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名古屋にあったあの“伝説のチーズケーキ屋さん”のこと




いまだにチーズケーキをたべるたび
心に暗く大きな穴が開く。

“あのチーズケーキ”を思い出してしまうからだ。
今日このnoteを書こうと決意して久々にお店の食べログを開いたら、あのチーズケーキの写真がたくさん出てきて、目の奥が苦しい。

死ぬ前に食べたいものは何?

と聞かれたときいつも私は「ララハウスのチーズケーキ」と答えてた。
2016年1月が来るまで。


伝説のチーズケーキ屋さん「ララハウス」


もともとは、名古屋の栄という超繁華街にあったらしい。それはそれは大盛況だったというそのお店が突然移転した街は「本山」で、そこは繁華街からかなり離れた、学生が多く利用する駅だった。黄色い看板で、座席は2組しか座れない。ちいさなちいさなお店。

移転してもその人気はものすごく、いつもお店の前には路上駐車する車が並んでた。私がはじめてそのチーズケーキを食べたのが、もういつなのか思い出せない。ただ、はじめて食べた瞬間から私は他のチーズケーキを食べなくなったほど。

家族の中で私だけ、
いつしか誕生日は毎回、ホールケーキとかじゃなく大量の「ララハウスのチーズケーキ」(ホールは扱ってなかった)になって、それを買ってきてくれるのは父だった。ケーキ選びなどのセンスがないので普段そういう事は頼まれないのに、ララハウスだけは父の職場から近く、毎回母が私のために父に指令を出し、父が買ってきてくるという流れだった。

そうして父はいつも、私のなにかしらのお祝いのとき必ず、お店のショーケースに並ぶチーズケーキを買い占めてきてくれた。大学を卒業して私が上京しても、名古屋に帰るたび毎回。

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この写真は2014年、第一子を出産したとき病院にお父さんが届けてくれた


あらゆる元彼とも行った。
私が通う大学からも近かったから、大学生の頃はふらっとよく行けた。
なかでもSくんという元彼は、別れたあとでも長く、誕生日にここのチーズケーキを買って届けてくれていた。


いまでも口の中でそのまま思い出せる。

クリーミーすぎず、さっぱりしすぎず、クッキー生地の主張も強すぎず、だけど芳醇な後味が脳ごと持っていってしまい、何個でも食べられる。あの、もうどこにもいなくなってしまった、チーズケーキ。


突然いなくなってしまった


2016年1月、突然閉店した。
すべてのケーキを手作りしていた、お店のママが亡くなったのだ。

数ヶ月、思い出すたびに号泣していた。
いまもこの文章を書きながら歯を食いしばってる。お店が閉店してしまったのはもちろん仕方ない。あのチーズケーキとあのお店を作ってくださった西本さんというママに私は心の底から感謝している。

でも当然悲しい。ずっとずっと悲しい。
わたしが失ったのはお店とかケーキとかじゃない。
がんばったりうれしいことがあったとき、あのケーキが食べられるというあのフツフツと湧くよろこび、お父さんが買ってきてくれた箱を開けた時ぎっしり並んだそれをみる安心感、冷蔵庫に減っていくそれをみたあの喜ばしい寂しさ。大事な友達に紹介したくて連れていって、その子が一口目をたべたときのあの泣きそうな驚きの表情。ぜんぶぜんぶぜんぶ。ああまだ、あのチーズケーキを一緒に食べに行きたかった子が、いっぱいいるよ。もう涙で書けなくなってきた。


他のチーズケーキを食べるたび


なぜ急にこのnoteを書こうと思ったかというと、きっかけは2日前にたべた某有名チーズケーキだった。半年間ずっと注文したくて、でも売り切れで買えなくて、毎週挑戦してやっと手に入った。


友達とふたりで食べた。
すっごく美味しかった。食通なその友達も、これはめちゃくちゃ美味しい…と繰り返してた。わたしも、いやあめちゃくちゃ美味しいねえと繰り返した。ほんとに美味しかった。すっごく美味しかった。だけど、やっぱりララハウスは超えなかった。


……そのとき私は、
強烈な安心と寂しさを感じた。


ララハウスとお別れをして4年半。ことあるごとに有名チーズケーキを取り寄せたり食べにいった。その動機を自分でも考えないようにしていたけど、とにかく有名なところは一通り食べたきがする。そのたび、一口目を口に入れようとするたび、心臓を絞られるように緊張した。口に入れる瞬間、「ララハウスより美味しかったらどうしよう」と思うのだ。ララハウスより美味しいチーズケーキを求めているような顔をして、もし超えられたらどうなってしまうんだろうという、曖昧な恐怖を覚悟して咀嚼する。

2日前に食べたものはSNSでも絶賛する人が多く、とうとう超えられてしまうのではと注文確定時から不思議な怖れを抱いてた。その戦いが終わったとき、どこか吹っ切れたような気がした。今ならこの感情と向き合えるかもと思った。


今回押し寄せた「安心」と「寂しさ」のようなものの源泉を探ると、それは「達成感」と「途方もなさ」だった。宇宙最高峰のチーズケーキの地位が守られたという巨大な達成感と、それなのにもう一生その、宇宙最高峰に愛するチーズケーキを口にできないという「揺るがない事実」のつよすぎる途方もなさ。

この4年、ララハウスの話なんて一度も自発的にしなかった。だけど2日前に覚悟のチーズケーキを食べたあと私は話し始めていたのだ。目の前の友達に「名古屋に、“伝説の”チーズケーキ屋さんがあったんだけどさ、」と。


それでnoteに、残したくなった。
この4年ララハウスの不在を実感するのが怖くて写真も見れないほどだった。だけど友達に話しながら私は、自分がうれしいんだなと感じた。あんな特別なチーズケーキとともに生きてこられた自分を自慢したいんだな、と思った。友達は目を輝かせて聞いてくれた。たぶん私も、わくわくした顔で喋ってた。

人生にここまで入り込んできてしまうケーキってすごいよね。もうスイーツの境地じゃないよ。無意識に「“伝説の”」と話し出していた私は、自分の言葉に腹落ちしてた。そうだあのチーズケーキ屋さんはまちがいなく“伝説”なんだって。ただのお店じゃなかった。あのチーズケーキに出会えて一緒に日々を過ごせたことは、なぜか私の勇気にすらなり、これからも不在まるごと含めて愛したいという、覚悟にすらなりはじめてる。好きになってよかった。良かった。良かったんだ。嬉しい。


生きてるなかで私たちは、変えが効かない特別な存在に、ごくたまに出会ってしまう。それは酷くおそろしいと、いつも思う。だけどやっぱり酷くどうしようもなくかけがえなくて、たまらないなと思ってしまう。


西本さん、カウンター越しにしかやりとりしたことがなかったけど声を大にして言いたいのですが、こんな気持ちを、ありがとうございました。

あんなチーズケーキ、
宇宙上で他に存在し得ないことなんて、とっくに知ってる。


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コメント

3
ゆかりん
ゆかりん

あー私と同じだぁ…
LaLaハウスのチーズケーキ…あれを超えるものはないとずっと言いまくっていたのに残念な事に閉店してしまった。
ショックすぎて、SNSでそれっぽい写真を探しまくったりして、誰か味を引き継いでないのかと検索したりして…

差し支えなければ、1番近いと感じたチーズケーキ教えて頂けないでしょうか…

スイスイ
スイスイ

それが、まったくないんです、、近いといえるチーズケーキ、本当になさすぎて、近そうなものを食べれば食べるほど遠さを感じて、逆に全然違うジャンルで美味しいチーズケーキを食べる方が楽しいと感じてきました、が、名古屋のトド アリトルナレッジストア のチーズケーキおいしかったです!(近くはない)

SORAHA@by akane
SORAHA@by akane

私もあのララハウスのチーズケーキを超えるものにまだ出会えません。

せめて近いお味のケーキに出会いたいです。

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