なぜレイシストやアンフェの「統計ごっこ」を真面目に聞く必要がないのか
先日、参政党の馬鹿が質疑して警察庁の馬鹿が応えるという馬鹿レイシストのコンビネーションによる差別扇動が行われた。
警察庁が、昨年の外国人の犯罪率は日本人の1.72倍だったという数字を20日の参院内閣委員会で明らかにした。観光などの短期滞在者を除いた検挙(摘発)人数を比較した。参政党の大津力氏への答弁。
大津氏が、短期滞在者を分母に含めると正当な比較ができないとしてたずねた。警察庁の重松弘教刑事局長は、便宜上の数字として、昨年の日本人の検挙数22万6038人を同年12月1日現在の人口で割ると0.188%、短期滞在を除く外国人の入管難民法違反を除く検挙数1万2173人を在留外国人数で割ると0.323%ーと示し、「日本人を1とすると、外国人は1.72」とした。
レイシストたちは、外国人の犯罪率が日本人より高いという「統計」にはしゃいでいる。
ただし、この数字の誤魔化しはすでに指摘されている。日本人の犯罪率は赤ん坊から高齢者まで含んだ人口を母数とすることで希釈する一方、外国人の犯罪率は比較的若い人間が多い母数に注目し大多数の特に法を犯さずに観光だけして帰る人々を無視することで過大視している。
こうした指摘は重要だ。だが、問題の本質ではない。なぜなら、彼らは統計を正しく解釈したいのではなく、たんに都合のいい道具にしたいだけだからだ。統計の解釈の問題への指摘は、本当に統計を通じて現実を理解したい人にしか意味がない。統計解釈の正論を彼らに突きつけたところで彼らは反省することはなく、また別の「都合のいい統計」に飛び立つだけだ。
今回の記事では、レイシストやアンフェの誤魔化しを暴き連ねることで、彼らとまともな議論ができないこと、そんなことをしても意味がないことを明らかにしていく。
なお、今回の記事は、以前書いた「ネット論客が学術論文を叩く方法」の解説に似ている。併せて読んでもらい、SNSで識者面しているアホの実態をぜひ知ってほしい。
レイシスト・アンフェの統計詭弁術
レイシストやアンフェたちがいかにして統計を使い、己の差別を正当化するのか。順番に見ていこう。
こねくり回して都合のいい数字を算出
まずは、今回参政党がドヤ顔で出してきた「外国人犯罪が日本人の1.72倍」という数字である。先に述べたように、この数字は様々な小手先の誤魔化しによって出てきた数字だが、「日本人の分母は赤ん坊から高齢者まで含んでいるから」といった説明には意味がない。
なぜか。それは、1.72倍という数字に正当性があることを前提にした説明だからだ。この節で指摘したいのは、そもそもこんな数字には何の意味もないということだ。
なぜこの数字に意味がないのか。それは、こんな数字はいくらでも計算方法をこねくり回せば算出できるからにほかならない。1.72倍という数字は、無数にあるパターンからたまたま算出された数字に過ぎず、そもそもこんな数字に意味などない。
犯罪率などという大仰な言葉を使うと、あたかも唯一無二の絶対的な基準があって算出されているように見えるかもしれない。だが、計算方法はいくらでもある。外国人の分母側だけでも、参政党がやらせたように外国人の滞在資格ごとに含めたり除いたりで変えることができる。日本人側でも年齢や性別で切り分けたりすることが可能だ。
(ここまで書いて、ふと外国人の人口に性別の偏りがあるのではないかと思って調べたが、在留外国人に限って言えば男性が51%なのでさほどでもなかった。男性に偏りがあれば犯罪率が高いのは当然であるが)
分子、つまり犯罪の側だとさらに自在な操作が可能になる。検挙人員なのか、検挙件数なのか、はてまた起訴された人数なのか、実刑になった人数なのか……犯罪者の処理段階は多段階に渡るため、あらゆる段階の人数で計算することが可能となる。
日本人と外国人の犯罪率を比較するという作業では、分子と分母自体の選択肢が僅かでも最終的な計算パターンは爆増する。日本人人口と日本人の犯罪者数と外国人人口と外国人の犯罪者数の4つの数字を使うので、それぞれの数字に2つしか選択肢がないとしても、最終的な組み合わせの数は2の4乗で16通りになる。実際には5つくらいは余裕で選択肢があるので、最後に出てくる「外国人犯罪は日本人の何倍か」という数字のパターンは3桁通りはあるだろう。その中にたまたま、外国人犯罪が日本人犯罪より多いと示せる数字があれば、それが100通りのうちの1つだけだったとしても大はしゃぎして正当化に使うのがレイシストである。
今後、レイシストやアンフェが持ち出す統計のなかに、どうしてもその欺瞞性が見抜けないものがあるかもしれない。だが、心配する必要はない。そんなものは偶然そうなっただけの数字に過ぎないのだから、そう言って切り捨てれば済む。この世の現象というのはぽっと出てきた統計の数字ひとつで説明できるものではなく、繰り返し確認される現象や統計、背景にあるメカニズムを重ねて初めて理解できるものだ。それが欠けているなら、たまたま偶然そうなった以上の意味はないと思って構わない。
統計の都合のいいところだけ注目
統計や数字と聞くと、その中にはたった1つの要素しか入っていないように思えるかもしれない。しかし、実は統計というのはかなり重層的な要素で構成されているものだ。
外国人の犯罪件数で例えるなら、国籍別に切り分けてリスト化することができるし、レイシストはそこから都合のいい数字を血眼になって探すことになる。彼らが「検挙人員が増加している国籍」を引っ張り出して騒ぐとき、大半の「検挙人員が横ばいか減っている国籍」は無視される。
こういうことはアンフェもよくやる。以下が典型的な事例だ。
男→女のDVは5年で約5.5%増加に対して、女→男のDVは約50%増加。
— ゆな先生 (@JapanTank) November 3, 2025
暗数を含めると相当な数に至ってるんだろうな。https://t.co/19UVUEMTMp pic.twitter.com/Pv7vP8t6mA
この画像は産経新聞が作成したもので、男性のDV被害の相談件数が増えていることを示している。私は「男性のDV被害件数」の統計自体に疑念を抱いているが、それは脇に置いておいて、相談件数自体は増えていることがわかる。
上に挙げたアンフェの投稿は、その点を挙げ、あたかも女性の加害行為が男性の加害行為に比べ急増しているかのように主張している。だが、この主張にはもちろん誤魔化しがある。
そうですね。ここでは、そもそも女性の相談が男性の3倍近くあることが完全に無視されている。これは、DVの相談件数という統計の中にある男女別の数字という重層性に乗じ、女性の件数を無視することでなせる技である。
ちなみにだが、こういうときに倍率を使うというのはレイシストやアンフェの基本技能となっている。倍率は元々の数字の規模を覆い隠しながら、あたかも数が莫大あるいは極小であるかのように印象操作できる便利な表現方法だ。相談件数が1.5倍と聞くとさも多いように感じるが、実際の数字をみると女性の3分の1に過ぎない。
先に挙げた外国人の犯罪率についても同様のことが言える。日本人の1.72倍と聞くとさも多いように感じるが、実際の件数は日本人の犯罪件数と比べれば文字通りのけた違いで、誤差みたいな数字でしかない。参政党はその現実を覆い隠すため、比較の際に倍率を使い、さらに比較対象も比率という二重の誤魔化しをしている。デマで成り上がった参政党の面目躍如というところだろう。
治安は悪化してないって言ってる左派どゆこと? pic.twitter.com/4zCNX86O0M
— 河合ゆうすけ(戸田市議選トップ当選)【2ndサブ用】 (@kawaiyusukeno2) November 25, 2025
この記事を公開するその日にもわかりやすい事例があった。レイシズムで戸田市議に当選した河合ゆうすけが川口市の刑法犯認知件数が増えていることをもって、あたかも外国人による治安悪化が事実であるかのように主張した。しかし、埼玉県全体では前年の7%程度増加しているのに対し川口市は2%程度の増加にとどまっているため、全体の増加傾向に対し川口市はむしろ踏みとどまっていると解釈すべきである。そしてもちろん、この件数増加の原因が外国人であるという証拠はない。
河合ゆうすけ戸田市議、なぜ5月末のデータを参照しました?
— 福島めぐみ | 鶴ヶ島市議会議員 1期目!🏳️⚧️🏳️🌈🇵🇸 (@tsuruikoclub) November 25, 2025
最新は10月末のデータで、川口市内の刑法犯認知件数は前年同期比でマイナスになっているようです。
犯罪を属性と結びつけたり、統計を恣意的に引用したりして、住民の不安をいたずらに煽ることがないようにしたいですね。@kawaiyusukeno2 https://t.co/VfH2GK2QD9 pic.twitter.com/dCFQ0Hi4K5
挙句、福島めぐみ鶴ヶ島市議に5月までのデータで誤魔化していることを暴かれてしまった。
この例もまた、統計の都合のいい要素だけを抜き出す詭弁である。本来であれば全体の傾向に対してどうかを論じるべきだが、河合は単に件数が増えたことだけをもって自身の主張に利用している。また、たまたま月の終わりに件数がプラスになっているときだけを抜き出せばいいので、単純に考えて1年のうち12回あるタイミングのどこか1回だけ都合がいい数字なら構わないという、明らかにデマを流布する側に都合のいい論法を使用している。
こういう風に捻りだされる数字を真に受けるのがいかにバカバカしいかわかろうというものだ。
背景の無視
統計が現れる背景を無視して解釈することも彼らの常套手段である。先に挙げた外国人の犯罪率も同様だが、彼らはただ数字だけを引っ張り出し、その数字が表れるストーリーは勝手に捏造してしまう。統計データはあくまで現実の一側面を反映したものだからそのデータは現実に即して説明されなければならない。だが、レイシストやアンフェはデータさえ出せばあとは自分で物語を作っていいと思っているらしい。
よく見かけるけどこの皿洗い理論は普通にデマ。
— 連れ去られ夫 (@tsuresari04) November 1, 2025
条件が同じひとり親世帯で比較した場合、直近約20年間のデータで見るとひとり親による虐待死は母親が157件、父親が14件でこれは母子家庭の世帯数が父子家庭の平均約6倍であったことを考慮しても1.8倍の発生頻度なので明確に母親の方が殺します。 https://t.co/KfFDhcaN6f pic.twitter.com/RcezaYQNa3
警察の虐待検挙者の7割はパパだが、子殺しの7割はママになる逆転現象は「女性の加害は“子殺し”という誤魔化しようがない事態になるまで見逃され続ける」以外解釈のしようないんだよな。実際警察も「女性に優しい組織」を公式目標にしてるし、検挙の女割を誤魔化しすらしてないhttps://t.co/McB7lU4RIa https://t.co/b2N4RPQHLZ pic.twitter.com/rxZXz4C37A
— rei@避難所 (@CavidanKemer) November 2, 2025
典型的な例が、虐待死の件数を示す統計だ。アンフェはこの統計を持ち出して「女性の加害性」を主張するが、なんてことはない。統計に嬰児殺、つまり出産直後の殺害件数が含まれているにすぎない。嬰児殺は適切でない環境で出産するなどして子供を殺める事例で、要するに女性しか加害者になれない。
実態を考えれば、女性を妊娠させておきながらその後にかかわらず、女性が適切な医療機関にすらかかれない状態で放置する父親も嬰児殺にかかわる加害者だと言ってよい。だが、法律上の加害者はあくまで母親になる。それがいいか悪いかはさておき、法律上の処理はそうならざるを得ない側面がある。
加えて、虐待による子供の死亡を極めて狭く短い時間的イベントで捉えるという誤魔化しもしている。事例にもよるが、虐待死の多くは様々な問題や繰り返しの虐待が重なった末の結果として起きるものだ。突発的に殺すということは起きにくいと考えていいだろう。その積み重ねの中に、本来であれば父親の責任もある。早々に逃げたのであればその責任があるし、子育てを放置したのならその責任がある。こうした積み重ねがあって虐待死が起こることがあるが、統計上の加害者になるのは最終的に手を下した人物のみである。その人物は、もっとも子育てを押し付けられやすい母親になることが多いだろう。
ちなみに、犯罪や殺人一般の加害者の男女比を見れば、虐待死に限って女性だけ突出して加害者となる比率が多いのはおかしいと気づくはずだ。人間の行動において、一般的な傾向に例外があるなら、人間の本質とやらより先に周囲の状況に注意を払ったほうがいい。まぁ、アンフェたちはそもそも、女性の方が犯罪者が少ないという基礎知識を有していないのだろうが。
ともあれ、アンフェたちはこうした現実を無視し、母親の加害者が多いという表面上の数字だけをみてはしゃぐ。彼らは統計を解釈しているのではなく、数字を見て物語を創作しているにすぎない。
なお、これに関しては背景を説明すれば解決しそうに見えるがそうではない。繰り返すように、レイシストやアンフェは統計を使って現実を観察したいのではなく、差別の道具にしたいだけだ。説明をしてもごちゃごちゃと屁理屈を垂れるか、無視して統計を使い続けるだけだ。馬鹿に騙される人が増えないように説明するのは重要だが、レイシストやアンフェの改心を期待してはならない。
どんな結果でも差別につなげる
ここまで、統計数字のトリックを暴いてきた。だが、それすらも問題の本質ではないかもしれない。というのも、彼らはどんな数字だったとしても結局は差別につなげるだけだからだ。
この記事は『九段新報+α』の連載記事です。メンバーシップに加入すると月300円で連載が全て読めます。
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