収録中に「周囲の壁が迫ってきた」――“陽キャ”の芸人ゆってぃがパニック障害と診断されて #今つらいあなたへ
発作の後に向き合うのは「またなるのでは」という予期不安
「パニック障害」という言葉を聞いたことはあったが、診断した医師が軽いトーンで話してくれたことに安心したとゆってぃは振り返る。 パニック障害とはそもそもどんな病気なのか。精神科医の藤野智哉氏に話を聞いた。 「繰り返される予期しないパニック発作のことを指します。動悸、発汗、身震い、息苦しさ、吐き気、めまいなどの身体症状と、このまま死ぬのではないかという激しい恐怖や、強烈な不快感が生じます」 肝心なのは、発作は予期できないという点だ。 「発作は数分以内にピークを迎えてやがて収まりますが、いつ発作が出るかわかりません。くつろいでいる時にも出ることがある。たとえば、嫌な上司と一緒の時だけ心身が苦しくなるというのは、パニック障害とはいえません。あくまでいつ出るかわからないということです」 では、どんな人が発症しやすいのか。 「否定的感情や不安への過敏さなどは危険要因とされますが、誰でもなる可能性があります」 世界におけるパニック障害の生涯有病率は1.7%。2対1で女性に多いとされているが、誰でもなる可能性がある(「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」より)。 ゆってぃのように、“陽キャ”であっても例外ではない。 「コロナが心配で家にいたいのに、なんで遠くにあるスタジオに行かなきゃいけないんだよって思っていましたから、無意識のストレスもあったのかもしれません」 ゆってぃ自身は病院に行って診断されたことで、気持ちが少し楽になったという。 「病名がついて安心したのかな。モヤモヤしたものに、色と形と名前がついたって感じですね」
藤野氏によれば、パニック障害の特徴に、「またなるのではないか」という予期不安がある。公共交通機関や囲まれた場所(店や映画館、エレベーター)などで発作が出たら困ると考え、回避するようになる。それを「広場恐怖」と呼ぶ。 ゆってぃも、ラジオのスタジオのように狭く圧迫感があるところに行くと、その時の恐怖がよみがえるような気がしたという。ゆってぃの彼女は自分の経験を踏まえ、的確なアドバイスをくれたそうだ。 「次の日、地下街を移動して仕事場に向かう予定があったんですが、どうにも気乗りしないと言ったら、『だったら地下鉄で移動するのやめようね。たぶん、そういうのが嫌なんだよ』って。おかげで次の日は発作が出ることはありませんでした」 パニック障害が悪化すると、予期不安により電車に乗れなくなるなど日常生活に大きな影響が出るようになるが、医師の診断と彼女からもらったアドバイスによって、病気への向き合い方が明確になった。