文学フリマ東京40を終えて(感想)

まずは、お手に取ってくださった方、ご購入してくださった方、本当にありがとうございました。お時間やお金をかけて私の言葉に耳を傾けてくださることに、大変感謝しております。

今回の東京について語る前に、前回の文学フリマ広島のことについて簡単に触れさせてください。

文フリ広島(~2月)

広島で出した文章を書いた当時の私は、相当に限界でした。明らかに今『過酷な世界で生きていく』と『「死にたい」と思うとき』で書いた文章を読み返してみると、よくもまあまだ死んでないなと思います。文章を書く、という発想に至っていなかったら普通に自殺していただろうなあと。

そんな中で出た文フリ広島は、想像以上に救いになりました。自分の書いた言葉を見てくれる人がいて、感想までくださる人がいるというのは、それはもうすごく嬉しかったですし、文芸活動を通して知人が出来ていくということにも感動しました。

ただ、広島の時は、他の方の本を一冊も買えませんでした。元々、小説とか活字がすごく苦手で、面白そうだと思っても、買う勇気まで出ませんでした。広島時点ではちょっとずつ読むようになっていたとはいえ、まだまだ「読む」ことへのハードルがかなり高かった記憶があります。

そんな心持のなかで、東京でも出店することに決めました。

準備期間(3月~4月)

3月の間は別な文章を書いていた都合で、文フリへの進捗を生むことは出来なかったのですが、その間に少しずついろいろな小説が読めるようになっていったのを覚えています。ヴァージニア・ウルフ『波』、カツセマサヒコ『ブルーマリッジ』、ジョゼ・ルイス・ペイショット『無のまなざし』、畑野智美『アサイラム』、ハン・ガン『回復する人間』、フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』、あたり。良ければ皆さんも読んでみてください。(ただし、『波』はめちゃくちゃ読みにくいです。これ本当に小説か?でも一番好きです)

こうしてちょっとずつ読書体験を積んでいく中で、一つ思いました。色々な後悔を積み残してきて、自分の至らなさを見てどうしようもなくなっている今、ちゃんと過去を振り返りたいなと。自分の未熟さにも弱さにも向き合いきれていない中で、傷と向き合う時間を作りたいなと。

そういった思いから生まれたのが、『砂浜の門』と『傷と向き合うとき』です。

今回は、特に『砂浜の門』については、読みやすいものにしようという意識がありました。既刊の『過酷な世界で生きていく』と『「死にたい」と思うとき』は、自分が皆さんに、こういうこと考えてる人もいるんだよと伝えたくて作った本です。ただ、ちゃんとアウトリーチになっているのか、それが不安でした。「死」とかそれに準ずる極限状態について、「知りたい」と思う人でないと見てくれないんじゃないのかな?という不安です。

そういう訳で、小説についてはジャンルと文体を読みやすいものに変えることに、取材・評論については、「死」とは離れた文脈で、かつもう少しテーマを限定することにしました。全体的に、前回より陰鬱さを落としているつもりです(出来上がったものを見ると、結局そんなに落ちてもいないですが)。

動き出したのが4月頭と、広島の時より短納期になってしまった都合で慢性的な睡眠不足に陥りはしましたが、最終的にはちゃんと自分なりに納得できるものができました。皆さんの目から見て不出来な部分はもちろんあるかと思いますが、自分の能力の限りのものが出せたかなと感じています。

東京(5月)

今回は地元開催だったので、広島の時のように夜行バスが止まって始発新幹線に切り替え、みたいなことになるリスクが無く、安心して準備・睡眠できました(2月の広島の時は朝4時半起きでした。新幹線寝過ごさなくてよかった)。また、今回は友人に売り子を依頼しており、席を安心して空けられることも大きかったです。8月の札幌はワンオペ予定ですが…。

そして開場。準備に手間取りながらもぎりぎり時間通りに設営完了してほっとしながら、会場の賑やかさを味わっていました。その後は、前回の広島で知り合った方からご挨拶頂いたり、初めての方からも激励の言葉を頂いたりしつつ、最終的には想定していた以上に沢山ご購入いただいて、非常に充実した出店になったなと思いました。

そうは言いつつも、購入していただいた後の方が私にとっては怖いものでして、購入したことを後悔させていないだろうかとか、割いていただいた時間とお金に見合ったものを提供できているかなど、不安だらけです。

あと、今回は沢山本を買うことが出来ました。読むことへの抵抗が無くなって嬉しくはありますが、散財しすぎた感はあります。本当はまだまだ気になる本があったのですが、無念のリタイア。次はもう少しお金を用意してきます。

次回(札幌/8月)

次の文学フリマ出店は、8月の札幌を予定しています。もしかしたら9月の大阪にも出店するかもしれませんが、今のところ確定は札幌/8月と東京/11月です。

取材・評論に関しては、企画案が無いので新作を出すかどうか分かりません(扱っている内容がかなりセンシティブなので、私の事情だけで出すべきものでもないと考えていることも大きな理由です。協力していただいた方には感謝しかありません)。小説の方は、新作の長編を出す予定です。取材を行う中で、冊子に反映しきれなかった「当事者の生々しい苦悩」も参考にしながら、皆さんの人生が少しでも良いものになるようなもの、あるいは苦しみの中で藻掻くためのヒントになるようなものを書ければいいなと思っています。

人生は苦しみの掃き溜めみたいなところもありますが、掃き溜めの中に何かあれば良いなあと思いながら、また書いていこうと思います。

お読みいただきありがとうございました。
yuni




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