5階建て共同住宅が工事中に不同沈下。躯体(くたい)は完成したが「沈下が止まる見通しがない」と解体された。この事故で建設会社に保険金を支払った損害保険会社が、構造設計事務所と地盤改良工事会社を訴えた。(日経クロステック)

鉄筋コンクリート造5階建て共同住宅が、工事途中から不同沈下してしまった。沈下が収まる見込みがないとして解体することに。建設会社が損害保険会社へ保険金を請求した。保険金を払ったことで求償権を取得した損保会社は、不同沈下の原因は構造設計事務所などが助言を怠ったからだと主張して提訴した(出所:判決文を基に日経クロステックが作成)
鉄筋コンクリート造5階建て共同住宅が、工事途中から不同沈下してしまった。沈下が収まる見込みがないとして解体することに。建設会社が損害保険会社へ保険金を請求した。保険金を払ったことで求償権を取得した損保会社は、不同沈下の原因は構造設計事務所などが助言を怠ったからだと主張して提訴した(出所:判決文を基に日経クロステックが作成)

 今回取り上げる判決は、鉄筋コンクリート(RC)造共同住宅の不同沈下事故を巡り、構造設計事務所と地盤改良工事会社が損害保険会社から訴えられた、というものだ。

 構造設計者が裁判に巻き込まれるパターンとしては、建て主が原告となって元請けの設計者や施工者を訴え、それに巻き込まれる場合が多い。今回のケースは損保会社が責任追及を行った形で、珍しい構図だ。

 概要を説明しよう。問題の建物は千葉県成田市で計画された壁式RC造5階建ての共同住宅で、延べ面積は約1000m2だ。建設計画は2018年初頭に始まった。

 建設計画に当たっては、建設予定地を保有するA社が発注者となり、工事は建設会社B社が元請け、建設会社C社が下請けに入った。C社は土地の以前の所有者で、設計も手掛けていた。

 18年2月、C社は建設予定地の1点でボーリング調査を実施。この結果を基に地盤改良工事会社D社(被告)からの提案を受けた。柱状改良工法を用いれば、直接基礎で建設可能だという内容だ。

 C社はこの提案をベースに、構造設計事務所E社(被告)へ建物の構造計算を依頼。E社が納品した構造計算書などの成果物に基づいて確認申請が行われた。確認済み証が交付されたのは同年5月30日。C社は工事に着手した。

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工事中に不同沈下が発覚

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