「働かなくても時給1500円」のナゾ 障害者就労支援事業所の「あり得ない」手法
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大阪府に住む瀬戸京香さん(仮名)はずっと不思議だった。「家で仕事らしい仕事をしていないのに、時給1500円をもらっていました。おかしいですよね」。瀬戸さんには発達障害と精神障害があり、障害者の就労を支援する事業所で働いていたのだという。 【写真】「自分は何者」そこまで考える必要ない?虐待、いじめ、リスカ傷痕も大切な一部 「死んではダメ」手差し伸べた恩人のため「もう一度働きたい」
瀬戸さんの元には時々、200万~300万円台の金額が書かれた通知が届いていた。瀬戸さんは意味がよく分からなかったが、どうも「瀬戸さんを支援した」という名目で事業所が1カ月に受け取っている公的なお金のようだ。ただ、ほとんど支援は受けていない。「なのに、私1人の分で事業所が300万円も受け取っているの?」 瀬戸さんの疑問について記者が取材すると、専門家も「あり得ない」と驚くようなカラクリが浮かび上がった。(共同通信=市川亨) ▽「A型事業所」とは? 瀬戸さんは2024年まで数年間、大阪市内の「就労継続支援A型事業所」を利用していた。A型事業所は、国が定めた障害福祉サービスの一つ。障害者に働く場や訓練を提供し、一般企業への就労を支援する。 基本的にはA型事業所へ通って働くが、在宅勤務も可能。仕事内容はパソコン作業や清掃、製造、クリーニングなど事業所によってさまざまだ。 事業所は利用者と雇用契約を結び、原則として最低賃金以上を「生産活動」の収益から支払う。一方、事業所は障害者への支援の見返りとして国から障害福祉サービスの給付金(報酬)や雇用保険の助成金を受け取れる。
今年6月現在、全国に約4400カ所あり、約8万7千人が利用する。精神・発達・知的障害の人で9割近くを占め、軽度の人が多い。 瀬戸さんもそんな一人だったというわけだ。利用を始めたとき、瀬戸さんはA型事業所のスタッフからこう言われたという。 「うちでは『36カ月プロジェクト』という仕組みに入ってもらうことになっています」 ▽「家にいるだけで給料がもらえた」 「36カ月プロジェクト」とは何なのか。瀬戸さんら元利用者や運営法人のスタッフらによると、次のような仕組みだ。 まずA型事業所を数カ月利用し、一般企業に就労。6カ月たったらA型事業所に戻り、数カ月後にまた一般就労に移る。これを繰り返し、6カ月の一般就労を6回行うので、「36カ月」というわけだ。 「一般企業への就労」と言っても、実際には運営法人や関連会社に就労する形で、A型事業所利用中と一般就労中どちらも仕事はほとんどなかったという。瀬戸さんはこう話した。
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