憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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出勤前と退勤時の電車の中も満員だし、小説書ける状況が減ってきてますね。その結果、更新速度が遅れがちです。申し訳ない……!!

なるべく最短で4日、最長で6日以内には上げられるよう頑張るぞー!


18.先生と『顔無し』

 

 

 

 

 過去の話を終え、アルはお冷やを口に含む。

 そして感想を伺うように、アビドスの面々を見渡した。

 

 

「……ここまでが私達と『顔無し(ノーネーム)』の出会い。ふふっ、どう? アウトローな出会いだと思わない?」

 

「それはもう! 最初は敵対する彼等、しかしお互いに利用されていたことに気付く! 諸悪の根源を叩くために、協力することにっ。まるで映画みたいでした〜⭐︎」

 

「え、映画っ……! 確かに……! ふふん、でしょうでしょうっ!?」

 

 

 ノノミの感想に、アルは嬉しそうに瞳を輝かせる。具体的な話の流れを聞き、確かに映画のようだと思った。

 自分が、そのように評価された出来事の中心人物だったことを自覚し、少し興奮する。

 

 

「むう……」

 

 

 それを白い目で見るのは、セリカだった。

 『顔無し』は首を傾げる。

 

 

「おいおい。店員が善良なお客さんにそんな目を向けちゃ駄目だろ」

 

「善良なお客さんは、私の仲間に致命傷を負わせないわよ」

 

 

 そこまで言うと、セリカが上半身を傾け、『顔無し』に迫る。

 当たらないように、彼は少し仰け反った。

 アルに向けていた視線をセリカは、そのまま彼に向ける。

 

 

「……どうせ瓦礫が落ちてこない場所にいただなんて、嘘でしょ? 本当は手足の二本や三本、潰れたんじゃないの」

 

「惜しい。四肢全てだ」

 

「惜しい。じゃないっての!」

 

 

 飛んできた手刀を『顔無し』は受け止めた。そして、ゆっくり下ろす。

 

 

「落ち着けよ。話は聞いてたろ? あいつらも被害者なんだ。悪いのはクソ猫なんだって」

 

「それはそうだけど……」

 

「大体、これは俺の自業自得な部分もあるだろ。容姿を隠して、人間離れした動きすれば、身体が脆いただの人間とは思わない。違うか?」

 

「……うぅ〜! 何か納得できない!」

 

 

 地団駄踏みたくても踏めないからか、拳を震わせるだけに留めるセリカ。

 こちらに向かってくる足音が聞こえたので、セリカを背で隠すようにして、『顔無し』は立った。

 

 

「社長。帰るのか?」

 

「ええ。会えて嬉しかったわ、『顔無し』。また会いましょう……きっと、すぐ会うことになりそうだけどね」

 

「はいはい。また手を貸せばいいんだな?」

 

「ちょっ……! 簡単に意味を読み解かないでよ!」

 

 

 意味ありげな言動を容易に読み解かれ、アルは顔を赤くした。

 『顔無し』は端末を取り出す。

 

 

「とはいえ、俺の事務所は焼かれたからな。連絡手段、これしかないぞ」

 

「端末持ってたのね。じゃあモモトーク交換しましょ」

 

「いいねいいね、ほら、ハルカちゃんとカヨコちゃんも行くよ〜」

 

「は、はいぃぃ……!」

 

「別に手を引っ張らなくても行くのに……全く」

 

 

 アルに続き、ムツキがハルカとカヨコを引っ張る形で、『顔無し』を囲うように集まった。連絡先を交換している間、雑談して時間を潰す。

 

 

「よく生きてたね。丸コゲだったよ、アンタのトコ。……ていうか、何であんなことに?」

 

「無関係な人間巻き込みたくなかったんで、容姿を明かしたら秒で住居を特定されたんだよ。その結果がアレさ。人の恨み×数ってのは怖いねェ」

 

「家燃やされてそんな軽い調子でいられるの、アンタだけだよ……」

 

 

 カヨコが上着のポケットに両手を入れながら、呆れるように言った。

 お互いの連絡先を交換し終え、『顔無し』は片手を上げる。

 

 

「それじゃ、連絡待ってるよ」

 

「ええ! 後で連絡するわ! 必ず確認しなさいよ!」

 

 

 ブンブンと満面の笑みで手を振ってから、アルは柴関の出口に駆け出す。アビドスの面々は見送りをするようで、残ったのは先生と『顔無し』だけだった。

 

 

「さてと」

 

 

 そんな大きな声を出していないというのに、先生の声がはっきりと鼓膜を揺らす。『顔無し』の隣のカウンター席に座り、覗き込むように先生が身体を折り曲げた。

 

 

「ちょっとお話しようか。『顔無し』?」

 

「……いや、これは過去の話であってな、説教されるのは違うというか」

 

「坊主」

 

 

 ピョコっと顔を出したのは、柴関の店長だ。

 

 

「往生際が悪いぞ。心配してくれてる女がいるだけで幸せなことだろうが。大人しく叱られろ」

 

 

 叱るというより、諭すように言われ『顔無し』は黙った。

 この愛らしい見た目をした柴犬には、口喧嘩で勝てそうにない。『顔無し』は静かに、先生に目を向けた。

 

 先生の瞳はずっとこちらを見続けている。

 

 

「……聞いた限り、『顔無し』は昔から変わっていないんだね。怖い目に遭ったのに弱さを見せないで、誰よりも先に危険に踏み込む」

 

「何かさ。生き急いでるみたいで、心配なんだ。アビドスの皆に対する呼称もそう」

 

 

 先生が一息入れ、悲しそうな目を向けた。

 

 

 

 

 

 

「あの子達に会ってから『顔無し』、『一度もあの子達の名前呼んでない』でしょ?」

 

「……」

 

 

 

 『顔無し』は黙る。図星だった。

 

 彼はアビドスの面々に対して、名前を呼んで話したりしない。ただ話す対象に顔を向けて話すだけだ。

 呼んだとしても、それは名前ではない。

 

 

 

 『委員長』『書記ちゃん』『ツインテちゃん』といった特徴を表す呼称だ。

 

 

 

「それがまるで、呼ぶ必要がないって思ってるように感じてさ……いつか目を離したら、そのまま消えちゃいそうで怖いんだよ……!」

 

 

 先生は顔を上げたかと思うと、『顔無し』の胸板に顔を埋める。少しだけそこが濡れる感覚がし、『顔無し』は先生が泣いていることに気付いた。

 

 繊細な絹を扱うように、その髪を梳かす。

 

 

「先生。大丈夫。俺はそんな柔じゃないし、あいつ等の名前を呼ばないのも事情があるんだ。ヤケになってるわけじゃない」

 

「……詳しい理由は、教えてくれないの?」

 

「……ああ。悪いな。全て終わったら、教えるから」

 

 

 約束を守れるか分からないけど、と心の中で付け足す。

 

 『顔無し』は完全に斑目ユウが死んだとは思っていない。可能性は限りなく低いが、0ではない。そう思っている。

 

 なので全て終わった時、もしかしたら自分は消えて斑目が戻っているかもしれない。最悪のパターンではあるが、終わらせる前に自分が死んでいる可能性もある。

 

 故に約束を守れるか分からないのだ。

 先生は顔を埋めながら、小さな声で言う。

 

 

「……じゃあ、消えない?」

 

「消えないって。それに先生が、目を離さないでくれるんだろ?」

 

「……うん、そうだね。もう絶対に目を離さない。あまりに酷いようだったら、シャーレ内だけを活動範囲にするから。権限で」

 

「……待て。それは冗談だよな?」

 

 

 顔を上げた先生はニコリと笑い、『顔無し』に背を向けて上に伸びた。

 

 

「よーし。言いたいことは言えたし、今日はこれくらいで納得してあげようかなー!」

 

「俺は納得できてないぞ……」

 

「……ふふっ。冗談だよ、まあでもそれくらい心配してるってこと」

 

 

 振り返った先生の表情は穏やかだ。そして何かを願うように、ノーネームの顔を両手で優しく包み込む。

 

 

「でも、早目に呼んであげるようにしてね? ユウカや便利屋の子達は名前で呼ぶのに、アビドスの皆だけ名前を呼ばないなんて、可哀想だよ……」

 

「……おう」

 

 

 『顔無し』は曖昧に頷いた。それは心情的に難しい。

 心の内で呟く。訪れるのかすら分からない未来を描いて。

 

 

あいつ(斑目ユウ)にとっても、アビドスの面々にとっても、『初めて名前を呼ぶ(呼ばれる)』のは、偽物()じゃなくて本物(斑目ユウ)の方がいいだろ。

 

 

「っ?」

 

 

 突然端末が震え、『顔無し』の意識が現実に戻った。

 モモトークを見ると、アルから連絡が入っている。早速依頼かと、その文章を見てみた。

 

 

『一緒にいたのって、まさかアビドスの生徒……?』

 

「……依頼じゃねェな」

 

 

 そこにあったのは、依頼ではなく疑問文だ。

 『顔無し』は疑問を抱きながらも返信する。そのまま何度かメッセージのやり取りをした。

 

 

『そうだぞ。アル……あんな仲良さげだったのに、自己紹介しなかったのか?』

 

『うう……因みに今、『顔無し』って何でアビドスの子達といるのかしら!?』

 

『用心棒みたいなもんだけど、それがどうかしたか?』

 

『いいえ! 何でもないわ! じゃあまた!!』

 

 

 そこでやり取りが終わる。

 いつのまにか顔を上げていた先生が、前からモモトークの画面を覗き込んだ。

 

 

「それさっきの子から?」

 

「……先生。そんな身を寄せなくても、見せるって」

 

 

 上下左右が反転してるから読みづらいのだろう。『顔無し』の仮面に頭頂部が当たるほど、先生が頭を近づけた。

 豊かな双丘と端末が『顔無し』の手を挟む。彼は静かに手前に引き、先生に見えるよう端末を動かした。

 

 先生も形の良い眉を顰める。

 

 

「……結局何を言いたかったんだろうね?」

 

「さぁ?」

 

 

 二人はそう言って、再度モモトークの画面を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?

  • 使い過ぎ
  • 丁度良い
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