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中国軍機の異常接近 威圧への対処力強めねば

海上自衛隊のP3C哨戒機(手前)に異常接近した中国海軍のJ15戦闘機=太平洋上で2025年6月8日撮影(防衛省提供) 拡大
海上自衛隊のP3C哨戒機(手前)に異常接近した中国海軍のJ15戦闘機=太平洋上で2025年6月8日撮影(防衛省提供)

 一歩間違えれば衝突を招きかねない事態だった。危険な挑発行為と言わざるを得ない。

 西太平洋上空で中国軍の空母「山東」を監視していた海上自衛隊の哨戒機に、空母から発艦した戦闘機が異常接近した。防衛省によると、哨戒機の横約45メートルまで近づいたり、前方約900メートルを横切ったりした。監視を妨害する意図は明らかだ。

 中国外務省は「通常の軍事活動に接近して偵察したことが根本原因だ」と日本を批判した。だが、防衛省によれば、哨戒機は安全な距離を取っていたという。中国の説明は受け入れがたい。

 中国軍機は東・南シナ海でも他国の軍用機への異常接近を繰り返している。米国防総省は2023年、米軍機への異常接近が2年間で180回を超えたと発表した。

 懸念されるのは、中国軍が西太平洋に活動範囲を広げていることだ。中国は、伊豆・小笠原諸島と米領グアムを結ぶ「第2列島線」を、有事の際に米軍の接近を阻止する防衛ラインと位置づけているとされる。

 今月9日には「山東」と別の空母「遼寧」の計2隻が同時に第2列島線付近で活動しているのが初めて確認された。「遼寧」は中国の空母として初めて第2列島線を越え、日本の最東端に位置する南鳥島の南西約300キロの排他的経済水域(EEZ)内を航行した。

 西太平洋での作戦遂行能力を高める動きとみられ、看過することはできない。

 日中両国は、偶発的な衝突を防ぐ目的で艦船や航空機が接近した場合に直接通信するためのルールなどを定めている。23年には防衛当局間のホットラインも開設した。不測の事態が起こらぬよう、こうした危機管理体制を機能させることが肝要だ。

 軍事的な緊張が高まれば国民感情のさらなる悪化は避けられない。日中は政治や外交を含むあらゆるレベルで意思疎通を図り、不信の連鎖を断ち切るべきだ。

 中国の活動範囲の急速な拡大を踏まえると、自衛隊のみの対応では限界があるだろう。米国だけでなく、豪州などの同志国とも情報共有を進め、常態化する中国の軍事的威圧に対処する能力を高めていく必要がある。

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