憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

26 / 91
皆様!
感想、お気に入り登録、高評価ありがとうございます!
大変励みになっております! 誤字報告もありがとうございます!
今後もよろしくお願い致します!

すまない。中編になってしまった。
纏める力がなくてすまない……! 次こそは過去編終わらせるから……!


16.便利屋68との出会い(中編)

 

 

 

 

 アル達の目の前には、瓦礫の山と化した屋敷がある。

 しばらく様子を見るが、特に人が起き上がるような音がしなかったため、『顔無し(ノーネーム)』を倒せたのだと判断した。

 

 

「……はぁ〜」

 

 

 そのことに安堵し、アルはゆっくりと息を吐く。他の皆も同様だった。

 ムツキとカヨコはアルを心配し生じた、精神的な疲労。ハルカはそれに加えて戦闘による、肉体的な疲労もあった。

 

 アルは元気付けるように、明るい声を張り上げる。

 

 

「な、何はともあれ! これで依頼はこなしたわ。クライアントに連絡をしましょう」

 

 

 携帯端末を鳴らし始める彼女に、ムツキとカヨコが笑う。そしていつもの調子で言った。

 

 

「うん! ……あ、アルちゃん。お祝いとか言って、久々の報酬金を後先考えず使うのはやめてね?」

 

「そうだね。まだ手を付けてない請求書も山のようにあるし」

 

 

 事務所の自分の机にある、請求書の山を思い出したのか、忠告をしてきたムツキとカヨコを交互に見て、アルは叫んだ。

 

 

「わ、分かってるわよ!」

 

 

 すると鳴らしていた携帯端末から電話が繋がる音がした。

 その電話の主は、アル達のクライアント。

 

 

『陸八魔様ではないですか! つまり、この電話は……!!』

 

 

 そして、『顔無し』の事務所に訪れたあの猫の獣人だった。

 

 

「はい。依頼を完遂いたしましたご報告です」

 

『素晴らしい! 因みにどのような手段で?』

 

「えっと、それは……」

 

 

 アルは狼狽える。屋敷を自由にして良いとは言われたが、その中に倒壊させるのは含まれているのだろうか。

 見兼ねたカヨコが、アルに代わり答えた。

 

 

「屋敷を倒壊させて、その下敷きにした。屋敷は自由にして良い。そういう話だったよね?」

 

『それはそれは……! ええ、勿論ですとも!!』

 

 

 クライアントの言葉を聞いて、ムツキはアルに笑いかける。

 

 

「くふふっ。よかったね、アルちゃん?」

 

「え、ええ。そうね。別に何も気にしていなかったけどね!」

 

 

 何も問題なく仕事が終わる。便利屋68は全員がその認識で、達成感に似た心地よい気持ちだった。

 

 だから、次に発したクライアントの言葉は、彼女達に大きな衝撃を与える。

 

 

 

 

『ヘイローのない人間なら確実に死んでますから! 邪魔者を消して頂き、ありがとうございます! あははははは!!!!』

 

 

 

 

「……え」

 

 

 アルの口から消えるような声が零れた。その瞳は、大きく開かれ揺れている。

 

 

「あ、あはは……何、言ってるの」

 

「う、あぅぅ……」

 

 

 ムツキはいつものように笑おうとしたが、無理だった。その身体は小刻みに震えている。

 ハルカは頭を押さえ、視線はぐるぐると回っていた。

 

 ふと、あることを思い出す。

 自分達の敵対者に、『ヘイローがなかった』ことを。

 

 

「私達は……人を、殺した……?」

 

 

 自分達が人を殺めた。その事実が、少女達の心を締め付けたのだ。

 アルは頭を振る。カヨコの隣に進み、否定するように叫んだ。

 

 

「そ、そんなわけないじゃない! だってあの人、走るの速いし、狙撃しても避けて当たらないし、力も強いし……! ヘイローはなかったけど、アンドロイドとかじゃないの!?」

 

『いーえ。彼の事務所に行った時、お茶を出してくれましてね。作る時と渡して頂いた時、服の隙間から素肌が見えました。アンドロイドのような無機物ではない、人の匂いもしましたからねぇ。彼は間違いなく人間でしょう』

 

 

 縋りたい可能性を、いとも容易く引きちぎられる。

 

 

『彼は邪魔だったんですよ。バカなお客から金を巻き上げていたのに、暴力でそれを壊された。今までその商売から得た金も、全て元の場所に戻された。二度と市民に手を出すなと脅され、組織も大分小さくなりましたが、彼が消えた今、これからまた大きくなれそうです……!!』

 

 

 しかも、その男は善人だった。他人のために巨悪の前に立つ、そんな男だったようだ。

 アルは最後にした会話を思い出す。お互いに、クライアントに騙されていたことは分かっていた筈だ。

 

 

「あの時、もっと私が声を出していれば……! 皆を、こんなことに巻き込むことなんてなかったのに!!!」

 

 

 堪えきれず、膝をついてアルは大きな声と共に涙を流す。

 

 

「ち、がう。ちがうよ、アルちゃん。私のせいだよ……私のトラップで、屋敷を壊したんだから。アルちゃんのせいじゃない……!」

 

「アル様……!!」

 

 

 ムツキは首を振りながら、アルを正面から抱き締めた。そしてその背中を摩る。ハルカも右からその小さな手で、アルの身体を掴んだ。

 3人が固まり、抱き合い、共に謝罪をしながら慰め合う。

 

 カヨコはただ一人、立ってクライアントと話していた。

 

 

「……こんなことして、ただで済むと思ってるの?」

 

 

 普段の賑やかな様子とは一転し、あらゆる負の感情を背負わされた仲間達を見て、カヨコは唸る。

 その目は据わっており、全身から怒気が溢れていた。

 

 

『そんな態度を取っていいんですか? 今、ここで、ヴァルキューレやゲヘナの風紀委員会へ連絡することも出来るのですよ? 私は』

 

「っ」

 

『そしたら貴女達はどうなるでしょうねぇ。風紀委員会は、ゲヘナの生徒が問題を起こせばどこへでも駆けつけると聞きますし?』

 

「この、外道……! あんた等もただでは済まない筈だ!」

 

『そうとも言えません。組織が小さくなるということは、その分隠れやすくもなったということ。貴女達が私達のことを言及する前に、雲隠れしてしまえばいいだけです』

 

 

 主導権は圧倒的にクライアントが握っている。カヨコは強く歯を噛んだ。

 

 

『念のため言っておきますが、私が通報する前に倒すのは無理ですよ? 貴女達が絶対に攻め込めない場所にアジトはありますし、テリトリーに入った時点で通報すればいいだけの話ですからねぇ』

 

「……」

 

『しかし、邪魔者を消してくれましたし、その強さを捨てるには勿体無い! 組織を大きくするには、貴女達の力が必要です!』

 

 

 演説のような芝居がかった口調で、クライアントは言う。

 

 

『そこでどうでしょう? 私達の協力者になってくれるのなら、悪いようには致しません。報酬も支払いますし、このことは黙っておいてあげます。元の日常に戻りたくないですかぁ?』

 

 

 よく言う。

 カヨコは目の前にこのクライアントがいれば、すぐにでも引き金を引きたいくらいだった。

 

 

(これを餌に、私達を使い潰す気でしょ……!? 絶対こいつは、また同じようなことをさせるっ、そしたらアル達の心は完全に死ぬ!!!!)

 

 

 カヨコは視線を移す。三人が慰め合っている場所へと。自分だけならいいが、彼女達にそんな地獄を味わわせたくなかった。

 とはいえ、断れば自分達は殺人犯として、二度と光を見れない。

 

 どちらも地獄。答えを出せるわけがない。

 

 

(誰か……)

 

 

 この中で一番年上とはいえ、カヨコも少女である。

 だからこの状況下で、出来ることといえば。

 

 

「誰か、助けて……」

 

 

 誰かに、助けを求めることだけだった。

 それに応えてくれる者など、いないと分かっているのに……。

 

 だが。

 

 

 

「任せろ」

 

「え……」

 

 

 力強く、応える者がいた。

 その人物はカヨコの肩に手を置くと、彼女が手に持っていた携帯端末をするりと奪うと。

 

 

「よお。クソ猫。随分機嫌が良さそうだな。何かいいことでもあったのか?」

 

 

 そう、相手に呼び掛けた。

 アルとムツキとハルカは、ゆっくりと顔を上げて、カヨコの隣に立つ者を見て目を見開いた。

 

 

 屋敷に潰された筈の男……『顔無し』がそこにいたのだ。

 クライアントは電話越しに叫ぶ。

 

 

『な、『顔無し』……!? 何故! 屋敷に潰されたんじゃ!!』

 

「前みたいに様を付けろよ、馴れ馴れしい。お前と違って日頃の行いがいいのか、偶然瓦礫が落ちてこない場所にいただけだ」

 

 

 服は駄目になったけどな、と『顔無し』が溜息を吐く。

 確かに、服装が埃まみれの黒いスーツに変わっていた。さらにコートまで羽織い、手首から先は手袋で隠されている。首にはマフラーを巻いていた。

 

 この時期には暑い服装だ。肌の露出を避けたいのだろう。

 

 

「話は聞かせてもらったよ。俺を狙うだけに留まらず、こいつらを騙して自分の駒にしようとは恐れ入る。筋金入りの大悪党だ」

 

 

 そして、『顔無し』は仮面に携帯端末を近付け、囁く。

 

 

 

 

「今、そっちに行く。覚悟しとけ」

 

『ひっ……!!』

 

 

 

 

 通話を切ると、それをカヨコに渡して『顔無し』はその場から去ろうと、一歩踏み出した。

 

 

「ま、待ちなさい!!!」

 

 

 その背に声を掛けたのはアルだ。

 振り返る『顔無し』に一瞬動きを止めるが、堂々とした態度で言い放つ。

 

 

「今から、アイツらのアジトに行くのよね……? 私も連れてって! このまま、すごすごと帰れない!!」

 

「あっはは。うん、私も同意見かな〜……直々にアイツ等ぶち殺さないとムツキちゃん、この怒り抑えられないなっ」

 

「アル様を泣かせた奴殺すアル様を泣かせた奴殺すアル様を泣かせた奴殺す」

 

「私も連れて行って。奴等のアジト、だいたい見当付いてるし。案内役が必要でしょ」

 

 

 四人の怒りの感情が合わさり、何か一つの化け物が生み出されている。そう感じてしまう程、彼女達の怒りは大きいものだった。

 

 勿論、『顔無し』にこれを断る選択肢はない。

 仕返しは、やられた張本人が積極的にやるべきだ。

 

 

「いいぜ。思う存分やってやろう」

 

 

 指をくい、と動かす『顔無し』にアルは表情を輝かせ、その後を追う。他の三人もそれに続いた。

 ムツキは『顔無し』の隣に移動して、覗き込むように重心を前にする。

 

 

「ねえねえ。今から私達、共同戦線を張るんだよね?」

 

「まあ、そうだな。それがどうかしたか?」

 

「なら自己紹介しようよ〜。君も私達の名前分からないと、やりづらいでしょ? 私達もずっと君呼びは嫌だし」

 

「……それもそうだな」

 

 

 少し考え、ムツキの提案に『顔無し』は乗った。

 

 

「『顔無し』だ。便利屋をしている」

 

「おお、同業者じゃ〜ん。親近感湧くから、ネムネムって呼ぶね! 私はムツキっていうんだっ」

 

「……お前、距離感近いな」

 

 

 出会って数秒であだ名で呼び、腕に抱きついてくるムツキに『顔無し』はそう言った。コート越しだが、腕に微かな柔らかみを感じる。

 

 『顔無し』は特にそれに反応しなかった。ムツキも『顔無し』の反応を気にせず、彼の腕を解放し、自分以外のメンバーを指していく。

 

 

「それで、この子がハルカちゃん、カヨコちゃん、そして我らが社長、アルちゃんだよ!」

 

 

 ハルカとカヨコと互いに小さく礼をし、『顔無し』はアルを見た。

 

 

「へぇ。社長なのか、あんた」

 

「な、何よ……変?」

 

「いいや? 寧ろ納得がいったよ。恰好がそれっぽいしな。敏腕女社長って感じだ」

 

「……ふ、ふふふ。まあね。貴方、見る目あるじゃない」

 

(敏腕女社長……! アウトローが入ってないのが残念だけど、この人なかなか違いが分かるじゃない!!)

 

(くふふ、アルちゃん分かりやすいなぁ)

 

 

 必死に口角が上がるのを我慢するアルを見て、ムツキはニヤつく。

 幸いにも、『顔無し』は今カヨコと会話をしているため、視線はそちらに向いていなかった。

 

 

「早速だがカヨコ。奴等のアジトに見当が付いてるって話だったけど、それは『ゲヘナ学園』か『ヴァルキューレ警察学校』近辺のどちらかで合ってるか?」

 

「!……あんた、頭も回るんだ」

 

「あのネコの口の軽さもあるけどな」

 

 

 『顔無し』は自身の考えを述べる。

 

 

「お前達が絶対に攻め込めない所って、ネコが言ってただろ? 未遂にはなったが、通報を恐れる殺人犯が攻め込めない場所って言ったら、治安維持組織がある地区だ」

 

「それだけじゃその二択に絞るのは難しい……まあ、普通ならだけど」

 

 

 キヴォトスの地区はそれぞれ学園が自治しており、治安維持活動を行うのはその学園独自の治安維持組織によって行われている。

 つまり、学園が複数あるため二択に絞るのは難しい……のだが。

 

 

「ご丁寧に『ヴァルキューレ』『ゲヘナの風紀委員会』って言ってたからな。お前らに対する、脅迫に使うほど強力な組織なんだろう。それはその組織に対する一種の信頼を意味しているとも見れる」

 

「だからその二つは、さっきの私達にとって攻め込めない場所でもある。加えて、アイツ等が依頼に来た時、帰る方向を観察してたけどヴァルキューレの方には向かっていなかった」

 

「ナイス観察力。なら『ゲヘナ』に決まりだな」

 

「とはいえ、風紀委員会を相手にしないといけないのは面倒臭いな……」

 

 

 二人の会話をただ呆けたように聞いているのは、アルとハルカだ。

 

 

(す、凄い……! カヨコも『顔無し』も、頭が良さそうな会話だわ! 私もいつかああいう話を……!!)

 

「(か、会話についていけません……! やっぱり私は、だ、駄目な奴ですぅ)い、生きててすいません……!!!」

 

「「「「急にどうした?(の!?)」」」」

 

 

 しっかりしなさいハルカ! とアルがその肩を揺する。

 ムツキもハルカの隣に移動し、その頭を撫でた。

 

 

「ハルカちゃんは生きてていいんだよ〜? ネムネムもそう思うよね?」

 

「ああ。ガッツもあるし社長思いだし、もっと自分に自信持っていいと思うぞ」

 

「ほらほら、頼りになる『お兄さん』もそう言ってるんだから、元気出して! ね?」

 

「は、はぃぃ」

 

 

 ムツキの一言に『顔無し』は反応した。

 彼女がはっきりと言ったのだ。『お兄さん』と。素性を隠すために、肌の露出を極力隠し、声も変えているというのに。

 

 

「お前、なんで……」

 

「んん? ……あ、性別分かった理由? 簡単だよ〜。さっき腕に抱きついた時、女の子特有の柔らかさがなかったしね」

 

「……身体を鍛えている女子の可能性は考えなかったのか?」

 

「考えたよ? だから次は匂い。汗も流してるからかな、ムンムンしたよ〜? 濃い雄の香りがっ。あ、臭いとかじゃないから、安心してね?」

 

 

 にんまりと小悪魔のような笑みを浮かべるムツキに、『顔無し』は苦笑した。

 

 

(こいつ……小悪魔というよりサキュバスだな。しかも抜け目ない。実力もそうだし、全員が敵に回すと厄介なタイプだ)

 

 

 『顔無し』は少しだけ、自身と彼女達を騙したネコに同情する。

 それはそれとして、彼は一つ学べたことがあった。

 

 

「とりあえず……今後は初対面相手に、ボディタッチされるのは避けるようにするか」

 

 

 ムツキのような者も現れるかもしれない。当の彼女はニヤニヤしている。

 

 

「ふ〜ん、性別知られたくないんだ?」

 

「まあな。人間か否か。男か女か分からなくするために、こういう服装してるし……バラさないでくれよ? 見破ったのはお前が初めてなんだ」

 

「えっ? ネムネムの初めて貰っちゃった! ……くふふっ、大丈夫大丈夫。バラさないよ〜。私、ネムネム気に入ったし!」

 

「そいつは重畳」

 

 

 そんな会話をしながら、『顔無し』達は歩く。

 奴等の本拠地に辿り着くまで、後少しだ。

 

 




絵を描きたい!
描く時間が取れない!
くそぉぉぉぉ!!!

一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?

  • 使い過ぎ
  • 丁度良い
  • 寧ろ少ない!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。