【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が中国吉林省の工場に派遣した労働者数千人が起こした暴動やストライキと連動し、中国の別の都市やアフリカに派遣された労働者にも暴動やストの動きが拡大していたことが複数の対北消息筋の話で分かった。北朝鮮当局が最初の暴動を主導したとして約200人を拘束、本国に移送したことも判明。当局は厳罰で押さえ込む構えだが、暴動の連鎖は今後も続く可能性がある。
最初の暴動は1月、北朝鮮国防省傘下の「戦勝(チョンスン)貿易」が労働者を派遣していた吉林省和竜市の衣類製造、水産物加工工場で起きた。労働者への4年分の賃金計約1200万ドル(約18億円)を支払わずに「戦争準備資金」名目で本国に上納していたことが発覚したためだ。
労働者が工場の北朝鮮人幹部を人質に立てこもり、火炎瓶を投じて抵抗するほど、暴動は過激化した。北朝鮮当局は4カ月分の賃金支払いを約束し、沈静化を図るとともに秘密警察などを大挙派遣し、工場の幹部や暴動加担者への取り調べを進めた。拷問を含む苛烈な取り調べで工場の北朝鮮人代表が負傷したほか、財政担当副代表が処罰を恐れて自殺したという。
中国遼寧省丹東の衣類加工工場でも2月に労働者約10人が帰国を求めて出勤拒否するストに入った。新型コロナウイルス禍で延期された帰国について「30歳以上は全員帰国」という当局の方針を会社側が履行しなかったことが原因だとされる。
アフリカのコンゴ共和国でも建設現場に派遣された北朝鮮人労働者数十人が、2月に予定されていた帰国の先延ばしに反発し、暴動を起こした。
北朝鮮の情報統制にもかかわらず、最初の大規模暴動の噂が人づてに中国やロシアなど海外に計10万人以上いるとされる北朝鮮人労働者の間に広まっているとみられる。
北朝鮮当局は2回に分けて本国に移送した計約200人について、暴動を首謀したとして処刑や政治犯収容所送りなどの厳罰に処する見通しだ。