【コラム】HD-2D版「ドラクエI&II」で感じた「メタル狩り」というゲームデザインの風化

もう、はぐれメタルではドキドキしない

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HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』において、「ドラクエ1」の高難易度化について疑問の声が出ている。

ひとり旅なのは原作通りなのでいいにしても、ザコ敵はもちろんボスも強化されて非常に強くなっている。それにどう対抗するかといえば、プレイヤーはレベル上げと装備集め(ちいさなメダル集め)をする必要があるのだ。

そして、その「レベル上げがおもしろくない」といった意見が書かれたブログ記事が出ていたり、逆に「そのレベル上げこそドラクエだ」だとか「レベル上げで成長が実感できる」とSNSで主張する人たちもいる。

私の意見は少し異なり、レベル上げのデザインの問題だと見ている。レベル上げそのものがおもしろくないのではなく、ドラクエのレベル上げ、つまり「メタル狩り」が古いのではないか? というものだ。

倒せるか倒せないか、ドキドキしたメタル狩り

「ドラゴンクエスト」シリーズのレベル上げ方法は作品によって異なるが、メタルスライムやはぐれメタルといった高い経験値を獲得できるレアモンスターを狙う「メタル狩り」が代表的なものであることは疑いようがないだろう。

メタル狩りのプロセスはこうだ。

1:たまにメタル系モンスターが出る

2:メタル系モンスターは攻撃が当たりにくい

3:メタル系モンスターはバトル中に逃げることがある

4:運よく何回か攻撃が当たれば経験値がたくさんもらえる

レベル上げにギャンブルのような運任せの遊びを導入したことで、プレイヤーは大量の経験値を獲得できるか否かでドキドキする。単調なレベル上げが当たり前だった時代であれば、かなり画期的な要素といえよう(ちなみに、メタル系モンスターに攻撃が当たりやすくなる武器・特技なども存在する)。

メタル系モンスターのような敵はほかのRPGにも出ており、これはかなりよいアイデアだったと思われる。そもそも同じ敵を倒し続ける堅実なレベル上げがおもしろくないので、このメタル狩りが生まれたのではないだろうか。

たとえばドラゴンと戦うとき。レベル21で覚える「ライデイン」が弱点になっており、推奨レベルもそのあたりだと考えられる。巻物で「ちからため」を覚えればより楽に攻略できはする、といったデザインもあるにはあるが、攻略方法がひとつ増えたくらいといえる。

ところで、IGN JAPANに掲載された福山幸司によるレビューでは、本作がレベル上げから脱却したと指摘している。ところが、本作はボスの推奨レベルに達すると「ベギラゴン」、「フバーハ」、「ギガデイン」といった明らかにその時期のボスに適した呪文・特技を覚えるデザインになっている。

「うけながし」や「だいぼうぎょ」といった重要な特技もレベルで覚えるためレベル上げから完全に脱却したとは言い難く、面倒なレベル上げが必要なことは変わらない。

そもそもレベル上げから脱却する意図があるなら、メタルスライムが出やすい地域を設定する必要がないし、敵を呼ぶ「くちぶえ」もいらない。あるいはオリジナルのように、メタルスライムを単なる強敵にして経験値を控えめにする選択肢もあったはずだ。

また、先のレビュー記事では『ドラゴンクエストVI 幻の大地』ではレベル上げを職業の熟練度稼ぎに変えたという記述もあるが、それは名前が違うだけでレベル上げと何も変わらないだろう(なんなら説明書には「職業にもレベルアップがあります」と記述がある)。

ともあれ、この記事では本作においてレベル上げが重要であり、メタル狩りがそれを支えるデザインだとしたうえで話を進める。そして、それがもともとは素晴らしかったとしてもいまは違うのではないか、というわけだ。


現代の育成要素はすでに進化を遂げている

『Vampire Survivors』(2022)

そもそもいまのビデオゲームにおいてレベル上げ、あるいはそれに類するものは嫌われているだろうか? むしろ、ずっとスタンダードな遊びといえるだろう。

たとえば、いま流行りのローグライトは育成が重要な要素といえる。『Vampire Survivors』は恒久的な育成要素を積み重ねることで強くなっていくし、宝箱を開けたときは一時的な成長要素がたくさん手に入る喜びがある。

『Cult of the Lamb』や『Hades』のような作品も、アクションゲーム寄りではあるが地道な育成によってゲームプレイが楽になるし、何より育てる喜びが味わえるゲームだ。

『ちいかわぽけっと』(2025)

基本プレイ無料のタイトル(ソーシャルゲーム)においても、育成は重要だ。ジャンルはRPGやアクションなどさまざまだが、キャラクターの育成がメインになることはしばしばある。

さまざまなキャラクターをガチャなどで手に入れ、育成して自分だけのパーティーを作り出す。それによって物語を進めたり対人戦を楽しむわけで、育成は重要な要素といえる。

そう、レベル上げのような育成要素はずっと人気なのだ。なんなら対戦ものにすら当たり前に存在する。ゆえに進化を続けているのである。

育成要素はレベルのみならず、各種要素に細かく分けられている時代でもある。『Hades』(2020)

そもそもローグライトの場合、ローグライクが持つパーマデス(育てた要素の削除)をなくした結果として遊びやすいゲームになっており、これは「新しいレベル上げの形」といえる。作品によってはギャンブルを思わせる激しい演出を取り込んでおり、数値が増える喜びもこのジャンルならではの楽しみになっている。

ソーシャルゲームの場合、オート周回、経験値アイテム、放置要素など、多角的な育成方法が用意されている。レベルを上げるのも素早く、アイテムがあればあっという間に済むことが多い。

あるいはクリッカーゲームも数値を積み立てる遊びとみれば、育成要素といえなくもない。こちらは簡単操作であり、数値がインフレするといった楽しみを見出している。

『Pokémon LEGENDS Z-A』(2025)

「ポケットモンスター」シリーズは「けいけんアメ」といった経験値を直接的に与える道具が登場している。レトロな雰囲気を残すRPGにおいても、このような取り組みが行われているのである。

『ドラゴンクエストI&II』におけるレベル上げは、基本はメタル狩りである。リメイクなので致し方ないにしても、あまりにも変わっていないのだ(ただし、「ドラクエII」のほうには明確な抜け道がある)。


文字だけのレベルアップは本当にいいものなのか?

こうして周囲を見回すと、メタル狩りはかなり地味だ。メタルスライムやはぐれメタルが出てきても特殊な演出は特にない。

レベルアップ時の演出も、いつものファンファーレと文字の羅列である。変わる数値も地味。これはメタル狩りの問題ではなくドラクエ全体の問題といえるが、いずれにせよ質素なスタイルが根底にあり、このリメイクでも演出などは追加されていない。

メタル系モンスターにトドメをさせるか否かの瞬間にスローモーションになる演出が入るだとか、もしくはメタルスライムを一気に何匹も倒せるフィーバーモードが発動するだとか、そういうものはないのである(ちなみに、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』ではメタル系モンスターを出せる「スペクタクルショー」なる連携技が存在していた)。

HD-2Dリメイクに存在するのは淡々としたメタル狩り。プレイヤーにとっては動画でも見ながらやる面倒な作業になってしまう。

実際、筆者はこのメタル狩りが面倒で投げ出しそうになった。しかし、メタル系モンスターが逃げなくなるMODがあったのでなんとかクリアできた。

このMODは、メタル系モンスターの逃げる行動を通常攻撃に置き換える非常にシンプルな内容だった。しかしたったそれだけで苦痛が減り、投げ出す大きな要因がひとつ潰れたのである。逃げられるストレスが減れば、レベルが上がった喜びを感じやすい(もちろん劇的におもしろくなるわけではないが)。

数値を積み重ねることは今も昔も人気の遊びで、今後もビデオゲームから消えることはないだろう。ただ、その遊びも進化し続けているのである。

確かに昔のメタル狩りはおもしろかった。ただ、何十年も経ったあと、それをずっと続ける必要はあるのだろうか?

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HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』

Square Enix 2025年10月30日
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