「ホストに貢ぎたい」と海外で売春する日本人女性 2カ月で2千万円稼ぐケースも“薬漬け”“暴行”の危険と隣り合わせ
■カナダで合法大麻の乱用も だが、海外で、しかも売春となると、心身に重大な被害をもたらす。渡航先でメンタルを壊すケースも少なくない。 ある20歳の女性は、元々精神疾患があり睡眠薬を服用していた。ホストにハマり「担当に貢ぎたいから」とスカウトを通じてカナダに渡った。だが、現地で合法の大麻を乱用して、「薬漬け」の状態になった。2週間ほどでボロボロになって帰国した。 異国での売春は、危険とも隣り合わせだ。性的行為の最中に殴る蹴るの暴行を受け、全身あざだらけで帰国する女性もいる、という。 「日本人女性の多くは英語もしゃべれず、お金を稼がないといけないので『ノー』と言うことができません。理不尽な要求も拒否できない状況に置かれています」(清水さん) 清水さんは、ホストがスカウトとつながり女性を海外で売春させる行為は、ホストへの恋愛感情と女性の承認欲求を巧みに利用した、「極めて計画的な人身取引」と批判する。9月、都内の「個室マッサージ店」で働いていた12歳のタイ国籍の少女が、人身取引の被害者として保護された。清水さんは、海外で売春をさせられている日本人女性たちも「同じ人身取引」と強調する。 6月には、改正風俗営業法が施行され、ホストクラブやキャバクラなどの接待飲食業に対する規制が厳格化され、色恋営業の禁止などが明文化された。また、性風俗店が女性を紹介された見返りとしてホストやスカウトに報酬を支払う「スカウトバック」も禁止となっている。けれど、実態はまだ深刻だ。 ■搾取される女性たち 10月下旬、清水さんらはカナダやオーストラリア、アメリカの税関に関わる大使館職員と会合を持った。日本の現状やホスト文化、渡航する女性の特徴などを伝えた。海外売春をする女性には、持ち物や服装などに特徴があり、これらの情報を事前に共有することで、入国時点での阻止が可能になるという。 「海外売春の被害を防ぐには、海外に『ホストの現状』を知ってもらい、水際で止めるのが最も効果があります」 その上で、清水さんは、「買春側の取り締まりと、被害者のケアの両面が不可欠」と訴える。 「ニーズがあるから、女性はリスクを負ってでも体を売ろうとします。買う側の取り締まりは重要です。同時に、売春によって精神的にも肉体的にもボロボロになる女性たちのケアも大切です」 高市早苗首相は11日の衆議院予算委員会で、買春者への処罰強化について検討する方針を示した。搾取される女性たちを守るため、社会全体での対策と支援の強化が急務だ。 (AERA編集部・野村昌二)
野村昌二