の子はどうしてこうも痛ましいのか。ひとつになりましょう? 違いなど相互理解を妨げる障害でしかありません』

 

 無数の人間が、無数の残像が、黒潮の中からドロリと生まれ、それぞれ口をそろえて同じことを口ずさむ。

 

 それを、これまた無数の剣が飛来し、全てを突き刺した。

 

 ――初めて無限の剣製を展開したが、なるほど。俺の心象はこうなるのか。

 

 ここは深海。灰が振り積もった底に、沈んだ数々の剣がその遺志を伝える。無限に続く海の底に、差し込む緋色の太陽の光。

 

 運命に溺れた偽物には、相応しい心象だな。

 

 やはり、俺もまたエミヤシロウでしかないのか――?

 

 そう、小さな諦観を抱きかけた瞬間。深海の空に、ふよふよと浮かぶ、黄金の冠を被った海月の姿が見えた。

 

 ――消えかけている記憶の残響。それを海の煌めきに幻視し、口元に微かな笑みを浮かべる。

 

「そんなこと知ったことか。例えそれが本当だったとしても、必ずカルテジアはお前の呪いを禊ぎ払う!」

 

 潮が鳴る。剣に満たされた海において、それは異物の全てを撃滅する剣の引き金となる。

 

 アヴィノレームから溢れ出した黒潮は全て無限の剣製の中に引きずり込んだ。後はこれを滅ぼすだけだ。

 

 ただ、黒潮は歳主の力がなくば討滅できない不死の現象。

 

 ならば、歳主の力を写し取ればいい。

 

 フィサリアファミリーの歴代当主に使えてきたグラディウス家は、同じく歳主インペラトルが敵に蝕まれていることを知っている。それはつまり、フィサリアにナポリ2世より託された歳主インペラトルの力が宿った神権の剣、ティルフォングを目にする機会があったということ。

 

 現状のシェロ・グラディウスでは無限の剣製外での投影は不可能だったが、固有結界の中でなら話は別だ。例えそれが神造兵装と同等レベルの投影難度を誇ろうとも、全てを投げ打ったシェロにはそれが可能であるという確信があった。

 

「誰かの心とごちゃまぜにされる苦痛は痛いほどわかってるんだ。安心して死んでいけ!」

 

 白髪褐色肌と化したシェロは皮肉げに表情を歪ませ、そして振り上げた手を号令とした。

 

 突如、浮かびあがる無数の剣群。水底に沈んだ数多の剣が黒潮に突撃し、その周波数を乱していく。しかし、黒潮もまた無限に湧き出るのだ。

 

 無限と無限の戦いは、何れ本物の聖女の祈りと偽物の聖女の力により終結を迎えるだろう。

 

 

 そうして剣の英雄と聖女フルールドリスは黒潮の中に姿を消し、二度目の黒潮による大規模な侵攻はアヴィノレーム以外に被害を出すことなく、終息した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘、よ。嘘に決まってるじゃない……? しぇろ、シェロ……? これが、フィサリアの宿命だとでもいうの……?」

「カンタレラ! どうしたのですか!? 聖女の試練は失敗したの!?」

「――シェロが、見えた。聖女が歳主と戦っていて、そして私は二次共鳴で得た力を歳主から聖女に渡して……そして、最後に、シェロが……黒潮に呑まれたのが、見えたわ」

 

「帰ってくるって、言ったもの。だから、大丈夫なはずよ。シェロが約束を破ったところをわたくしは見たことがないもの」

 

「だから大丈夫、きっと大丈夫よ……」

 

 深海の少女の握りしめられた手の中には、壊れて動かなくなった玩具が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 







凄い久しぶりに小説書いたせいですっげー書きづらい。

漂泊者が出るまで書けるのかは未定です。

みんなも鳴潮の二次創作、書こう!

凄まじいクオリティのムービーに凄まじい内容のストーリーに凄まじく素晴らしい女の子が見れるぞ! 

主人公のやってることが(たぶん)実質プライマーなのもポイント!

TIPS:残像とは歪んだ周波数によって構成された疑似生命体であり、その周波数は減退を続ける。そのため、人や他の周波数を持つ生物を喰らい、延命しようとしている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。