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「AIに仕事を奪われる」ってほんと? 松田雄馬さんと〝身体のない人工知能〟を考える (全8記事)

「受動的な猫」と「身体を持たない人工知能」の共通点 自らの失敗に気づけない“AIの限界”と、主体性の大切さ

「AIに仕事を奪われるのでは?」「人間はもっと創造的な仕事をするべきだ」……と、自分の仕事がなくなる不安を感じさせる言葉が、世の中にはあふれています。しかし、人工知能の専門家・松田雄馬氏は「AIは意外とポンコツですし、人は生きているだけで創造的です。AIのことをよく知って、仲良くしてあげてくださいね」と笑います。そこで今回、同氏が登壇したイベント「『AIに仕事を奪われる』ってほんと? 松田雄馬さんと〝身体のない人工知能〟を考える」の模様を公開。「人間を人間たらしめているものは何か」を問い続けている松田氏とともに、身体を持つ人間とテクノロジーの向き合い方を考えましょう。

1つ前の記事はこちら

人工知能が仕事を“増やしてくれた”まさにその瞬間

松田雄馬氏:どんどんいきます。「AIには『身体』がない!」。AIと人間の違いから主体性の必要性を知ろう、というお話をしていきたいと思います。

主体性は、まさに今のキーワードという感じだと思いますけれども。僕はいつもお話ししているので、初めてじゃない方はもう「おなじみのあれかな?」みたいに思っていただければと思うんですけど、映像を用意しました。

「身体がないことでこんなことになっちゃうんだよ」とわかる映像なんですけれども。ちょっと映画のナレーション風にお話ししますね。

20XX年、とうとうごみ収集の仕事まで奪ってしまうロボットが出現したという……。やべぇ……。人類はごみ収集の仕事まで奪われてしまうのでありましょうか。

はい。やべぇですよ。もうごみ収集すらさせてくれないのか、みたいな感じですけど。半ば冗談で言ってるんですけど、これ実際にアメリカとかカナダとか国土の広いところで、実際に運用されている半自動のごみ収集マシーンですね。

(映像が流れる)

ごみを見つけて、いい感じで……いやぁ、やらかしちゃいましたね。運転手さん「仕事を増やしてくれやがって」というね。

人工知能が仕事を増やしてくれた、まさにその瞬間ということだったりもするんですけど、実はこれ一番大事なことは、ここなんですね。

ミスしてぶちまけるじゃないですか。ここまでは、まだいい。初めてやるんやからしょうがない。人間かて子どもとかよく失敗するやんかとか、大人でも初めてやることは失敗するやんかという話ですよ。人間でも失敗するんですよ。だから当然ロボットも失敗するんですけど、問題はその後で。これです、これ。見ました?

この“我関せず感”。「え、何かありました?」みたいに言ってそうですよね。要するに何が大事かというと、やらかしたことに気づくことすらできないワケですよ。これが身体を持っていないロボットという、あるはずの身体が自分のものになってないという、すごく大きな問題だったりもします。

だからこそ身体を持っている人間が、システムの尻拭いをせざるを得ないところで「仕事増やしてくれやがって」みたいなことがわかってしまうワケですね。

AIにはボディとしての身体があるように見えるんですけれども、それが自分のものになってないことによる弊害がある。AIの限界でもあります。

人間は機械に勝てない。でも、機械も人間に勝てない

人間とAI、そもそも何が違うのかを簡単にまとめてみました。

実はもともとAIって、当然コンピューターなんですよ。コンピューターってもともと、マシン語という0と1の世界から、ちょっとずつ人間が使えるように言葉になり、プログラミング言語になって、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)といって、例えば「アイコンをクリックしただけでいい」とか「画面をタップしただけでいい」というふうに、ちょっとずつ人間になじみがあるようになってきたんですね。

じゃあ一方で人間はどうやって成長するのというと、真逆だとわかります。人間の成長は、最初の生まれたばっかりの時は、当然ものをしゃべることなんかできないんですけれども、身体を使ってコミュニケーションができるワケですよね。

バタバタ身体を使っているうちに、だんだん物をつかめるようになったり、お母さんに抱きつくことができるようになったり、いろんなものが認識できるようになったりというふうに身体を使って成長していく。

それが、身体を使ったコミュニケーションになり、やがて身体を離れた言語を使えるようになり、言語がちょっとずつ論理的に組み合わせられるようになり。徐々に論理的になっていくという意味で、ちょっとずつコンピューターの計算能力に近づきはするんだけど、当然コンピューターのようにものすごい速さで計算できるワケじゃないと考えると、当然、論理的な部分で人間は機械に勝てるワケがないですね。

一方で、身体を使っていく部分は、逆に身体を持たない機械が人間に勝てるワケがないんですよ。人間は機械に勝てない。でも、機械も人間に勝てない。これが、ある意味で真理だったりします。

「人間と機械は共生していかなきゃね」みたいによく言われるんだけど「どうやって共生すんのよ」って、誰も言ってないんですね。そもそも「人間勝てないし、機械勝てないし」がわかって初めて、お互いを補って共生していけるようになるので、そもそもこれを理解しておかないといけない。

主体性に関する「ゴンドラ猫」の実験

でも、それだけじゃないところもあります。それが先ほどの「ゴミ収集ロボットがなぜあんなふうになってしまったのか?」を端的に説明する実験でもあるんですけれども。(もう1つ)「ゴンドラ猫」という、アメリカの心理学者・ヘルドとヘインがやった実験を紹介したいなと思います。

ちょっとかわいそうなんですけど、生まれたばかりの猫ちゃんが装置にくっつけられちゃいました。どんな装置かというと、縦縞だけの世界で、かつ2匹が点対称でくっついちゃってるんですね。

片方の猫ちゃんは自分の意思で歩くことができる。もう片方の猫ちゃんは、この片方の猫ちゃんの動きに合わせて、右に行けば同じように右に行くし、左に行けば左に行く。ほぼ同じような景色を見ていると思っていただければと思います。

同じものを見ながら育つワケだから、当然「ものを見る」という意味では、あんまり成長速度って変わらないような気がしますが。しばらく、ほんの数週間なんですけど、この装置の中で育った猫ちゃんを見ると、えらいことになっちゃうワケですよ。その結果です。

こっちを能動的な猫、こっちを受動的な猫(ゴンドラ猫)という言い方をしますけれども、その結果がですね……じゃんっ。ゴンドラに乗せられた猫ちゃんは、空間が見えなくなっちゃった。

「どういうこと? ずっと目は開いているじゃない」という感じなんですけど、例えばものにぶつかるんですよ。自分の足で歩いた経験がないから、目の前になにか景色があったとしても「これだけ動いたらぶつかるな」とか、そもそも「今見てるものが障害物だな」というのがわからないワケですね。わからないから当然避けられない。

リーチングというんですけど、例えば自分の口や手を動かして体を届けることすらもできなくなる。要はエサまでの距離もわからなくなるし、そもそもどれがエサでどれがエサじゃないかすらもわかんなくなる。

「自分で動こうとする主体性」がないばかりに、そもそも「見る」ことができなくなる。この世界でエサも取れなければ、ものも避けられないワケだから、そもそも生きていくことができないワケですよね。だから、自分の力でなにかをやろうとすること、実際にそれをやってみることがいかに大事かが、この実験からわかるのです。

身体がないAIも当然、同じことが起こってるワケですよ。主体性がいかに大事かが、今のお話でわかってきたかなと思います。

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「週刊少年ジャンプ」を超えると宣言した日 「ジャンプ+」が受け継いだ“新連載推し”の文化 [1/2]

【3行要約】
・デジタル化で伝統メディアが苦戦する中、出版社やラジオ局の変革が急務となっています。
・集英社「少年ジャンプ+」編集長の籾山悠太氏とニッポン放送の冨山雄一氏が対談し、デジタル時代における新作重視の戦略を語りました。
・両者の共通点から、メディア企業は既存ブランドを活かしつつ新コンテンツ創出に注力すべきことが示されています。

前回の記事はこちら

『ゲルゲットショッキングセンター』を聴いていた中学生時代

入江美寿々氏(以下、入江):籾山さんは、ラジオの世界に対して何か思いとか、「こういうふうに見ていた!」というところはありますか?

籾山悠太氏(以下、籾山):僕は不勉強で、ラジオをこれまでたくさん聞いてきたわけじゃないんですけども。中学生ぐらいの時に『新世紀エヴァンゲリオン』がすごく流行っていて、エヴァンゲリオンの特集をすごいやっている『ゲルゲットショッキングセンター』というラジオ番組があったんですよね。

冨山雄一氏(以下、冨山):ニッポン放送の夜にやっていた番組ですよね。

籾山:それをよく聴いていました。当時、クラスでも『エヴァンゲリオン』の話はするんですけど、今みたいにSNSやインターネットもほとんどなかった時代だし、友だちもそんなに多くなかったので、クラスの中では話し足りないというか。もちろん会話ができるわけじゃないですけど、当時はラジオでエヴァの話題をたくさん聴いていて、その時一番「ラジオを聴いていたなぁ」という思い出があって。

そのあと、インターネットやスマートフォンが世の中に普及する中で、YouTubeも出てきて、出版と一緒で「ラジオって世の中にちゃんと残っていくのかな?」と思ったことはありました。今は編集部の後輩もラジオとか、Podcastとか、本当に音声のものをすごく聴いていて、その話題がたくさん出てきます。

そのタイミングで冨山さんの本もタイトルに『今、ラジオ全盛期。』と「全盛期」って書いていますし、めちゃくちゃラジオが盛り上がっているんだなと思って。なんで盛り上がっているのかとか、どうやってラジオがここまで来たのかというのを僕も聞きたいなと思って、今日は楽しみにして来ました。

出版社におけるデジタル部署の立ち位置

冨山:ありがとうございます。僕も今回『王者の挑戦 「少年ジャンプ+」の10年戦記』を読ませていただきました。聞きたいことがいろいろあるので、どんどん聞いていっちゃうんですけど(笑)。

僕の会社にもデジタルの部署があるのですが、やはりラジオ局なので、基本的にはラジオを作るのがメインなので、制作部とか編成部とか、営業部とかが、なんとなく会社のメインとしてあります。そういうところでいうと、2010年から今に至るまでの、出版社の中のデジタル部署って、どういう立ち位置なのかなと思って。

籾山:僕が移った2010年のタイミングでは、部署に何人ぐらいいたのかな? 正確な数字はちょっと覚えていないんですけど、10人はいなかったんじゃないかなと思います。当時はスマートフォンではなくて、ガラケー向けに1コマずつ携帯に漫画が表示されるような漫画を売っていました。

もちろん売上も大きかったんですが、ただ、僕は編集部にいる時に、正直に言うとそこまで意識をしていなくて。ガラケーで漫画も読みにくいし「そういうことをやっている部署があるなぁ」というぐらいだったんですね。しかも僕自身が、デジタルにあまり強くないというか(笑)。

冨山:あ、そうなんですね。

籾山:パソコンが苦手ということもあって、異動した時も「いやぁ、ちょっと……。どうしようかな?」みたいな(笑)。「困ったなぁ」みたいな感じでしたね、最初は。

「ジャンプLIVE」から「ジャンプ+」への転換

冨山:「ジャンプ+」の前に、先に「ジャンプLIVE」の立ち上げがあるじゃないですか。あれは、どういう中身だったんですか?

籾山:そうですね。「ジャンプLIVE」という、増刊としてお試しでやったものがあるんですけど。最終目標は「ジャンプ+」と一緒で、『週刊少年ジャンプ』のような、新しい漫画がどんどん生まれる場所にしたいということで、漫画アプリをスタートしたんですが、今の「ジャンプ+」とはちょっと内容が違いました。

まず1つ大きく違うのが、スマホならではの「紙の雑誌ではできないものがあったほうがいいんじゃないかな?」ということで、動画とか、グラビアとかミニゲームとか、漫画以外のコンテンツをたくさん配信しました。もう1つ、有料だったというのも「ジャンプ+」とは違うんですけども。そういうものが「ジャンプLIVE」でした。

冨山:それは、あまりうまくいかなかった感じなんですか?

籾山:そうなんです、はい。もちろんいろいろな作家さんにも協力していただいていて、人気はあったんですけども、「週刊少年ジャンプ」のようなものになりそうかというと「ちょっと物足りないかな?」みたいな感じがして、途中から作戦変更をして、それで「ジャンプ+」になった感じですね。

雑誌作りとアプリ運営に必要な2つの視点

冨山:ディレクターだと、もうその目の前の番組に集中すればいいというのがあると思うんですけど。たぶん今の籾山さんのお立場だと、アプリの中をどうやって使うかというところで、作品を作る脳みそと違う脳みそがある感じがしているんですけど。仕事の仕方ってどうなっているんですか?

籾山:確かに少し違うところはあるなぁとは思います。ただ、最終的にゼロイチで人気漫画を生みたいという意味では一緒です。

これは紙の雑誌もそうだと僕は思っているんですが、漫画家さんと、より漫画が魅力的になるように打ち合わせを重ねて、作家さんをサポートしながら漫画を生むという、漫画編集者としての仕事と、『週刊少年ジャンプ』なり、「ジャンプ+」なりの雑誌を編集する仕事。雑誌があってこそ、人気漫画も生まれやすくなりますし、人気漫画があってこそ、雑誌も活性化するので、それぞれちょっと違いますが、絡み合っているというか。最終的には目標も一緒なので、両方大事だなと思いながら、やっていますね。

入江:冨山さんが手書きで質問メモを書いてきてくださっているんですよね。

冨山:そうなんですよ(笑)。

入江:どうぞ、どうぞ。

競合が増える中で貫く“新作重視”の思想

冨山:あと、本の中に書かれていましたが、その10年ぐらいの中で、やはりどんどん競合の漫画アプリがたくさん出てきて。課金システムがあったほうが稼げるので、ポイント制にするか、ライフ制にするかみたいなところで、単純に雑誌じゃなくて、競合他社があることについては、どういうふうに考えていたんですか?

籾山:そうですね。おっしゃるとおり、LINEマンガさんとか、ピッコマさんとか、いろいろな漫画アプリが増えていく中で全体が盛り上がってスマホで漫画をたくさん読む人が増える、「場所が増えるのはうれしいな」とは思っていたんですが、一方で、周りの方はよく一括りに「漫画アプリ」とよくおっしゃっていたんですけど、僕はけっこう差があるなと思っていました。

「ジャンプ+」に近い漫画アプリは、あまり少ないというか。「ジャンプ+」しかないんじゃないかなみたいな(笑)。そう思っているところもあります。先ほど申し上げたように、本当に新作を生むということを目標にしているという。

「ジャンプ+」は、最新話は無料ですし、連載中の作品は、初回1回は全話無料で読めるんですね。それは『SPY×FAMILY』でも『怪獣8号』でも同じです。なので「そのアプリだけで利益、売上を求めるぞ!」というのもあまりなかったりします。ユーザー数、雑誌も部数とかが大事だと思うんですが、必ずしもその数字だけを追っていないんですね。

例えば『DRAGON BALL』とか、『幽☆遊☆白書』とか、『SLAM DUNK』とか、過去の名作をどんどん配信していけば、読者もいっぱいアプリを使ってくれると思いますが、それはしないようにしています。本当に新作を推すという、そういう思想を思い切ってやっているところは、けっこう少ないなと思っていて、漫画アプリはたくさんあるんですが、実は「ジャンプ+」っぽいのは1個しかないような気がしています。

入江:新しい作品を生んでいく場所というのが、もう固定でブレないものってことなんですね。

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