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アナウンサー赤平大「発達障害と子育てを考える」

医療・健康・介護のコラム

思考が拡散しやすい発達障害にスマホは天敵 アルゴリズムに導かれて、気になる記事や動画がエンドレスに

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息子が「ゲーム依存症」になる怖さ

 1978年生まれの私は、1980年代の家庭用ゲーム機の爆発的な普及、1990年台のオンラインゲームの台頭、2010年代からのeスポーツの大人気と、まさにゲームが社会・世界に浸透していくど真ん中の世代でした。

 同時にゲームリテラシーの端境期でもあるため、現在の10~20代よりも「ゲームをやり過ぎると良くない」とアレルギー的に思ってしまう部分があると思います。

 そのため私は、発達障害の息子が「ゲーム依存症」になることを、過剰に恐れています。

 「ゲーム依存症」は、定義としては実はまだ新しい概念です。WHO(世界保健機関)は、2019年に「Gaming Disorder(ゲーム障害)」を正式に疾病として定義しました。

  「ゲーム依存症」になった人の特徴は、運動不足、睡眠障害、ひきこもり、学力低下、浪費、家庭内暴言・暴力など。ゲーム時間が長くなるほど、学力低下の恐れが高まるとされています。

どのくらいゲームをさせていいのか

 ゲーム勃興期世代の私たち親としては、デジタルネイティブで生まれながらにスマホが身近にある息子世代が、手軽にスマホゲームをする姿は心配になります。しかし、ゲームにより自己肯定感や良好な友人関係を構築できることもわかります。もしかすると将来、ゲームに関わる分野で生きていく可能性もあります。このルートは、私たち世代にはなかった生き方なので、どのくらいゲームをさせていいのか正直わからないのです。

 「ゲーム依存症」は医師が総合的に判断しますが、その参考として使用されるスクリーニングテストが世界的に開発されています。今回は、 日本国内で開発されたテスト の内容をご紹介します。

1.ゲームを () めなければいけない時に、しばしばゲームを止められませんでしたか。
2.ゲームをする前に 意図いと していたより、しばしばゲーム時間が びましたか。
3.ゲームのために、スポーツ、趣味、友達や親せきと会うなどといった大切な活動に対する 興味きょうみいちじる しく下がったと思いますか。
4.日々の生活で一番大切なのはゲームですか。
5.ゲームのために、 学業成績がくぎょうせいせき や仕事のパフォーマンスが 低下ていか しましたか。
6.ゲームのために、 昼夜ちゅうや逆転ぎゃくてん またはその 傾向けいこう がありましたか(過去12か月で30日以上)。
7.ゲームのために、 学業がくぎょう悪影響あくえいきょう がでたり、仕事を危うくしたり失ったりしても、ゲームを続けましたか。
8.ゲームにより、 睡眠障害すいみんしょうがい (朝起きられない、眠れないなど)や ゆう うつ、不安などといった心の問題が起きていても、ゲームを続けましたか。
9.平日、ゲームを1日にだいたい何時間していますか。

各質問項目に対する回答の数字を合計する。5点以上の場合、ICD-11による「ゲーム行動症(依存症)」が疑われる。

※このスクリーニングテストは医学的な判断ではなく、あくまでも補助的なテストです。気になる方は専門の医療機関での診断をお願いします。

  日本国内での「ゲーム依存症」は12~18歳で男性7.6%、女性2.5%で合計5.1%と推計されています。 これは40人クラスに2人程度の割合で、個人的には意外と少ない印象です。

 子供のゲームの使用を親が制限すれば、当たり前ですが「ゲーム依存症」リスクは低下します。私が子供の頃は「ゲームは1日1時間だけ」という家庭が多かった記憶があります。

 これが通用しにくいのが、現代のゲーム事情です。その原因が、まさにスマホ。一昔前のゲーム機は、家庭のテレビに接続するため、親の目が届きやすい環境でした。しかしスマホは、いつでもどこでも、ゲームをやろうと思えばトイレでもできます。親がコントロールしようにも難しいのです。

  スマホの所有率は、中学生で7割を超えていて、中学3年では約9割です。所有開始年齢は低年齢化し、2024年で10.4歳となっています。

 スマホの利用制限を活用して、子供の過剰なスマホ使用を抑制することもできます。ただ今時の子供は賢く、利用制限を突破する子もいれば、制限の外で利用可能なゲームを楽しむ子もいます。実際、息子の学校の保護者会で先生は「スマホの制限と子供たちの知恵のイタチごっこです」と苦笑い混じりで言っていました。

 今回、発達障害支援動画メディア「 インクルボックス 」では、長年、依存症の研究をされている旭山病院精神科医長の中山秀紀さんに、スマホ、ゲーム依存症についてインタビュー取材をしました。

インターネット依存度が高いADHD

 中山さんの著書「スマホを手放せない子どもたち」では、日本の中学生対象のインターネット依存度調査で、ADHD診断のある中学生の方が2倍以上高いという結果を示しています。また韓国の小学生を対象とした調査で「ADHD傾向の少ない生徒」と、「傾向の強い生徒」を比較すると、ADHD傾向の強い生徒の方がインターネット依存度が10倍ほど高いとのことです。

 なぜ発達障害だとスマホ、ゲーム依存度が強まるのか? 親はどんな対策をすればいいのか? 詳しくは次回のコラムでお話しさせていただきます。(赤平大 アナウンサー)

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赤平 大(あかひら・まさる)

 元テレビ東京アナウンサー。現在はフリーアナとしてWOWOW「エキサイトマッチ」「ラグビーシックスネーションズ」、ジェイ・スポーツ「フィギュアスケート」、NTTドコモLemino BOXING「井上尚弥世界戦」など実況、各種番組ナレーターを担当。

 2015年から千代田区立麹町中学校でアドバイザーとして学校改革をサポート。2022年から横浜創英中学・高等学校講師。2024年から代々木アニメーション学院講師。発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を持つ。早稲田大学ビジネススクール(MBA)2017年卒優秀修了生。

 発達障害と高IQの息子の子育てをきっかけに発達障害動画メディア「インクルボックス」運営。

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