データセンター・ブームは持続可能なエネルギー目標を損ない、大気汚染による公衆衛生コストを数十億ドル規模に押し上げていることが、Business Insiderの調査で判明した。
データセンター・ブームで加速する化石燃料依存
データセンター・ブームは、電力会社に再生可能エネルギー目標を事実上断念させ、化石燃料への依存を加速させている。
その結果、データセンターに起因する大気汚染関連の公衆衛生コストは年間57億ドル(約8778億円、1ドル=154円換算:以下同)から同92億ドル(約1兆4168億円)に達する見込みであることが、Business Insiderの調査で明らかになった。
ビッグテックが生成AIに大きく賭けるなか、データセンターの電力需要は現時点で再生可能エネルギーの供給量をはるかに上回っている。電力会社は、増え続けるデータセンターを24時間稼働させるためには、火力発電所で化石燃料を燃やして発電したほうがより安価で信頼性の高い電力を供給できると主張している。
アメリカ国内では、2024年末時点で1240件のデータセンターの建設許可が下りている。2010年の約4倍だ。それに伴う電力需要の急増について、ヒューストン大学公共歴史センター(Center for Public History at the University of Houston)の歴史研究者ジュリー・コーン(Julie Cohn)氏は「すでに第二次世界大戦勃発以来、最も著しいものの一つだ」と述べている。
Business Insiderの試算によると、許可済みのデータセンターがすべて稼働すれば、年間の電力需要は149.6〜239.3テラワット時に達する可能性があることが分かった。下限の149.6テラワット時は2023年のオハイオ州全体の電力消費量とほぼ同じで、上限の239.3テラワット時は同年のフロリダ州全体の消費量に近い。2024年の連邦政府報告書でも、2026年までにこの上限に近い水準に達する可能性があると予測している。
汚染の影響はすでに出ている
しかし、現時点で地域社会はすでに汚染による負担を強いられており、影響の矢面に立たされている。
テック企業は、自社の電力使用量は消費者の需要に伴うものだと主張する。また、データセンターにとって最大の運用コストが電力のため、業界としても効率的に電力を使う直接的なインセンティブが働いているとも言う。
テック大手は、データセンター建設ラッシュについて語る際、クリーンエネルギーへの取り組みを強調してきた。
アマゾン(Amazon)は2024年、データセンターやその他の事業に電力を供給するため、世界で500以上の太陽光・風力の発電プロジェクトに数十億ドルを投資したと発表した。マイクロソフト(Microsoft)は自社のデータセンター向けのグリーンエネルギーインフラを構築するため、推定100億ドル(約1兆5400億円)規模の契約を締結したと発表した。グーグル(Google)も同様の目的で200億ドル(約3兆800億円)の投資を約束している。
しかし、Business Insiderが調査したところ、そうした取り組みにもかかわらず、最新鋭のデータセンター群はしばしば汚染源となる旧来型のエネルギー源で動いていることが分かった。
喘息や早死にのリスクも
Business Insiderの試算では、アメリカで建設許可を受けている1240カ所すべてのデータセンターが稼働すると、データセンター向けの発電に伴う公衆衛生コストは57億(約8778億円)〜92億ドル(約1兆4168億円)に達する可能性がある。
予想される健康被害の中には、ぜい鳴、胸部圧迫感、咳といった喘息症状が年間19万〜30万件、さらに年間370〜595件の早期死亡(早死に)が含まれる。
こうした影響を算出するため、Business Insiderは1240のデータセンターに発行された非常用発電機の許可データを使用した。そこには、発電機の定格出力や排出し得る汚染物質の最大値が含まれている。
この手法は、バージニア州の大気排出許可を調査したピードモント環境評議会(Piedmont Environmental Council)のジュリー・ボルトハウス(Julie Bolthouse)の研究からも部分的に着想を得ている(Business Insiderが行った調査の詳細な算出方法はこちらを参照)。
データセンターの電力消費に関する専門家の推計値を参考に、Business Insiderは許可データを用いて、送電線網に連なる発電所から排出される大気汚染物質のうち、どの程度がデータセンターに起因するのかを算出した。
Business Insiderは次に、早死に、喘息発作、心臓発作、学校の欠席や仕事の欠勤といった結果を回避するための費用を算出するアメリカ環境保護庁(EPA)のツールを使用し、大気汚染物質の排出による公衆衛生負担を推定した。
アマゾン「業界最大」360万世帯分の電力消費
アマゾンが所有するデータセンター177カ所は、このまま行けば年間30〜48テラワット時という、データセンター所有企業の中で最も多い電力需要に達する見込みだ。アメリカの平均的な使用量で計算すると、その中央値は一般家庭360万世帯分の電力使用量に相当する。
その約半分の電力を消費するとみられるのが、マイクロソフトの44カ所のデータセンターだ。
マイクロソフトの広報担当者は、同社が化石燃料に依存しているのは、データセンターが立地する地域の電力会社が化石燃料を使用しているからであり、同社自身は事業を展開するあらゆる地域でカーボンフリー電力に多額の投資をしていると述べた。
一方、アマゾンの広報担当者は、同社が再生可能電源の利用可能性を高める取り組みに力を入れていると強調したが、Business Insiderが試算した公衆衛生コスト推定値については言及せず、電力消費量の数値も提供しなかった。
別のアマゾン広報担当者は、Business Insiderが消費量を算出した手法は「複雑なデータセンターの運用を過度に単純化しており、データセンターの構築・運用方法は企業ごとに異なっているという点を考慮していない仮定に基づいている」と述べた。
グーグルとメタ(Meta)は、データセンターの電力使用量を推計したBusiness Insiderの手法に関する問い合わせに回答せず、データセンター運営大手のQTSはコメントしなかった。マイクロソフトの広報担当者は、自社のデータセンターは「常に設置容量の100%で稼働しているわけではない」との認識を示した。
企業別の年間電力使用量(単位:テラワット時)
非常用発電機が引き起こす健康被害
データセンターの非常用発電機は非常時に一時的に電力を供給する設備で、毎月1回、通常は1時間未満の試験運転が行われる。
許可書類を見ると、そうした発電機は喘息の診断、救急外来の受診、入院を引き起こす可能性のある有害な大気汚染物質を排出する。
バージニア州議会向けに2024年にまとめられた報告書によると、2023年に同州内のデータセンターの非常用発電機は、許可で認められた汚染物質排出量の7%を排出していた。これに基づき、Business Insiderは、稼働中・計画中の国内すべての発電機が同様の割合で排出すると仮定した場合、年間で約2500トンの窒素酸化物(SOx)を排出することになると推計した。
これは、200万台ニューヨーク−カリフォルニア間を往復する200万台以上の乗用車に相当する。
Business InsiderはEPAのツールを使用し、データセンターの非常用発電機だけでも、年間約2万件の喘息症状を引き起こし、年間3億8500万ドル(約592億9000万円)の公衆衛生負担をもたらす可能性があると算出した。