レビュー

「VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)」全塗装レビュー

専用塗料を使用し、造形を活かして彩色!

【VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)】
発売元:ボークス
価格:11,550円
発売日:11月22日(予約完売、2次分12月6日発売)
ジャンル:プラモデル
サイズ:全高305mm
完成した破烈の人形はGTMらしい特徴的なプロポーションを完璧に再現しています

 ボークスは「VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)」を11月22日に発売します。今回はサンプルを先行して触ることができました。加えて、トアミル製ラッカー系塗料「BORN PAINT」とボークスのコラボにより、『ファイブスター物語(F.S.S.)』立体物のために生まれた塗料「F.S.S.カラーコレクション」を使った、塗装レビューを行っていきます。

 本キットのパーツ構成や、組立の細かい解説などは後日組立レビューで紹介したいと思います。本稿では塗装に必要なための組立の注意点や、塗装を行った上での感触をお伝えしたいと思います。

本騎の外装はパール塗料を使用した仕上がりです

ダッカスと死闘を演じた「破烈の人形」がプラキットに!

 最初に簡単にキットとそのモチーフを紹介します。今回制作する「VSMS 破烈の人形」のモチーフとなるのはマンガ「F.S.S.」に登場するクバルカン法国の可変式GTM(ゴティックメード)です。ロボット形態から飛行形態への変形が可能となっており、飛行形態での機首部分はモーフィング変形にて頭部両サイドに格納されています。本機は他のGTMより一回り大きく、星団最強のGTMとも言われています。

フェイス部分はアイまでしっかりとモールドされています

 ボークスの展開するVSMSシリーズは、立体化すら困難なGTMを、制作しやすいインジェクション可動プラキットとして展開するシリーズです。価格もレジンキットと比較すれば安価で、幅広い層が手にする事ができます。シリーズ第1弾は「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」が発売され、シリーズ第2弾として原作第15巻にてダッカスと戦った「破烈の人形」をモチーフとした本商品が発売となりました。合わせることで劇中の名シーンを再現できます。

D.B.B.には放電エフェクトパーツが付属します

 本商品では専用塗料「F.S.S.カラーコレクション」の使用を推奨しています。トアミル製ラッカー系塗料「BORN PAINT」とボークスのコラボにより、『F.S.S.』立体物のために生まれた本シリーズ。今回は「F.S.S.カラーコレクション 30 ダルマス ゴーストグレー」、「F.S.S.カラーコレクション 04 ダルマス フレームメタリック」、「F.S.S.カラーコレクション 21 カイゼリン ホワイト」、「F.S.S.カラーコレクション 03 Z.A.P.ホワイト」、「F.S.S.カラーコレクション 01 K.O.G.ゴールド」を使用しました。

【F.S.S.カラーコレクション】
F.S.S.カラーコレクション 30 ダルマス ゴーストグレー、990円。外装色(青)に使用
F.S.S.カラーコレクション 04 ダルマス フレームメタリック、990円。内部フレーム色に使用
F.S.S.カラーコレクション 21 カイゼリン ホワイト、990円。外装色(白)に使用
F.S.S.カラーコレクション 03 Z.A.P.ホワイト、990円。外装(上塗り)に使用
F.S.S.カラーコレクション 01 K.O.G.ゴールド、990円。頭部・ガットブロウに使用

頭部や胴体の合わせ目を消して組立

 ここからは実際に「VSMS 破烈の人形」を制作して行きます。本記事では主に塗装をするための、筆者の制作時におけるポイントを解説していきます。また、今回の制作はキットの素性を活かした制作とし、配色も説明書に準拠した塗装を行なっていきます。

 本キットは各部に合わせ目が発生するため、そういったパーツを優先して処理を行ないます。本キットにおける合わせ目処理は頭部で1か所、胴体で1か所、背面フライヤーで3か所、腕部で左右各3か所、腰部で3か所、脚部で左右各6か所、エネルギーをまとった刀「ディストーション・ブレード・ブロウ(D.B.B.)」にて1か所行ないました。

 本キットのパーツの材質はPS、ABSの2種類があるため、材質に合わせて使用する接着剤を適宜変更しています。筆者はPSパーツにおける細かい箇所の合わせ目にはクレオスの「Mr.セメントS(流し込みタイプ)」、PS大型パーツにはタミヤの「タミヤセメント (角びん)」、ABSパーツにはクレオスの「Mr.セメントSPB(ブラック)」を使用しました。

 なお、ボークスはこの2つの材質に合わせた特性を持つ接着剤「ボークス フローセメント(流し込みタイプ)」を販売しています。本商品製作時にはこちらの使用もお勧めです。

合わせ目処理を行なった各部パーツ。各部に合わせ目が発生します
筆者の使用した接着剤。左からタミヤの「タミヤセメント (角びん)」、GSIクレオスの「Mr.セメント(流し込みタイプ)」、「Mr.セメントSPB(ブラック)」。筆者は普段からこれら3種類を愛用しています
こちらはボークスのABSとPSの両素材に対応する「ボークス フローセメント」。「ウェルネス」(左)は安全性と生活環境に配慮した成分で刺激臭が少なめ。「スタンダード」は一般的な有機溶剤を採用

 また、合わせ目の処理を行なう際には内部に挟み込みを行なうパーツもあるため、こういった箇所は内部の先行塗装、もしくは後ハメ加工にて対処します。本キットは後ハメ加工しやすいよう配慮されたパーツ設計になっています。

 ここからは制作過程での気になったポイントを紹介します。頭部中央の構造は内部パーツおよび外装の大半が内部フレーム色となり、一部外装色やクリアグリーンとなっています。この部分は後ハメ加工が困難と判断し、先行で内部を塗装した後に合わせ目処理をすることしました。

クリアグリーン部分はパーティングライン処理を行なったパーツに直接塗装しています
外装パーツの塗分けは先に外装色を塗装し、マスキングして内部フレーム色の塗装、合わせ目処理を行ないます
頭部パーツの内部は組み立て後だと塗装困難と判断し、組み立て前に先行塗装します

肉抜き穴やディテール追加、気になったところに手を入れる

 頭部に接続するスタビライザーは中央部軸に肉抜き孔とみられる開孔があります。設定画や原作単行本の描写からこの孔は存在しないものと判断してポリパテで埋めることとしました。

 また、本キットのクリアブルーパーツはクリアパーツということもあり非常に硬く、ゲートカットの際に破損しないか注意が必要です。幸いにも1本予備が付属しているので安心ですが筆者もゲートカットの際に1本折ってしまいました。このスタビライザーは細長く、ゲート箇所も多いので細心の注意が必要と思います。

パテ埋め前後のスタビライザー。開孔箇所は多いですがここを仕上げておくと完成時の見栄えが変わると思います

 また、腰部フライヤー基部のフレームパーツや、股関節部装甲においても肉抜き孔が存在するため、プラ板やポリパテで肉抜き孔を処理しました。

腰部フライヤー基部のフレームはポリパテで肉抜き孔を処理しました
股関節装甲において1種類はプラ板で、もう1種類はポリパテで処理しました
ポリパテは内部に気泡が発生することもあるため、そういった気泡は瞬間カラーパテで処理しています

 背面フライヤーの外装パーツは内部フレームを挟み込む構造となります。そのため、この個所は後ハメ加工を行ないます。後ハメ加工は接続孔を一部カットし、Cジョイント化し塗装後取り付けを可能としました。

Cジョイント化することで組み立て時に接着剤無しで組み立て可能です

また、足部のかかとパーツも背面フライヤーと同様に接続孔をCジョイントに加工しました。

足部も背面フライヤーと同様に接続孔をCジョイントに加工しています

 また今回の組立ではモールドも修正しています。背部フライヤー接続軸の彫刻の形状を調整しました。

背部フライヤー接続部。加工前(写真左)から形状を修正(写真右)しています

 また、胸部装甲側面は設定の凹モールドを金型では再現できないため、階段状のモールドを一度瞬間カラーパテで埋めた後、モールドを彫り直しています。

モールドを彫り直した胸部装甲。筆者は加工時に視認性の良い赤色の瞬間カラーパテを使用しています

 また、プラキットでは複数の装甲が1個のパーツにて造形されています。そのためパーツ同士が重なる個所、とりわけ逆エッジとなる個所はよりエッジを強調するためスジ彫りを追加して行きました。筆者はファンテックにスジ彫りカーバイト0.1mmを使用してモールドを彫りこんでいきます。

今回の作例ではスジ彫りカーバイト0.1mmにてモールドを彫り込みます
スジ彫り前の胴体パーツ(写真左)とスジ彫り後の胴体パーツ(写真右)の比較。逆エッジがハッキリとしました

 塗装前の工作ポイントは以上となります。ここからは塗装作業に入ります。今回の作例では専用塗料を使用した塗装を行なうため本記事ではこれら専用塗料の使用感をレビューしていきます。

隠ぺい力も高く使用しやすい専用メタリックカラー

 最初に今回の作例で筆者が使用したエアブラシは0.3mm口径を使用し、下地にはガイアノーツの「GS-02 サーフェイサーエヴォ ホワイト」を使用した上で塗装を行ないます。

下地塗装を行なった胴体部フレーム。マットホワイトの仕上がりから塗装を行ないます

 本キットでメタリックカラーに「F.S.S.カラーコレクション 04 ダルマス フレームメタリック」と「F.S.S.カラーコレクション 01 K.O.G. ゴールド」の2種類を使用しました。これらメタリックカラーは隠ぺい力も高く癖のないカラーでした。本カラーは要希釈の塗料となっており、本作例では同社の薄め液を使用して塗装を行ないました。

「F.S.S.カラーコレクション 04 ダルマス フレームメタリック」を塗布した胴体フレーム。隠ぺい力も高く癖のないメタリックカラーでした

クリアカラーの機体色は下地の色が重要

 本機の装甲の配色は濃淡2色のライトブルーの配色となります。これら2色の配色は異なる下地色から、同色のパールとトップコートで仕上げる塗装となります。濃い箇所の下地色は「F.S.S.カラーコレクション 30 ダルマス ゴーストグレー」、薄い箇所の下地色は「F.S.S.カラーコレクション 21 カイゼリン ホワイト」にて塗装します。

 これら2色はクリアカラーに分類されるため、塗料自体の隠ぺい力は高くはありませんでした。また、クリアカラーということもあり下地の色に大きく影響されます。そのため、下地に使用するサーフェイサーはグレーやブラックではなくホワイトを採用する方が無難だと感じました。

 なお、クリアカラーということもあり複数層の重ね塗りが必須となるため、塗料は余裕をもって準備する必要があります。ちなみに筆者は今回の作例で事前テストでの使用分を含め「F.S.S.カラーコレクション 30 ダルマス ゴーストグレー」を3本使用しました。全塗装の際は参考にしてください。

下地色を塗装した腕部装甲。塗分け時はマスキング後もう一度「GS-02 サーフェイサーエヴォ ホワイト」を塗布しています

 下地色の塗装後はパールを塗布し、その上から「F.S.S.カラーコレクション 03 Z.A.P.ホワイト」を使用してコーティングして仕上げとします。

パール、トップコートを塗装した腕部装甲。「F.S.S.カラーコレクション 03 Z.A.P.ホワイト」はホワイトの半透明塗料です

 本キットにおける専用塗料の使用箇所は以上となります。ここからは完成した破烈の人形を見ていきます。

素立ちでも十分に楽しめる迫力あるキット

 最初に完成したキットを前後側面から見ていきます。本キットは設定画版と本編版の2種類が再現可能であり、完成後差し替えも可能となっています。

正面から見た破烈の人形。GTMの特徴ともいえる細い胴体、脚部でありながら安定した素立ちが可能となっています
背面から見た破烈の人形。設定画版では後方に大きく張り出したデザインとなります
側面から見た破烈の人形。D.B.B.に取り付けたエフェクトパーツは両面テープにて固定しています

 ここから各部のアップを見ていきます。頭部パーツはアイが別パーツになっているなど、塗装しやすいパーツ構成となっています。

フェイス部分のアップ。アイはフェイスと別パーツのため、塗装しやすくなっています
頭頂部の破烈の人形マークは水転写デカールで再現されています
頭部合わせ目のアップ。塗装後のパーツでも合わせ目消しは十分に可能です

 本機の外装におけるスミ入れは濃いスカイブルーにおいてはネイビーで、薄いスカイブルーにおいてはライトグレー、その他はブラックにてスミ入れしました。

胴体部および、肩部のアップ。パーツカラーに合わせてスミ入れの配色を変更しています
胸部側面の凹モールドは彫り直しをすることで設定に準拠した形状となりました
胴体側面のアップ。逆エッジ部をスジ彫りすることで装甲の分割がハッキリとします

 腕部の破烈の人形マークは水転写デカールもしくはモールドを活用した塗装による塗分けで再現します。今回の作例では水転写デカールを選択しました。

腕部のアップ。腕部の破烈の人形マークは水転写デカールもしくはモールドを活用した塗装による塗分けで再現します

 本キットの脚部は細身でありながら安定した立ち姿を楽しむことが可能です。また、足部は左右で足裏角度が異なるため安定した接地が可能です。

脚部のアップ。膝関節は可動しますが、関節部のフレームの摩擦があるため、塗装派のユーザーは関節の渋み調整などが必要です

 本機の武装であるD.B.B.は刀身に放電エフェクトパーツが取り付け可能です。エフェクトパーツの取り付けは両面テープ等を使用して固定します。

D.B.B.のアップ。エフェクトパーツは両面テープにて固定しています

 後頭部のスタビライザーはそのままでも十分にその造形を楽しめますがドライヤー等で加熱することで角度を変更することが可能です。

スタビライザーのアップ。ドライヤー等で加熱することで角度を変更することが可能です
頭部スタビライザーの内側はパテ埋めを施すことで設定画に準拠した形状となりました

 背面の輻射フライヤーとテールフライヤーは本機における最も大きな装備であり設定に準拠したサイズ感で立体化されています。

腰部のフライヤー。翼端灯もしっかり再現されています
背面フライヤーは接続部が完全に隠れる構造のため、完成後は加工痕が見えることはありません
フライヤー接続軸のモールドも修正を加えることで原作準拠の仕上がりとなりました

 本キットには差し替えパーツとして本編版頭部装甲と可動式胴体パーツ、交換用ハンドパーツが付属します。本作例では全て制作しましたが、ポーズ固定で楽しむユーザーであれば制作をスキップしてもいいかもしれません。

各種交換用パーツ。本編版頭部装甲と可動式胴体パーツ、交換用ハンドパーツが付属します

 今回制作した「VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)」は細かいパーツ分割により特徴的なプロポーションを上手く再現したキットでした。

 キットの制作時に目を向けるとキットの制作には接着剤が必要であり、挟み込み式のパーツも多いことから、ベテランモデラーでも十分な手応えを感じることができるキットなのではないかと思います。各部関節がかなり固く製造されているため各ユーザーの好みに合わせて関節の硬さを調整できるだけでなく素立ちで展示するなら硬いままで組み立てれば立ち姿も安定します。

 また、専用塗料に目を向けるとフレーム色のメタリックカラーは癖もなく隠ぺい力も高い塗料であり、外装色は隠ぺい力が低いもののクリアパーツにそのまま塗布すればGTMの特徴ともいえる半透明の外装が表現可能です。

 ボークスの展開するファイブスター物語プラモデルは各々専用塗料が発売されているので自身のお気に入り機体を一緒に購入して塗装を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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