西城秀樹「ブルースカイブルー」リリース記念日! 実はあの激エモな曲も。阿久悠が彼に託したものとは?
8月25日は「ブルースカイブルー」(1978年)リリース日である。同時に「傷だらけのローラ」(1974年)のリリース日でもある。ということで、せっかくなので、一緒にこの2曲ループをしませんかというお誘いの記事である。
なに? 2曲とも違った方向で激エモだから情緒が掻き乱されそう?
イエス、ご指摘の通りだ。しかし、逆にそれが醍醐味。日々のプレッシャーやストレスをかなぐり捨て、情熱のままヒデキを聴き癒されよう――。メイクは落としておいた方がいい。泣いてゾンビのようになるから!
↑TBS公式 YouTubooより「西城秀樹 デビュー50周年記念7枚組DVD BOX」 2022年3月25日発売【TBS】のダイジェスト映像。クッ。むちゃくちゃいいところで終わる。それがダイジェスト映像の掟!!
さて、「傷だらけのローラ」については「西城秀樹④「傷だらけのローラ」 ローラとは誰なのか?12回も叫ばれる「ローラ」に酔う」にて記述しているので、今回は超超超名曲「ブルースカイブルー」に掘り下げたい。
↑Sony music Japan公式チャンネル「西城秀樹 / THE 50 HIDEKI SAIJO song of memories ダイジェスト Vol.1」より。「ブルースカイブルー」の熱唱は4分12秒から!
「ブルースカイブルー」は訳アリの恋がベース
ヒデキの麗しい顔がアップになったジャケット画像。やさしくエモーショナルなメロディー。そして囁くような冒頭から、青空がグアッと広がり、それに向かって大声で泣く爽快感が得られる大サビまでの、ヒデキの爆エモな歌いっぷり。全方位パーフェクトなこの曲には、勇気をもらっていた。
恥ずかしながら告白すると、ヒデキがまぶしそうに上を見ながら歌うサビ「ふーりむーけばー、あーのとーきー……の♪」が好きすぎて、他の歌詞をしっかり見ていなかった。
あのひとの指にからんでいたゴールドの指輪を引き抜き
という、訳アリ恋愛を匂わせる歌詞がド初っ端にあることに気づいたのは数年前である。
おおう? よくよく歌詞をみれば、歌の主人公、お相手がいる方に、別れたくないとかなり駄々をこねている。2番では、大人に頬をひっぱたかれとる(汗)!
でも、ひたすら気持ちをさらし、青空に悲しみをぶつけることで、そんな日々も過去となっていくこの歌は、私の心を浄化してくれるのだ。
追うヒデキ、去るジュリー
作詞は阿久悠さん。阿久さんの作詞で、やはり既にパートナーがいる彼女との別れを歌った沢田研二さんの「LOVE 抱きしめたい」がある。
こちらの主人公は、愛する人を抱きしめたいと思いつつも
指輪をはずして愛し合う いけない女と呼ばせたくない
と気づかい、身を引いている。すばらしい。賢明な判断だ。
ただ、ジュリーの歌の主人公は、なぜか度を超えて両思いや幸せに罪悪感を覚え、やたらと己から関係を壊していくケースが多い。「サムライ」なんてジェニーと両思いなのに「男は花園で眠れぬこともあるのだよ」と言い、出ていくのだ。なぜ!!
対して、ヒデキの歌は、ひたすら追い迫る。しかも情熱的に、片思いだろうが両思いだろうがお構いなしに! ボタンを外せ、心を見せろ! ブーメラン、あなたは戻ってくるだろうッ、君が死んだら俺は死ぬ―ッ! ヒーッ、ヒデキじゃなきゃ大事件よ!!
阿久悠さんが描く歌詞について、西城秀樹はこう語っていたそうだ。
「沢田研二さんと僕は、阿久悠さんの中では、シャープとフラットの関係だったんじゃないですかね……」(『星をつくった男 阿久悠と、その時代』重松清著、講談社文庫)。
いやもう、なるほどヒデキ、さすがの解釈だ。お二人は、昭和歌謡史上、最高に麗しい前のめりと後ずさり!
西城秀樹が託された「顔を上げる」という表現
阿久さんは、ヒデキが10代のときは、激しく直球な恋の歌を彼に贈っていた。それが20歳になったとき「若き獅子たち」(1976年)を作詞し、〝大人になった西城秀樹〟にかなり重い〝任務〟を与えている。少し長いけれど、「阿久悠 命の詩 『月刊you』とその時代」(講談社)p144西城秀樹の巻」から、引用させてもらいたい。
日本人は感情の高ぶりで、眉を寄せ、目を閉じ、面を伏せ、心の中央に折れ曲がっていくように体を小さくしていく。時に、膝を折り、首を垂れる。
しかしぼくは、そういう形では表現してはもらいたくなかった。
顔を上げ、両手を高くかかげ、心の中央をより大きく拡大するように表現するにはどうしたらいいか
変わりゆく世の中、日本に足りなかった「顔を上げる、両手を高くかかげる」という、陽の感情の表現を目指し、彼はそれを西城秀樹に託した。理由を、阿久さんはヒデキへの手紙として、こう書いている。
日本人の中で君が誰よりも似合うと思ったからである。
そして23歳になった時、阿久さんはヒデキに「ブルースカイブルー」を送った。
「青空よ 遠い人に伝えて さよならと」
という、報われぬ愛や悲しみさえも、上を向き、空に静かに溶かしていく歌を――。
「ブルースカイブルー」は昭和・平成・令和、3つの時代に愛され、今日も誰かの、一人で抱えきれない、大切な想いに寄り添っている。
阿久悠さんの狙い通り、私はヒデキの歌声で、顔を上げることができている。