憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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最近、絵の練習をし始めました。自分も挿絵描いてみたいなと。
結果ですか? はっはっは……察して。


15.便利屋68との出会い(前編)

 

 

 

 これは先生がキヴォトスにくる、少し前の話だ。

 

 ブラックマーケットにある、『顔無し(ノーネーム)』の事務所にて。

 机を挟んで目の前のソファに座る依頼人に対し、『顔無し』は訝しげにその依頼内容を復唱した。

 

 

「……つまり。商談中何かあった際、守れるよう、その場に立ち会ってほしいって?」

 

「ええ! 是非ともお願いいたしますぅ!」

 

 

 どこか作ったように感じられる笑みを浮かべ、背を伸ばす猫の獣人。その背後に立つアンドロイド二体に、『顔無し』は視線を向ける。

 

 

「俺は別にいいんだが、そいつらじゃ足りないのか?」

 

「そ、それは……『顔無し』様に来て頂ければ百人力かと思いまして!」

 

「……成程。念には念をってことね」

 

 

 怪しい。

 

 『顔無し』は内心、そう思っている。目の前の猫の作ったような笑顔、態度から何かやましいことを隠しているように感じた。

 だがそれを理由に断る選択肢はなかった。

 

 『顔無し』は机に置かれた、アタッシェケースに入った大金を見る。そして一息吐いた。

 

 

(上等だよ。何を企んでるか知らんが、全て台無しにしてその金も有り難く頂いてやるさ)

 

 

「いいぜ。その依頼、受けてやる」

 

「! ありがとうございます!!!」

 

「それじゃ早速……詳細を聞かせてくれ」

 

 

 アタッシェケースを力強く自分のところに引き寄せ、日時や商談の場所、その部屋割、有事が生じた際の立ち回り。

 それらを事細かに聞き、『顔無し』はその日を終えた。

 

 

 そして後日。

 

 

 『顔無し』が指定された場所は、キヴォトスの首都にあたるエリアである、D.U.区内……の外郭地区にある屋敷だ。

 そこは取引相手の別荘で、そこで商談をする。そういう話だった。

 

 『顔無し』はその地区に辿り着いてから、何度か因縁を付けられている。

 得意の『外から来た人間』と口にしヘイローがないことを確認させ、不意打ちをすることで返り討ちにしてきたのだが。

 

 確実に一つ言えることは、ここが相当治安が悪い地区だということ。

 

 

「そんなところで商談。さらに現地集合……ね」

 

 

 しかし依頼人は、現地までの護衛は不要だと言っていた。商談中に予告なく『顔無し』が入ることで、プレッシャーを与える意図があるらしい。

 

 一応理屈としては頷ける理由ではあるが、どうも嘘くさい。

 

 屋敷に着く前に襲われれば、本末転倒だ。そういう事態を避けたいと思わなかったのか。

 この時点で、『顔無し』はこの依頼は『商談の護衛』ではなく別の意図が隠されていると見た。

 

 

(多分、何らかの組織による復讐だよな。考えられるとしたら)

 

 

 身に覚えはあるっちゃある。

 便利屋という仕事柄、無力で善良な依頼人の心や身体を、悪徳業者から武力行使で守ることも多々あった。

 

 加害者側にとっては、たまったもんじゃない。『顔無し』という存在は彼等にとって邪魔だろう。

 ここまで分析して、今迄の流れを推測し、『顔無し』は息を吐く。

 

 

「となると、道中で削って、屋敷で仕留めるって腹積りかもな……」

 

 

 なら、正々堂々と入り口から入ってやる必要はない。

 『顔無し』は、屋敷に向かって駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 便利屋68は今まさに、『顔無し』が向かっている屋敷の中にいた。

 目的は勿論、彼を倒すことにある。

 

 

「それにしても、太っ腹な依頼主だよねっ。高額の依頼金! この屋敷も自由に使ってよし! お陰でトラップ仕掛け放題だし、これだけで受けて良かったかも〜」

 

「お風呂も入れたし、久々の食事も出来たし、最高ね!」

 

 

 上機嫌なムツキとアルと対照的に、カヨコとハルカは冷静だ。

 

 

「そうだね。……待遇が良すぎて、少し不安にもなるけど」

 

「ただよくこの屋敷を襲いにくる、襲撃犯を返り討ちにするだけですよね……? 何か地下に眠ってたりしないですよね……!?」

 

「「「それはない」」」

 

 

 訂正。ハルカは冷静ではなかった。

 屋敷の中には、便利屋68以外に誰もいない。『顔無し』の予想通り、これは罠だった。

 

 2階の部屋の窓から、アルがスコープを覗き、屋敷に向かってくる者を発見次第、射撃。ムツキとカヨコ、ハルカは一階に固まり、アルの射撃を突破した者を迎え撃つ。そういう罠だ。

 

 

「……!」

 

 

 アルは短く声を息を吸う。スコープ越しに見た景色で、人影がこちらに向かってくるのが見えたのだ。

 

 その男は黒のレインコートで全身を隠し、顔は見えない。

 そんな風貌と走る速度が常人を超えていることから、アルのアウトローとしての勘が、彼が標的だと伝える。

 

 

「……あれが今回のターゲットね。やってやろうじゃない」

 

「見えたの? じゃあ、やっちゃえアルちゃん! 失敗しても大丈夫。くふふっ……玄関の扉には爆破トラップ仕掛けたし、私達もいるから!」

 

 

 無線機越しのムツキの声に、アルは自信満々に答えた。

 

 

「いいえ! ここで終わらせるわ! 真のアウトローは一発で仕留めるものなのよ!」

 

 

 照準を頭に合わせ、アルは引き金を引いた。

 

 

 

 

 

「おっと」

 

 

 視界に入った『米粒のような異物』を確認すると同時に、『顔無し』は僅かに首を傾け、それを避けた。

 

 

「狙撃手か。この身体じゃなかったら、即お陀仏だったかもな」

 

 

 しかし厄介であることに変わりはない。狙撃手の処理を第一優先とし、『顔無し』は足に力を込め、地面を蹴る。

 間が空いたが、再度、弾丸が向かってくる。頭の他に、胴体・足と狙われる箇所も増えた。

 

 それらを変則的な動きで避けていく。そして、屋敷とその窓が見えてきた。

 

 

「そろそろいくか」

 

 

 『顔無し』は歯を軋ませ、爪先で勢いよく飛び立つ。

 その瞬間、ブチブチブチ!! と筋繊維が千切れる音がしたが問題はなかった。

 空中に浮いている間にそれは完全に回復する。

 

 

 ガシャン!!!

 

「いやああああああ!!?」

 

 

 なので、屋敷の窓を破りアルがいる2階の部屋に到達した頃には、『顔無し』の身体は元通りになっていた。

 尻餅をついてこちらを見上げるアルに目を向ける。

 

 

「ああ、悪い悪い。ビビらせたか? ちょーっと話を聞きたいんだが……主にお前らの雇い主について」

 

「ふ、ふふふ。舐められたものね、一企業の社長である私が、クライアントの情報を話すとでも?」

 

 

 無理矢理、口角を上げて取り繕うアル。そして狙撃銃を構えるが『顔無し』に銃口を掴まれ、上に向けられる。

 これでは撃ったとしても当たらない。

 

 

(な、なんて早さよ……! それに力も強いし、顔は見えないし、こいつ怖い!!!)

 

「奇遇だな、俺も事業主だ。個人だけどな。……って、そんなことはどうでもいいか。俺がしたいのは情報交換だ、お前らにとっても有益かもしれないぞ?」

 

「? ……どういうこと?」

 

 

 アルに首を傾げ、続きを促された『顔無し』は一先ず安心した。

 時間稼ぎでも何でもいい。事情を話せば停戦へと持ち込める可能性がある。恐らく、立ち位置的には自分と同じ筈だと『顔無し』は思った。

 

 

「ここで商談をするから護衛してくれ。俺はそう猫の獣人に頼まれてここに来た。笑顔が胡散臭いやつだ。あんたは?」

 

「……私もよ。多分、同じクライアント。連日強盗の襲撃に遭うから、そいつをやっつけてほしいって言われたわ」

 

「ここに来たのは今日が初めてだっての。そんな嘘を吐いてまで、俺を倒したかったんだな……」

 

 

 室内は静寂に包まれた。二人共、この出会いは仕組まれたものであると気付いたようだ。 

 その間に、敵対する意思は既にない。

 

 

 『二人』は。

 

 

「アル様ァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

 悲鳴のような怒声のような、そんな大きな声と共に部屋に押し入ってきたのはハルカだった。

 そのまま散弾銃を構えてきたので、『顔無し』はアルの狙撃銃の銃口を離す。そしてハルカの手元ごと銃身を蹴り、左に射線をずらした。

 

 

「アアアアアアア!!!」

 

「っ。ガッツあるな、小さいのに」

 

 

 ハルカはそのまま、半身を差し出す体勢でタックルしてくる。想定外の攻撃に、『顔無し』の足元が一瞬ふらつく。

 

 

「社長。こっち」

 

「アルちゃん大丈夫!?」

 

「カヨコ、ムツキ。どうしてここに!?」

 

「どうしてって、窓が割れて悲鳴が聞こえた後、何も無線機から反応がないから心配してきたんだよ!」

 

 

 『顔無し』が窓を破って入ってきた時、その破片で無線機が壊れたらしい。アルを救うため、部屋に入ってきたカヨコとムツキが彼女を回収して、部屋を出る。

 

 

「ちょっ。待って、二人共……!」

 

「大丈夫! ハルカちゃんなら、もう作戦を伝えてあるし!」

 

 

 アルは何か言いたげだったが、そのまま部屋から連れ去られてしまった。

 これで、部屋の中は『顔無し』とハルカの一対一の状況が出来上がる。

 

 

「死んでください……!!」

 

 

 ハルカは『顔無し』の頭に狙いを定めるが、突如きた衝撃で痛む腹を片手で押さえたことで、手元がブレ、当てることが出来なかった。

 

 

「カッ……!?」

 

「あ、やべ」

 

 

 『顔無し』が前蹴りを放ったのだ。ハルカは目を吊り上げて、銃を乱射する。

 

 

「ッ死ね、死ね、死ねェェェェェ!!!」

 

「こりゃもう誤解解くの無理そうだな……」

 

 

 『顔無し』はツイてない、と内心で溜息を吐いた。

 広範囲の散弾と怒りによる連射。狭い室内でこれは危うい、と『顔無し』は部屋を出て、体勢を整えようとする。

 

 

「は?」

 

 

 追撃が来るかと思いきや、ハルカは部屋の窓から飛び降りた。

 何のために? と疑問符を浮かべると同時に、その答えが現れた。

 

 

「っ」

 

 

 大きく身体が揺れ、『顔無し』はまず地震が起こったことを疑う。

 

 

『大丈夫! ハルカちゃんなら、もう作戦を伝えてあるし!』

 

 

 しかしムツキの発言を思い出すのに伴い、この揺れの大きさと、落下する感覚、周囲の壁や天井がひび割れる光景を見て、『顔無し』は笑みを浮かべた。

 

 

「やりやがったな。あいつら」

 

 

 彼女達は自分より前にこの屋敷にいた。

 迎え撃つなら、それ相応の準備はするだろう。考えてみれば分かることだ。

 

 

 

 ドゴォン! ドゴォン! ガラララ!!!

 

 

 

 屋敷に仕掛けられたトラップが一斉に作動する。

 支える柱等が壊れ、大きな欠片の群体と化した屋敷は、『顔無し』の身体へと降り注ぐのだった。

 

 

 




1話で終わるの無理でした。
ごめんなさい! 次話で終わらせますので!

一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?

  • 使い過ぎ
  • 丁度良い
  • 寧ろ少ない!!
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